なんやかんやラブコメあったり切島君が進化したり上鳴君がウェイしか言えない体になったりしつつも時計の針は進む。
耳郎さんが曲を完成させたらあとは練習しつつも演出を加えていく形だ。参考資料を経営科が揃えてくれたので演出の幅が広がっていく感じだ。
経営科のサポートは予想以上に至れり尽くせりで、芦戸さんが衣装案を出したらその場で費用に用意する時間まで算出してくれる。それに割り振られた予算を自分達の工夫や個性の応用で節約するのを考えるのもまた面白かった。だから百さん愛情弁当あれば個性で機材や衣装を創れますって言われても。確かに君が全て創ったら予算も道具も浮くけどね、それも節約だけどねっ!!
文化祭一月前で学校全体が準備一色の中、その慌ただしさの中の平穏を僕は堪能していた。
「それで君はなにを悩んでるの勝己?」
耳郎ちゃんラブソングインパクトは未遂に終わったでしょうが。
バンド班の上鳴君の意思疎通問題もメリッサの創った翻訳機で解決したよね?
校舎の端の非常階段に腰掛けて頭を抱えている幼馴染に僕はそう尋ねた。
まあ彼が悩むのは大抵女性関係だけど。
「エンデヴァーに仕事を頼まれてな」
インターン先から個別依頼か、まさにプロヒーローの第一歩を踏み出しているね。
「文化祭のいずれかに雄英高校で冬美さんの警護をしてほしいとのことだ」
「外堀にコンクリ流し込んでるね暫定ナンバーワンヒーロー」
いや数日がかりの文化祭で日に一度のライブやったら後は自由時間だからエスコートデートをする余裕はあるけどね。元々彼女持ちの為に時間を作ろうってノリだったし。
「あとB組の拳藤がミスコンに出場するから是非来てほしいって」
A組との接点増やすため共同企画とかしようとしてたしB組の一部生徒達が。まあタンクトップパレードの手腕と劇をやりたがる勢が押し切ったみたいだけど。
「というかA組の女子はミスコンに誘われなかったのかな?」
ウチの娘達も素敵だよね?
「八百万とかは断ったんだよ、そういった姿はお前だけに見せたいって。あとサポート科のシールド女史も」
「最近の男子生徒達の殺意こもった視線はそれが原因かあ」
襲撃こそまだないけどそれも時間の問題かな?
「俺はどうしたらいいんだ?」
「というかクラスのみんな(途中で個別デートに移行作戦)とも文化祭回る予定だよね?」
「ちょっとタイムマシン探してくる」
勝己よ、覗き込んだその木の穴はポクテの巣でタイムマシンの穴じゃないから。
あまりに厳しいタイムスケジュールに現実逃避する気持ちはわかるけど、タイムマシンで同時に同じ時間に存在するのは絶対に問題起こるからね。
「さらに初対面の女子生徒にも一緒に周らないかと誘われてるから大変だよね」
中学時代もよくあったよね懐かしい。
「お前はなんでそんなサクサク断れるんだよ?」
むしろ断ることを相手の気持ちをないがしろにしてると気に病む方が間違ってるよ。
向こうにしてもダメで元々でしょうに。いや勇気を振り絞ったのは事実だろうけどさ。
日頃から自らの夢を優先すると公言しているくせに、この幼馴染は繊細で人情家だ。自分が振ることで流れる涙をいつも気にしている。
「誘ってきた相手の顔を思い浮かべてさ、本当にその娘の泣き顔が見たくない。そんなふうに思える相手を君は優先するべきなんだよ」
僕の場合は、メリッサに百さんに麗日さんに葉隠さんだから困るよ。我ながら優柔不断で多情なヤツだ。
そんな自分のことを踏まえてのガチ目な助言に対して幼馴染はまるで敵を見つけたような目を向けて、
「正体を現せ渡我被身子、そんな演技に騙されるような付き合いじゃねえんだよ」
偽物と断定するように言いやがった。
「これは普通に怒ってよいよね?」
オイ幼馴染。
日頃の行いは自覚してるがふざけんな。
あと誘拐された時に、絶対ヤ、って言われたから彼女は僕の血を飲まないよ。