タンクトッパーイズク   作:規律式足

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エンデヴァーファンの皆さんごめんなさい。


閑話、轟焦凍視点

 

 家族が和解したら、親父が壊れた。

 

 物心つく前から俺は家族の中で特別だった。

 完成品、最高傑作、望まれた存在。

 個性婚による掛け合わせの成功作。

 火力最強個性とされるヘルフレイムの欠点を無くそうとして創られた存在。

 ナンバーワンヒーローオールマイトを超えるために生み出された存在。

 物心ついた頃には、そんな妄執に塗れた言葉を虐待も同然の鍛錬と共に、父親である轟炎司ナンバー2ヒーローエンデヴァーは吐き続けていた。

 平和の象徴を超えさせようとする家庭内での恐怖の象徴。

 そうエンデヴァーは恐ろしい存在だった。

 家族を薪としてまで燃え上がろうとする地獄の劫火だった。

 どこがヒーローなのだと言い捨てたくなる存在だったのだ。

 そう、

 燈矢兄さんの墓前で嘆き悲しむ姿を見るまでは。

 自分の存在は、燈矢兄さんを救う、止めるための存在だったと知るまでは。

 勝手だと思った。

 結局俺は目的のために創られたのだと絶望した。

 けど、ナンバーワンヒーローにするという名声のためではなく、オールマイトを超えるという執着のためでもない、夢を諦められず自らを焼く息子を救うため、という理由には、自分自身のナニカが報われたんだ。

 俺は救うために生まれたんだ、と。

 家族からの自分の見方が変わっていると気づかない親父は、もう後には引けないとばかりに必死になり、それを周囲は痛ましいものを見るように感じていた。

 けれど気づいていた筈の俺も、母の監禁同然の入院や日々の鍛錬に反感ばかり持つようになっていた。

 許したい親父に反発して、反発した事実であとに引けなくなって、母さんを入院させたのは苦しめたのは俺が生まれたからではないかと、心がぐちゃぐちゃになっていた。

 雄英高校に入学したのはそんな気持ちの時だった。

 こんな必死な自分に比べてクラスメートのコイツらは何なんだと軽蔑すらしてたと思う。

 けれど、最初の体力テストで緑谷の記録と奇行に驚かされ。実践訓練で、爆豪の実力に感心し緑谷に負けて。

 USJ襲撃事件では二人の戦闘力と超合金クロビカリの存在に圧倒された。

 そして雄英体育祭、俺は手を引かれて導かれるように救われたんだ。

 変わっても大丈夫なのだと勇気付けられ、ヒーローに成れるのだと肯定されて。

 それを出来るようになるタンクトップに、オールマイト以外初めて憧れたんだ。

 職場体験ではタンクトップ事務所に行きたかったのだが、今はまだ時期じゃないと諭されたのはショックをうけたが、確かに反発して使用してない期間があるため炎の制御は甘い。やれること、自分自身を極めてからでも遅くはないと理解できる。

 けど、行きたかったな。

 緑谷と爆豪があそこまで成長できたタンクトップ事務所に。

 

 だから親父のエンデヴァー事務所を職場体験に選んだは仕方なく、という気持ちもある。

 ヒーローとしての親父を見るいい期間だと思いつつもそれでもという気持ちが抜けない。

 初日の実力を測るための稽古で、いいように相手どられて負けて。

 爆豪は食いついている様子に劣等感を刺激されたりもした。

 そんな風に今日という日を終えようとした時、彼は現れた、無個性ヒーロー超合金クロビカリが。

 

「そうだキレてるよ、エンデヴァー!!

 ナイスバルクだ!!」

 

「はいっ、先生!!」

 

 そして親父に筋肉指導だかボディビル指導を始めた。

 

「なんだコレ?」

 

 確か超合金クロビカリのこと嫌ってたよな。

 個性を鍛えた筋肉で防ぐバグみたいな存在だって。

 それで親父打ちのめされてたよな?

 その後番犬マンにも負けたのもあるけど。

 

「ヘルフレイムを耐える筋肉を鍛えて手に入るなら、なんとしても身につけたいんだと」

 

 説明したのは親父に用があると残された爆豪。

 疲れてはいるみたいだけど、なんか慣れてるな。

 

「エンデヴァー、君は元々きちんと鍛えていた!!

 素晴らしい筋肉だ!!

 けれど君はただ筋肉を苛めていただけに過ぎない」

 

「苛めていただけ、ですか」

 

 45歳の実の父のパンツ一丁姿とかキツイな。

 さらにサイドチェストをキメてるし。

 

「そうだ!!」

 

 応えるクロビカリはダブルバイセップスだ。

 この人の格好もまだ数回目だからインパクトあってキツイな。

 

「筋肉とは苛めるだけではいけない、慈しみ、対話することでその真価を発揮し、応えてくれる!!」

 

 そこでアブドミナルアンドサイをキメる必要は?

 

「慈しみ、対話」

 

 なんか親父が感銘を受けているな。

 

「そう、今の貴方ならそれが出来ると筋肉が教えてくれた。エンデヴァー、貴方は変わった。自らを縛る思いから開放され、己と向き合えた」

 

 ウチの事情知っているのかあの人?いや筋肉がチクったのか。

 

「違うんだ、先生。

 家族がこんな俺を見捨てないで、もう一度向き合ってくれたんだ!!」

 

 親父、気持ちは分かるが格好パンイチ。

 

「家族と向き合えない者が、筋肉と向き合える筈がない。けれどエンデヴァー貴方はかつての自分を家族の絆で乗り越えた、今の貴方なら筋肉と対話が出来る筈だ」

 

「今の俺なら」

 

「エンデヴァー、いや轟炎司さん。

 今こそ貴方が輝く時だ!!」

 

「クロビカリ先生」

 

 

「なあ爆豪?」

 

 感動的な空気だけどどうしたらいいんだ。

 

「どうした?」

 

「なんかついていけねえ」

 

 親父もよく考えた上で成長しようとしてるのは分かるのだけど。

 

「これについていけねえならタンクトップ事務所無理だぞ。まともな時はまともだが基本こんなノリだ」

 

 そうなのか。

 

「なら頑張る、頑張って理解する」

 

 緑谷みたいになりたいんだ俺は。

 

「タンクトップを諦める選択肢はないのかよ」

 

 なんか爆豪が愕然としているけど、なんでだ?

 

 

 うん、よく考えたら親父も苦手なクロビカリに師事してまで強くなろうとしてるだけだしな。

 俺にオールマイトを超えさすのでなく自分で超えようとしてんだな。

 なら俺は俺で自分の個性を極めて、タンクトップを着るんだ。

 

「息子が覚悟決めてんぞナンバー2。

 あとクロビカリがステイン捕縛を断った元凶あんたじゃねえか。

 ヒーローとしてそれでいいのかよ」

 

 

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