タンクトッパーイズク   作:規律式足

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第11話

 

 タンクトップ。

 それは僕緑谷出久にとって、力の象徴であり、心の拠り所であり、魂の片割れであり、命そのものであり、鍛錬を共にした相棒であり、自らを示す証であり、能力を制御する要であり、仲間との絆であり、体の一部であり、未来を指す羅針盤であり、現代を記す日記であり、過去を思い返す記憶であり、吉兆を占う祭具であり、力を増す増幅器であり、絶対の防具であり、至高の武器であり、成長促す鍛錬着であり、自らを縛る拘束着であり、温もり与える光であり、冷たさ与える闇であり、離れ難き友であり、明日へと飛び出す翼であり、一歩踏み出す足であり、苦難を受け止める体であり、叡智授ける頭であり、希望掴み取る腕であり、己の全てである。

 四歳のあの時より、常に共にあった存在。

 それを脱ぐなど、生皮剥がす程の激痛をもたらし、全裸になった時のような羞恥心を与えた。

 つまり今の僕は、

 

「死にそう」

 

「まだ生きてんだから大丈夫だろ」

 

 ふふ重力ってこんなに重かったっけ、空気ってこんなに取り入れにくかったっけ、

 

 体が重い。

 

「それでエンジンついた速さ自慢を超えてんだろ」

 

 力が入らない。

 

「握力計握り潰すなや」

 

 体が鉛のようだ。

 

「葡萄頭の絶望顔が目に入らないのか」

 

 腕が上がらない。

 

「∞と俺の記録の次にボール飛んだだろうが」

 

 体力が尽きる。

 

「原付きと並行して走れる奴のどこがだ」

 

「「「お前もだよ!!」」」

 

「お前だとう!!」

 

「「「そこでキレるとか面倒くさい奴か!!」」」

 

 僕の(緑谷出久)体力テスト記録二位。

 ワンフォーオール常時発動20%を維持プラス幼少時からの肉体鍛錬の成果は、タンクトップ無しでもクラスメートを圧倒する記録を叩き出した。

 ワンフォーオールに宿る先代達の励ましが無ければ、個性の制御は厳しかったかも知れない。

 オールマイトは知らなかったワンフォーオールの特性であるが、実力ある先達から常に助言を貰え、相談できるというのは、複数の個性の使用や圧倒的肉体強化以上のメリットではないだろうか?

 その分、その力を無しにオールフォーワンを打倒し、平和の象徴へと至ったオールマイトの偉大さが理解できるというものなのだが。

 ちなみに一位は爆豪君。

 元々尋常じゃない才能があって、本人の性格ゆえの負けん気の高さ、僕に勝とうという努力、そして去年一年のスイリューさん(爆豪君並かそれ以上の天才)との一対一の鍛錬。

 結果、僕を超えて一位だ。

 

「タンクトップ着てねえテメェより上なんて意味ねえよ、翼をもがれた鳥に勝てて嬉しいわけあるか」

 

(((だからタンクトップって何なんだ?!)))

 

「ちなみに除籍はウソな」

 

 表示されてた順位の一覧を消しながら相澤先生はそう言った。絶望の表情で打ちひしがれていた葡萄頭の峰田君はその言葉に涙を流しながら頭をあげた。

 

「君等の最大限を引き出す合理的虚偽」

 

 天下の雄英高校受かったんだから、そこがゴールだと勘違いしてしまう者もいる。実際今まで勉強漬けの生活をおくっていて成果がでたら浮かれるのは当たり前のことだ。

 だがヒーロー科はそれではいけない、施設や実習によってはそれで命を落としかねない危険だってある(巨大ロボとの戦いも本来は命懸け)

 だからこそ除籍という冷水をぶっかけて教えたのだろう。

 ここはゴールじゃない、ここはスタートだと。

 命懸けの道を走り出すスタートなのだと。

 百さんが横でウソに決まってじゃないと言っているが死んでしまうかも知れない、浮かれている者を置いておくような人では相澤先生はないのだ。

 しかし、

 

「やはり最高峰、クラスメートの実力は申し分ない。皆がタンクトップを着たらどれだけ高みにいけるか楽しみだね」

 

「何ヤバイこと言ってんだお前、それといつ着たタンクトップ」

 

 失われていたタンクトップ力が全身に漲り、体に活力が溢れる。

 やはりこれがないと生きていけないな僕は。

 

 

「無個性ヒーロータンクトップマスターの直弟子!」

 

 学校も終わり放課後の教室、僕らは自己紹介も兼ねて一部生徒を除いて集まっていた。帰宅まで時間の余裕はあるのだが、ファミレスなどに寄るには人数が多いためだ。

 

「無個性ヒーローか、確か都市伝説の類という話じゃないのか?」

 

 黒影の個性持つ常闇君は、一部の人の認識を告げる。

 そう思われているのも事実なのだ、何せ実際ヒーロー活動しているのはタンクトップマスターだけだし。

 無個性がヒーローをできないという常識。

 さらにはマスターがタンクトッパーとして有名なため無個性ヒーローという名称があまり使われないのだ。

 

「そうよね、あれだけのことが出来る人達が無個性なんて信じられないわ」

 

 カエルの個性である梅雨ちゃんは言う、彼女は昔番犬マンの映像を見たことがあるらしく、アレが無個性とは思えないらしい。番犬マンはマスター達から見ても逸脱した存在だから仕方ないと思う。

 

「事実だよ、とはいえ本人達もアピールしたいことではないらしいし、どうでもいいみたい」

 

 良く言われる無個性擁護とかのために作った制度ではない。どうにかヒーローの枠組みに押し込まないといけない人達が揃って無個性だったから、無個性ヒーローという形を作らざる得なかったとのこと。本人達が個性があると偽証してくれた方がラクだったらしいけど、嘘つくのを嫌がったとか、マスターなんか無個性で有名だったし。

 

「んなことはどうでもいいんだよぉ」

 

 なんだこのまるで地獄の底から響いてくるような声と殺意は、あの小柄な体躯から溢れているぞ。

 

「なんで初日からクラスメート女子と名前呼びなんだチクショーがよう」

 

 ああ百さんのことか。だって友人だしね。

 

「あー私も気になった!どんな関係なの二人とも?」

 

 透明な体を制服で包んだ葉隠さんは、大きな挙動でそう言う。タンクトップアイ(生物の生命力を形として見える)を使えばはっきり見えるけど、かなりの美少女だよね。

 

「えっと出久さんとはパーティで知り合いまして、その時から親しくさせて頂いてます」

 

 クロビカリさんに頼まれた件だね、あの人なぜか一部お金持ちに大人気だから、護衛の名目でよくパーティに招かれるんだよね、実際に無敵かってくらい強いけど。

 あと百さん、顔赤らめてチラチラこちら見るのはおよしなさい。周りが勘違いしてしまうでしょ。

 

「こんなタンクトップ馬鹿が気にいるとか悪趣味な女って本当に多いよな」

 

 中学でも多かったと男子達のヘイトを僕に寄せる発言の爆豪君。なぜかギクリと麗日さんは反応するし、峰田君なんかもう血涙だよ。

 

「悪趣味て、タンクトップガールが初恋相手の爆豪君がそれ言うの?」

 

 まあ仕方ないよね美人でカッコイイお姉さんだし、オトコのコなら憧れるよね。本人はマスターに夢中で即失恋してたけど(愉悦)

 

「だからテメェは人の古傷を抉るんじゃねえ!」

 

「君が先に悪趣味言ったんだろ!」

 

 タンクトップは素晴らしいだろうが!!

 

 そうして時間がくるまで僕らは話した、取っ組み合いになりそうなやり取りを皆で繰り広げた。

 楽しいと心から思い笑った。

 

「「「それでなんでタンクトップ着ると強くなれるの?」」」

 

「タンクトップ着たら強くなれて当たり前でしょ」

 

「お前らだけだよ」

 

 

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