「来たなジムおじ! 俺のトライザックを見よ!」
「見事な仕上がりだ。中々勘所を掴んでいる……」
「ジムクレさん、なんか雑ビルドに……」
「店長よく見ろ。あのザクレロ頭動くぞ」
「プラの材質を良く考えろって言うよな、ジジイども」
ザクレロの頭は接着されていない! いわゆる肩甲骨部の可動を持つMSVのオリジンザク系統の機体は胸部中央ブロックと左右のブロックの間に隙間がある! そこに0.5mmプラ板を滑り込ませる様にザクレロ頭を嵌めている為、ザクレロ頭はスライドして動くのだ!
「モデルの弱点となる可動用スペースを潰しつつ、固定と思わせた拡散メガ粒子で狙い撃ち……よく見るんだ店長、あの機体は使い込んでいる割に傷も無い……」
「つまり……被弾していない? 強敵ですね」
「なぁに、大したことはない」
「なんだと!?」
「良くガンプラバトルシステムと評価体系は理解してる、改造によるバフはかなり稼いでいるな……だが、それだけだ」
ジムおじ……GM Crazyは静かに自機をGPベースに置く。
「ペインの不肖の弟子に奴が伝えられなかった所を教えてやろう。ガンプラ念流、GM Crazy! GM Infinityでお相手仕ろう!」
「はん! 何だその海苔巻きは!」
「いやいやおじさん、これプラフスキー粒子に反応しないや無いですか! 折角ですが評価値稼げないですよ!」
「はははは! 説明セリフ有り難く頂戴しておくぞ! 数値しか見てないからそんな話になるんじゃ!」
「セオリー無視して勝てるかよ!」
「バカめ、そちらの手の内見せられてから作り上げたGM/GMを侮りすぎじゃ! 教育してやろう!」
「うぉう黒騎士! 源文臭い!」
「1Rで決めてやる! 喰らえ拡散メガ粒子砲」
「知っとるわい! 開幕ブッパでスタン誘発! そこで大技炸裂! 鎌剣はハッタリで近接戦闘無しと来た!」
ザクレロ口から吐き出された拡散ビームがジムを襲う! 派手な爆発エフェクトが機体を包むとトライザックは仮面ライダーめいて右手を下から回す!
「タイ捨邪流ガンプラ奥義! 日輪の力を借りて、今必殺の……」
「拙い! ジムクレさん!」
「ソーラ・レイっ!」
「キメ台詞による外部補助のコール……若いのにダイターン3 とは渋いな……」
「ジムクレさん回避回避!」
「ソーラレイみたいなゴンブトビームが避けられるかって話だ。華の無い試合しよるよなぁ……」
戦場の凡そ1/4をコロニーサイズの炭酸ガスレーザー光が襲う。ゲル・ドルバを焼いた憎しみの光。
「まぁ、それもプラフスキー粒子のエフェクトだ」
爆炎の彼方から黒マントに包まれたジムが現れる。
「プラモシミュレーションなら違ったがね、プラスチックにのみ反応を絞ったバトルシステムでは……」
ハーロック歩きでジムが距離を縮める
「この、ティッシュペーパーとエナメル塗料によるマントに作用する事ができん!」
「なっ!」
「覚えておけ坊主、ガンプラバトルはプラモシミュレーションから生まれた。その時既に鉛板仕込むだのウレタン装甲だの水鉄砲だのの「隙間狙い」はあったんじゃ。その対策でプラフスキー粒子はプラスチック、とりわけガンプラに特異的な反応を示す様に調整されとんじゃい!」
なんか激しく特定企業への付託を感じます。
「ガンプラ評価はその結果よ、お前たちの様なステータス至上主義者を釣りあげて「裏芸」から目を逸らさせる大人の策謀!」
「え? PPSEがガンプラバトル作ったんじゃないの?」
「マシタだけであんなもん組めるか!」
「……おっさん、また裏芸で若いの虐めてるのかよ……」
「やかましい食い逃げ王子、そこで見てろ」
「あれ? レイジ来てたの?」
「アリスタが騒いでたから慌てて来た。あ、なんか飲み物あるか? アイラがクッキー持たせてくれた」
「くっ……負ける訳には……」
「にーさん相手が悪いぜ……」
「ジムクレイジーさんにジム渡しちゃダメだよ……」
「なっ……何を!」
「このセイが作るガンプラが何で強いか、いつの間にか俺に匹敵するバトル能力得たか考えた事あるかー?」
「愛だよね、愛!(紅茶を運びながらニヘラと相合を崩すセイ君)」
「キモいぐらい入れ込んでるんだよ、セイもおっさんも」
アリスタは特性として「強い想い」に反応する。この為同スペックのガンプラを扱う場合でも「想いの強さ」がパワーを、装甲を、弾の弾道や威力すらも強化する。そしてこれはアリスタの機能でありプログラム解析では分からないブラックボックスなのだ!
「オダが出奔したのは俺が生まれる前だしなー」
「え? 小田さんってアリアン人?」
「御母堂がこっちの出で、里帰り扱いだったらしいぜ、知らんけど」
「ガンプラブームの影に小田ありってな。MSV仕組んだのも彼、狂四郎を仕込んだのも、メイジン川口も奴の薫陶受けてる。我等ガンプラ古流の始祖達もこの時代の生まれよ!」
「だからなんか理屈っぽいってか、能書き多いンだよなぁ……」
「ジムクレさんにジム渡すと、僕より多弁になるもんね」
「お前も大概だぞ、セイ……」
「ジムクレさんガンプラバトル以前からバトルやってんのかー……そりゃメンテナンス請負やるわなー」
バトルは泥試合になっていた。システムによる評価を稼いだトライザックは高機動型である事が災いしてとんでもなくピーキーな出力になっていた。ガンダムブレイカーモバイル的に申せば、開幕ブッパのハルバード投げの様な戦術で早抜き勝負じみた試合ばかりをしていたので操作に習熟出来ていない。機体に振り回されてしまっている。ジム・インフィニティは想いで底上げされたとは言えあくまでジム。運動性能は原型機であるGM/GMによりかなり良好だが推力が足りない……逃げに徹したトライザックを捉えきれないのだ。
が、遂に戦局が動く。
「ザクとジムじゃこんなもんかー」
「レイジ! 失礼だよ!」
「「なんだと!」」
「くっそ、喰らえ稲妻06Rキック!」
動かぬジム・インフィニティのパイザーに走査線じみたノイズが走り、IIネオ・ジオングじみた特殊SEが鳴り響く。迫るトライザックを捉えたメインカメラに浮かぶあの紋様は……
「福井と太田垣に過ぎたるものが3つある……」
ジム・クレイジーことジムおじが低く呟く。
「ひとぉつ! ガンダム物語を書く!」
弦が飛ぶが流れ始める。
「ふたぁつ! それがアニメ化される!」
ジム・インフィニティがビームサーベルに手をかける。
「みいぃぃっつ!! そしてオリメカガンプラ化!!」
抜かれたビームサーベルは巨大な光の柱の様に天地を繋いだ。
「まぁ、ダイターンがアリならな……」
「バンダイだしね……」
「一つ私にくださいなっ!」
大地も裂けよと光の柱が倒れて行く。その光は裁きの光。福井が求め、訴えたもの(ガンダムやれと依頼されました)
当時を生きた大きな子供達の怨念……? いや、羨望の光がフィールドを焼き尽くす。そう、今この40年前の少年は己のガンプラで物語を紡いだのだ。歓喜の光がカンタータ・オルビスを奏でて行く……
「俺のプラモ魂(スピリッツ)を喰らえ!」
「っ!」
爆発すら無かった。
光の奔流がかすりもしないものすら溶解させて行く。
「洒落にならんな……」
「これでもオーバーロードしないんだ……」
「ちょっとこれ、近所の方に通報されたりしない?」
「ジムクレさんがジム使うと高確率でこれだから……」
やぁ、終わった終わった。