タンクトッパーイズク   作:規律式足

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注意、コミックス未掲載情報、並びに多大なご都合主義かつ作者のキャラ解釈あります。
今まで以上に原作改変あるのでお読みの前にご注意下さい。


第25話

 

 ナンバー2ヒーローエンデヴァーにおいて、オールマイトに勝てないことは、あるいは納得できていたことなのかも知れない。

 諦めきれず、次代を創りあげてまで超えようとしていてもどこかで勝てないことに納得していたのかもしれない。

 個性目当ての縁談、自分の個性の弱点を埋められる個性の掛け合わせである個性婚。

 相手の借金につけ込んだ、最低な行為。

 向こうの家族を救った事実が罪悪感を軽くしたのもあったのだろう。

 上手くはいっていたのだ、家族として。

 息子がヒーローを目指したのも嬉しかったのだろう。

 彼は誇らしげに息子に力の使い方を教えたのだから。

 長男の個性が、火力は自分を超えても反動も自分以上で命に関わると知るまでは。

 だから個性の使用を禁じた。

 それでも諦めない、火傷をつくり続ける息子を諦めさせるために、成功作ができるまで子供を作った。

 自身の個性の反動を打ち消す、炎と冷気を両立する子供。そんな子がいれば、自らを焼く行為をやめてくれると願って。

 そうして生まれたのが、轟焦凍。

 家族の過程を知らない、向上心と名誉欲の暴君であり家族を虐げるエンデヴァーしか知らない成功作。

 成功作しか見ない父に見てもらうため暴走し、死んだことになった長男の存在により後に引けなくなったエンデヴァーしか知らない末弟。

 

 そんな話を突然訪ねてきた青年に言われた。

 火傷の跡を継ぎ接ぎのようにした容姿のコートを着た青年、轟燈矢に。

 死んだ筈の存在、助かったには理由があるが今は言えないらしい。

 だが彼は生きて、轟君と試合前の僕に話しかけてきた。

 幽霊ではなく生きた人間として。

 話には続きがあった。

 オールマイトに勝てないのは納得できる、彼の積み重ねた功績は、全く同じことをしても覆せない。

 だがエンデヴァーは会ってしまった、最悪に。

 彼にとっての絶望、無個性ヒーロー達に。

 無個性ヒーローは彼にとって評価に値する存在ではなかった、何せ第一号たる超合金クロビカリは権力者のワガママでヒーローにされた存在だからだ。

 だから超合金と謳われる彼の皮膚の耐熱実験の依頼を渋々受けた、くだらないという本音を隠しもしないで。

 しかしそれは失敗だった、彼の鍛え抜かれた筋肉は火力において個性最強であるエンデヴァーのヘルフレイムを全て防ぎきったのだから。

 鍛えた生身に個性が勝てる筈がないだろう。

 そのクロビカリにとっては何気ない一言でエンデヴァーは崩れ落ちた。

 なら自らの炎に焼かれる自分は、受け継がせてしまった炎で焼け死んだ我が子は何なのかと。

 個性婚なんてせずに目の前の筋肉のように鍛えればよかったのではないかと。

 折れることは許されない、今までの所業ゆえに。

 ゆえに挫折を嫌悪に変えて、クロビカリを嫌うことで自己を保った。

 何せ戦闘では機動力に欠けるクロビカリには勝ち目があり、何よりクロビカリはヒーローとしては失格に近い価値観の持ち主だったからだ。

 だが、次に出会った存在。

 番犬マンとは戦うべきではなかった。

 郷土愛、それだけのために戦う彼はヴィジランテの鑑といえる。

 故郷以外はどうでもいいと言うのはどうかと思うが、ヒーローとしても間違っていない。

 間違っていない存在を、有効活用と言って良いように使うために捕縛しようとして、返り討ちにあった。

 言い訳できぬ程の圧倒的敗北で。

 だからこそ今のエンデヴァーは揺らいでいる。

 自身がどうしたいのか分からなくなっている。

 死んだことになっている息子の仏壇の前で弱音と懺悔を繰り返す程に。

 だからきっと、彼は変われる。

 家族と向き合える。

 そう言い、燈矢は頼みこむ。

 

「焦凍を倒して欲しい」

 

 末弟を打ち負かして欲しい、末弟に変わるきっかけを与えてやって欲しいと。

 そうすれば、きっと轟家がお互いに向き合うきっかけになるから。

 あの子は、自分とは違い画面の向こうのオールマイトに憧れたのだから。

 

「元からそのつもりです」

 

 救いたいという思いは自身にもあり、決勝戦にて果たしたい約束もある。

 だから勝つことは決めているのだ。

 全力でぶつかることも。

 

「そうか、ありがとう」

 

 その言葉を最後に彼は踵を返した。

 どこへ?と尋ねると現在は豚神さんの元で世話になっているらしい。

 家族の元へ戻ろうとした後、父に認められるため、父に屈辱を与えた無個性ヒーローに襲いかかり返り討ちにあったと。

 そうして豚神さんに保護されたとのことだ。 

 エンデヴァーに対するわだかまりはすでにない。

 仏壇にて吐き出した弱音で自身を過去にしていないと知った以上、もういいのだと。

 それだけで満たされたから。

 それでもまだしばらくは再会する気はないらしい。

 会う時は、他の皆と和解した後が良いと言う。

 それが会話の終わりとなり彼は去っていった。

 

 勝つ理由がまた一つ増えた、僕はそう思った。

 元より勝つ気ではいたのだ、全力でぶつかる気も。

 だから、やる。

 

 漢らしい腕相撲対決の結果、見事切島君が勝利。

 次の試合には切島が進むことになった。

 全力で戦った相手と手を握り合い友情を育むのはこういった催しの醍醐味だろうね。

 轟燈矢さんとの会話を終えた僕は、会場につながる通路でエンデヴァーに話かけられていた。

 

「うちの焦凍にはオールマイトを超える義務がある」

 

 義務、か。

  

「君との試合はテストヘッドとしてとても有益なものとなる。くれぐれもみっともない試合をしないでくれたまえ」

 

「僕はオールマイトではありません」

 

「そんなの当たりま」 

 

「僕はタンクトップを着こなして、誰かに手を差し伸べるヒーローになる男です」

 

 秘密だからオールマイトの後継になるとは言い切れないのが心苦しいけど。

 

「轟焦凍君も、貴方ではない。

 彼として成りたいヒーローがあるんだ」

 

 今の彼はそれを忘れているけど。

 

 

『今回の体育祭 両者トップクラスの成績!!

 まさしく両雄並び立ち今!! 

 緑谷対轟!! スタート!!』

 

 開始同時に生み出される氷柱群。

 それを遠当てタンクトップパンチで薙ぎ払う。  

 ワンフォーオールは20%を維持。

 彼の氷では僕を捕らえることはできない。

 個性も身体能力、使えば彼は自ら冷気で鈍化することは自明。

 耐久戦に持ち込むのも戦略的にはアリだが。  

 まずは直接ぶん殴る。

 

「直撃タンクトップブロー!!」

 

 タンクトップの動き易さからなる、タンクトップステップで接近し腹に一発ブチこむ。

 ああ、そうだ。

 助けたいとは思う、けどね。

 家庭の事情を連チャンで語られてパンクしそうなんだよ!!

 タンクトッパーはな、頭単純なんだよ!!   

 

「ぐうっ」

 

 轟君は吹き飛ばされるが腹を抑えて立ち上がる。 

 流石に鍛えてるだけはあるね、一発KOとはならないか。

 

「なんで、だよ」

 

 牽制のために氷柱を放つ轟君。

 裏拳一閃で薙ぎ払う僕。

 

「なんでお前が、タンクトップ着てるだけのお前が」

 

 足元に氷を作り出し接近し、直に触れて凍らせるも、

 タンクトップは凍らない。

 実習のように砕き、カウンター。

 

「オールマイトみたいに見えんだよ!!」

 

 頬を打たれ転がりつつも叫ぶ。

 燈矢さんの言ったように彼もオールマイトに憧れていたんだ。

 僕と同じで、

 

「雨の日にさ」

   

「?」

 

「泣いてた最低のガキがいた」

 

 思い返すオリジン。

 

「無個性だと診断されたガキは、ヒーローに成れないと母を責めたて泣かしたんだ」

 

 未だに忘れられない過去の自分。

 

「そいつは手を差し伸べられ、タンクトップに出会って強くなった。まあ苦労はしたけどね」

  

「それがどうした」

 

「変わるきっかけなんてそんなもんじゃない?」  

 

 たった一言が、たった一度伸ばされた手が、差し出されたタンクトップが。

 変わるきっかけとなり、救われる。

 

「成りたい自分がいるんでしょ?

 掴みたい手があるんでしょ?

 だったらやっちゃいなよ」

 

 変わることは怖くなんてないのだから。

 

「変わっていいのかよ!成っていいのかよ!

 存在そのものが母を苦しめた俺が!!」 

 

 ヒーローに成って良いのかと轟君は叫ぶ。

 

「救いたい人がいて、手を伸ばしたらそいつはもうヒーローだ」

 

 轟君の思いに呼応して左の炎が吹きでる。

 なるほど凄い火力だ、けどね。

 

「どうなっても知らねえぞ」

 

 体温変動による限度の無くなった、ヘルフレイムを超えるだろう超火力。

 超合金クロビカリさんでもない限り、防ぎきることは不可能。

 だが、

 

「緑谷、ありがとうな」

  

 礼を言うのは早いよ。

 ワンフォーオール限定開放100%オーバー、暴走する力はタンクトップが締め上げる。

 防ぎきれないなら、吹き飛ばす。

 力こそパワー。

 火力を超えるは筋肉とタンクトップ也。

 限界以上のパワーを炎へと叩きつける。

 放たれた豪腕は轟君の放った熱気全てを薙ぎ払い、凪いだ風のみが残る。

 

 

『何今の、お前のクラス何なの?』

 

『散々冷やされた空気が瞬間的に熱され膨張したんだ

 んでそれを緑谷が殴り消した』

 

『オールマイトかよ、アイツ。

 筋肉ってタンクトップってあそこまでできんの』 

 

『轟に当てないで炎だけ消したのも見事だな、直撃したら即死だろうに』

 

『ヤバいこと言わんでくれ、イレイザー』

 

 炎で焼けたジャージで左上半身がはだけている轟君は、ぶつかりあった結果に呆然としている。

 

「今回は僕の勝ちかな?」

 

 限界を超えてもこちらに余力はある。

 まだやれるよ。

 

「ああ、そうだな」

 

 結果を受けいれた轟君はそう頷いた。

 

『轟くん、敗北宣言。緑谷君三回戦進出!!』

 

 ミッドナイトの勝利宣言でこの戦いは終わりだ。

 なんか肩の荷がおりた気分だね。

 迷子を送り届けた感じだよ。

 

「なあ、緑谷。俺も強くなれるか?

 お前みたいにタンクトップを着たら」

 

「タンクトップを着るのはあくまでスタートだよ。

 まずは着てから、そして己を高めるのさ」 

 

「そうか」

 

 試合終了後、通路に向かう轟君をこっそり追跡。

 タンクトップステルスを発動してるからバレることはないだろう。

 

「邪魔だとは言わんのか、子供じみた駄々を捨ててようやくお前は、完璧な上位互換となった」

 

 待ち構えていた、エンデヴァーは言う。 

 どこか強がっているように。

 

「負けたのは良いだろう、個性制御が完璧となれば容易く超えることができるだろうしな

 卒業後は俺の元へ来い!!

 俺が覇道を歩ませてやる!」

 

 そう言って手をのばすエンデヴァー。

 だが轟君の言葉は意外なものだった。

 

「アンタが苦しんでたのは知ってたよ。

 燈矢兄さんの墓前で嘆いていたことは、母さん含めてみんな知ってる」

 

「なっ?!」

 

 驚愕するエンデヴァー。

 

「夏兄だって受けいれようとしてんだ、あんな姿みたらな」

 

「そんな俺はっ?!」

 

「認めたくなかったんだよ俺が。

 認めてしまったら自分がどうなるか分かんねえから、 

 どう変わるのか怖いから」

 

「踏み出す勇気がなかったんだ、みんな」

 

 必要だったのはは変わった自分を受けいれる勇気。

 ただそれだけだった。

 

「母さんと話す。思いを全部伝える。

 多分俺は家族としてやり直した上で、オールマイトみたいなヒーローになりたいんだ」

 

 そうして、轟君の騒動は終わった。 

 啞然とするエンデヴァーを置いて彼は歩きだした、

 成りたい自分になるために。

 

 

 

 

 

 

 

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