盛り上がったヒーロー情報学の後、それぞれ職場体験先はどこにするかでリストを眺めていた。
勝己なんて5000以上だから事務所見るだけで一苦労だよね。
指名されてない生徒は、学校でオファーした40件の事務所かタンクトップ事務所だって。
「そういえば出久はどこなんだ?」
僕は指名のあった1件で確定。事務所名は、
「あ、グラントリノ事務所だ」
「オールマイトの知り合いの爺さんだよな」
面識はあるけど関係は知らないんだっけ。
ワンフォーオールも伝えてないしね。
「意外だな、お前はプロヒーローの知り合いから来そうだと思ったが、ミルコなんかに気に入られてたろ?」
「確かにミルコとは親しいけど、また番犬マンにリベンジだって」
トップヒーローミルコ、兎の個性持つ国内の女性ヒーロー最強(タンクトップラヴァー除く)とも言われる彼女は、無個性ヒーロー番犬マンに戦いを挑んでいた。
政府に命じられたエンデヴァーをリーダーとして行った番犬マン捕獲作戦に参加した彼女は、敗北以来暇さえあれば番犬マンにちょっかいをかけていた。
事件扱いにならないかと思うけど、番犬マンが気にしてないため問題はないみたい。
いつも軽くあしらっては猟師みたいにミルコの耳を掴んで狩りの獲物のように持ち上げてるらしい。
あ、また負けてる。
駅前の番犬マン台座の上でミルコを持ち上げてる番犬マンの画像がネットに投稿された。
「あの人、アレがくせになってんじゃね?」
呆れたような勝己の言葉に僕は同意する。
動物系ヒーローに反感買いがちな着ぐるみの番犬マンは、プロヒーローにもよく勝負を挑まれる。その全てに圧勝しているわけだけど、大概一度負けたらもう挑まれない。例外なのはシシドにギャングオルカやミルコくらいでホークスも一度挑んだけど、最速のヒーローと謳われる自分にあっさり追いつき首根っこ掴まれてから挑んでないとか。
本人曰く狩猟された鷹の気分になったそうな。
「あっ、タンクトップラビットがコメントして叩かれてる」
「あのウサ耳オッサンも懲りねえな」
情けないぞ我がライバル、というコメントに他の人からぶっ叩かれてる。
タンクトップ事務所でも新人ヒーローの紹介の時炎上したんだよね。名前だけ先に告知されたから。
ガール、ラヴァーに続く女性タンクトッパーだと期待されてたみたいだけど、実際はウサ耳ウサ尻尾付き筋肉オッサンだったから。無駄に強いのにね、あの人。
「勝己は?」
「エンデヴァー事務所。ナンバー2だし炎での機動力が参考になりそうなんでな」
指名件数の割にあっさり決めたね、知り合いではないから甘えなくて済むのもあるみたい。
まあ知り合いなら即現場ってのもありそうだけど。
「なあ緑谷」
「どうしたの?」
話しかけてきた相手は、砂藤君。
彼も指名はないからさっきまでオファー先のことで皆と話合ってたよね。峰田君がマウントレディと叫んでたけど。でもあの人デビューしてまだ一年ちょいだよね。なのに雄英高校からオファーとか凄いな。
「タンクトップ事務所に職場体験、ってお前もかタラコ野郎って顔すんなよ爆豪」
「連絡とるだけだから問題ないけどどうしたの?」
タンクトップセンサーでも反応ないから、タンクトップに関心ないよね。
「いやさ、彼処って俺みたいな増強系個性多いだろ?
個性の強化の参考になるかと思ってよ」
ああそっか、砂藤君の個性シュガードープは砂糖を摂取して身体能力強化だもんね。
タンクトップベジタリアンやタンクトップアルデンテと同じタイプなのか。
「そういうことなら大丈夫だけど、本当にいいの?
普通のヒーロー活動体験しないで鍛錬漬けの一週間になるかも知れないよ?」
事務所予定でも代理パトロールの仕事はなかった筈だし、大きなイベントの警備依頼はあったかな?
「パトロールとかもねえのか?」
「そこら辺ヒーロー間での縄張り争いが面倒でね」
業界の裏事情というか暗黙の了解ってヤツだよね。
パトロールだけだと収入にならないし。
「ウチは休業するヒーローの代理でしかやらないよ」
「そうか」
悩む砂藤君にさらに事情を告げる。
「そもそもウチって、ヒーローが業務拡大や後進育成のために事務所構えるのと違って、マスターを慕う舎弟が増えて集まってたらいつのまにか事務所扱いになってたんだよ」
だからマスターは仲間をサイドキックなんて呼ばないし、率いてる意識もないんだよね。舎弟だから大切に面倒みてくれるけど。
昔なんて経験者であるベジタリアンを副所長にしてガールや僕がサポートとしてようやく事務所運営してたぐらいだし、今はラヴァーが完璧にやってくれるけど。
「頼んどくから鍛錬はできるけど?」
「ならそれでお願いします、やっぱりタンクトッパーの頼もしさは憧れるしな」
昔見たことあるのかな?なら納得だけど。
「そういうことなら、僕もお願いできるだろうか?!」
この声は飯田君だね。横で勝己が、テメェもかメガネって顔してるけど。
「兄を救ってくれたタンクトップジェントルに是非とも習いたいんだ!!」
何したのジェントル、やたら尊敬されてるけど。
でもなー、ジェントルは予定だと。
「ごめん、肝心のジェントルが昨日から派遣されててしばらく不在なんだよ」
「派遣?」
「うん、応援というか手助けというかそんな感じで。
ワイルドワイルドプッシーキャッツのトコに」
「またかマトモ紳士。こないだもそこじゃねえか?」
「ジェントルは戦闘力とサポート力のバランスよくて頼りになるしね」
「それだけが目的じゃなくて年近いから狙ってんじゃねえか?プッシーキャッツ」
「ラヴァーが包丁研ぎながら泥棒猫は三味線とか言ってたけど、多分大丈夫でしょ」
「何が大丈夫か皆目分からねえよ、邪神の祭器でも拵える気かあの人?」
ジェントルが人気あると喜ぶくせに嫉妬もするからラヴァーって面倒臭いよね。
「そうか残念だ」
「砂藤君みたいに似たタイプの個性のヒーローも他にいないから今回は止めとけば?せっかくの職場体験の機会だし」
タンクトップよりジェントルにこだわっているなら尚更ね。
「忠告ありがとう緑谷君。なら今回はマニュアルさんの事務所にするよ」
「「「誰?」」」
有名ヒーローじゃないよね。飯田君ならランク高いヒーローからも指名来てそうだけど。
「あまり有名ではないが、保須市のヒーローで兄の見舞いに来てくれたんだ。働きも堅実らしいしこれも縁だと思ってね」
わざわざ見舞いとか律儀な人なんだね、酷いヒーローなんかこれでインゲニウムのランクが下がると喜ぶのに。
「まあせっかくの縁は大事にしたほうが良いと思うけどよ、学ぶことも多いだろうしな。けどよ」
正直最初の職場体験だから現場の空気感じるだけでも十分だよね。けど勝己には懸念があるみたい。
「兄を襲ったステイン探しが目的じゃねえだろうな?」
それはありえるね。今までヒーロー殺しステインは一つの街で四人殺している、インゲニウムを仕損じたとはいえそれで場所を変えたりしないだろう。思想犯は自分のルールを変えないものだからね。保須市のヒーローであるマニュアルの事務所を選ぶのが、ステイン探しが目的なら理屈としておかしくない。飯田君にとってはたとえ復帰できたとしても、尊敬する兄が重体にされたのは事実なのだから。
「勝てねえ相手に退けねえ時はある、けど勝てねえ相手に自ら向かうのは単なる自殺だぞ」
ジェントルですら捕まえられなかった相手に飯田君がどうこう出来るはずがない。
許せない相手でも挑んでよい相手じゃないのだ。
「怨んでないとは言わない、だが自分でどうにかできると自惚れはしない。もし遭遇したら襲われてる人を助けてから逃げるよ」
「分かってんなら良い、助け必要なら呼べよ」
「勿論だ」
思ってたより冷静で良かった。
これでもしインゲニウムが殺されてたり再起不能だったらどうなってたのやら。
話しが一段落して、砂藤君と飯田君が席に戻ったら今度は轟君でした。
「なあ緑谷?」
「是非ともエンデヴァー事務所にすべきだねタンクトップ事務所で鍛えるとは言っても所詮は筋トレの延長だし君みたいな放出タイプの個性はいないからだからまずは自身の個性の使い方をナンバー2ヒーローであるエンデヴァーに習うか現場での使い方を実際に見るべきだねなにせ炎なんて危険な力で街に被害をださない繊細な使い方もできるし氷もブッパなす君はその繊細な使い方を学ぶべきだろうねそうすればそれだけで大幅にできることにつながるよタンクトップを学ぶならそれからでも遅くないし自分の限界をタンクトップで超えるならまずは自分を限界まで鍛え抜くことが前提だからね大丈夫いつだって頼まれたら事務所に案内するから、
今回はエンデヴァー事務所にしようね轟君?」
「ああ分かった」
畳み掛けるような言葉の波に圧倒されて、そう頷いた轟君はエンデヴァー事務所に決めた。
ふー、エンデヴァーに頼まれたこと達成。
とりあえずこれで大丈夫でしょ。
最高傑作完成のためなら断ったけど、息子に良いとこ見せたいからなら断われないよ。
貰うもんもらったし。
エンデヴァー事務所オリジナルデザインタンクトップなんてレア物だしね。しかもサイン付き。
「家庭を気遣ってじゃなくて賄賂貰ったからかよ」
「無償よりも、有償の方が安心できることもあるんだよ」
特にエンデヴァーは無個性ヒーローアンチだったから余計にね。
「なるほどな」
こうして職場体験の準備は終わった。
色々不安だけど、その都度対処するしかないよね。
しかしどうしたんだろグラントリノ。
わざわざ職場体験先に名乗りでて、
これ以上さらに教わることでもあるのかな?
おまけ タンクトッパー紹介
タンクトップアルデンテ
一応ワンパンマン原作キャラ
よく朝食にパスタを食べる。粉チーズをかけすぎる。
個性 粉チーズ覚醒
パスタではなく粉チーズを食べると一定期間肉体強化