プロローグ
僕は泣いていた、
雨降る公園で声をあげて、
僕は泣いていた、
認めたくない現実を思いしって
僕は泣いていた、
自分の言葉で母を泣かせてしまったことに、
僕は泣いていた、
それしかできないから、
「どうしたんだ少年?」
そんな僕に話しかけてきた人、
「こんな雨の中、傘もささないで」
その人は大柄で鍛えられた体に、タンクトップを纏っていた。
「母を泣かせてしまいました、
僕のヒーローになりたいという夢を応援してくれた一番大切な人を」
テレビで活躍するヒーローのオールマイトの真似をしたただのごっこ遊びだった。母はそれに付き合ってくれて僕はヒーローに成れると言ってくれた。
『私が来た!』自分もそう成れると真似してきたことがジクジクと心の中で傷のように痛い。
無個性だと診断され、諦めきれず父のように火を吹こうと息を吐き、母のように指を動かしたことが苦しい。
ごめんね、ごめんね、とそんな僕を抱きしめながら泣く母の姿が辛い。
そんな母よりもヒーローに成れないと自分のことしか考えられない自分が醜い。
「お兄さん、無個性でもヒーローになれますか?」
なんとなく思ったんだ、こんなに鍛えている彼はヒーローなんだと、だから僕は聞いてみたんだ。
「ヒーローは強くなければいけない」
そして彼は否定した、
「だから個性という武器がなければ務まらない」
無個性では無理だと、
「だが強さとは個性の有無ではない」
けど、けど、
「強さとはタンクトップをいかに着こなすかだ!」
叫ぶような声が震える僕の体に叩きつけられる。
「タンクトップとは強さそのもの、その性能を引き出せれば、即ちタンクトップの似合う男になればいかなるものにも、個性にもきっと打ち勝つことができる!」
漲る気迫、溢れる自信、揺るがぬ信念、そして磨き抜かれた体、この人は信じているんだタンクトップを、タンクトップを信じる自分自身を。
「さあ少年、そんな格好では風邪をひくぞ。
タンクトップを着るんだ」
彼はタンクトップマスターは僕に道を示してくれた、
僕の進むべき道を、
あの日僕は自分が無個性だと知った。
あの日僕はヒーローに成れないと心折れた。
あの日僕は母を泣かせた。
あの日僕は公園で泣きわめいた。
あの日僕は人生の師とも言える人と出会った。
あの日僕は、真の強さを知った。
あの日僕は、僕は、タンクトップと巡りあった。
これは僕が、最高にタンクトップを着こなしてヒーローになる物語。
なお数年後幼馴染の爆豪君にこの話をしたら、話しかけられた時点で警察呼べよとドン引かれた、解せぬ。