タンクトッパーイズク   作:規律式足

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第103話

 

 そして文化祭当日。

 ヴィラン連合襲撃に神野事件を乗り越え行われる学校全体一丸となる大イベント。

 教師陣が全てを用意する体育祭とは違う、生徒達が作り上げる祭典。

 楽しみを笑顔を感動を興奮を輝きを思い出を成果を結果を功績を、皆で生み出し作り上げる。

 笑顔を生み出すヒーローらしい行事だ。

 

 そんな文化祭が開始した中、僕はまた一人で校内をぶらついていた。

 発表までの自由時間、緊張しているメンバーはギリギリまで練習しているけど僕は他の出し物への興味が勝りこうして見て回っている。

 皆に飲み物とか買っていこうか?

 ついキワモノドリンクを探してしまうがここは無難なものをチョイスすべきだね。

 途中に外部業者である屋台の一つにお面屋さんがあったので遠回しに見てみた。

 お面屋さんなのになぜなズラリとペストマスクや仮面が並んでいたけど(そして店員さんも疲れた目をしていた)中々お客は入っているようだ。

 常闇君もフラリと訪れて気に入ったのかペストマスクなどを全種類購入していた。

 何してんだろう彼。というか嘴だからペストマスクがただのマスクだね。

 仮面の全種類購入に驚愕する店員さんだけど彼の衝撃はまだ続く。 

 スーツに銀縁眼鏡といういかにもサラリーマンな格好の男性がオールマイトのお面をまとめて4つ購入したからだ。いくら雄英高校で発売された記念品だとしても買いすぎじゃないかな?もしやどこぞの特撮のクライマックスフォームみたいにお面を身に纏うのかなサー・ナイトアイ。

 保存用とかの可能性もあるけど。

 タンクトップだったら僕もやるし。

 初日のしかも開始直後に濃いお客にぶち当たり、お面屋さんは早くもグロッキー状態だ。

 僕は元気つけるためにそっとタンクトップを渡してその場を去った。

 

「なんでタンクトップっ?!

 どうしてタンクトップっ?!

 さっきのお客といい、雄英高校って怖っ?!」

 

 

 ミスコンは最終日だからとりあえずサポート科に行くかなと向かっていたら、キョロキョロと何かを探しているようなミリオ先輩がいた。

 

「どうしたんです?サー・ナイトアイならさっきそこで見ましたよ」

 

「あ、緑谷君。探しているのはサーじゃなくて環なんだ?」

 

 こちらの声に気づいたミリオ先輩はそう返した。

  

「天喰先輩?買い出しか何かですか?」

 

 遅れるとか(小心だから)なさそうな人だけど。

 

「そうなんだ、今予選の最終調整中なんだけど。化粧品の足りなくなったヤツをね」

 

「必要に見えないですけどね波動先輩」

 

 お肌ツヤツヤだよね?

 

「男には分からない世界だからソコ。

 ましてや化粧品の違いなんて全然」

 

「それで天喰先輩が買い出しですか」

 

「不測の事態用の予備だけど、帰りが遅くてね」

 

 天喰先輩をどうこうできる人なんてそういないだろうから、途中でヒーロー活動でもしてるのかな?オールマイトみたいに。  

 

「携帯にでないなら校内放送借ります?」

 

 確か迷子呼び出しサービスあったよね?

 

「それやったら環が恥ずか死ぬって」

 

 在校生でビッグ3なヒーロー候補生が迷子で呼び出しとか語り継がれる赤っ恥な伝説になりそう。

 眼の前の体育祭での脱衣マンもある意味伝説だし。

 

「とりあえず校門で聞きます?警備のヒーローが何人かいる筈ですから」

 

 内部パトロールは先生方だけど、出入口は外部ヒーローにも依頼しているんだよね?

 

「そうするか、どうしたんだろ環?」

 

 そんな風に二人悩んでいたら、

 

「←←←うああああああっ!!←←←←」

 

 と凄まじい勢いで人混みを掻き分けて走る天喰先輩を発見した。

 この人混みでぶつからずに走り抜ける機動性、やはりヒーローとしての技量がとんでもないなあの人。

 最近は減ったけど、野次馬とかを掻き分けて現場に急行する移動能力はヒーローには必須だから。

 

「おーいっ?!何してんだ環ーっ?!」

 

 ぶつからなくても危ないから緊急時以外は避けるべきなんだけどどうしたんだろ、買い出しに遅れたから急いでいるのかな?

 ミリオ先輩の呼びかけにも反応せずにそのまま天喰先輩は駆け抜けてしまった。そういえば足に蹄ついてたけど個性を発動する事態?日頃から個性を使う人じゃないし。ミリオ先輩と頭の上に?マークを浮かべて首を傾げていると、

 

「「環様〜〜〜♡♡♡!!←←←←」」

 

 馬の脚で全力疾走している天喰先輩に劣らぬ速度で元凶が追いかけていた。

 アレって勝己が言ってた梅雨ちゃんの友人の友人である他校の合コン参加者だっけ?

 一般公開してるから来るのはおかしくないけど、話で聞くより異形系なんだね。

 っていうか鯛とカタツムリなのに早いな。

 眼の前を通ったと思ったらもうあんなトコに。

 とりあえず見つかりましたねと彼らの進行先を指差したら、ミリオ先輩は髪をかき上げ、両手を頭上で交差し、右掌を顔にあてながら(どこぞのイケメンヒーローが鏡の前でやったアレ)

 

「なんだ ただの ラブコメか」

 

 とポーズを決めていた。

 

「ユーモア溢れる切り返しですね」

 

 流石サー・ナイトアイの直弟子。

 コメディなのは否定しないけどラブはどうだろ?

 

「親友のアヴァンチュールを邪魔したくないから俺は戻るね。人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて地獄に落ちろと言うし」

 

 確かに今の天喰先輩は馬の脚だけど蹴らないと思うなー。

 

「じゃあね☆」

 

 爽やかに手を上げてから個性を使い逃げ去るミリオ先輩。スタイリッシュに親友を見捨てたなあの人。気持ちはわかるけど。

 助ようにも全力疾走している天喰先輩一行はもう視界の端にすら映ってないので僕は予定どおりにサポート科に向かった。

 

 壮観だね。

 完成したサポート科の作品群。

 ロボにしか見えないパワードスーツから防具類に追跡プログラムなどのデータ類。

 未だ荒削りなれど、学生が自身で作り上げたとなれば将来を見定めるに足る。

 一部生徒に至っては本職に劣らない作品だからなおさらだね。

 発目さんも無事に完成したみたいだけど、警備ロボかなアレ?パワードスーツだとしたら個性使用できないような?

 ちなみにメリッサの創ったメカミドリヤ君は僕を認識したら一瞬目を赤く輝かせてバトルモードになりかけたんだけど、お互いのタンクトップを確認してタンクトッパーだからナカーマと仲良く肩を組んだ。

 なおメカミドリヤ君の装備として黒鞭の個性を模したサポートアイテムを付けたから複数の個性持ちだと判明しにくくなるよとメリッサに耳打ちされた。父親であるデヴィットシールド博士と共にワンフォーオールの詳細を知った彼女なりのサポートと気遣いに僕は胸が暖かくなった。彼女にそれだけ想われている事実が嬉しくも誇らしい。

 けどねメカミドリヤ君よ、パピーとマミー呼びは止めなさい。

 シールド博士の娘でありIアイランドで研究室を構えていた彼女は今回の注目株で多忙なため文化祭中に一緒に回る約束をして別れた。そろそろ戻らないとだし。

 

 そして何気に気になっていたサポート科のイベントであるカップル本心チェッカーを見れば、そこには地獄が広がっていた。

 いの一番にサポート科三年で評判の鴛鴦カップルが参加したのだが、

 

「容姿と雄英高校生である以外価値の無い女」

 

「実家がサポートアイテム会社だから付き合っているだけの男」

 

 と開けてはならない本心を暴露された。

 もっとも両者は笑顔のまま知ってたしと何事もなく手を繋いで歩いていったのだが、その様にその場に居た誰もが恐怖したという。

 その後も似たような惨劇7割、微笑ましいカップル2割、その他1割とイベントとしてはもの凄く盛り上がっていた。

   

 雄英高校文化祭はまだ始まったばかりだ。

 

 

  

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