タンクトッパーイズク   作:規律式足

50 / 113
第50話

 

 Iアイランドの騒動からしばらくした夏休み。

 今まで一度足りともヴィランの侵入を許していなかったIアイランドの大事件は全世界へ報道され、その騒動を解決した我等が雄英高校一年A組はワールドクラスの知名度になってしまった。

 ドローンに録画された映像はデヴィット博士の個性増幅装置の存在がふせられ、あの鉄仮面はワールドクラスのスーパーヴィランとして名と強さついでに罪状を大きく上げることとなる。

 僕と勝己は轟気空裂拳を放つ瞬間を撮られ、轟君飯田君達の活躍、そして上鳴君のウェイ顔がお茶の間に放送されてしまった。

 超新星達。

 USJ、体育祭と続いて僕達はそんな高いハードルで世界から見られることとなる。

 それはともかくとして僕は目の前の2枚の映画チケットを見て悩んでいた。

 タンクトップラビットが仕事のお礼として受け取ったが既に見てしまったためいらないと渡された映画チケット。

 『ウサギとカメの世界大戦、あのかけっこの屈辱を僕らは忘れない』

 のタダ券なのだが、どうしたら良いか。

 一体誰に渡せば、一番(勝己が)面白いだろうか。

 自分が誰かに渡したらトラブルの種だし、せっかくだから梅雨ちゃん耳郎さん芦戸さん冬美さんに渡すべきだろう。果たして誰が一番勝己を真っ赤にするか。

 夏休みの課題を終え、朝の鍛錬を済ませた僕は居間に座りテーブルの上のチケットを前にそんなことを悩んでいた。

 ピンポーン。

 玄関のベルが鳴った、宅配だろうか? 

 注文した限定タンクトップはまだ先の予定のはずだけど。

 気になりながら玄関を開けるとそこには、

 

「おはようございます、お隣に引っ越してきました。デヴィット・シールドです。今後ともよろしく」 

 

「娘のメリッサ・シールドです。こちら引っ越し蕎麦です」

 

 なんで居るんですか?個性社会の超VIP親娘。

 

「久しぶりだねイズク君。手続きのためこんなに時間がかかってしまったよ」

 

 半月たってませんよ、博士。

 

「ね、すぐに会えたでしょ?」

 

 君は学生の上研究室も構えてたよね、メリッサさん。

 

「とりあえず、玄関で長話もなんですからどうぞ。

 母は数日ほど留守でして」

 

 単身赴任のお父さんが久しぶりに帰国したから、二人で旅行に行ってるんだよね。

 僕も誘われたけど、夫婦水入らずを邪魔しちゃ悪いから。

 

「そうか、間が悪かったな。是非ともご挨拶をしたかったけど」

 

「私もお会いしたかったな」

  

 長期休みだから仕方ないよね。

 居間で座ってもらい人数分の麦茶を出す。夏はこれだよねと思うのは日本人だからかな?

 興味深そうに見ている親娘の姿が微笑ましくなる、まあ日本の住宅って外国と大分違うみたいだしね。

 麦茶で喉を潤し、一息つけた所で博士は説明する、どうして日本に来たのかを。

 きっかけはやはりあの事件。

 被害者で補償すらしようとIアイランドでの博士の立場は悪くなり居づらくなってしまったこと。絶対安全を謳い、科学者達の箱庭を揺るがしたことはそれだけ重いのだ。

 そしてオールマイトのこと。

 親娘揃って事情を知ってしまった今、彼を放っては置けず相棒として傍でサポートしたいのだ。正直こんな機会でもなければ博士がIアイランドから出ることは不可能だったらしい。

 仕事先についても問題はない、雄英高校のサポート科の講師として雇ってもらえたらしく、研究も雄英高校の施設なら充分とのことだ。メリッサさんもサポート科に編入するようだ。

 安全面に関しても大丈夫だ。このアパートは僕がワンフォーオールを受け継いだと知ったタンクトップラヴァーの手によって土地ごと買い取られ改造されている。

 セキュリティ面は当然として、住民たちもタンクトッパーが主だがウチの一家を除いてプロヒーローだけなのだ。ヒーロー関係限定で家賃は格安、そのため生活の厳しいヒーロー達が多く集まっているのだ。

 

「ヒーローの生活が厳しいのかい?」  

  

 その説明にデヴィット博士は疑問をもったようだ。

 ヒーロー飽和社会ではあるが、犯罪発生率の高さからヒーローは食うに困らない仕事という認識が一般的だ。

 だがこの国にはオールマイトがいる。

 彼の活躍だけでヒーローの仕事は減る。

 その上日本のヒーローは公務員扱いで副業は認められても、被害者から報酬を受け取ったり、凶悪ヴィランに対する被害者遺族からの個人的な討伐報酬が認められない。依頼をされれば、依頼人からは受け取れるが突発的な人助けに関しては、良くて特別報酬が下りるが、基本はヒーローとしての評価と査定が上がるだけだ。

 討伐報酬に関しては国からは出るが他国に比べたら安い上、ヒーローが復讐代行業になることを危惧して遺族からの報酬は禁止されている。

 暴力が許された派手な警備員、公務員な探偵、実力は世界でもトップクラスにも関わらず日本のヒーローはそんな認識だ。事務所もヒーローの数だけあると言われるほど小規模で個人企業すぎる。屋台のラーメン屋じゃないんだからとラヴァーが愚痴っていた。

 

「日本は家賃が高いですからね、けどこのマンションの共同生活みたいな感じは楽しいですよ」

 

「トシとヒーロー公安委員会のオススメ物件だったけどこれなら安心だね、セキュリティ面なら私も協力できるしね」

 

「ならラヴァーに連絡しますね」

 

「生タンクトッパーを観察できる良い環境でもあるし」

 

 あっそれもあるんですね。

 それからいくらか話したあとシールド親娘は帰っていった。林間合宿までまだ時間はあるし、彼らもまだまだやるべきことがあるらしい。

 そういえば、夏休み中にメリッサさんに学校案内も頼まれたな、クラスの皆にも声かけるか。夏休み中でも連絡すれば施設を使えるし。

 夏休み中に皆に会えることに喜び予定をたてる。

 しかしそれがあんな騒動になるとはその時僕は予想すらしてなかった。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。