タンクトッパーイズク   作:規律式足

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第44話

 

「ってな感じでやってきました!」

 

 県内最多店舗数を誇るナウでヤングな最先端!

 木椰子区ショッピングモール!

 

「なあ、俺は別に必要なもんねえって」

 

「一人で無人島に流れ着いてもタンクトップがあれば大丈夫だよ」

 

 クラスメートが盛り上がる中、テンションの低い二人の若人。それが僕緑谷出久と爆豪勝己。 

 勝己は人の多いトコ苦手だからね。

 逆ナンされるから。

 

「やかましいわKY男子共、お前ら来ねえと女子が参加しねえんだよ!」

 

「「それが本音かよ!というか中学時代もあったな」」

 

「「「中学時代もかいお前達!」」」

 

 なるほど必死に誘うわけだよ、女性との買い物なんてクラスメートでもそうそうないしね。

 僕たち来ないと女性陣来ないのか、言い出しっぺ葉隠さんなのに。

 でもね峰田君。

 既に両腕が芦戸さん梅雨ちゃんに抱きつかれて、後ろで耳郎さんが不満気に見てる光景とか君は認識したかったのかい?

 僕は僕で、百さんに麗日さんが距離を詰めようとしているし、葉隠さんが首に手を回して背中に抱き着いてんだよね。HAHAHA。

 

「「「このモテ男共が」」」

 

「「こっちが悪いのか?」」

 

 こうなることは察していたよ、はぁ。

 それでも酷い妬みでいじめにならないのが幸いだよ。

 そんなことする子達じゃないしね。

 しかし、私服姿でも体育祭のせいで注目されてるね。

 スマホに撮られるのマナー的にどうなんだろ?

 

「それでどうしよっか?皆同じ物が必要って訳じゃないよね?」

 

「せっかくだから順繰りに皆で回るか?

 時間もあるしな」

 

 店は山程だけどある程度エリア分けされてる、あんま来たことないし、観光がてら見物もありかな?

 

「とりあえずウチ大きめのキャリーバッグ買わなきゃ」

 

「俺はアウトドア用の靴ねえんだよ」

 

「ピッキング用品と小型ドリルってどこ売ってんだ?」

 

「峰田は入口の警備員に預けていこう」

 

 色んな意見があったので目的ごとに班分けして時間決めて自由行動となった。

 勝己は必要な物がないため芦戸さん達の荷物持ちをやるみたい。

 両腕から離れてほしいみたいだけど、来るまで間に三回逆ナンされたんだから、抱きつかれてなさい。

 

「じゃあ出久君は私達と、」

 

 と麗日さんに誘われようとしたとき、一人の青年が目についた。フードを纏った不気味な彼は、僕に意識を向けていた。

 一人になるべきだね。

 こっちを窺っているよ。

 

「ごめん、ちょっとトイレ。先行ってて居場所はタンクトップで分かるし」

 

 とりあえず一芝居売って距離を取ろう。

 

「待つけど?」

 

「時間は有限だしさ、行っててよ」

 

 気配からして危険だ。

 それに何故か、ワンフォーオールが疼く。

 けど念の為。

 

「皆を頼んだよ勝己」

 

「分かった」

 

 全てを察してくれる幼馴染に頼んだ。

 皆がバラけて一人になった所、僕は自販機に向かい。

 

「それでさ、何か飲む?」

 

「随分図太いんだな、緑谷出久。

 じゃあ腰でもかけてまったり話すか」

 

 雄英高校襲撃事件、あの脳無に指示をだしていたヴィラン、死柄木弔と僕はこうして邂逅した。

 

「だいたい何でも気に入らないんだけどさ、

 今一番腹立つのはヒーロー殺しさ」

 

「仲間、ではないよね。むしろステインは君達を誰よりも危険視していた」

 

「だったみたいだな。こっちはヴィランの先輩を勧誘したと思ったら、敵を懐にいれただけだった」

 

「脳無を保須に放ったのは嫌がらせなワケか」

 

「まあな、ヒーロー殺し様の粛清よりインパクトをだしたかったんだよ。俺達ヴィラン連合のな」

 

「その嫌がらせのためにどれだけ犠牲、とか言っても通じないよね?」

 

「気にしてたらヴィランしてねえよ」

 

「勝手だな、迷惑だよ」

 

 話してみると、記憶にある巨悪や大物ヴィランとはまるで違う存在だな。何か己に芯があって行動している輩とは違う。力を持て余し途方にくれた若者にしか感じない。個性社会によって顕在化された個性の衝動に心がついていかない青年にしか見えない。

 だからこそ厄介。

 こういった輩にこそ、巨大な悪意の塊であるオールフォーワンは噛み合い過ぎる。ヤツの存在がコイツらには芯となってしまう。

 

「なあ、なんで誰も俺を見ない?

 いくら能書きたれても結局ヤツも気に入らないものを壊しただけだろう。

 俺とは何が違うと思う、緑谷?」

 

 問いかけね。

 けどさ、答えは決まっている。

 

「変わらないさ、お前達は他者を踏み躙る、衝動に呑まれただけの悪党だ。

 目立つ云々は知ったことじゃない、理想なんぞ関係がない。騒いでる連中は単にネタが欲しいだけだろ?」

 

 ステインの信念理想は一理ある。

 だが、アイツの存在を認めてるヒーローなんていないんだよ。

 

「は、それでヒーロー志望かよ。

 お前ってこっち側じゃねえの?」

 

「僕は誰かに手を差し伸べる為にヒーローになる。

 娯楽として大衆を満足させる為じゃないよ」

 

「何か、分かるかもと思ったんだけどな。

 お前とは噛み合わないな」

 

 死柄木弔はそう言って立ち上がり、去ろうとする。

 

「逃すと思うか?」

 

 僕は構える。

 コイツはヴィラン、そして危険だ。

 

「黒霧に脳無を配置させてある。追ったら暴れさすからな。お前と爆発野郎ならなんとかできてもいっぱい死ぬぞ」

 

「くっ」

 

「結局オールマイトなんだろうな。アイツのヘラヘラした面が気に入らない。

 お前や無個性ヒーロー共は噛み合わないけど、とりあえずオールマイトを潰してから考えるよ」

 

 ヒラヒラと手を振りながら死柄木弔は去った。

 

「すいません、会話内容は伝わりましたか?」

 

 僕は電話を繋いだままの塚内さんに話しかける。

 

「ありがとう緑谷君、けれど追跡はしないでくれ。

 騒動にしないでこちらで対処にあたる」

 

「しかし」

 

「何もなかった、今回はそうするべきだよ。

 転移個性なら対処できないしね。

 雄英高校にはこちらから伝えておくから君は休日に戻ってくれ」

 

 言っていることはわかるけど。

 

「騒動を起こし名をあげるのが目的なら、こちらも騒ぐべきじゃない。有益な情報は手に入り犠牲者はいない、ならそれで良しとしよう」

 

「分かりました」

 

 単なる遭遇、そして死柄木弔自体は捕えるにはまだ足りないのか。

 落ち着かない気分を抱え、僕は皆と合流し休日を楽しんだ。

 これから起こるであろう騒動を予感しながら。

 

 

 

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