そういえば夏休み中だったよね。
神野決戦と言われた騒動から数日、僕は帰宅し両親と再会してから特に何事もなく過ごしていた。
父は仕事もあり再び外国へと行った。
今の役職はそう簡単に離れられるものではなく、まだしばらくは向こうにいるらしい。
家族で外国に暮らすことも考えたことはあるようだけど、日本が世界でもっとも治安が良いことは外国で長年暮らす父が誰よりも実感している、今回の騒動があっても移住を勧める気にはならなかったそうだ。
空港で見送る際、いかなる夢であっても自分は応援すると父は言った。自分も家族の生活のためといっても、側で支えてきたわけではないからと。ただ本当にやりたいことは見失うな、自分の感情に蓋はするなとキツく言われた。我慢していずれ決壊し破局するくらいなら、最初からぶち壊して新しく創ってしまえと。
相変わらずユニークな人だなと思う。
年に数回も会えないあの人は、情こそあれどネガティブとは程遠い我が道を行く人なのだ。
父を送った次の日は、まる一日メリッサに拘束されてしまった。オールマイトが約束を破らないとは知っていても心配で仕方なかったと言う。彼女は母の前だというのに僕に抱きついたまま大泣きした、どれだけ心配をかけたのか、どれだけ彼女に想われているのか、自分が考え無しであったと思い知らされた日だった。ちなみに既にメリッサと親友になった発目さんから、タンクトップを打ち倒すのは私のベイビーだから他の誰かに負けるんじゃない、とまるで宿敵のようなメッセージを預かったらしい。いまいち彼女との関係は微妙だ、いや会うたびにサポートアイテムで襲撃してくるから敵対よりな関係かな、メリッサによると彼女なりの心配はしていたらしいけど。
そしてクラスメートの皆や勝己とはまだ会ってはいない。無事であることは相澤先生から伝えて貰って僕からは告げていない。
これは僕の意思というよりは雄英高校からの指示で、今ヒーロー科40名は選択の時なのだという。数年に一度起こってしまう在学生の死亡や悲劇、それに直面し自身の進退をどうすべきか考えてもらう必要があるのだと言う、ここでヒーロー科や雄英高校を辞める選択はあるべきなのだそうだ。無論雄英高校としてはヒーロー科全員を素質ある存在だと認識している、育てる覚悟も熱意もある。だからこそ、今一度今後理不尽に立ち向かうかどうか家族と話し合い選んで欲しいのだと。
全寮制導入検討のための三者面談の前に、僕という当事者の存在と在り方でそれぞれ個人事の方針が定まらないよう連絡はできないのだ。
僕が僕だから無事だったに過ぎないのは否定できないしね。仮に勝己が攫われたらと考えたら、まあなんとかなりそうかな?強いし。
あと家に関しては三者面談は既に済んでいる。
というか、両親+タンクトップマスター+タンクトップ事務所の面々+付き合いのあるトップヒーロー+無個性ヒーロー二人+マンションの住人+バング師匠も同伴したから、何者面談だったんだアレ。
母は父より心配性だけど、昔からヒーローには慣れていることと僕の決意、そして寮にはタンクトップ事務所のヒーローが交代で常駐することで納得してくれた。
皆はどんな進路を選ぶのか、分かりきってはいるが、悔いのない選択をして欲しいと思う。
あとラビットとジャングルは意識戻ったのは嬉しいけど、タンクトップ着れないくらい包帯をグルグル巻なのに参加しないで欲しいです。いや嬉しいけど入院しててよ本当に。
「オールマイト」
「どうしたんだい緑谷少年?」
「僕は星になります、貴方のような星に。
だから見ててください、いつまでも元気で」
「ヒーローを引退したら自分が消えてなくなっちゃうんじゃないかな、と思ってたんだ私は。
それぐらいヒーローであることしか平和のことしか考えてない人生だった、一欠片も悔いはないけどね」
平和の象徴になった男の独白。
見る人によっては人間らしくないとすら評した彼の在り方。
けど貫き通し、やりきった彼は。
「これからは、皆がしてくれたようにヒーローのファンになってみようと思うんだ。
だから、書いてくれないかサイン。
私がタンクトップオールグリーンのファン一号で、最初にサインを貰った男だ」
どこか満たされた表情をしていた。
僕はなぜか涙を流しながら、人生初めてのヒーローとしてのサインを書いた。