幼馴染はどうやら転生しても続くらしい 作:ぶり大根(元・孤高の牛)
「そんで、どっちが主人公かは分かったんだよな?」
放課後、学院の校舎裏。薄暗いその場所は秘密の会合をするのに打って付けだ、見つかりにくいし何より『秘密の会合』という雰囲気に良く合っていてテンションが上がる。
さて本題だが、本当なら俺がノエルと最初から断言しても良かった訳だがそこまでアルトリーベに詳しくない……というか前世全く触ってなかった俺があれこれ口出すとマリーに怪しまれるからな。全く触ってなかったせいでモブせかとここに転生するまで気が付けなかったし。
聖女の呪いに関しては必要経費だ、リビアの為仕方なかった。
という訳で原作比でかなりアルトリーベの知識に強化の掛かったマリーに任せる。俺がどこまでアルトリーベ知ってるのか聞かれるのも面倒だし。
「ノエルの方ね、髪色やバストサイズで分かったわ」
ほらね、リオンにレリアの方の写真を見せられながら問われてもスムーズに答えて見せた。細かい設定は曖昧だが主要キャラの設定やルートは大体知っているのがウチのマリーだ。
「よし、これなら方針がすぐ固まるな。『警戒すべきは本来いない方のレリアだ』って事をな」
「だな。ノエルの方は同じクラスでリオン組の世話係ってのもあるから直接動向を見られる機会も多いだろうしレリアに注力すべきだろう」
「……そのレリアって子も転生者なのかしら」
「多分な。それも含めてルクシオンに探らせてみるとするか」
さすがリオンだ、前世から勘が良い。そうだとも警戒すべきはレリア1点集中で良い、攻略対象は全員レリアが改悪してるからな。あと唯一イレギュラーを感じ取ったピエールは俺の方の世話係だから自然と俺が接触してれば良い。
……レリアは本当にヤバい奴だ、この世界をシンプルにゲームと思ってる連中より余程タチが悪い。自分の前世と今世を重ねて見て拗らせていたり姉ノエルの気持ちを考えず強引に攻略対象の1人とくっつけようとしていたり。
レリアの前世は悲惨なものだった、同情してしまう出来事が多過ぎるってくらい多くて可哀想なものだ……だがそれとこれとは話が別だ、それで今世では関係の無い姉を雑に使ったり攻略対象の心を雑に扱ったりして……しかもそのせいで聖樹が暴走して帝国と戦争になってやりたくもない殺し合いをさせられて……
正直言おう、言葉を濁さず言うなら俺は『モブせか』でレリアが死ぬほど嫌いだ、今すぐ殺したいくらいに。
だがそんな倫理観の欠片も無い事をしたらそれこそレリアと似たようなものにしかならない、それにもう爵位も貰ってる奴が下手には動けないのが実情。
であるならば徹底的に邪魔をしまくってシナリオをぶっ壊してやる。
「アル?どうかしたの?怖い顔してるわよ?」
「いや、ちょっと考え事をな。そのレリアってのが転生者だとしたらピエールがああなってる理由にもなるかもしれない。ただでさえ信用ならない原作知識がそいつによって更に壊されている可能性も視野に入れて警戒していくべきだろうな」
「出来ることなら敵対はしたくないけどなあ」
その為にはまず聖樹暴走の火種は1つずつ取り除いていくに限る。リオンは敵対したくないとは言っているがレリアはほぼ不可能で取り除くのも困難、ピエールみたいに改変があるならやってみるがダメ元前提でみておくのが安牌。
だが、エミールとイデアルは何とかなる可能性は残されている。まあ可能性は低いが……イデアルは書籍版ならまだレリアとセルジュには見つかってないはず。
なら先に見つけてしまえば良い、見つけたらどうするかは後でどうとでもすれば良い、策に乗ったフリをしてマスターにでもなってタイミングを見て処分しても良いだろう。
「っと、そう言えばレリアには彼氏がいるとか言ってたよな。誰だったか分かるか?」
『映像があります。30分前の様子ですね』
会話の方はレリアの彼氏の話になっていた。ルクシオンが映し出した映像には……やはりと言うべきか、エミールの姿が映っていた。
「げ、よりにもよってエミールを選んでるなんて」
『レリア、来週の休日なんだけど……その、で、デートにいかない?』
『いいわよ。でも美術館巡りはやめてよ、ショッピングが良いわ』
『え、駄目なの?』
『この前もその前も美術館だったじゃない、ちょっとはデートプランを考えてよ』
『……ごめん、そうだね』
「彼氏がいる方が主人公って事ではないんだな?」
「そうね、髪色とバストサイズが違うからノエルの方で良いはずよ。それにこれなら『中途半端な知識持ちの転生者』か『そもそもアルトリーベの知識が無い』の二択で絞れそうね」
「ほう、と言うと?」
「アルトリーベはバッドエンドがどれもこれもキツいものばかりなの、特にこの第二作は。だからシリーズの中でも敢えてバッドエンドを徹底的に避けてクリアする層がいたのよ。その層からのエミールの二つ名は『安牌』。どのルートでもある程度友好関係があればエミールルートにシフトチェンジ出来る事からそう呼ばれていたわ。尤も、コイツの本性を知っていれば全くそう呼べないけど」
エミール・ラズ・プレヴァン……アルトリーベではマリーの話した通り隠れヤバキャラ、モブせかでは屈指の面倒な性格を持っているが同時に屈指の不憫キャラでもある。
「前にアルが話してたよな。確か……監禁エンドだったか」
「俺は知り合いのやってたので知っただけだが」
「安牌なんてとてもじゃないけど言えないわ。他キャラとの好感度調整ミスをしたら終わりなんだから。とんでもないヤンデレキャラなのよ。そんな相手、もしもしっかりと履修していたら選ぶはずがないわ。つまりバッドエンドを知らないかアルトリーベそのものを知らないかって事。後者ならまだやり直しようはあるけど……」
「前者だとキツいって事か」
マリーは俺の影響かとことん勘が良くなっている。レリアの本質をズバリほぼ当てている。ほぼ二択まで絞って当ててきているのはお見事と言わざるを得ないだろう。
そしてエミールに関してもアルトリーベでの性質は完璧に当てている、但しモブせかではレリアに振り回され心を壊されて暴走して最後には死んでしまうのだが。だから嫌いなんだよレリアの事。
「いずれにしても調査は継続だな」
「アルの言う通りそうなる、頼んだぞルクシオン」
『はい、引き続き調査します』
あーあ、エミールにレリアを幻滅させて俺だとバレずにレリアを抹消する方法どっかに転がってねえかなあ……なんてあまりにも外道な事を考えてしまうのだった。
「……どうするんスかピエールさん、多分ですけどあの人達ホルファートの留学生に目付けてますよ」
「俺達に出来るのは実際にアイツらが留学生やその関係者に手を出してからだ、いくら俺が六大貴族の子息と言っても同じフェーヴェル家に連なる、それも兄上の息の掛かった連中を事前に止めるのは難しい」
「さすがピエールさん、冷静な判断だ」
「他のフェーヴェル家がピエールの兄貴くらい慈悲のある人間だったら良かったんだけどな」
眼下に映るのは、兄上の息の掛かった学院生達が留学生の1人を着けている光景だった。俺の名前はピエール・イオ・フェーベル、アルゼル共和国に連なる六大貴族フェーベル家の次男だ……だからどうという事は無い、所詮は家督争いでは長男である兄上が名実共に有利で後に残るのは『六大貴族の子息』という肩書きのみなのだから。
……今はそんな事はどうでもいい。
俺は成すべき事を成す、六大貴族の子息として、権力を持つ者としてそれを正しく振るえるようになる為に。
「あまり表立ってフェーヴェル家の悪口は言うなよ。……俺ではお前達の身の安全を保証しきれなくなるからな」
「す、すみません」
「そもそもこの国自体の思想があまり良くないんだ、虎視眈々と俺達は機を狙っていくのが正攻法だ。それまでは爪を研ぎそして見つからないように息を潜める、良いな?」
「はっ!」
この国は狂っている。たかだか防衛戦で無敗を誇っているというだけで他の国を見下し威張り散らかし、それが貴族や軍人には色濃く根付いてしまっている。
更に言えば我がフェーヴェル家はアルゼルの貴族の中でも随一のアルゼル貴族絶対主義思想、兄上がホルファート王国の留学生に目を付けるのは自明の理だった。
……今回ホルファートからの留学生は王族子息、及びそれに連なる上級貴族子息、元広告の両殿下、そして学生にして子爵、伯爵の地位を賜っている2人。使用人も勿論関係者だ、誰かを理由無く傷付けるという行為そのものが許されざる行動だと言うのに他国の要人にそのような行いをするのは今の俺なら分かる、とんでもない愚行だと。
「ノエル、少しいいか」
「ピエール?どうしたの?」
俺の取り巻き達に釘を刺して解散した後、次は運良く帰っていないノエルを見つけた。実家のフェーヴェル家に目を付けられるのは良くないが、警戒し過ぎて警告せずに留学生や世話役が襲われるのは避けたい。
「……周りに誰もいないな?」
「うん?うん、まあ……はっ!?もしかして告白!?」
「ノエルは良い友人だとは思っているけど、生憎と俺は今は恋愛に構ってる暇が無くてね。そうではなく……兄上や俺を除くフェーヴェル家が留学生や君達を狙っている可能性がある、という警告をしに来たんだ」
「フェーヴェル家が……ありがとう、警告してくれて」
「良いさ、それよりも直接手を出して来ない限りこちらから行動を起こしても状況を悪くするだけなのが歯がゆい」
「それでも、教えてくれるのはピエールの優しさじゃん。留学生のみんなやジャンにも共有しておくわ」
「そうしてくれると助かる」
ノエルは同じ留学生の世話役という立場以外にも数年来の友人という立場も今はあった。数年前、社会勉強の一環として街で民と交流していた時に出会った彼女はその時から既にこのような性格で接しやすかった。
恋愛には決して発展しないしさせてはいけないという存在ではあるが。
というか寧ろ早く収まるところに収まってもらいたい、今のノエルは不憫で仕方がないのだ。
「お礼に今度街でなんか奢ったげる」
「そんな大層な事はしていないが、それまでに考えておこう」
彼女が去り、本格的に1人になる。
そうするとどうしても黄昏てしまう、今こうして生を受けている事自体が奇跡と同等と言っても過言では無いのだから。
「ふぅ……もしもまた、あの人の隣に立てるのであれば。今度は立派な男として、胸を張って託されたいものだ。だから、必ず成功してみせる。何があっても必ず、な」
秘めたる想いを胸に、その場を後にするのだった。
【調査その3】独自解釈で話を進めていく展開が将来的にあるけど大丈夫そう?
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大丈夫だ、問題無い
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無理
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アルマリでイチャイチャしろ