秋葉原某所……
「ちーっス。店長、ブース空いてる?」
「平日日中ですよ、大歓迎ですよ!」
荷解きを始めると周囲がザワつき始める……
「スプレー缶?」
「え? エアブラシ使わないの?」
「あの人の作風なんだよ。……これだとクリアレッド?」
「いや、今回はクリアコート無しでスプレーからドライブラシ経由のウォッシング」
「……時間が無い? 試合ですか?」
「まぁそんな所だ。週末なんで一気に仕上げる」
プシュプシュと吹いて山善で乾燥。
「はぇー、割と綺麗に出来ますね。なんでスプレー?」
「おじさんは財力あるから別にエアブラシで安く上げる必要ないんだなこれが」
「実は広い面積一気に仕上げるならスプレーの方がね……面白いもの見せてあげよっか。ジムクレさん、ヘボいの一発お願いしていいですか?」
「時間ないっちゅーねん……いいけどさ。リカバリー面倒だからブラックウォーリアでやるわ」
ぷしゅーからの乾燥後……
「普通じゃね? 何が違うの店長?」
「こう……しゃがんで見てみ?」
「え?!」
「キミの塗装した奴も同じ様に見てみて」
「つぶつぶしてる……」
「大したこっちゃない。塗膜を作るってのはこういう事だ」
「使う機材の問題じゃないんだよ。上手ければスプレーでも綺麗な塗膜作れるし、下手だとエアブラシ使っても塗膜作れないんだ」
「エアブラシの使い方教える奴は多いが、エアブラシでどんな風に仕上げるかを語る奴は少ないからな。初代ぐらいか?」
「まぁ、余り見ないですよね……」
「ショボい圧力で薄めた塗料をチマチマ塗るより、スプレーでガツンとやった方が塗膜は作りやすいんだ。初心者でもエアブラシぐらい……とか言ってる奴に限って塗膜の作り方も知らん。最終的には筆でもガンマカでも『こんな塗膜』に出来たら何でもいい。どんな仕上がりにするかが重要なんだよ」
「でもまぁ、写真には写りませんし」
「実物見ても見るべき場所が分からなきゃ『見い出せん』もんなぁ。そして分かり易い変化にばかり気を取られてしまう」
パチパチと仮に色を載せたパーツを組み上げながら、ジムおじはあちこちを眺めて修正を加えて行く。
「色付けたのにパテ使うんですか? しかもラッカーパテ?!」
「白地はサーフェイサーだよ。ラッカーパテは珍しいかい?」
「瞬着パテを……何故ラッカーパテを?」
「柔らかいからさ。柔らかいから最終の仕上げとして段差を生みにくい。反射を使って平滑面確認するならこっちの方がいいんだ」
「おっちゃん教えて。なんで色付けながら修正するの?」
「カタチって言うのはね、表面の色でもボリュームが違って見えるんだ。だから最終的な仕上がり色を考えながらボリューム調整しないと、仕上がった時に『コレジャナイ』になる」
「うわぁ!」
「雑! 雑だよおっちゃん!」
「そうかね?(ニコニコ顔) では、こうしたらどうかな?」
「え? あ……」
「なんか騙されてない、俺ら?」
「塗り方が違うんだよ。君たちは最終的に出したい色をベタ塗りする。おじさんは最終的に出したい色をモデルって言うキャンバスの上に描き出すんだよ。歴史的にはキミらの塗り方の方が古いんだぞ。バーリンデン以前だもの」
「……いや、でもジムクレさん、これ腹がまだ明るく無いですか? また何か仕込むんですか?」
「いいねぇ、店長! そこまで見てくれるとやりがいがあるわーwww」
いい歳して草生やすのはやめよう。
ペインやバーリンデンの後にガンプラブームが来たのに、何でか令和のガンプラ界隈ではバーリンデン以前に塗り方が退行してると言う不思議。