タンクトッパーイズク   作:規律式足

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閑話、とある紳士視点

 

「ふむ、出久君も爆豪君も頑張っているみたいだね」

 

 携帯のテレビ中継にて映し出される活躍している顔馴染みの二人。

 休憩時間のみ確認しているとはいえ、やはりあの金の卵ともいえる少年達は有精卵揃いの雄英高校においても飛び抜けていた。

 事務所にてラヴァーが録画編集してくれているとはいえ、ついつい気になってしまう。

 雄英体育祭が開催し盛り上げる中、私タンクトップジェントルは保須市にてパトロールを行っていた。

 雄英体育祭は誰もが熱狂する国内最大の催しというだけではなく、若き雛鳥の品評の場でもある。

 ゆえに多くのヒーロー事務所が最小限の人員のみ残して、あるいは休業してまで観戦しにいくのだ。

 その分、街のパトロールなど日頃の業務が疎かになってしまう側面もあるのだが。

 まあ、観戦するのは一般人やヒーローだけではなく、ヴィランとて同じこと。娯楽としてあるいは将来の障害の品定めとしてモニターに張り付いているのだろう。

 事件発生率が雄英体育祭の時だけ極端に増加しないのはそこら辺が理由かもしれない。

 一部の私達のようなヒーローが普段どおりの業務をしているのも理由の一つだろうが。

 先程すれ違い挨拶したターボヒーローインゲニウムもその一人だ。彼ときたらサイドキックが体育祭を見たがるからと、チーム連携が本領であるのにも関わらず一人でパトロールをしていた。

 彼とて今年入学した弟の勇姿を応援したいだろうに。

 ちなみにタンクトップ事務所は人数が多いため、熾烈なタンクトップくじにて体育祭観戦者と休暇の者を決めた。私も見たかったが、マスターが率先して辞退したのにならいパトロール組となった。

 なに、後で録画を見よう。どうせなら出久君と爆豪君も一緒に紅茶でも飲みながら、参加者達のコメント付きならより楽しめるだろう。なぜか爆豪君のために胃に優しい紅茶が必要な気がするが、なぜかさらに胃に優しい菓子まで必要な気がするね。

 心当たりがありすぎるが頑張ってくれたまえ爆豪君。

 しかし、嫌な予感がするね。

 張り詰めたような、静けさの中に静電気が走るようなピリピリした空気が閑散とした街並みに流れている。

 念の為ともに来たタンクトップラビットとタンクトップジャングルは二人一組で行動させて正解だったかも知れないね。

 

「なあ君もそう思うだろう、ヒーロー殺し君?」

 

 今まさに倒れ伏すインゲニウムに凶刃を振るわんとする覆面の怪人。

 神出鬼没、過去17名ものヒーローを殺害し23名ものヒーローを再起不能に陥れた、通称ヒーロー殺し。

 敵名、ステイン。

 全くついてないね、私は。

 だが、インゲニウムのピンチに間に合ったのは運が良い。

 これ以上の被害を防げる事実もね。

 

「ジェントリーバリア」

 

 話しかけた私に構わずインゲニウムの足に刀を振り下ろすステイン。だがジェントルステップで接近し、すでにインゲニウムの周りの空気は柔らかくしてある。

 

「硬いものより斬りにくいだろう?」

 

 ぐにょりと柔らかい空気は下手な鋼鉄よりも斬りにくい、コツを掴めば斬れないこともないが初見では厳しかろう。

 ジェントルステッキを振るいインゲニウムからステインを遠ざけ、ステッキを一文字に構え相対する。

 

「ハァ、タンクトップジェントル。かつては下らん動画を配信していた義賊気取りの元ヴィランか」

 

「私のことを知っているとは光栄だよ、知名度としては君の足元にも及ばんがね」

 

 情報社会の弊害かね、容易く他者に己を知られる。

 

「粛清する価値もない塵だったが、今の貴様は違う」

  

 ガチンッと刀とステッキが交差し火花を散らす。

 瞬時にステッキを柔化し刀を絡めとろうとするが、ステインは後ろに飛びそれを防ぐ。

 

「無個性ヒーロー、あの素晴らしき番犬マンと並び称される個性なき怪物達。

 論外である超合金クロビカリを除き、豚神とタンクトップマスターと番犬マンは英雄足る存在だ」

 

「マスターを評価してもらい恐悦至極だよっ」

 

 ステッキをフェンシングの如く構え、突きを放つ。

 私の細胞を混ぜてあるこの特注ステッキは体の一部も同然、触れた先から個性を発動できる。

 武器を柔化して無力化する!

 

「タンクトップマスターの元で更生し鍛錬を積んだ貴様は最早俺の粛清対象ではない」

 

 逃がさんっ!!

 

「重体の者を捨て置く者が、ヒーローか?」

 

「真のヒーロー足るインゲニウムは、自らの身より他者を案じる!!

 その意を汲まずしてヒーローとは名乗れぬよ!!」

 

「良いな貴様」

 

 ニヤリと笑うステインだがどうやら引く気のようだ。

 それを許すつもりはない。

 下がるステインと追う私、インゲニウムは携帯にて連絡をとっているのは確認した。

 応援も救助も駆けつけてくる。

 ならば私は逃さず捕らえる!

 刀とステッキのぶつかり合う音は人気のない街に絶えることなく響き渡った。

 

 

「未熟だな私は」

 

 後一歩の所とは言えまい。

 ステインは強かった、個性こそ使われず仕舞いだったがその斬撃は致死の一閃。

 命を繋いだのはなんとか体得したタンクトップセンサーのおかげ、私のタンクトップ力では常時発動など夢のまた夢だが短期戦においては有効な手札だ。

 私のステッキ術と合わせてなんとかステインの刃全てを捌き凌ぐことができた。

 だが、

 

「黒いもや、先日の雄英高校襲撃犯のワープ個性か」

  

 名は確かヴィラン連合。

 ステインは個人の思想犯という通説だったが、誤りだったのか?

 確かにワープ個性あらば神出鬼没なのは納得ではあるのだが。

 しかし、ヤツは数年前にヤクザやヴィランを殺して回ったヴィジランテ、スタンダールと同一人物の可能性が高いと聞いていたが、ヴィラン連合なるものと手を組めるものなのか?

 まあ良い。

 幸いなことにインゲニウムは斬られはしても、個性で動けなくされていたようで命に別状はない。

 ステインに再起不能にされたヒーローの一人として名を刻まずには済んだのだ。

 ヤツは再びこの街で凶行を振るう可能性は高いが、こちらにも準備をする時間ができた。 

 万全の準備の元、ヤツの凶行をここで終わらせる。

 

 ふむ、携帯のテレビを見れば、

 雄英体育祭はいよいよ最終試合。

 勝ち残ったのはやはり出久君と爆豪君か。

 爆豪君にとっては望み続けた決戦。

 最高の舞台でその勝利を飾るのだ、二人とも。

 

 

 

 

 

 




おまけ、オリタンクトッパー紹介。 
タンクトップラビット。
個性、兎耳。
兎の耳飾りをつけると身体能力が強化される。
兎耳と兎の尻尾をつけたイカツイオッサン。
自称ミルコのライバル。 
因みに尻尾は必要ない、本人の趣味。
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