タンクトッパーイズク   作:規律式足

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閑話、爆豪視点

 

「それでなんのつもりだよ」 

  

 期末テスト演習試験。

 ロボとの戦闘なんて流石にやらないだろうと予想していたが、なんでヒーローでもないコイツが相手なんだ。

 冥躰拳のスイリュー。

 タンクトップマスターに武術の師匠として紹介されたコイツのことは強さ以外何一つとして評価していない。

 一応は師匠らしく型や動きは教わったが、あとはひたすら実戦形式だった。

 しかもヒーローをこき下ろす煽り付きのな。 

 修行も適当にやってきた、あとは才能だけだね。と武闘家達に喧嘩売ってるとしか思えないスタンスで、実際誰よりも強い。鍛えた力は誰かの為に使うべきと考えているタンクトップマスターとは違い、自分の力は自分のために使うと言って憚らない。

 生活は武道大会の賞金とファイトクラブのファイトマネーで賄い、あとは女と遊ぶだけ。

 犯罪を犯してないだけで真っ当とは言い難い生活を送っている。

 

「なんのつもり?仕事だよ」

  

 その仕事が大嫌いだろうがアンタ。

 飄々とした態度のスイリューは移動した先のエリアで軽くストレッチをして身体をほぐしている。

 そんなこと今までロクにしてなかったのに、モニターに映っているからか?

 

「じゃあ試験内容を教えてくれませんかね?

 まさか単なるタイマンじゃねえだろ」

 

 期末テストなら勝ち筋のある試験の筈。

 ハンデを付けた教師達が捕縛か逃走の条件の満たさせる方式だと思うが。

 単なる協力して戦うなら会場の移動は必要ねえし。

 

「お前達にはそんなの無いよ。単に俺とオールマイトが徹底的にボコるだけ。

 でもそうだな、偶には師匠らしいこと言うなら」

 

 実力差からハンデ無しは分かるが、なんだその試験。

 いじめか差別かよ、と内心毒づく中でスイリューの言葉を待てば。

 

「お前ヒーロー辞めろ」

 

 は?

 コイツ今なにをぬかしやがった。

 

「この仕事受けたの気まぐれなんだけどさ、

 事情聞いて改めて思ったよ、ヒーローなんてくだらないって、馬鹿じゃないのかって。

 誰かのために命懸ける?正気じゃないよお前ら」

  

 いつも馬鹿したような笑みのスイリューが珍しく嫌悪の表情をしている。

 

「目をかけてるクソガキが、そんな事で死ぬかも知れないなんて気に入らない。

 だからさ、辞めちまえこんな学校」

 

 お前ならもっと面白く生きれるだろう、と言葉を続けた。コイツは俺を買っている、同じ天才で同じ視線を持てる同類として。

 

「っけんな。アンタにゃ冥躰拳を教わったことに感謝してるが、そこまで言われる道理はねえ。

 図に乗るなよ、アンタの弟子入りしてんだってあくまで目的のためだ。俺が出久に勝つためなんだよ」

 

 確かに入学してから死ぬ可能性のある事件はあった。

 確かにヒーローは殉職する可能性のある職業だ。

 けど今すぐ生きる死ぬの話しになるには、状況が飛びすぎている。

 まるで危機的状況が確定しているみてえじゃねえか。

 

「イズク君に勝つねえ。無理だろ」

 

 その言葉と共に上段蹴りが飛んでくる。

 テメェ不意打ちかっ!

 実力差のある相手の攻撃はわかっていても躱せない。

 無様に側頭部にくらい地面を転がる。

 

「るせえっ!今の俺が弱いのは知っているっ!

 出久が強えのもだっ! だから鍛えてんだろうが!」

 

 今更自分がトップだなんて驕らない。

 自分がまだ及ばない存在だって認める。

 けれどこれから先いくらでもアイツに戦いを挑み続けていけば、いつかは勝てると確信している。

 だって俺は天才だ。

 出久が、眼の前のコイツが認めてくれた天才なんだ。

 

「だからさ、」 

 

 そんな思いはスイリューの乾いた言葉が、這いつくばる俺に続けて放たれる蹴りとともに吹き飛ばす。

 

「お前が超える前に死ぬんだよイズク君」

 

 その言葉に俺は止まった。

 何も考えられない、真っ白なそんな感覚に陥った。

 再度ゴロゴロと地面を転がり、スイリューの言葉の意味を考えて咀嚼して呑み下そうと、なんとか頭を働かせようとするが、そんな事はできない。

 

「期末テスト、君等二人には必要ないと判断された。

 お前達スネックさんやイナズマックスさんより強いしね。並のプロヒーローじゃ相手にならないよ」

 

 武闘家なのにプロヒーローをやっている稀有な存在。その二人を例にあげる。

 

「だからオールマイトはいい機会だと思ったんだろ、お前達を叩き潰すタイミングだと。

 いや、オールマイトはイズク君を叩き潰さないといけないのかな?立場的に。彼の個性って多分アレだしね」 

  

 一歩一歩こちらに近づいてくるスイリュー。

 そういえば聞いたことがある武術界は、個性黎明期以降表社会より距離を置いて、だからこそ正しく情報が伝えられていると。

 

「お前に関してはとばっちりだね、勝手に期待されてんだよ、イズク君を支える存在だって。まあ雄英高校で相手どれる人いないだけだろうけど」

 

「出久が死ぬって、アイツが死ぬって何なんだよ!!

 なんで一学生に過ぎないアイツがそうなるんだよ、

 なあ師匠、アンタは何を知ってんだっ!」

 

 俺のことなんてどうでもいい。

 なんであのタンクトップタンクトップ言ってる、誰よりヒーローらしい鍛錬馬鹿が死ぬ話しになるんだっ!

 

「彼が遺書を用意してたの知っている?」

 

「はっ?」

 

「確信あるんだろうね、何よりも本人が。

 多分近いうちに死ぬって。

 だからイズク君は」

 

 スイリューは、オールマイトから話されたという出久のアイツの目的、やろうとしていることを告げた。

 

「最も平和のためになるタイミングで死ぬつもりだ」

 

(多分オールフォーワンの戦力をできるだけ減らして個性を奪われる前に、タンクトップマスターあたりにワンフォーオールを譲渡するつもりだろうね)

 

「んだよ、ソレ。

 おい、教師達は、ヒーロー達は何してやがる。

 オールマイトは、タンクトップマスターは、グラントリノの爺さんは、なんでそんな覚悟をキメさせるまで放置してんだよ!」

 

「詳しくは知らない、俺はそこまで彼と親しくないし。

 話し聞いても勝手にすればって思った。

 ただ、お前が俺の弟子がそんな馬鹿らしい話に巻き込まれるのは納得できないから辞めさせにきた」

 

 あくまで自分と自分の気に入ってる俺のためだとスイリューは言う。

 死にたいならば勝手にすればいい。

 自己犠牲、ヒーローのソレを理解できないから。

 でも、自分の弟子が爆豪勝己がそうなることは許せない。そんな風に師匠の目は語っていた。

 だから、

 

「そこ退いてくれ師匠」

  

「何処へ行く気だ?」

 

 師匠の不器用な心配は分かった。

 弟子がそんな風になってほしくない気持ちも知った。

 出久になんらかの事情があることも理解した。

 だから、

 

「アノ馬鹿をブチのめして事情を吐かせる」

 

「駄目だよ、それは許さない」

 

 師匠はそこで冥躰拳の構えをとる。

 

「お人好しのお前は、間違いなく彼らを許容する。

 そして彼らに助力する」

 

 俺はそれが許せない。

 その言葉は必殺の拳と共に打たれた。

 でもソレはもう見えている。

 顔面狙いの拳を頭をずらすことで躱し、カウンターで腹を打つ。

 予測していた師匠は後ろに飛ぶことで衝撃を逃した。

 

「夢なんだよヒーローになることがっ!」

 

 その師匠を追いながら俺も殴りかかる。

 

「そんなものが命を懸けることかっ!」

 

 師匠も拳を振るいぶつかり合う。

 

「憧れたんだ、勝ち続ける姿にっ!」

 

 叫びが拳のぶつかり合う衝撃が空気を震わせる。 

 

「オールマイトはそれ以外何もない!

 あのナンバーワンヒーローは、平和と勝利以外何もないだろうが!」

 

 繰り返し打ち出される拳が、火花を散らしお互いの間で爆ぜる。

 

「俺は出久と一緒にヒーローに成って勝ちたいんだよっ!」

 

「その当人が自己犠牲心の塊で死にたがりだろうが!」

 

 俺の攻撃は全て師匠に防がれ、攻撃するたびに俺だけがダメージをおう。

 

「だから止めんだよっ!一緒に歩こうと手を引くんだ」

 

 あの日のアイツが川に落ちた俺に手を差し伸べてくれたように。

 

「「冥躰震虎拳っ!!」」

 

「「冥躰空龍拳っ!!」」

 

「「冥躰鳳翔拳っ!!」」

 

 繰り出される奥義全ても尽く上をいかれる。

 何一つとして俺は師匠に及ばない。

 

「なんでだ、なんで遊び呆けているアンタに俺は及ばない。あんだけ鍛錬してもアンタに勝てないんだよっ!」

 

 俺は強くなった、師匠がロクに鍛えてないなら追いつける筈なのに、なんでその距離は縮まらない。

 俺の鍛錬は全て、師匠の才能以下なのかよ。

 

「お前が、俺を師匠と呼ぶからだよ」 

 

 何時もの皮肉混じりの嘲笑ではない、堂々とした自慢気な笑みをその顔はしていた。

 

「弟子に負けるなんて格好悪い姿をさらせるか」

  

 んだよ嘘つきめ、今時隠れて修行なんて流行らねえんだよ。 師匠。

 

 

 

 それが期末テストの時間で起きた俺に関すること全てだ。そんで、

 

「何か言うことはねえのか出久?」

    

 場所は変わって保健室。

 全身を殴打された俺はミイラのごとく包帯で梱包されてベッドに寝かされていた。幸い骨は折れてねえ。

 横には俺以上にズタボロな馬鹿。

 あのオールマイトを下手な敵以上にマジキレさせた大馬鹿野郎だ。

 

「巻き込みたくない」

 

 散々ボコられても変わらない。

 痛みで変わる程度ならここまでこじれない。

 人を助けるためならどこまでも強情になれるのがコイツだからだ。

 

「僕は皆に死んでほしくないんだ」

 

 それだけのナニかがあるのかよ。

 確信を得ても呆れてため息がでる。

 けどな、

 

「ヒーローになりゃ、安全なんてありえないだろうが」

 

「オールマイトにもそう言われたよ」

 

 分かってんだろうなコイツにも。

 もう黙っていられないと。

 そう揺るがすくらい、オールマイトは肉体的にも精神的にもボコッたのか。

 

「あの脳無さ、翼君だった。調べてもらったら確定したんだ。本人も行方不明、もう五年だって」

 

 ヒーロー殺しの時の翼のついたヤツか。

 だからコイツは決めちまったのか。

 

「勝己、林間合宿が終わるまで待ってほしい」

 

「そこでナニカ起きるんだな」

 

「僕はそう確信してる」

 

「居るんだな?クラス内に、ヴィラン連合の内通者が」

 

「ソレをやらせるヤツが敵なんだよ」

 

「お前は内通者も救いたいのか」

 

「あの魔王気取りは、ロクでもない手段で従えるんだ」

 

 はあコイツは全く。

 

「分かったよ、林間合宿終わるまではまってやる。

 だが条件が三つある」

 

「条件?」

 

「一つ、林間合宿で起こるコトは説明しろ、つーか何か起きたら俺に頼れ」

 

「分かった、僕は君を頼るよ」

 

「二つ、遺書なんてフザけた物は破り捨てろ」

 

「分かった、オールマイトにも叱られたしね」

 

「三つ、未来日記を書け」

 

「未来日記?」

 

「それに書いて本当にしろ、テメェは好かれてる女連中に囲まれて、最高のヒーローに成るってな」

 

「勝己」

 

「林間合宿までだ待つのは、その後全部話してもらうからな」

 

 納得はしてねえ、けどコイツの葛藤くらいは受け入れよう。

 コイツがやりきるまでやらせたら助けてやればいいのだから。

 

 

 

 ちなみに期末テストで俺らは合格扱いらしい。

 試験時の内容も根津校長とリカバリーガールのみで秘匿するのだと。

 師匠は雄英高校に居ることは納得してくれた。

 ただ、死ぬことだけは許さないと念をおされたが。

 なお、単に俺より強いからとスイリューを推薦したオールマイトは重傷な俺の姿に驚いて。もろもろ終わったら説教されるらしい。

 

 

 

 

 

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