タンクトッパーイズク   作:規律式足

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閑話、爆豪視点

 

「ここがエンデヴァー事務所か」

 

 都心にそびえ立つ巨大ビル。

 ナンバー1ヒーローオールマイトが名声に反してささやかな事務所であることを考えれば、恐らく国内最大であろうヒーロー事務所。

 サイドキックは30人以上。

 業務は基本的にパトロールと待機、緊急要請や警護依頼、イベントオファーなど一日100件以上の依頼を捌いているというとんでもない場所だ。

 出久に強引に連れてかれたタンクトップ事務所もそうだが、見ているだけで身が引き締まるな。

 平和の最前線、平和の防波堤といったトコか。

 出久との繋がりでプロヒーローとの知り合いは多いがこんなに組織って感じは初めてだ。

 タンクトップ事務所は所属する面子が舎弟にすぎないから緩いトコあるし。

 出迎えたのは有名サイドキックのバーニンで、同じく職場体験を受けることになった轟と並んでエンデヴァーの部屋へと向かう。

 

「よく来たな、バクリューにショートよ」

 

 威厳あるなエンデヴァー。出久から聞いた家庭事情から駄目親父なイメージあったが、流石はナンバー2ヒーロー、放つ覇気が違う。師匠やバング爺さんみたいな強者の気配がする。

 

「今回いかに雄英高校とはいえ、ひよっこに過ぎない一年を職場体験させるのは貴様らにそれだけの価値、将来性があると判断したからだ。望んで得られる訳ではないこの機会を自らの糧にしてみせろ」

 

 正解だったなココ選んだの。

 知り合いのヒーロー達にはない、野心と向上心が感じるよ。

 

「分かったな、ショート!! これが父の姿だ!!」

 

 息子へのアピールも欠かさないのな。

 

「どうでもいい、仕事を見せてくれ」

 

 終始不満げだなコイツ。そんなにタンクトップ事務所行きたかったのか?

 

「良いだろう見せてやろう!! だが初日は貴様らがどこまで出来るかの確認だ!! パトロールをするにしても貴様らの実力が分からねば話にならん!!」

 

 そうしてエンデヴァーに連れられ地下訓練場で実力を見せることになった。

 まずはエンデヴァーとの組手だが、ナンバー2だけあって強かった。爆破による機動も火力も似た系統であるだけに向こうとの習熟の差がダイレクトに出た。

 冥躰拳を主体でやれば良いトコまで行くのだが、エンデヴァーのヘルフレイムと赫灼熱拳を出されると後手に回らざるえない。

 爆破でヘルフレイムを捌き、赫灼熱拳を出される前に仕留める。それが現状の最善手だな。

 

「やはり今の焦凍では相手にならんか」

 

 決勝戦にはどのみち進めなかったな、と何かに納得したように呟いた。見れば轟も悔しそうにこちらを見ていた。

 まだ鍛錬はこれからだと構えるがエンデヴァー自身がここまでだと言わんばかりの態度で下がっていた。

 なぜだ?

 

「あのさ、あのエンデヴァーのヘルフレイムとかここまで凌いで、その上勝ち目があるみたいに構えるなんて学生レベルじゃないぞ?」

 

 とバーニンは説明してくれた。

 確かにこっから先は怪我前提の戦い、実力を測るには度を越しているな。

 

「あの無個性ヒーロータンクトップマスターの直弟子を追い詰め、ベストジーニストやミルコが天才だと太鼓判を押す逸材なだけあるな」

 

 他に言い触らしてんのかあの二人。自分達のキャラじゃねえだろうに。

 眼の前にいたら手厳しいことしか言わないくせに、他所で高評価とか照れくさくて恥ずいわ。

 

「焦凍も並のヴィランでは相手にならんだけの実力はある!! 明日からのパトロールには二人とも連れて行けるだろう!!」

 

 エンデヴァーとパトロールか、とんでもねえ経験になるな。

 

「場所は保須市!! 目的はヒーロー殺しステインの発見及び捕縛だ!!」

 

 飯田の兄、プロヒーローインゲニウムを打倒し、タンクトップジェントルから逃げ切ったヴィラン。

 

「個性対策としてコスチュームの防刃性の確認、また発見したとしても決して近距離で戦うな!! 遠距離攻撃で牽制しつつ俺を呼べ!!」

 

 インゲニウムによりもたらされた情報はしっかりとヒーロー達に活かされているようだ。

 

「ショート、お前達は先に戻っていろ!!

 俺はバクリューと話すことがある」

 

「? 分かった」

 

 首を傾げながらも頷いて、他のサイドキック達とともに轟は訓練場を後にした。

 しかし エンデヴァーが俺に何の話だ?

 

「さて話というのだがな」

 

 二人きりになると途端に歯切れ悪そうに切り出した。

 

「どうしたら焦凍をタンクトッパーにしないで済むだろうか?」

 

 やっぱりタンクトップの件かよ。

 

「焦凍の気持ちは俺にも分かる。

 コレを手に取れば強くなれる、力を手にすることが出来る。そんな誘惑に耐えることがどれだけ苦しくて大変な事なのかを」

 

 タンクトップの話だよな?

 

「若さというものはいつだって急がしてしまう。

 安易に結果を求めてしまい、ソレに手を出すことが身の破滅に繋がると知っていても、自分は大丈夫だと思い込ませてしまうものだ」

 

 タンクトップの事だよね?

 

「その思い込みのせいでどれだけのヒーローがタンクトップに手を出してしまったか」

 

 手を出すて、タンクトップ着ただけだよね?

 

「それが自身のアイデンティティの否定だと言うのに」

 

 まあヒーローがタンクトップ着たら、即座にタンクトッパー扱いだしな。

 

「俺の息子はそんな浅はかな行動を取ろうとしているんだ」

 

 頭抱えているけどタンクトップを着て筋トレするだけの話だよな?

 確かに出久は変な超能力使うけど、そんなことできるタンクトッパーはごく一部だし。

 

「バクリューよ、タンクトップの誘惑に耐えきりそれだけの力を得た貴様なら、何か対策をとれるのではないか?」

 

 対策って、勧誘してんの基本出久だけだし。

 他の連中は強制してこないけど。

 

「俺は反対して息子に嫌われたくないんだ!!」

 

「知るか」

 

 私情じゃねーか!!

 

 

 こうして職場体験の初日は過ぎていった。

 なんかオチみたいに情けない姿も見せられたが、息子を真剣に思っているのは伝わった。

 なお、このあとに超合金クロビカリがエンデヴァー事務所に招かれてエンデヴァーを鍛えるという出来事があったが、それはまた別の機会に思い返そう。

 家族との和解、良い事だがなんか色々とはっちゃけてるなエンデヴァー。

 

 

 

 

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