「コレ個人に向けていいもんじゃないでしょ」
現存する兵器で最強じゃないかな?
「何もかもお前のせいだろうが」
冷や汗をかきながらをこぼす弱音に空中で飛び跳ねながら避け続ける勝己は呆れたように返す。
巨大な相手との戦いは慣れている。
巨大化の個性持ちは意外と多く、分かりやすい強個性であるためヴィランになりやすい傾向にある(重機代わりをするには免許や技能や申請が面倒とか)、武闘家もゴウケツさんの鬼神化やバクザンさんの悪鬼化みたいな巨体化する人も多い。それに8歳から流水岩砕拳を学んできた僕には対戦相手が大きいのが当たり前だった。だから大きな相手との戦いはそう難しいものではない。
けれど破壊男爵。
ビルサイズの巨体に高硬度な装甲、重量を感じさせない機動性に複数の個性。これ戦闘力だけならオールフォーワンの上位互換じゃないかな?
そんなレベルの相手だ。
さらに、
『粉砕巨拳 ピーキーガリバーッ!!』
拳藤さんの個性か、いや小大さんか?
破壊男爵本体よりも巨大化した右拳を勢いよく振り抜かれる。回避するには距離が足りない、ならば押し返すっ!!
「ワンフォーオール百パーセント+発勁+タンクトップ力全開、タンクトップ発勁っ!!」
巨大仮想敵なら消し飛ぶ最大威力の一撃も、破壊男爵の右拳を弾くので精一杯。
「爆流鳳昇拳っ!!」
勝己の必殺技は距離があっても高火力の遠距離攻撃として通じる。
いかに特殊合金であっても直撃すればダメージはあるだろう。
『響音防壁 サウンドディフェンダーっ!!』
だが爆炎の鳳が鋼の機神に襲いかかるも、体の各部のスピーカーから放たれる音波が受け止め消し飛ばす。
耳郎さんに円場君に宍田君の咆哮もかな?
勝己の遠距離での最強技もまた通じない。
重複発動する個性をサポートアイテムの機構で増大して巨体が振るう、勝ち目が見えないねコレ。というか個人で勝てる人って、ヒーローなら無個性ヒーロー達にエンデヴァーとブサイク大総統、武闘家ならゴウケツさんくらいじゃないかな?ヴィランでも二、三人いるかどうかでしょ(なお全裸大帝がいたら起動できない)。
「ヤッバイね」
「マント捌きも中々だな、直接殴ろうにも近寄る前に吹き飛ばされる」
ミリオ先輩が愛用しているようにマントは防具として優秀、火縄銃くらいなら濡れた布で防げるし、硬い装甲よりも衝撃を散らしてくる。あのサイズなら荒波のような武器だしね。
『洗脳合唱 ノイズィハーメルン』
そして離れれば広範囲の個性攻撃か、同じスピーカーから今度は攻撃もだよ。心操君と口田君のデュエットもかなりなものだ(そして歌上手いな二人共)。
飛行するため常に衝撃を放つ勝己とタンクトップを纏う僕には関係ないけど、スピーカーで拡大してるだけでヤバいよねこの個性も。
「同時に発動してるがコックピットには限りがある筈だ」
「システムにも限度はあるだろうね」
「とはいえ発目のことだからどんな武装があってもおかしくない上」
「小大さんなら巨大にできる」
下がればジリ貧。
やはり退路は前にしかない、だからこそ。
「敵に向かって撤退だね」
「素直に突撃と言え」
鬼島津かテメェはと勝己は笑う。
「それにまだ通じる技あるでしょ、僕達には」
「アレはしんどいんだけどな」
「タンクトップを着れば解決さ」
「いやお前らだけだ」
「けど」 「やるか」
「「轟気空裂拳」」
I・アイランドにて決めた合体奥義、これなら破壊男爵とて打ち倒せる。あれからしばらくお互いに成長だってしているから威力だって段違いだろうしね。
『させないよ』
そんな甘えた考えを声の主は許さない。
「「なっ?!」」
僕達の間に茨の壁が現れ足場が泥沼のように崩れる、呑まれぬように飛び跳ねるが勝己とは離れ離れになってしまう。
『I・アイランドの新たな英雄、その二人の最強必殺技を使わせるわけないよねえぇぇっ!!』
パレードはそこ(破壊男爵内)に居たんだ。てっきり現場指揮官やっているのかと、言動アレだけど何気に優秀だし。
「ま、破壊男爵ってのもまだ試作。全ての個性に対応できる訳じゃないだろうし外にいる奴等もいるだろうよ」
従来のサポートアイテムの大型化で充分な人もいる上活かし切れない個性もあるからね。
「しかしまあ、大量だな」
勝己が囲まれたか。
『君たちは強い。
その実力は誰もが認め、次代のトップヒーロー確実だと既に世間注目されている。
僕達の世代は君たちという巨大過ぎる壁がそびえ立ってしまっている。
それはいくらなんくせつけようと僕だって否定できない事実で現実だっ!!』
こちらに噛みつき倒しのパレードの叫び。
なんかこう彼にストレートに称賛されると、一周回って怖い。
『だからこそ倒す、どんな手を使っても。
君等に劣っていないと僕達の存在を証明し叫ぶために、死地に飛び込む君たちにおいていかれないためにもねぇっ!!』
物間君。
『もう見飽きたんだよ、君たちの背中はさぁっ!!』
個性にコンプレックスを持ち、雄英高校の負の面とも言われたりする彼の叫び。けどそれは劣等感だけじゃない、俺達も頼ってほしい、頼れる存在なんだと悲鳴をあげてるようにも聞こえた。どうりでA組もすんなり協力しているわけだよ。
「これも出久のとばっちりのような」
勝己、君は唐突に冷静になるよね。
首を傾げながら言ってるよね絶対。
いや勝己は自分から飛び込まないし、ルールを守るからそうだけどさ。
「まあなんだ卑怯とは言わねえよな爆豪」
「切島、鉄哲除いたヒーロー科近接組勢揃いだ」
「ケロ、というか破壊男爵で活かせないメンバーよ」
「拘束タイプ個性の厄介さを知らない訳じゃねえだろう?」
「挑ませてもらうぞ爆豪」
「って破壊男爵が緑谷倒すまでの時間稼ぎだってわすれないでよ」
時間稼ぎが狙いなら逃げの一手もありかな?
飛行に黒鞭を駆使すれば逃げるだけならなんとでもなるし。
「いいねお前ら最高だ」
やらないけど。
「トラウマ超えるために追い続けてきた自分が誰かに追っかけられる。そんな自分に成れたことが誇らしくて嬉しいよ、けどな。
此処で負ける俺は、お前らが追っかける俺じゃねえよな?」
茨で遮られてるのが悔しいね、多分今の僕のライバル超カッコいいだろうな。
「やってみせろよっ!!」
ズダンッ
回原君かな?突っ込んだの、今の勝己には真正面は駄目だって。
「爆裂闘技。サポートアイテムありきな格闘技なんてどうかと思うが俺の新しい手札だ。貯めた爆発液をコスチューム各所から放出して加速する」
BOMッ!!
「シンプルだがかなり強いぜ」
両掌が自由になり、加速による起動力と破壊力を増すのかい。脳無に再生能力がセットなら爆発よりもよい手段だね。
「さあ、全員まとめてかかってこいっ!!」
「負けてらんないね」
勝己が気張るなら僕だってやらないと。
正直厳しいけどね。
『ついに観念しましたかタンクトッパーっ!!』
『ハハハ、今こそタンクトッパーによる全部乗せの怨みを晴らす時だぁっ!!』
『『『結局私怨かよ』』』
「逃げるのやめるっていうかさ、大地踏みしめた方が威力でるんだ」
タックルはね。
マスター、オールマイト、見ていてください。
これが今の僕最大威力、掛け値なし全力の、
「タンクトップタックルっ!!」
水滴とて石を穿つ、力の一点集中の前に装甲の重ねがけとて無意味だ。
『知ってましたよ』
それとて彼女達は想定済。
必ず勝てると確信したからこそ、今日この日の戦いを始めたのだ。
『小大さん、今ですっ!!』
『大』
『出なよ切り札ぁっ!! ソードサムライXっ!!』
刀?いやいくら鋭くとも刃筋をたててない状態で受け止めても、盾ならともかく薄い(比較対象的に)刀身では防げずにへし折れるだけだろうに。
ガインンっ!!
だが直撃した時に感じた違和感、これはへし折るどころかまるで砂に突っ込んだように力が逃げるっ!!
『新作ベイビー ソードサムライX
衝撃吸収装甲開発の副産物ですが、刀身から衝撃を吸収して下緖から放出する。無駄に刀として切れ味よいからサポートアイテムとしては落第ですが、いかなハイパワーとて受けとめることが可能ですっ!!』
しまった、力を込めた分だけ無防備に。
『『今です(だ)っ!! 皆っ!!』』
『黒影』 『ネビルレーザー』 『キノコ』 『コミック』 『鱗』
同時に襲いかかる巨大化した放出タイプ個性。
そして、
『いくよ轟君』 『分かった物間』
『轟君の個性をコピーして、彼が全力で炎を放つよう冷気でサポートする。USJで君たちが脳無にやったことだろう?お互いの百パーセントを出し切る連携はねぇっ!!』
『『極大業火 ブレイズオブグローリーっ!!』』
君は自分の個性を卑下するけどさ物間君。君の力は誰かに寄り添える凄い力だと僕は思うよ。
シャレにならないけどね。
『ガンザックオープンっ!!』
『ナックルガードセットっ!!』
バックパックで推進力を増して、手甲を装着して破壊力を増す、破壊男爵最強の一撃。
『タンクトッパーよ、塵へと還れっ!!』
なるわ(必死)。
「アレ出久死ぬんじゃね?(冷や汗) やり過ぎだろ怪獣相手にしてんじゃないんだからよ」
「「「うん、確かに」」」
「どうすんですか校長?」
「正に完全勝利なり!! ………どうしよう」
『アーメン、安らかに眠ってくださいタンクトッパーよ』
「勝手に殺さないでくれる?いやガチで死ぬとこだったけどね」
バスターバロンの組まれた両掌の手甲にヒビを入れながら立ち、僕は告げる。
『『『『?!』』』』
「「「「?!」」」」
「僕の切り札だよ(二代目の個性会得できといて良かった、まだ負担大きいから使いたくなかったけど)」
けれど今度こそ本当にお終いだよ。
『総員退避ィー?!』
「ギアアップオーバードライブ 120%タンクトップパンチ」
対オールフォーワン用切り札の個性である『変速』を用いた最強の一発。
それは一撃で破壊男爵すらも粉砕した。
そして僕は伏せて置きたかった奥の手を使わせる程に強くなった仲間達に僕は敬意を抱いたのだった。
「次は負けませんよ、タンクトッパー」
砕けた破壊男爵から飛び散る皆を回収し、抱きかかえることになった発目さんにそう告げられた。
「次も負けないさ」
とはいってもしばらく再戦は勘弁だけどね。
変速での肉体の酷使は鍛え抜いた体とタンクトップを着ていても負担が大きい。
かなりしんどいね。
黒鞭で掴み、飛行で移動しながら下りる。
勝己は無事勝利してこちらを見上げていた。
皆強くなった、これからも強くなる。
こうして僕らはヒーローへの道を進んでいくんだ。
補足説明
破壊男爵(バスターバロン)
元ネタはジャンプ作品である武装錬金の一つ。まんま巨大ロボットで他の人の武装錬金を本体のサイズに合わせて使える。
他作品の主人公の個性に使いたかったけど、使い道が限られ過ぎたため断念してたのを採用。
技名について
他の武装錬金の名前を採用、それぞれ右手甲、鉄鞭、焼夷弾の武装錬金。一つはオリジナル。
四文字熟語的なヤツは、個人的に好きだし、説明にも良い感じになっていた。
ソードサムライX
これも日本刀の武装錬金、能力はまんま。