タンクトッパーイズク   作:規律式足

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全世界の物間君ファンごめんなさい。


閑話、砂藤視点

 

 まず目につくのは天を突かんとばかりピンとはったウサギ耳、その下の頭には帽子が乗っており、顔は目には水中ゴーグル、鼻は宴会芸用の付け鼻と付け髭。

 体の方は虎柄のペイントが塗られており、胸と腕にはジャングルみたいな付け無駄毛。

 そんな珍妙な格好の人物。

 こんな珍妙な格好をする羽目になった彼。

 そんな彼の名前は物間寧人という。

 コトンっとテーブルに皿が置かれる。

 中身は人参の砂糖煮の粉チーズかけ。

 この実験の最後の仕上げ。

 コレを平らげてから彼は個性を発動するのだ。

 コピーという個性、同系統の強化であれば複数の個性を同時に発動できると気づいてしまったが故の実験。

 事務所に居た強化タイプ個性を一つずつ追加していった結果とんでもないシロモノになってしまった。

 最初は指差して笑っていたタンクトップタイガーとタンクトップブラックホールも、徐々に笑みを消していき今ではトッピング全部のせのカオスな牛丼を見た時のような眼差しを向けていた。

 どうしてこうなった?

 俺砂藤力道はこの職場体験のはじまりを思い出す。

 それは数日前のことだ。

  

 俺がタンクトップ事務所を職場体験先に希望したのは個性を伸ばすのにうってつけだと思ったからだ。

 確かにオファー先でヒーロー事務所の空気を肌で感じるのも重要だし興味があるのだが、俺の場合自身の課題が明白過ぎる。短期決戦しか用いれない個性である以上持続時間を増やすか、強化する肉体のスペックを上げるしかないのだ。

 だから個性を発動した俺よりも強い緑谷を鍛えたタンクトップ事務所を選んだのだ。

 なのだが、なんでよりにもよってコイツと一緒になるかな?

 B組物間寧人。

 体育祭の時にしつこくA組に絡んできた頭アレなヤツ。

 障害物競争でのタンクトップ同好会と、騎馬戦での緑谷とのアレコレには同情したが、敵意を向け煽ってくるコイツと仲良く出来るはずもなかった。

 それは向こうも同じなのか、特に話をすることもなくタンクトップ事務所に向かった。

 

「お前らが職場体験に来た、シュガーマンとファントムシーフか、話は出久とブラドキングから聞いている。

 俺の名はタンクトップベジタリアン、この事務所でまとめ役をやっている一人だ」

 

 通された応接室で対面する男性が、タンクトッパーの中でもプロヒーローとして名高いタンクトップベジタリアン。俺と似た個性を持つヒーローだ。

 

「説明は受けていると思うがウチは普通のヒーロー事務所とは毛色が違う。基本仕事は依頼のみでパトロールなどは代理依頼がないとやらんし、ヒーローからの応援要請が主な業務だ」

 

 ヒーローをバックアップするヒーロー事務所か。

 

「大半の連中は副業あるし、事務所に所属しているのもタンクトップマスターを兄貴分として慕っているからだな」

 

 だから成り上がるため、名を上げる目的なヤツには向いてないという。

 

「あと仕事は八百万グループなどの大企業や国際会議などの大規模イベントの警護任務もやる、まあ一定以上の実力者がここまで数がいる事務所なんてウチくらいだしな。そういったイベントは護衛の数がいるし、複数のヒーロー事務所を雇うと指揮系統に問題が起こりやすいから指揮系統が一本のウチはラクなんだと」 

 

 複数の事務所か確かに揉めそう、ランキングで決めるにしても反感を持つだろうしな。

 事務所のサイドキックにしても似た系統の個性が集まるのもエンデヴァー事務所以外はあまりないらしい。

 あくまで事務所はリーダーのヒーローを目立たせるためサポートするための所だから多様な個性が求められるわけだ。逆に企業は一定の実力の同じような存在が複数必要だから、タンクトップ事務所は需要があるのか。

 

「だからこの一週間はお前らは鍛錬の期間だと思ってくれ、シュガーマンはそのつもりだと聞いているし、ファントムシーフはブラドキングから性格の矯正してくれと頼まれたからな」

 

 物間コイツ、だからここなのかよ。

 あとタンクトップベジタリアンとブラドキングは同期で友人だとか、今でも連絡を取り合うらしい。

 

「何か質問は?あとはいくつか注意事項ぐらいだが」

 

 俺はないな、緑谷から聞いてるし。

 

「じゃあ僕からあります」

 

「なんだ?」

 

「タンクトップを着て強くなるのはどんなカラクリがあるんですか?」

 

 ああ、それか気になるよな。

 あまりに劇的に成長するからプロの間じゃ個性活性薬とかと同じ扱いされてるとか。

 無個性であるタンクトップマスターが、超大物ヴィランを撃退してる実績も疑われる理由だとか。

 あと緑谷の個性発現とか。

 

「またそれか」

 

 うんざりした反応のタンクトップベジタリアン。

 きっと何十回も同じ質問されたんだろうな。

 

「タンクトップ着こなしたら強くなるのは当たり前だろうと思うが。それじゃ納得しないよな。

 一応理屈としては、タンクトップマスターという明確な目標があって、タンクトップという強くなる根拠があって、存分に鍛錬できる環境だからだな」

 

 本来ヴィランを捕らえるのにそこまで力は必要ない。

 それこそ雄英高校入試でロボを破壊できるなら、人間を打ち倒すなぞ造作もない。

 だからヒーロー育成学校は、今まで使う機会のない個性の制御と成長を優先し、肉体は疎かにしがちになってしまうとか。

 法律に資格などの専門分野に高校としての一般科目面もあるから単純に時間が足りないのもある。戦うための肉体作りは本人の自主練に限られてしまう場合もある。

 武術は一日にして成らず。

 それのみに生涯を費やす武術に身につけるにはヒーロー学校の期間は短すぎる。

 緑谷出久が強い最大の理由は、タンクトップを除いてここにあるとか、4歳から鍛錬を始め、流水岩砕拳も8年以上は学んでいる。

 費やした時間という覆せないモノがそのまま実力差として現れているのだ。

 ちなみに爆豪勝己は例外、あれは天才だから学習能力が半端なく、常人の数倍で体得できてるらしい。

 

「疎かになってた肉体作りに集中したら強くなれて当たり前だろ?個性も身体能力だしな」

 

 あとはタンクトップマスターの人徳で訪ねてくるトップヒーローたちが適切なアドバイスもしてくれるとか。

 成長するに当たって最高の環境なんだなここ。

 

「俺らにしても迷惑な認識だがな、俺らは馬鹿やった時に止めてくれたマスターを尊敬してるだけだし。タンクトップを着たら強くなるじゃなく、着こなしたら強くなれる。着こなすために身体を作ることが大切だろ」

 

 タンクトップ事務所の皆さんがマッチョだらけなわけだよ。

 

「そうですか」

 

 物間的には肩透かしか。

 コイツの個性じゃ仕方ないかもしれないが。

 

「さて鍛錬前に注意事項だが、」

 

「「「おかえりなさいませ、姐サン!!」」」

 

 事務所で待機していたタンクトッパーが一斉に立ち上げり頭を下げる。

 そこには小柄なツインテールの女性。

 恐らく緑谷から絶対に逆らうなと念押しされた、

 

「タンクトッパーラヴァー、ウチのナンバー2だ。いいか彼女には逆らうなよ」

 

 小学生みたいな女性にマッチョ共が従うのは違和感持つ光景だが、彼女からは何やら覇気のようなモノを感じる。

 

「もし逆らったら、」

 

「「逆らったら?」」

 

「アイツらみたいに、ジェントルしか愛せない身体にされるぞ」

 

 なぜに?

 

「「「ジェントル♡」」」

 

 確かに写真見てうっとりしてるなあの人達。

 怖いよ。

 

「知りたくもねえが、まあマスター除いて一番強いからってのもあるしな」

 

 タンクトッパーラヴァーはこちらには軽く会釈すると副所長室に入っていった。

 

「さて、じゃあ鍛錬開始とするか。シュガーマンは基礎鍛錬をやって貰うとして。ファントムシーフはさらに個性を鍛えるか。おい、タンクトップラビット!!」

 

「呼びましたかピョン?」

 

 タンクトップベジタリアンはウサ耳をつけたケツアゴの男性を呼びつけた。いや語尾。

 

「殴りたいくらいキモい語尾はおいとくとして、このファントムシーフにウサ耳とお前の個性をコピーさせてやれ」

 

 ああ、装飾品で増強するタイプの個性か。

 結構いるよな。

  

「承知したでピョン」

 

 スルリとズボンからウサ耳を取り出し流れる動作でファントムシーフにつけるタンクトップラビット、ズボンから取り出した事実に反応すら出来なかったわ。あっ、ウサ尻尾もつけた。付けられた本人も悲鳴すら上げる暇もない。

 

「よし個性を発動しな」

 

 死んだ目で個性を発動するファントムシーフ。

 確かに強くなってる感じがするな。

 

「出久いたらタンクトップカウンターで正確に測定できるんだが強くなってるみたいだな。

 よし、シュガーマンお前もやれ」

 

 その指示に従い、手に触れて個性をコピーさせる。

 タンクトップベジタリアンのその間に事務所の冷蔵庫からトマトを取り出して砂糖をぶっかけた。

 

「じゃあ次は俺の個性もだな、野菜食えばいいから、コレ食えばシュガーマンの個性と同時に発動するだろ」

 

 

 この試しでファントムシーフ、物間の個性は強化タイプなら同時がけが負担にならないことが判明した、しかも装飾品タイプなら(見た目以外)ノーリスクだ。それから数日かけて戻ってきたタンクトッパーの個性を一つずつ合わせがけしだしたのだ、

 

 タンクトップラビットのウサ耳でウサギの能力を。

 タンクトップハッターの帽子で感知力の上昇。

 タンクトップスイマーの水中メガネで視力アップ。

 タンクトップハカセの付け鼻と付け髭で知力向上。

 タンクトップタイガーの虎柄で身体能力を向上。

 タンクトップジャングルの無駄毛(本人は自毛だが付け無駄毛でも可)で防御力上昇。

 そして

 タンクトップベジタリアンの菜食に、

 タンクトップアルデンテの粉チーズ覚醒、

 そしてタンクトップシュガー、ではなく俺のシュガードープで一時的強化。

 

 他のタンクトッパーは今不在か、タンクトップブラックホールの超握力とか常時発動タイプだったり、タンクトップレーサーみたいに愛車が必須だったりするタイプらしい。

 タンクトップ事務所個性ありったけ乗せファントムシーフ。

 今ここにとんでもないヒーローが爆誕したのだ。

 

 ちなみに空いた時間は身体が耐えられるようにめっちゃ鍛錬した、設備すげえよココ。

 だがしかし、ここで問題が発生した。

 

「ウガーッ!!」

 

 個性を発動したファントムシーフが(溜まった鬱憤を発散するかのように)暴れだしたのだ。

 その力は見ただけでUSJに居た脳無とかいうのに匹敵どころか超えてそうだ。

 自信満々な態度で取り押さえようとしたタイガーブラックホール兄弟は瞬殺(死んでない)され、今タンクトッパー総掛かりで止めようとしたら、

 

「タンクトップラブパンチ。

 (ジェントルに対する)愛ある拳は全てを打ち倒すのよ。全く最終日なんだから皆遊び過ぎよ」

 

 通りすがりのタンクトップラヴァーに一撃で沈められた。

 あの人本当に強いんだな。

 

 雄英高校一年目の職場体験はこうして終了した。

 色々濃かったが、タメになることも多かったし一度あったパトロールも勉強になった。

 何より凄く居心地も良かった。

 残念なことにマスターには会えずじまいだが、いつでも遊びに来て良いそうだからまた来よう。

 職場体験中に、飯田達のヒーロー殺しによる騒動もあったようだが、大して怪我もなく無事で良かった。

 

 明日クラスの皆と話すのが楽しみだな。

 物間のこの格好の写真見せるのも。

 B組の黒色からトラブル対策に弱み握っとけとアドバイス受けたからきっちり保存してあるし。

 皆はどんな体験したんだろう。

 

 

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