タンクトッパーイズク   作:規律式足

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劇場版 二人の英雄 3

 

「んで、言い訳を聞こうか?」

 

「一高校生が外国語の最新警備システムを操作できるわけないでしょ」 

 

「納得したが、作戦の最重要箇所だろうが阿呆」 

  

 返す言葉もない。 

 流石にコンセントのくだりは冗談だが、警備システムをなんとかしないことにはプロヒーロー開放どころか、島にいる全ての人の命に関わるのだ。 

 警備ロボットに攻撃命令をだされたらどんな惨劇となるか。

 

「となると警備システムをなんとかできる人を探して助けるとか?」

 

「警備室に血の雨降ってなきゃいけそうだが、治療手段がねえ」

 

「いっそ壊す?」

 

「パソコンの勉強やり直せ」

 

 二手に別れて警備室に向かうことは問題ない。

 だが足りないのは専門知識、こればかりは個性ではなく学ばないとなんとかできない。

 

「あの、」

 

 するとメリッサさんが手を上げていた。

 

「私ならシステムをなんとかできると思う。

 大元はパパの作ったものだし、見たことあるの」

 

 それなら書き換えられたシステムをなんとかできるかもしれない。

 けど問題として、

 

「なら決まりだ。八百万ベルト作れ、頑丈なやつ。

 出久とシールド女史が外から潜入し奇襲後に警備システムの奪還。

 俺達が非常階段を登って真正面からヴィランの目を引きつつ警備室に向かう」

 

「勝己それだと」

 

「シールド女史が危険だとでも?

 相手がデヴィット博士を連れていった以上どこにいても同じだ。人質にはうってつけだしな。

 警備ロボットに囲まれてもアウトだからお前が連れていった方がまだ安心だ」

 

 言われてみれば確かに。

 富豪やプロヒーロー達の身柄を放置している以上連中は恐らく身代金目当てではない。

 より大きな利益を生む発明品と、発明品を生み出せるデヴィット・シールド博士の頭脳そのものが目当てなのだろう。そして彼に言うことをきかせるために有効な手段が娘であるメリッサさんだ。

 

「強制はしねえ、けど自ら名乗りでた以上やる気なんだろう?」

 

「うん、私は皆を助けたい!」

 

「よし出久テメェは必ず警備室まで送り届けろ、そうすりゃこっちの勝ちだ」

 

「了解、彼女は任せて」

 

 無個性だ女性だからとは言わない、積み重ねた状況を打開できる力が彼女にはあり、彼女にやり遂げる思いがあるなら、力にならずして何がタンクトップか。

 

「俺達は無視か爆豪?」   

 

 まあ黙ってられないよな、君達も。

 

「USJの時と同じで無力だと言いたいのか」

 

 君達が気にするのは分かる、けどそういう性格じゃないよ勝己は。

 

「来ると分かりきってる奴らに確認は必要か?

 出久が囮とか言ったが両方本命、ぶち抜いて助けるぞテメェら」

 

 信じているからね勝己は、皆がヒーローなんだってことを。

 

「おらはじめる前にテメェが音頭とれや出久」

 

「ああ緑谷君なら適任だ」

 

 飯田君の言葉に皆が頷き、自然と円陣となっていた。

 

「みんなはじめる前に言っとく、今回の件学生である僕らには荷が重くやるべきことではないことだ。

 でもさ、仕方ないだろ?

 助けてくれる誰かがいないなら、誰かには僕らがなるしかない。助けたい、そんな気持ちが心に一欠片でもあるというのなら、

 さあみんなでヒーローをはじめよう!!」

 

「「「おうっ!!」」」

 

 絶対に助けだす。

 そんな気持ちを新たに僕らは動きだした。

 

 

 

「とはいえ怖いかな?これ」

 

 上空かなり高め。

 垂直なセントラルタワーの壁を登り続けることかなりの距離。懸念していた空中ドローンの気配もなく、順調に目的地へと近付いていった。

 具体的にいうとロックマンXの壁蹴りをエンドレスでやっているだけだけど、いかにタンクトッパーでもしんどいもんはしんどい。

 メリッサさんが話かけてかたのは、そんな浮遊の個性を使うか脳内で検討し始めたころだった。

 

「イズクは強いね」

 

 よく考えたら年頃の娘さんをおんぶしてベルトで体を固定するのは問題かな?峰田君血涙流してたし。

 

「私は怖い、ヒーローになりたかったとか言ってたくせにこれからヴィランと遭遇するかと思うと震えがとまらないの」

 

 彼女の言葉は当たり前のことだ、誰だって痛いのは嫌だし、死の恐怖は拭えるものではない。

 僕が平気なのは、本気で怒ったオールマイトを知るがゆえだろう。 

 恐怖に勝る感情を抱きながら戦った経験が、僕にヴィランとの戦いを躊躇わせないのだろう。

 こんなんじゃ個性あってもヒーローなんてなれなかったよね、とメリッサは僕の肩に顔を乗せながら呟くがそうは思わない。

 

「その感情を抱えながら、そんな恐怖を自分以外に味あわせたくなくてヴィランに立ち向かおうとする君は既にヒーローだよ」

 

 恐怖を知り、恐怖に打ち勝つことこそが真の強さなのだから。

 

「ありがとうイズク」

 

 メリッサの体から震えが止まった。

 何があっても守るつもりだが、彼女自身が動けるならそれに越したことはないのだ。

 

「彼処よ」

 

 指差された箇所は非常口。

 災害時救急隊が入れるようになっている仕様のため外から容易くあけることができた。

 僕はメリッサさんを下ろすと人の気配がする方向へと向かい、大きく開いた場所を見つけた。

 音もなく侵入して、入口の壁に隠れて中を伺うと其処は警備室ではなく保管庫だった。

 

「君が今回の件を企んだんだね、サム」

 

 その場にいたのは3人。

 メリッサの父であるデヴィット博士とその助手である肥満気味の男性のサムに、ヴィラン達の首領だと思われる鉄仮面の男。

 

「思い出せば、ヴィランを装った者達に襲撃させて研究成果を取り戻す提案を君はしてきてたね。今の今まで忘れていたよ。

 サム、僕は君を信じていたんだけどね」

 

 自嘲するように力無く笑うデヴィット博士。

 タルタロス並の警備にヴィランがどうやって侵入したのか気になっていたが、内部からの手引きがあれば不可能ではない。

 

「先に裏切ったのは貴方じゃないですか」

 

 裏切る?

 

「個性を増幅させるサポートアイテム、この装置と理論を公開できたらどんな栄誉と名声を得られたことか。

 なのに貴方は退院してからは、政府からの封印要請に反対もしないで納得し、せっかくの機会を不意にしたじゃないですか!

 私がどれだけお仕えしてきたと思うのです、栄誉も名声も得られないなら、お金だけでも欲しいじゃないですか!!」

 

 そんなことのために。

 

「それは親友のために創ったんだ。

 弱っていく親友が再び戦えるようにと、あの輝きを失わないために創ったんだ。

 けれど、彼は必要ないと笑った。

 いつものように平和の象徴たる笑顔でそう言ったんだっ!!」

 

 デヴィット博士は名誉ではなくただ友のためにあのサポートアイテムを創った。

 だから納得したのか、その研究を理不尽に奪われたとしても、他ならぬオールマイトがそう望んだから。

 

「それはお前には有り余るほどの名声があるからだろうが!!」

 

 納得はしないよね、こいつみたいなヤツには。

 

「さあ約束の品です、報酬は頂けますね?」

 

 ひとしきり叫んだ後、媚を売るように鉄仮面にケースを渡すサム。

 メリッサさんが出たがっているがまだそのタイミングじゃない。

 

「報酬? ああ報酬ね」 

 

 ケースを受け取った鉄仮面はつまらなそうに呟くと、逆の手に握る拳銃をサムに向けた。

 

「な、なんで?」

 

「研究しかできない馬鹿は、ものを知らないらしい。

 まともな取引するヤツがヴィランなんてするかよ。

 奪ったらタダになるんだぞ?

 博士と違ってコイツの理論を再現できるわけでもないしな」

 

 コンコンとケースを叩きながらそう言った。

 お前はいらないと言外に告げ、指先に力をこめる。

 

「ああ博士、アンタにはついてきて貰おうか?

 警備システムはこの奥でウチのモンが掌握している。娘とついでにこのデブの命が惜しければ従え」 

 

「まともな取引をしないからヴィランなんだろ?」

 

 娘のことをだされ冷や汗をかくデヴィット博士だが強がるように言う。彼は分かっている、もうどうしようもならないと。ヒーロー達が、オールマイトが拘束され助けなどこないのだと。

 

「取引?命令だ」

 

 けれどここには僕がいる。

 

「もうやめてもらうよ。ここからは僕が相手だ」

 

「まだガキがいやがったか」

 

 勝己達は充分に引き付けてくれたみたいだね。

 

「イズク君、メリッサも」

 

 驚く博士の声を聞きながら、僕は鉄仮面を見すえる。

 強いヴィラン、油断はできない。

 

「図に乗るなよガキが!!」

 

 鉄仮面が周囲の鉄を操って襲いかかるが、僕はそれを片手で受け止める。

 巨大な鉄の先端を握りながら、腹に溜まった思いを叫ぶ。

 

「返せよソレ」

 

「あ?」

 

「ソレは一人の男がダチのために創ったものだ、おまえ何かが持っていていいもんじゃない!!」

 

 オールマイトとデヴィット博士の友情の形を自身の欲望に使おうとするコイツに憤り叫ぶ。

 速やかにぶちのめし終わらせる。

 そう決意して拳を握りしめ構えれば、

 博士が鉄仮面に飛びかかっていた。

 

「イズク君、君はメリッサを連れて警備室へ!

 まだコイツの部下がいる!

 メリッサ、システムを解除してヒーロー達を開放するんだ! 私の娘ならできる!」

 

「パパ!!」

  

「イズク君きっかけは君だったんだ、君のおかげでトシと久しぶりに本音で語り合えた。

 昔のような彼の相棒に戻れたんだ!

 だから、ヒーローならやるべきことを為し給え!」

 

 倒せない相手ではないと思う、けれど確証なく一人のヒーローの思いを無下にはできない。

 

「行くよメリッサ」

 

 彼女を抱えて警備室へと走る。

 そこにはいるヴィランを倒して島を開放するんだ。

 

「仕方無え、取れるものだけで我慢するか」

  

 鉄仮面の呟きが焦燥を募らさせるが、博士の思いを優先し、僕は駆けた。

 

 

 

 

  

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