幼馴染はどうやら転生しても続くらしい   作:ぶり大根(元・孤高の牛)

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第八十九話『友人』

「しかしこの国は王国とは全く違う文化が形成されてるんだな……当たり前だが。この車や路面電車なんかは王国には無いものだ」

 

「って言う割にリオンやアル、マリエはこういう光景に慣れてる感じがするわよね」

 

「事前にどういう文化があるかは勉強してきたからな。な、リオン、マリー」

 

「そ、そうね!慣れてるというより?ビックリよりも興味深さの方が勝ってる?みたいな?」

 

「そんなところだ」

 

 翌日、今日は珍しく放課後にピエールとジャンが姿を現さなかった。ただジャンに関しては見張りにネズミを駆り出しているのでその映像を確認する限り問題は無い。今日は犬の世話で早く帰ってるらしい。

 しかし問題はピエールの方だ、留学前事前に見張らせる為のネズミとして準備した中にピエールの分が無かった。あとルーデとラウダがイレギュラーだったのもあって数台マルに依頼して作ってもらっている最中だ。

 今見張らせているのはルクシオンと二重にして動向を探っているレリア、ストーカー呼ばわりされているロイク、あとついでにナルシスとユーグにも付けている。

 セルジュとフェルナンは詳しい位置が分かってないので付けていないがこの2機分は代わりにルーデとラウダに付けている。

 

「へ〜勉強熱心なのね。しかもあたしの特売にまで付き合ってくれるなんて!過去付き合ってくれたのはジャンとピエールくらいなものよ……」

 

「寧ろ俺はピエールがそこまで付き合い良い事にびっくりだが」

 

「そう?アイツ良い友達なのよ。異性として見るって感じじゃないんだけど、良い意味で貴族らしくないって言うか目線を同じにして物事を見てくれるから話しやすくて。ジャンにも良くしてくれてるし、今じゃ特売の時は良いコンビとして頼もしいのよ」

 

「確かに、六大貴族の子息って言う割にはアタシ達の世話役なんて引き受けたりかなり珍しいことしてるわよね」

 

「貴族らしくないってのは言い得て妙か」

 

 ピエールはイレギュラーというのもあるが、純粋な善意からフェーヴェル家次期当主ジャリエールの事を警告していたとなるとシンプルにアイツの身が危ないから本来は付けておきたかったというのも大きい。

 ラウダレベルの要人でもない、使用人や護衛を学院内に忍び込ませておくのは後々関係性が悪くなりかねないから出来ないのが厄介だ。

 フラグからして元いたピエール等の立ち位置がジャリエールと息の掛かった学院生になっている可能性は高いって言うのに……こういう動けない時に限ってコトが起きる、なんてのは勘弁してくれよ。

 

「貴族らしくないって言うならリオン達もじゃない?王国でリオンは伯爵、アルは子爵、マリエはアルの嫁……なら稼ぎも多いと思うし」

 

「確かに、毎日贅沢出来るかって言われたら出来るがいつ金が無くなるか分からないからな。というか俺はある程度余裕のある暮らししたいし……あとこういう食事も好きなんだよ、俺達」

 

「ま、3人とも下級貴族の出だからな。こういう暮らしは割と慣れてる」

 

「ふ、ふふ……アタシなんて家族と縁切りする前はサバイバル生活してたくらいよ……」

 

「そ、そんなに……」

 

 まあ、さすがにそんな昨日の今日で起きたら俺の胃痛が収まらなくなるから勘弁してほしいというか起きてくれるなよと念じて帰るとするか。

 

「あ!ノエルちゃん!」

 

 さて帰ろうと歩いていると前から息を切らせて走ってきたのは……確か、ピエールの取り巻きの1人か。

 このタイミングでこの感じ……嫌な予感がするがまさかな。

 

「サルディ?どうしたのそんなに慌てて……というか怪我も!本当にどうしたの!?」

 

「そ、それが!ジャリエールの下っ端達が下校途中のピエールの兄貴を!俺達の事を途中で逃がしてくれたんだけど、あの人だけ1人で……!」

 

「そんな……」

 

「おいおいマジかよ」

 

「くっそ!」

 

 そのまさかだ、こんな事になるなら今日だけでもピエールにネズミを優先しておくべきだった。グッと拳を握り締めてしまうが、今やるべきは後悔する事じゃない……助けに行かないといけない。

 

「こんな時にルクシオンは何してんだよ!って文句言ってもダメだよな。よし、行くぞ!」

 

「ああ!」

 

 ――本来ならこの暴力事件の主犯はピエールで、その取り巻きが共犯のはずだった。

 だが何の因果か加害者が被害者にスライドした、どうしてアイツは最初からサポートしてくれて、どうして友人になってくれて……どうして、どうして。

 

「おいピエール!しっかりしろ!ピエール!」

 

「酷い怪我だ……」

 

 ジャンは原作では入院してしまい、そして老犬であるノエルの最期の死に目にギリギリ間に合うくらいでお別れしてしまう。

 だからジャンが襲われなかった事は良い、それ自体は良い。

 

 でも、でも……それで友人が傷付けられて、良かっただなんて心の底から言える訳が無いだろうが。

 

 目の前で血を流して倒れ伏すピエールを見て、悪役がどうとか何があったらこんなに綺麗になったんだとか、そんなものもうどうでも良くなった。

 今眼下にいるのは誰だ?悪役のピエールか?誰かを無為に傷付けそれを楽しむピエールか?断罪されるべき『ピエール・イオ・フェーヴェル』か?

 

 ――答えは『否』だ。

 

 少なくとも今俺の中に宿る『ピエール』は、親切にガイドをしてくれて、世話役も買って出て、そして友人になってくれた1人の男に過ぎない。

 

「今すぐ病院に連れてくからな。アル!」

 

「もう呼んだ!あと少しもすれば救護車は来る!」

 

「ぐぬぬぅ……!こういう時の為の聖女の力でしょうがぁ……!!もっと頑張りなさいよアタシぃ!!」

 

 それに、泣いていた。

 

「ピエール!ピエールしっかりしてよ!死なないでよぉ!」

 

 ノエルが泣いていた。

 許されざる事だ。

 彼女は苦労が多くて、それでもこの世界線ではジャンに加えピエールとも仲が良くて、それで救われていたのだと語っていた。

 一生懸命生きていて、どれだけ優しい人なのか知った。

 後々リオンの嫁になるとか、今はそんなのはどうでもいい。そういう『知識』から来る怒りじゃない。大切な友人を2人も傷付けられた怒りだ。

 

「なぁ……」

 

 ピエールが僅かにそう声を出す。

 

「どうした」

 

「留学生達と……ジャンは……」

 

「全員何ともない」

 

「…………そう、か……」

 

 それだけ聞くと、今度は少しだけ穏やかな表情になってまた意識を手放した。悔しいが今の俺達ではこれが限界だ。

 

「ピエール、ピエールぅ……」

 

「大丈夫だ、マリーの回復魔法はちゃんと効いている」

 

「あ、ありがとう……」

 

 そうこうしている内に救護車も来たようだ。

 

「ノエル、乗ってってやってくれ」

 

「うん、そうする。ありがとうリオン。それにマリエとアルも……」

 

「これくらいどうって事無いわ!」

 

「同じくだ」

 

 担架で運ばれるピエールと一緒に着いていくノエルを見送る。

 乗り込む姿を見送り……俺は思わず膝を付いてその拳を地面に叩き付ける。

 リオンやマリーもやり場のない感情を持て余しているようで、重たい空気が場を支配する。

 

「クソッ!!」

 

『マスター、アル様、マリエ。3人の気持ちは良く分かりますが今フェーヴェル家に喧嘩を売るのは得策ではないでしょうね』

 

「……だろうな。何せ『まるでピエールの代わりになったような連中』、つまりここでフェーヴェル長兄を潰せばストーリーがこれ以上に崩壊して収拾がつかなくなる、全くもって嫌な話だ」

 

『既にかなり崩壊していますが、ピエールの立ち位置にフェーヴェル家長兄が付いた以上無闇に手出しするのは良くないです。アル様もどうか、下手に手出しだけはしないように』

 

「……分かってるさ」

 

 こんな時でもルクシオンは淡々と分析をしてくれる、傍から見れば冷徹とも思うかもしれないが煮え滾る感情だけをぶつけても物事は上手くいかないのでこうした立ち位置の存在は有り難い限りだ。

 握り締めていた拳の力を緩め、深く溜め息を吐き出して立ち上がる。

 

「そうだわ!これからのジャンやノエルが心配だわ!」

 

 そして3人が冷静になったところでマリーの声が響く。

 

「今日は狙われなかっただけで、明日狙われないとは限らないか」

 

「って言ってもノエルにはレリアがいるから簡単には引き剥がせない、そこはナルシスに付けたネズミをノエルの方に付けておく。ジャンは……アイツは一時的にリオンのとこに避難させた方が良いな」

 

 そうだ、これは終わりではなく始まりに過ぎない、共和国編はここから全ての騒乱が始まるんだ。

 ならば今は悔やむより先に今後の対処を考えないといけないと思い出させてくれたマリーには感謝してもしきれない。

 特にジャンは元々一番狙われやすい立場だった、これ以上周りで被害を出さないようにするにはそうするのが一番だろう。

 

「分かった、ジャンは俺が何とかする。ノエルの方は頼んだぞ」

 

「勿論だ。特売で買った食材もあるし、レリアの事も見ておきたいからな。マリーはかなり力を使ったし先に帰っててくれ、ルクシオンはマリーの方を」

 

『ええ』

 

 ……それはさておき必ず加害者達に報いは受けさせる、そう誓って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺が目を覚ました時には既にどこもかしこも真っ暗で、俺は知らない天井を見つめていた。

 ゆっくりと横を見つめればイスに座りながら寝てしまっているノエルもいた、どうやらかなり心配させてしまったらしく寝言で俺の事を随分と心配してくれているらしい。

 

「ジャンの事……守れた、よな……」

 

 痛む全身の感覚を感じながら噛み締める、気を失う直前アルから聞いたことが真実なら間違いなく守れた、俺はジャンを守れたんだ。

 

 ――こうなるのは承知の上だった。

 

 共和国の貴族は他国をほぼ無条件で見下している傾向にある、ともあればホルファートの留学生達がまた同じように狙われるのは自明の理。

 そして世話役の平民……ジャンがターゲットにされるのも知っていた、だからわざと俺が世話役として目立つ行動を起こしていた。

 

 案の定兄上達は俺の策に掛かってくれた、一緒に巻き込んでしまった俺について来ている友人らには申し訳ない事をしてしまったが……何にせよこれで良かったんだ。

 

「本来許されるはずがないんだ、だから傷付くのは俺だけで良い」

 

 本当は許されるはずがなかった、一生涯背負いながら生きていくはずの罪……それを精算するチャンスが与えられた。

 だったら自らのした全ての業を背負うのが道理だ、それでまだ、もしも。

 

「もしも、全ての罪の精算が終わった時に俺が生きていたら……次こそは……」

 

 次こそは。

 貴方の隣で、本当の意味で笑い合い、肩を組み、友人となり、そして心の底から憧れ、尊敬し、支えていっても、許されるでしょうか。




良い訳がない、そう語るアル
これで良かった、そう語るピエール
相反する結論の2人、果たして――




サルディ・イオ・コーデル(オリキャラ)
フェーヴェル領地の中で唯一ピエールに着いた貴族子息、四男
下級貴族の出ではあるがコーデル家は全員ピエールの思想が正しいと考えている。但しフェーヴェル家の寄子なので表立ってピエールに着いているのはサルディのみ

ノエルとピエール
めっちゃフラグがあるように見えて0
但しリオンやアルが思ってるよりめっちゃ仲が良い

【調査その3】独自解釈で話を進めていく展開が将来的にあるけど大丈夫そう?

  • 大丈夫だ、問題無い
  • 無理
  • アルマリでイチャイチャしろ
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