無個性ヒーローナンバー④
『番犬マン』
犬のきぐるみを着た青年。その挙動は犬そのもの。
自身の故郷である都市の駅にある台座に一日中鎮座している。
郷土愛に溢れる青年で、故郷に起きる全てのヴィラン犯罪を撃退し続けている。
そのためその都市の犯罪件数は限りなく少なく、世界一安全な都市として有名。
元々有名なヴィジランテであり故郷のために戦い、自らの利益を望まない姿は多くのものに尊敬されている。
だが反面それ以外のことは一切興味なく、政府公安の要請全てを無視している。彼の力があればより平和になると思った一部政府高官が、エンデヴァーをリーダーとしたトップヒーロー二十名による捕縛作戦を強硬したが、全員叩き潰され失敗に終わる。
認定経緯は、その作戦が都市の住民達に知られ抗議集会が行われたため。後に幼少時のデータから無個性だと判明し、特権を与えられ無個性ヒーローとなる。もっとも番犬マンは何を言われても反応しないが。
某公安委員会は、縄張りを日本全土に広げて欲しいとのこと。
春、それは高校生活の始まり。
雄英高校入試突破、プロヒーローが大勢集ったお祝いを終え、今日僕はこの日を迎えた。
「出久、超カッコイイよ」
喜び、送りだしてくれる母に僕は振り返り、ずっと伝えたかった言葉を告げる。
「お母さん今までありがとう」
無個性で生んでしまったと、自分のせいで息子の将来を奪ってしまったとずっと悩み苦しんできた人に僕は言う。
「こんなにも健康で、鍛錬に答えてくれる体に産んでくれてありがとう」
あなたから貰ったモノは、欠陥品なんかではないと。
素晴らしい贈り物だったのだと。
「僕がこの日を迎えられたのは、お母さんのおかげ、
お母さんがくれた体のおかげ、だからありがとう」
僕はこの体で生まれて幸せです。
「アレ?爆豪君?」
「ん?ああ緑谷か?」
バリアフリーなのか大は小を兼ねる精神なのかやたらと巨大な門があり、物珍しさから一歩止まればそこに見知った幼馴染がいた。
「同じクラスみたいだね?」
「だな、担任もプロヒーローらしいし、指導しやすいタイプか制圧しやすいヤツでも集めたのかね」
ドアを開けた先に居る、既に座っているクラスメート達を眺めてそう言った。
ホームルーム担当なだけの一般高校の担任とは違い、ヒーロー科の担任の生徒への影響は大きい。高校からヒーロー科に入り勉強する者にとっては一生頭が上がらない恩師にもなるという。
だから雄英高校も担任の個性と戦闘スタイルが、生徒の個性に合うか考慮してクラス分けするだろう。いかに十人十色どころではない個性といえど、類似しているものはあるし、大まかな分類は可能なのだ(それでも大雑把な区分がせいぜいだが)
さらに個性暴走を想定して鎮圧できるかもあるだろうが、此処雄英にはイレイザーヘッドという、ヒーロー業界のジョーカーがいるから問題はない。
「おはよう、俺は私立聡明中学出身、飯田天哉だ」
試験で見た覚えのある真面目そうな少年。
確か聡明はエリート私立だったか?
「ああ、君か覚えているよ! あの零ポイントヴィランを撃退したタンクトップの」
まあタンクトッパーですから(誇らしげ)
「君の言葉、胸に染みたよ。
苦難に立ち向かうモノ、それがタンクトップ
だなんてさ」
((((ナニソレ?))))
飯田君の言葉にクラスメートが同時に疑問を抱く。
「だから、ボ、いや俺もタンクトップを着ようとしたんだ、なぜか両親に止められたが」
(((いやタンクトップくらい許可いらんだろ)))
「タンクトップは凄いのにな!」
「フンっ」
新たな同士の誕生に喜びを感じて震えていたら、突然爆豪君が飯田君の腹部に正拳を叩き込んだ。見事に入った一撃は飯田君の意識を刈り取る。
「いや何してんのお前っ!」
流れるように行われた暴力に髪を染めたトンガリ頭君が反応するが、
「治療。おいそこのデカイたらこ唇」
「あ、俺か?まあ合ってるけど砂藤な」
「そか悪い、砂藤こいつ支えてくれ」
言葉には反応せず、近くにいた年齢の割には大柄な砂藤君に、飯田君の体を両脇の下に手を入れぶら下げるように支えてもらいだす。
「あとは、」
「う、うう」
ぱん、と飯田君の意識を叩き起こし、その顔の前で
右手で光がでる程度の爆発をチカ、チカ、とパターンがあるかのように爆ぜさせる。
「お前はタンクトップに影響されてないお前はタンクトップの謎理論に目覚めてないお前はタンクトップを衣服以外に認識していないお前はタンクトップを凄いと思っていないお前はタンクトップを〜」
「何してんのお前?」
右手を光らせながら飯田君の耳元で、かなり聞き捨てならないことをエンドレスリピートする爆豪君。
支えている砂藤君の当然の疑問を口にする 。
「治療」
(((洗脳では?)))
「タンクトップに染まり切る前に即対処しねえと」
(((だからタンクトップに染まるとかナニ?)))
「じゃねえと、身近にいる年がら年中タンクトップと叫びながら謎理論で常識をブチ壊すストレスの種みたいなヤツになりかねん、こいつ真面目そうだが単純みたいだし」
「そんな人、爆豪君の身近にいたっけ?」
いたら友達になれそうだ。
「お前だよ」
そんな一騒動も終わり、意識を覚醒した飯田君は常人レベルまでタンクトップ力が下がってしまった。彼は適正高いのに残念なことだ。
爆豪君は席につき、先程話しかけてきたトンガリ君、切島君に再度声をかけられていた。なんでも入試会場が同じでその活躍を見ていたらしい。
僕は僕で、遅れてきた会場で同じだった麗日さんと話している。他の人達も入試会場つながりの会話が多いのでインパクトある実技試験はこれも狙っていたのかも知れない。
なお、推薦組で共通する話題のない百さんが、チラッチラッとこちらを伺っている。昔超合金クロビカリさんの仕事に付き添いで知り合い(同年代がいたほうが助かるから頼まれた)以来連絡を取り合う彼女と同じクラスになるとは。
ちなみに女の子と会話しても照れたりはしない、事務所にはタンクトップガールにタンクトップラヴァーもいるし、クロビカリさんのイベントでも女性が多くて慣れているのだ。
「お友達ごっこしたいなら他所へ行け」
廊下で寝袋に入り寝転がっている不審者。いやさっきまでいませんでしたよねイレイザーヘッド。
「ここはヒーロー科だぞ」
取り出したゼリー食を啜り、芋虫みたいに立ち上がるとヌーと寝袋から抜け出して。
「ハイ静かになるまで8秒かかりました、時間は有限君達は合理性に欠くね」
学校だとこんな風なのか、マスターと組んでヴィラン掃討する時はもっとマトモなのに。
「担任の相澤消太だよろしくね、早速だが体操服着てグラウンドに出ろ」
机の横の紙袋はソレですね。
僕はなぜ母が入学式に参列する準備をしてなかったのかその理由を悟った、事前通達はしていたのだろう。
「「個性把握テスト!?」」
入学式とガイダンスはしないで即開始、イレイザーヘッドらしいなとは思う。
悠長な行事に出る時間はないと言うが、体育祭がかつてのオリンピック扱いであり、偉大なヒーローには雄英高校が絶対条件とすら言われる此処は世間の注目が高くテレビ中継もされてる筈なんだけど?
実際眼の前の体育館にはガヤガヤと人の気配するし、
「どこだ、焦凍ーーー!!」
ナンバー2ヒーローの叫びも聞こえますけど?
「雄英は自由な校風が売り文句、そしてそれは先生側もまた然り」
クラスメートの一人が無表情から苛ついた表情になっているのも無視して、相澤先生は説明する。
個性禁止の体力テストを個性を用いてやれと。
個性禁止と個性使用時においての差異、また経験あるテストにおいての個性の使用を確認する。
爆豪君の爆風に乗せたソフトボール投げの記録は、個性禁止では考えられないものだった。
「まず自分の最大限を知る、それがヒーローの素地を形成する合理的手段」
比較しやすい記録だからこそ分かる、個性の上げ幅。
それこそ成長において一番重要なこと。
面白そうだとはしゃぐクラスメートを見ながら、このテストの重要性を考える。
だが、その面白そうと言う発言は、相澤先生のナニかを反応させた。
「面白そうか、ヒーローになるための三年間そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?
よしトータル成績最下位の者は見込み無しと判断し、除籍処分としよう」
相澤先生の雰囲気とともに空気が変わり、一年A組はいきなりどでかい受難を与えられた。
「生徒の如何は、先生の自由
ようこそこれが雄英高校ヒーロー科だ」
入学初日の大試練。
「あ、緑谷はタンクトップ脱いでやれよ、身体能力増強は個性のみな」
タンクトップのせいで正確なデータ取れないんだよ、と無情な一言。
「死にますよ僕!!」
僕は生き残ることができるのか!!
(((いや死なんだろ、というかタンクトップってナニ?!)))