ヒーロー殺しステイン逮捕。
そのニュースは瞬く間に日本中に知れ渡った。
オールマイト登場以降、公になっている単独犯罪者では最多の殺人数。
犯罪史上に名を残すであろう敵の逮捕は、様々な形で波紋となり日本を揺るがすこととなる。
事件後の事だが、無傷で済んだ僕は軽い検査のみで入院することもなく、警察による事情聴取を行った。
重傷なのは、肩を刀や鋲で打ち抜かれた飯田君と腹部をサバイバルナイフで貫かれたプロヒーローネイティブさんだ。
他は脳無の相手をしていたヒーロー達も重軽傷者多数とのこと。
ちなみに訪ねてきた保須警察署の署長さん、犬顔の面構犬嗣さんとステインとの戦闘行為で話があったが、正当防衛扱いで済んでしまった。
飯田君は、路地裏に入る前に職場体験先のノーマルヒーローマニュアルさんにきちんと連絡していたし、ステイン発見時にも救けを求めていた。
僕にしても、戦闘行為をグラントリノから許可を得て武器、サポートアイテムを用いず素手でやりあったためだ。なんというか、僕も飯田君も個性の使用扱いにすらならないらしい。
広い意味で異形タイプ扱いな飯田君は使用認定しにくいし、僕みたいな強化タイプは発動したかどうかなんて判断しにくいらしい。
仮にその場に、轟君や勝己のような使用後の痕跡が残りやすい者達がいたら、形だけとは言え咎めたり場合によっては罰則も必要だったらしい、ついでにそれを誤魔化す大人の汚いやり口も。
結局、公な事実としては路地裏で襲われたプロヒーローと雄英高校生二人の必死の抵抗に逃亡しようとしたステインを発見したエンデヴァーが仕留めた、という形で落ち着いた。
まあ全身粉砕されていたとはいえ、最後に見事な啖呵をきってステインを打倒したのはエンデヴァーだし。
なお、病院ではエンデヴァー事務所で即戦力として駆り出されていた勝己と会話したり、そんな勝己を見て奮起している轟君がいたり、エンデヴァー事務所にインストラクターとして雇われた超合金クロビカリがお見舞いのポージングをキメたりしていた。例の格好かつ裸足で街中を闊歩する超合金クロビカリは無駄に目立っていたな。
そして僕は、幸いにして勝己は気づかなかった脳無の一体の正体の可能性をグラントリノを通じてオールマイトに告げた。
僕が継承者であるとバレていたら、身近な人間を脳無に改造ぐらいしかねないのがオールフォーワン。だが翼君は幼稚園では一緒だったがそれ以降は引っ越して疎遠になっていた。僕の心を壊すには関係が薄い相手だ。
ならば、脳無の素材として誘拐された可能性があるため、彼の状況がどうなのか知る必要がある。
歴代達の話では、複数の個性を扱う腹心の部下はいたが、脳無のような存在は今まで確認されていないとのこと。オールマイトに敗れたことで生み出した存在で、作成できる技術持つ部下または協力者が新たに加わった可能性が高いらしい。
翼君の現状を調べることでそれの手がかりを得ることができれば良いのだけど。
正直、知り合いをこんな目に合わされた(まだ確定ではないけれど)事実に心折れそうになる。けれどまだ組織だってオールフォーワンに抗っていた時代は、個性の譲渡、あるいは回収を理由に仲間を裏切る者達も多くいたらしい、さらにこちらの身内に喜々として害を加えるオールフォーワンの精神性。それらが主な理由で現在のワンフォーオールの秘匿と極少数でのオールフォーワンに対抗する形になってしまった。
先々代、オールマイトの師匠もそれを危惧して身内の実の息子と別れたのだ。
今回の件は、僕関係だからという線は薄い。
こちらが気づいた時点で正体を自分の口から楽しそうに暴露するのがオールフォーワンのやり口だからだ。
けれど、場合によっては関わりある人達から離れる必要があるだろう。
ヴィラン連合に恐らくブレインとして暗躍しているオールフォーワンから皆を守るために。
歴代達は、覚悟を決める僕に継承者としての思考だけで生きるのではなく、学生として過ごすことを望んでいる。まだオールフォーワンとの戦いばかり考えるべきではないと。
それは理解できるし、嬉しくも思う。
けど、皆の安全を考えると。
またしばらく話し合いだな。
最近歴代達とのこんなやり取りが増えた気がする。
ひたすら実戦とオールフォーワンについての話し合いを終えて、僕はグラントリノ事務所での職場体験を終えた。