タンクトッパーイズク   作:規律式足

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第15話

 

「タンクトップって何なんだー!!」

 

 コミュニケーション失敗。

 やはり人と人がわかりあえるのは難しいものだ。

 三代目以降の個性は使えるようになったが、やはりオールフォーワンとの関与がないと駄目か。

 緊急時の使用は許してくれたから良しとしよう。

 万が一に備えて保険は用意したが、使わないと良いけど。

 漠然とした不安だけでは過ぎた保険だしね。

 理由を聞かない頼める人はあの人だけだし。

 

(何事もなければ良いが)

 

 タンクトップの引き締まりが、気を緩めるなと僕に告げていた。

 

 

 

「今日のヒーロー基礎学は人命救助訓練だ」

 

 ヒーローの本分とされる重要な仕事。

 これが出来るかどうかがヒーローの評価に直結している。ヒーローを只の戦闘屋にしない大切な要素だ。

 教員は3人体制で、コスチュームは自由。

 場所は敷地内とはいえバスが必要な程離れた施設。

 バスの移動に委員長として飯田君が仕切るが、やや空振りしたみたいだね。

 

 バス内で個性についての雑談はあったが、のる気にはなれずぼんやりとした。

 不安は増すばかりだ。

 

「どうしたの緑谷ちゃん?」 

 

 だからクラスメート達が心配するのも仕方ないことなのだろう。

 

「大丈夫だよ」

 

 本当にそうだろうか、と悩みながら誤魔化すが。そんな僕の様子を爆豪君はじっと見ていた。

 

 あらゆる事故や災害を想定した演習場、名前に関してはツッコまない。

 担当するのは、災害救助で目覚ましい活躍をして麗日さんの大好きなヒーロー『13号』

 オールマイトも参加する予定がヒーロー活動で活動制限時間をギリギリにしたらしい。

 オールマイト不在で始める前に、13号先生から小言を兼ねた、個性使用についての説明。

 力のあり方を生徒に伝えた。

 

『鍛えた力は誰かのために使うべきだと俺は思う』

 

 そうですよね、マスター。

 個性無個性関係無く、誰かのために使ってこそ力だ。

 

「一かたまりになって動くな!!」

 

 奇しくも、

 

「13号!!生徒を守れ」

 

 命を救える訓練時間に僕らの前に現れた。

 

「動くなあれは、敵だ!!」

 

 プロが何と戦っているのか。 

 何と向き合っているのか。

 その途方もない悪意を。

 

 周到に準備された計画。

 目的あっての奇襲。

 用意された人員。

 それを迎えうつ、肉弾戦においてはオールマイトに次ぐ実力者イレイザーヘッド。

 だが、

 

「初めてまして我々はヴィラン連合、

 僭越ながらこの度ヒーローの巣窟雄英高校に入らせて頂いたのは、

 平和の象徴オールマイトに息絶えて頂きたいと思ってのことでして」

 

 オールマイトの命を狙うヴィランは星の数程いる、だがこれほどの準備をし、かつ実行できるのは、

 

(やはり悪意尽きてないかオールフォーワン)

 

 爆豪君、切島君の攻撃も無効化する体に、ワープの個性。オールフォーワンの連想が対処を遅れさせた。

   

「場所は水難エリアか」

 

 落ちた水中で襲いかかるヴィランを蹴散らし、近くにいた梅雨ちゃん達と合流。

 エリア中央の船に乗り込み、状況の把握だ。

 

「猶予はないな」

 

「緑谷ちゃん?」

 

「全員叩き潰して皆を助けだす」

 

 消えないのだ危機感知が、皆の危機が強まるばかり。

 皆もまたヒーロー志望。

 そう簡単にやられはしない。

 けど、オールフォーワンが背後にいる以上それだけではすまないと先代達が告げてくる。

 

「おい緑谷お前強いからって無茶する気じゃないよな?オイラ達まだ学生でプロじゃないんだぞ」

 

 泣きわめいていた峰田君もただならぬ空気となれば自分よりも相手を心配してくる。

 こんないいクラスメート達なんだ。

 死なせるわけにはいかない!

 

「梅雨ちゃん、僕が水中のヴィラン共を仕留めるから峰田君を連れて対岸まで渡って」

 

「そんなことが出来るの?」

 

「タンクトッパーを舐めないでくれ、あんな連中千人いようとものの数じゃない」

 

「オイ緑谷?」

 

 水面に手を当てて、ワンフォーオールの出力20%に武術である発勁とサード個性を合わせる。

 

「タンクトップ発勁」

 

 衝撃の伝播しやすい水中を戦場にしたことを呪えヴィラン共。

 一網打尽にしやすいんだよ水中はな。

 放たれた衝撃波がヴィラン全員に走り、激痛と共にその意識を奪い取る。

 

「石打ち猟にて一丁上がりだ」

 

 現在やってはいけない漁法、石を投げた衝撃で魚を気絶させる漁法。まあ石は投げてないが衝撃だから一緒だろう。

 

「凄いわ緑谷ちゃん」

 

「まじかよこれ」

 

 啞然とする二人だが今はそれどころじゃない。

 

「急ぐよ二人共」

 

 いくつかの危機は弱まっている。だが肝心の相澤先生のいる中央は増すばかりだ。

 

 水難エリアを越えた先、そこには脳みそむき出しの怪人が相澤先生を取り押さえていた。

 握られたその腕をへし折って、

 ざけんなよ、

 ざけんなテメェ!

 全力の拳は、押さえつけていたヴィランを殴り飛ばした。

 

「は?」

 

 全身に掌をつけたヴィランが間抜けな声をあげる。

 想定外なんだろう、今の妙な感触からしてコイツは普通じゃない。

 

「おい待て、コイツは対平和の象徴改人」

  

「うるせえよ」

 

 厄介なのはこのデカイの。あとの連中は相澤先生と保険がくれば万全だ。

 なら全力で、

 

「ぶちのめすぞクズ共」

 

「決めたよ、お前は殺すぜクソガキ」

 

 手男の威圧恐るるに足らん。いやこれは単なる癇癪に過ぎない。

 

「殺せ脳無!!」

 

 轟風を巻き起こす巨漢の拳は一撃で死ぬ。

 当たればな。

 

「流水岩砕拳」

 

 究極の守りの拳たる流水岩砕拳を前に、腕力任せの拳など当たる筈も無し。

 腕の側面に掌あわせ流し、その威力を上乗せし打ち込む。

 戦う相手の力をも使う、それが流水岩砕拳。

 そこにタンクトップの動き易さまで加わるのだ、こんな奴に遅れをとる道理がない。

 両手が閃光の如き軌跡を描き、雑に振るわれる両腕を捌き流し跳ね返す。威力の集中した部位は抉れ生々しい筋肉がむき出しになる。だが、抉った箇所が迫り上がり損傷を埋め修復。

 打ち込んだ打撃の感触もおかしく、まともに通じていないのか?

 

「は、余裕ぶっといて手をこまねいているな。

 そうだ絶望させるために教えてやる」

 

 手男の玩具を自慢するかのような発言それは、

 

「その改人脳無はショック吸収に超再生の2つの個性をもつ、オールマイトの全力にも耐えられるよう改造された超高性能サンドバッグ人間さ」

 

 確かに絶望に足る情報。

 

「お前みたいな格闘馬鹿じゃ百年かかろうと勝てない存在だ」

 

 だが、諦める理由なんかない。

 

「その上、増援も見込めないな」

 

 ドサリと音がすれば、そこには黒いモヤから飯田君が放られていた。

 

「良いのか脳無から目を離して」

 

 腹部に衝撃。

 飯田君に目を向けた瞬間、脳無の拳は僕の腹にめりこんでいた。

 足で踏ん張るが威力を流しきれず、ゴロゴロの地面を転がる。

 動けぬ体、防がれた救援、負傷したヒーロー達に、囲まれたクラスメート達。

 万事休すか。

 保険はまもなくの筈、だがその前に何人か殺られる。

 なら、個性を総動員し、タンクトップマジックで、

 

 BOM!!

 

 爆音が飯田君の側にいた黒いモヤを吹き飛ばし、クラスメート達を囲うヴィラン共は氷漬けになって動きをとめる。

 

「何してる緑谷、立てねえのか?」

 

 あえて挑発するような言い方の幼馴染に苦笑して立ち上がり、

 

「なあに確かに大した一撃だったよ

 タンクトップを着てなければ危なかった」

 

 シワシワなタンクトップをピンと張る。

 

「手を貸してくれ、勝己」

 

「お前」

 

「保険はある、だがその前に

 眼の前のガラクタをぶっ壊す」

 

 爆豪君、いや勝己の横に立ち構える。

 

「頼む勝己」

 

「はっ足引っ張るなよ、出久?」

 

「無論だ!!」

 

 突き出した拳を交差させ踏み出す。

 死の恐怖はない、僕らには相対したそれぞれの師という最強が思い出される。

 あの人に比べたら大したことない。

 経験は恐怖という怯みを打ち消す。

 背後には絶対引けぬ理由もある。

 ならば僕らが負けることはない。

 繰り出される一撃一撃が必殺の脳無の攻撃は全て流水岩砕拳で捌ききり、勝己の冥躰拳が無防備な体に叩き込まれる。

 攻撃と防御を分けきった役割分担は、それぞれの全力を余すことなく出し切る。

 100の防御と100の攻撃、もはや単体で勝れるものではありはしない。

 先程の攻防が閃光ならば、今の動きは激流。

 尽きぬ拳の流れが波となって流し切る。

 

「何をやってやがる脳無!!でかいので決めろ!!」

 

 業を煮やした手男の命令で、脳無は全身の筋肉を集めたように膨れ上がった腕を振りおろそうとするが、

 

「ド素人が余計な口を出すもんじゃねえよ」

 

 そんな分かりやすい一撃を許す僕らではない。

 

「爆裂震虎拳」 

 

 地面に放射状のヒビが入る程踏み込み脳無の胴体に抉りこむように突き上げる。と同時に爆破を発動しその破壊力を大幅に上げる。

 冥躰拳の奥義である冥躰震虎拳に個性を加えた勝己の必殺技だろう。

 衝撃は爆音と共に天井へと突き抜けた。

 ならばこちらも、

 ワンフォーオール100%プラス流水岩砕拳の流水の動きプラスタンクトップ力120%。

 掛け値無しの全力。

 

「タンクトップSMASH!!」

  

 タンクトップの動き易さからなる全力全開のラッシュ。

 勝己の必殺技と僕のラッシュは、ショック吸収では対応しきれず、再生も間に合わせずに打ち込まれ、USJの天井を突き破り施設の外へと叩き出した。

 

(今ので気付くと良いけど)

 

 時間も大分立つ。誤魔化しも限界だろう。

 筋肉の過剰の強化のため両手から血を吹き出しながら僕はもはや残る部下が黒いモヤだけになった手男を見る。

 

「なんだよ、平和の象徴はいないし。

 平和の象徴用の改人はガキ二人なんぞに負けるし。

 あいつ、俺に嘘を教えたのか!?」

 

 やはりこいつは主犯ではなく後ろにいるのはオールフォーワンか。

 

「引き下がれるかよ、クソゲーでも平和の象徴ならともかくこんなガキ共にいいようにされてよ」

 

 ガリガリと掻きむしり、ヒステリックに叫びを上げる手男。だがなぜだろう?先々代がナニカ反応している? 

 

「おい黒霧ィ、他にも脳無連れてこいこのガキ共をぶっ殺す」

 

「しかし死柄木弔」

 

「いいからやれよ!!」

 

「承知しました」

 

 問答の末、ワープゲートから先程の脳無に似た怪人が数体這い出てくる。

 恐怖に震えるクラスメートに、身構えるイレイザーヘッドと13号、動ける轟君と切島君は守るように前面に立つ。

 

「おい、出久やれんのか?手から血でてんぞ」

 

「問題ないよイメチェンさ、まだ余裕」

 

 軽く振って(激痛走るが)大丈夫だとアピール。

 

「そうかい」

 

 勝己はニヤリと笑うと自分もしんどいのに、迫る脳無達へと構える。

 

「それにさ」

 

 瞬間空から黒い物体が落ちてきて、轟音とともに砂塵が舞う。

 

「保険がようやく来たのさ」

 

 僕の知り得る最強の存在。

 

「遅れてすまないな出久君」

 

 オールマイトすら超える巨体。

 筋肉で構築された黒光りする肢体。

 絶対の防御と最強の破壊力を誇る、無敵の生命体。

 

「飛行機のチャーターに手間取った」

 

 人類のバグ。

 無個性ヒーローナンバー①超合金クロビカリ。

 最強の一人がそこにいた。

 

「大丈夫かみんなボロボロじゃないか?」

 

 両手を広げて、襲いかかる怪人達を受け止めると、そのまま後ろを向いて声をかけてくる。

 抵抗する怪人達が音をたてて攻撃しているが、その黒光りする体には傷一つ付かず平然としていた。

 

「なんだアイツなんだアイツ、おい黒霧ィィあのバケモンはなんだぁ!!」

 

「噂の無個性ヒーローですか?なぜここに」

 

 

「疲れた?少し休むといいよ。筋肉には休息が必要だ」

 

 するとまるでいつものジョギングのように走り出すと

体が当たった怪人達はそれだけでひしゃげて吹き飛んでゆく。

 

「どんな筋肉だよ」

 

 誰かの呟きは皆の本心だ。

 マスターも鍛えているがここまではできない。

 

「保険ってあの人か?」

 

「タンクトップが危険だと伝えてたからね、万が一の備えだったけど」

 

 不審な目を向けていたイレイザーヘッドもこれには納得した。

 明確な個性である、未来予知系統すら信じられにくいのだ。タンクトップからなんて信じられるわけがない。

 

「っけんなよバケモン、俺の崩壊なら!!」

 

 見れば手男がクロビカリに触れていたがイレイザーヘッドみたいに崩れることはない。

 

「ふざけんななんで崩れない?!」

 

「何を言ってるんだか、個性が鍛えた生身に敵う訳がないだろう」

 

 呆れたように呟けば、そのまま後ずさる手男を捕まえようとする。

 

「くだらないお遊びはここまでだ」

 

「ふざけんな、黒霧ィィ!!」

 

「む?」

 

 クロビカリが後ろを振り返ったらそこに黒霧はすでにおらず。モヤは手男を包み込んでいた。

 

「今回はゲームオーバーだ、今度は平和の象徴もろとも殺してやるぞ。バケモンにガキ共」

 

「それはムリだな☆」

 

「保護者に頼らずテメェできやがれ」

 

「やらせないタンクトップにかけて」

 

 負け惜しみの悪態に怯みはしない。

 あんな連中に怯まず立ち向かう為のタンクトップなのだから。

 

 雄英高校襲撃事件。

 それは後にヴィラン連合との戦いのそのはじまりとされる事件である。

 この日以降、魔王オールフォーワンとの戦いに終止符がうたれるまで世界は荒れることになる。

 

 そんな日々が来ることをタンクトップで感じながら、クロビカリや無事なクラスメートと共にUSJ内のヴィランを片付け、皆の無事を喜んだ。

 

 

 

 

 

 

 

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