タンクトッパーイズク   作:規律式足

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第17話

 

「出久よ、随分と無理をしたな」

 

 あの襲撃事件後に僕は意識を失ったらしい。

 着替えさせられた入院着が体力を削っているようだ。

 

「マスコミ襲撃事件から個性を使い続けてたな?」

 

 マスターは確信してる様子で尋ねてくる。

 

「はい」

 

 いかにタンクトップが危険を知らせてくれるとはいえ完全ではない、だから僕は4代目継承者の個性である危機察知を使い続けていた。学校にいる間はずっと。

 元々の使い手なら常時発動できるソレも、ワンフォーオールとタンクトップを経由しないと使えない僕には負担だったようだ。緊張のあまり気づかなかったけど。

 

「その力、持ち主であったオールマイトですら把握しきれてはいない、ましてや秘匿すべき個性、お前が周囲に伝えないのは仕方ないと納得できる、だが」

 

 そこでマスターは言葉を切り、辛そうに顔を歪める。

 

「頼られぬヒーローに価値などあるのか?」

 

「マスター」

 

「背負うなとは言わん、それだけの実力と覚悟はお前にある。

 だがお前一人の使命を共に背負うことができない程俺達は脆弱ではない」

 

 マスターの言葉に僕は自らの過ちに直視した。

 

「使命と宿命で視野を狭めるな、己を見失うな出久

 己が着るべきタンクトップはどれなのか、もう一度考えてみろ」

 

 最善と思い上がりを混同していた事実に。

 

 

「おい、出久。クラスメートで見舞いに」

 

「タンクトップが一枚、タンクトップがニ枚、タンクトップが三枚、タンクトップが四枚、タンクトップが」

 

「すいません部屋間違えました」 

 

 自らの着るべきタンクトップを見つめるため、皆から贈られたタンクトップを真剣に数えていたら、なぜかクラスメートからは引かれ、耳郎さんは気絶した。

 なんでも、暗い病室の中で目をランランに光らせて三日月のように口を歪めながら笑っていたらしい。

 タンクトップを数えてたらそうなるよね?

 

 

 

 そんな日々を過ごして早二週間。

 雄英体育祭本番当日を迎えた。 

 

「皆準備は出来てるか!!もうじき入場だ!!」

 

「コスチューム着たかったなー」

 

「全くそのとおりだね」

 

「いや緑谷は一番コスチューム関係ないでしょ」

 

 体育祭前のやり取りも楽しいよね。

 

「緑谷」

 

「轟君、何?」

 

 珍しいな、彼には避けられていると思ったけど。

 

「客観的に見て、お前と爆豪の方が実力は上だと思う」

 

 脳無との戦いからそう見えたのかな?

 轟君の広範囲攻撃は強力でも耐えられない訳ではないし。

 

「お前、無個性ヒーローの弟子でオールマイトに目をかけられてるよな、別にそこ詮索するつもりはねえが、

 おまえには勝つぞ」

 

「おお!クラス最強に宣戦布告!?」

 

「急にケンカ腰でどうした!?直前にやめろって」

 

「仲良しごっこじゃねえんだ、何だって良いだろ」

 

 なるほどね。 

 彼を見てるうっすら分かる、ナニカに囚われるということはこんな風に見えるのか。

 

「轟君が何を思って僕に勝つって言ってんのか。

 正直分からない」

 

 それが何かは知らない。

 けど、見るべきものを彼が見えてないのは分かる。

 この雄英体育祭と、参加する皆のことを。

 見てもいないことが僕には分かる。

 

「けどさ、これだけは分かる。君は着るべきタンクトップを間違えてるよ」

 

「?」 

 

「その事実に気付くんだ」

 

(((シリアス顔だけど意味伝わらねーー!!)))

 

 

 

 そう、ここは夢の舞台。

 かつて立ちたいと願った場所。

 オールマイトにも言われたんだ。

 

「君が来たってことを知らしめて欲しい!!」

 

 って。

 だから、僕も本気で獲りに行く!

 

 

「雄英体育祭!!ヒーローの卵達が我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル!!

 どうせてめーらアレだろコイツラだろ!?

 敵の襲撃受けたに拘わらず鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!!」

 

「失礼な、鋼なんてヤワな代物じゃないタンクトップの精神だ」

 

「お前だけだよ」   

 

「ヒーロー科!!1年!!A組だろうぉぉ!!」

 

 流石はプレゼント・マイク、よい説明だけど。

 他の科の人達、煽られてない? 

 引き立て役みたいな扱いで。

 実際たるいとか言ってる人いるし、

 

「選手宣誓!!」

 

 相変わらず凄い格好な人だな、ミッドナイト先生。

 超合金クロビカリさんには負けるけど。

 今年の一年主審をやるみたい。

 

「18禁ヒーローなのに高校にいていいものか」

 

 常闇君てムッツリかも、反応してるし。

 

「いい」

 

 ミッドナイト先生は、鎮圧むきだしね。

 

「静かにしなさい!!

 選手代表!!1ーA緑谷出久!!」

  

(((大丈夫かな?タンクトッパーなのに)))

 

 そういえば、推薦除いた首席とかから選ばれるんだっけ?事前に話を聞かされてないからどうしよう。

 僕の言いたいこと、僕が世界中に伝えたいこと。

 

(((考えこんでるけど嫌な予感)))

 

 一歩一歩上り考える。 

 この場で僕が伝えたい、その思い。

 そうそれは、

 

「タンクトップとは強さそのもの!!

 その性能を引き出せれば!!

 即ちタンクトップの似合う者になれば!!

 いかなるものにも!!

 個性にもきっと打ち勝つことができる!!

 世界中の人々よタンクトップを着て自分自身を磨こう!!」

 

(((やらかしやがったよ!!あのタンクトッパー!!))) 

 

 クラスメート達と教師陣が頭を抱える中、僕は世界中の人々に伝える。

 弱い自分に新しい世界を見せてくれたその言葉を。

 

 

 

「アッハイ、

 緑谷君マイクテストありがとうございます。

 じゃあ気を取り直して、

 1−A爆豪勝己君、選手宣誓をお願いします」

 

(((無かったことにしてやり直したー!!)))

 

 プレゼント・マイク先生がすかさずフォローして問題なく体育祭は進行した。

 なお勝己は煽ることなく真摯に宣誓して、好評だったみたいです。

 ちなみにやり遂げて満足した僕はクラスメート達からシバかれた。

 僕の宣誓も反響あったみたいだけど。

 

 このように騒動ありながらも雄英体育祭は始まった。

 皆の全てをぶつけあい、研鑽する舞台が。

 

 

 

 

 

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