タンクトッパーイズク   作:規律式足

62 / 113
第62話

 

 オールマイトが戦っている。

 オールフォーワンと戦ってしまっている。

 僕が不甲斐ないばかりに戦い続けてきたあの人を再び戦わせてしまっている。

 一度は打倒した相手、あの恐ろしい闇の帝王と。

 体が動かない。

 不調だったのは承知していた。

 全開時の半分も戦えないと分かっていた。

 でも、でも、

 オールマイト、貴方が戦うよりずっとよいから。

 貴方に幸せに生きて欲しいから、だから。

 

「気にするな出久」

 

「マスター」

 

「オールマイトの選んだことだ。 

 アイツは後悔なんざしていない。

 己の幕引きを己で決めれることはな、とても幸運なことなんだ、だから」

 

 見届けてやれ、僕が彼の後継者なのだからとマスターはその大きな手で僕の背を叩いた。

 

「それにな、今のオールマイトは間違いなく最強なんだよ」

 

 

「成程それがかの天才デヴィット・シールド博士の発明品か。サポートアイテムも中々捨てたモノじゃない、個人的には気に入らないが科学が個性を超える日が来るかもね」

 

「発明品だと軽々しく語るな、コレは友が私のために創りだしてくれた友情の証!!

 悲願を果たさんとする私に対する最高のエール!!

 侮るなよオールフォーワン、今日の私は人生で一番強い」

 

「だからこそ打ち倒す意味がある。

 君という、仮初の平和を照らす太陽を掻き消して世界をあるべき姿に戻すとしよう」

 

 再度ぶつかり合う、残り火を友の力で燃え上がらせたヒーローと奪い集めた力を振るう魔王。

 両者は拮抗し、都市を、いや世界を揺るがす。

 世界の運命この一戦にあり。

 事件を嗅ぎつけたマスコミにより、世界中にこの光景が流れる。

 そしてそれこそがオールフォーワンの狙い。

 

「弔がせっせと崩してきたヒーローへの信頼、

 決定打を僕が打ってしまってよいものか。

 残念なことにお前の惨めな真の姿は晒せそうにないようだ、なら確実な敗北で世界を再び闇で包もう。

 魔王たる僕が君臨するにふさわしい世界に」

 

 覇気が増した。

 子供じみた妄想を実現せんとするイカれた精神、それを実現してしまう最悪の個性、積み重ねられ煮詰まった凶気と執着。

 これが、オールフォーワン。

 

「マスターっ!」

 

 いくら避難誘導しようと全ての人を避難できるわけではない、残された人だっている。だからこそヤツはソコを狙う、ヒーローが命を落とすのはいつだって誰かを守る時だからだ。

 オールフォーワンがオールマイトに隙を作るために周囲を破壊しようとしていることに気づき、マスターに自分ではなく他の人を守ってくれと伝えようとする。

 けれど、そんな必要はなかった。

 

「赫灼鋼拳フルメタル・バーン」

 

 そこにはヒーローがいた。

 全身から炎を放つ偉丈夫。

 自らに努力と名付けた、のぼりつめた漢。

 ナンバー2ヒーロー エンデヴァーは右腕を黒く輝かせその一撃と灼熱をもって、オールフォーワンの複数の個性による破壊の衝撃波を相殺した。

 

「何をしている、

 何をしている!!オールマイト!!」

 

 誰よりも事件を解決してきた男は吠える。

 誰よりも頂きに挑んできた男は叫ぶ。

 誰よりも平和の象徴を追いかけてきた男は、

 誰よりもその背中を見てきた男は、

 誰よりも大きな声で、

 今まで一度も言わなかった言葉を告げる。

 

「最後の戦いなのだろう!

 果たすべき宿願の時なのだろう!

 ならば後ろを振り向くな!

 前だけ見据え、敵を討て!!」

 

 オールマイトが、平和の象徴がいなくなることを受け入れて、そして、

 

「貴様の後ろには、俺達が居る!!」

 

 存分に戦えと、自分達を頼れとそう叫ぶ。

 集ったヒーロー達と肩を並べてそう叫ぶ。

 この国最高のヒーロー達。

 オールマイトの下で平和を支えてきた英雄達。

 彼らは今、平和の象徴オールマイトの最後の花道がため、憂い無く戦えるよう其処に立つ。

 万難尽く我らが払うと叫び立つ。

  

 その言葉を受け取ったオールマイトは、平和の象徴としてではなく、師匠の教えだからではなく、ごく個人的な笑みを浮かべた。

 フッと、胸から溢れた喜びが口から零れてしまったように、八木俊典は笑った。

 

「小粒な英雄気取り風情が猪口才な」

 

 全開ではなくともオールマイト以外に防がれない、オールマイトのトゥルーフォームを引きずり出せると確信した衝撃波を難なく止められた事実に憤り、オールフォーワンは腕を肥大化させて、再び破壊の風を放とうとする。

 けれど飛んできたナニカがオールフォーワンの肩にぶち当たり、あらぬ方向に衝撃波を散らす。

 どこに当たればそうなるか分からないと打てない、そんな一撃。地面に落ちたソレを印鑑の形をしていた。

 

「闇の帝王を自称するにしては、実にユーモアの足りない言葉だな」

 

 カツリと足音を立てて現れるサラリーマンのようなスーツ姿の眼鏡をかけた男性。

 袂を別けたオールマイトの元サイドキック。

 未来をその眼で見る男。

 サー・ナイトアイ。

 

「私にはもう、貴様の敗北が視えている」

 

 自らの全てであるヒーローがためここに参戦。

 

「再び私と轡を並べてくれるかい相棒?」

 

「無論ですオールマイト。貴方に請われて断る道理などない」

 

 アメリカから帰還し、勇名馳せたその時よりこの国を守り続けた両雄は、一度は袂を分かとうとも今再び共に走り出す。

 

「オールマイト!!」

 

 ついには余裕すら捨て去り、闇の帝王は吼える。

 

 

 

「言った筈だオールフォーワン!!

 今日の私は人生で一番強いと!!」

 

 師より賜った最高の教え。

 親友父娘に渡された最高のサポートアイテム。

 後ろを任せることの出来る最高のヒーロー達。

 共に駆け出す最高の相棒。

 そして、

 あとを託せる、最高の後継者。

 こんな素敵なモノを得られた私は間違いなく、

 世界で一番幸せ者だ。

 

「オールフォーワン、私を太陽だと言ったな。

 だがそれは違う!

 私は一粒の星に過ぎない!」

 

 サーナイトアイの掩護とともにぶつかり合うヒーローと闇の帝王。

 かつてそうされたように英雄は語る。

 

「この世界には犯罪に苦しむ世界という夜に数え切れない程のヒーローという星が輝いている。

 私は一際目立っただけの星に過ぎない!」

 

 改良されたフルガントレットは全開のワンフォーオールに耐えきり、個性増幅装置は本来の活動限界を大きく伸ばす。

 

「私の姿に憧れた一人の少女がアメリカを照らす星となった。

 砂漠の心優しき青年が一国の守護者へと至った。

 最強を目指した若獅子はいまや庇護を与える獣王だ」

 

 ぶつかり合い撒き散らされる衝撃と瓦礫の心配は必要ない、全てヒーロー達が防いでくれる。

 

「そして私を追い越さんとする同胞は、誰よりも気高く強い炎だ」

 

 取りこぼしかける反撃も、攻撃の出鼻をくじくように掩護がはいる。

 

「星はある、ヒーローは居る!

 ならば私が此処で燃え尽き流れようと、何を恐れることがある!!」

 

 そして、あの日出会った希望を見る。

 そう彼がいる。

 誰かに手を差し伸べたいと望む心優しき少年が。

 

「人々よ!不安に思うのなら願ってくれ!

 流れる私に願いを込めてくれ!」

 

 私の全て、

 ワンフォーオールの残り火を全て、

 ヒーローとしての全てをこめて、

 人々の願いを今背負い、

 巨悪を討たんとその拳を、最後の一撃を振るう。

 

「星に願いを!!

 Shooting Star SMASH!!」

 

 流れ星のように人々の願いを込めた燃え尽きる最後の一撃。

 生涯最高のSMASHは巨悪を打ち砕き、長かった夜に終わりを告げた。

 最後にいつものようにスタンディングオベーションを決めて。

 オールマイトは勝利を飾った。

 ヒーローとして最後の勝利を。

 

「次は君だ」

 

 テレビから発信された短いメッセージ。

 それは多くの意味があるだろう。

 まだ見ぬ犯罪者への警鐘。

 平和の象徴の折れない姿。

 ヒーロー達へのエール。

 誰もが受け取り、その胸を昂ぶらせる。

 平和の象徴の勝利、伝説の巨悪の敗北。

 世界を変える一戦は此処に幕を降ろした。 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。