タンクトッパーイズク   作:規律式足

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第4話

 

「自分を見失っているな出久」

 いつだったかの、マスターとの会話。

「強くなっちまったヤツにはよくあることだ」

 それは僕が自分の実力を自覚し始めた頃。

 ナンバー4ヒーローであるベストジーニストに、戦闘力ならサイドキックレベルだと評価された頃。

 マスター以外のタンクトッパー達に勝てるようになった頃。

「俺はお前に強さしか示してやれん」

 それでも勝てない人達との差に打ちのめされてた頃。

「思い出せ、なんのための強さだったか

 お前はなぜタンクトップを手に取ったか」

 走り続けることに夢中で見なかったこと、

 それを進路という形で足を止めた時、僕は僕の中身に向き合うことになったんだ。

「お前のタンクトップにシワがよっているぞ」 

 

 僕はなんでヒーロー目指してたんだろ?

 

 

 

 爆音。

 思考に夢中に成り、タンクトップ巡回する気にもなれずに歩いていると、聞き慣れた爆音が街を震わす。

「?」

 妙なことだ、この音は間違いなく爆豪君の個性。

 ガス爆発でもエンジンに引火した音でも発破でも花火でもない。

 彼は一見粗暴で喧嘩ごしですぐに手の出るついでに個性出るタイプだが、街中で個性ぶっ放すような非常識さは持ち合わせていない(何気にみみっちいし)さらにこの音なら家屋の一つや二つ破壊されてもおかしくされてない。

(何があった?)

 気がつけば僕は騒ぎのある商店街に足を向けていた。

 

 山程の野次馬、破壊された街、引火した店舗にヒーロー達。シンリンカムイが負傷者を回収し、バックドラフトが消火、マウントレディは現場に行けず、デステゴロは救出しようにも粘体を前に打つ手はない。

(オールマイトは?)

 ヘドロヴィランはオールマイトが回収したはず、だが本人はどうした?見渡せば観衆の中に焦った様子のトゥルーフォームのオールマイトがいた。何らかの原因でヘドロヴィランを逃してしまったのだろう。

 逃げたヴィランが爆豪君をミノとして使おうとしているそれだけのこと。

 今は爆豪君の個性被害をヒーロー達が体を張って防いでいる、有利な個性のヒーローが到着すればそれで解決する。だからヒーローではない無個性な僕は邪魔にならないよう避難することが最善なのだ。いくら強くともこの状況をどうにかできるかもしれなくても、無個性でヒーローではないのだから。

 目があった、捕らわれている爆豪君と。

 いつか見たあの目を。

 そしたら僕は走り出していた、いつかのように。

 何で出た、ヒーローでもないのに、

 何で走る、無個性のくせに、

 知ったことかよ、そんなこと!

「緑谷、なんで、」

「理由なんて知るか!」

 苦しい時の体感時間は一瞬が一生、だったら早く助けないといけない、いやそんなことはどうでもいい。

「そんな顔したヤツに手を伸ばすために僕はタンクトップを着てるんだ!!」

 そのための鍛錬、そのための強さ、そのためのタンクトップ。

 ヒーローになるためのタンクトップではない、

 オールマイトが人々を救ったように、

 タンクトップマスターが声をかけてくれたように、

 誰かを救うために力(タンクトップ)を求めたんだ。

「暴風タンクトップパンチ!」

 タンクトップの動きやすさから倍増したパンチを直接当てるのではなく拳風を起こすために振るう。まとわりつく粘体を吹き飛ばすために。

「爆豪君!」

 再度取り憑こうとするヘドロから離すために腕を掴み引き寄せる。

「おい緑谷!」

 爆豪君の叫びは大口開けるヘドロヴィランが見えたからだろう。

 しまった爆豪君の手を握っているから、タンクトップオートカウンターが発動しない。

 ならばタンクトップトルネー

「君を諭しといて己が実践しないなんて!!」

 割り込むように駆けつけたオールマイトが活動限界を超えているからか血を吐きながら叫ぶ、

 なお爆豪君は両手を掴んだ僕の様子から何をしようとしたのか察して青褪めていた。

「プロはいつだって命懸け!!デトロイトスマッシュ!!」

 

 

 右手一振りで天気を変えるオールマイトの一撃が今回の騒動の幕を下ろした。飛び散ったベトベトは回収され無事警察に引き取られた。

 僕がヒーロー達に凄く怒られたが、タンクトップを着ているのを確認されたら「アッハイ」となぜか身体能力など納得された。

 逆に爆豪君は称賛された、そもそも襲われたクラスメートを庇ったためまとわりつかれたと、逃げたクラスメートが発言したのだ、確かに機動力に優れた爆豪君が簡単に捕まる筈はない。

 

「緑谷!!」

 事件が終わり帰路についた先で爆豪君が叫ぶ。

「助かったありがとう」

 礼とともに下げられた頭、彼はプライドが高い。だがそれだけではないことを僕は知っている。

「昔みてえな面に戻ったじゃねえか」

 呟くような一言をこぼして去っていく。心配かけてたんだなと今更ながらに気付く、さすがは幼馴染だ。

 無個性を気にして心を淀ませていたことを察していたとは。

 そうだもう迷わない、僕は

「私が来た!!」

 オールマイト?

「色々言いたいことがある、礼と訂正、提案したいこともある、だが先にこれだけは言わせてくれ」

 ああ僕は、ずっと言って欲しかったんだ。

「君はヒーローになれる」

 

 雨降るあの日僕はタンクトップに出会った。 

 タンクトップという希望に出会った。

 今日もまた雨は降る、なぜか僕の周りだけ、

 暖かい雨が降る。

 

 

 

  

 

 

 

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