タンクトッパーイズク   作:規律式足

70 / 113
閑話、尾白視点

 

「緑谷の背負ってるものか」

 

 同い年のクラスメートである緑谷出久は普通じゃない存在だ。それはタンクトッパーだからという意味だけじゃない(八割はそうだけど)、なんというか気負いや意気込みや在り方、そんな言い表せないナニカが同級生である俺達とは違うのだ。

 単なる16歳のヒーロー志望の高校生にはない凄味がアイツからは感じてしまう。同世代にしては大人びていると言われていた俺や障子と比べてもだ。

 最初はタンクトッパーで実戦を経験してるから、幼少時から将来を見据えて鍛錬を積んでいたからと思っていた、けどこれだけクラスメートで友人をやっていればそれだけじゃないことは分かる。

 緑谷には背負っているナニカがあることくらいは。

 ソレを打ち明けられる爆豪を羨ましくも悔しい気持ちになり、あの二人との間にある実力を含めた様々な差に負けていられないと奮起する。

 夜通し語り合う幼馴染二人をこっそり伺っていた俺達は乱入したい気持ちをぐっとこらえて静かに解散した。

 入寮初日はこうして終わった。

 

 

 朝、目覚まし時計の音で起きた俺はいつもより早い時間に首を傾げるがそういえば実家じゃないことを思い出す。起きたら母が朝食を用意してくれているわけじゃない、やるべきことはあるのは分かるが具体的には分からないからととりあえず早めに起きようと思ったのだ。

 一階に行こうとすれば同じことを考えていたのか障子と階段で合流してまずは洗顔から。

 キッチンから響く音と漂う香りから緑谷達だなと当たりをつける。緑谷は道場に内弟子のように住み込みで修練していた時期があったらしい、そのため炊事洗濯掃除もまた鍛錬の一貫だと捉えている。だから大人数の食事の用意にも朝の早い時間からの支度にも慣れているのだろう。

 とにかく手伝うか、あの手際と爆豪がいるから不要だろうが何もしないのは気が咎める。障子と共にキッチンへと向かった。

 

「良いね〜」

 

「本当にね〜」

 

 ついた先にはテーブルに座り満たされた表情の芦戸さんと葉隠さん(見えないけど声の調子から)がいた。

 

「軽快な包丁のリズム、漂う味噌汁のホッとする香り、日本人の魂を揺さぶるねえ〜」

 

「それが(将来の)旦那だと思うと余計にね〜」

 

 早起きして何してんの君達。

 あとソレ男女逆では?いやその考えも古いか、各家庭それぞれだよね。 

 手伝いをしないのかと思ったら、キッチンには緑谷に爆豪だけではなく麗日に梅雨ちゃんまでいた。流石に人数的に邪魔だよな、一人暮らしを経験してる麗日や共働きの両親に変わって家事をしていた梅雨ちゃんとは違って、出来なくはないけど指示待ちになってしまうだろうし。テーブルくらい整えるかと動き出せば大型炊飯器を抱えた爆豪と目が合う、

 

「おはよう」

 

「ああ、おはよう。尾白と障子も早いな」

 

 女子二人は既に挨拶済みらしい。

 

「何か手伝えないか?」

 

 早起きしても見てるだけというのも何だし手伝いを申し出る。

 

「なら丁度良かった、この米でオニギリを作ってくれないか?」

 

 炊飯器をテーブルに置き、大皿と具の入ったタッパーにビニール手袋とラップとお椀を用意しだす。

 爆豪は個性的にオニギリとかは作るのに向いてないから、芦戸達に頼むつもりだったらしい。

 朝食の分ではなく、昼食のためのオニギリ、今日は戦闘訓練らしいからお弁当を用意したほうがラクだろうと思ったそうだ。そう言うと爆豪は他のおかずを作るためにキッチンへと戻っていった。

 大きさ揃えるためお椀一杯を米の目安にしてオニギリを握る。慣れない作業だがやっているうちにああ共同生活なんだなと実感して少し楽しくなった。

 オニギリを作り終えた頃には皆が揃ったので、片付けてから全員で朝食。

 メニュー昨日と同じ和食だ。

 リクエストあるならやるよと緑谷が言えば、間髪入れず轟が蕎麦と答える。

 峰田が女子の手作り朝食と興奮したり、盛り上がりながら食べていると、切島が香ばしい肉を焼いた匂いに反応する。確かインゲンの豚肉巻だったかな?

 朝食の中にはないから弁当のおかずだと思うが、上鳴などが今食べたいと言い出す。

 味付けが弁当用に濃くしてあるのだからと爆豪は渋るが、TABETAI、TABETAI、と騒ぐ面々に根負けして端っこの切れ端だけだぞと皆に配る。

 

「「「ありがとうお父さん」」」

 

「誰がお父さんだ」

 

 皆の悪ノリしたお礼に苦笑する爆豪。

 

「お替りもあるよ」

 

 と他のおかずを用意してた緑谷が言えば、

 

「「「ありがとうタンクトッパー」」」

 

「扱いの差っ?! いや合ってるけど」

 

 緑谷がお父さんなのは無いな。

 

「駄目よ勝己ちゃん、甘やかすと子供達の教育に良くないわ」

 

 と梅雨ちゃんが爆豪を窘めていた。

 誰が子供達か、子供達だった。

 

「端っこの少しくらいいいだろ?」

 

「言うべきところはきちんと言わなきゃ駄目よ」

 

(((注意してる形だけど、夫婦的会話を楽しんでやがる。この蛙っ娘かなり攻めてるぞ)))

 

 美味い美味いと夢中になっている連中を除いて、梅雨ちゃんの動きに気づいた者たちはただ戦慄した。

 

 

 色々あった朝食を終えて、場所は変わり学校の教室。

 教壇に立つ相澤先生が、当面の目標である仮免の取得について説明する。

 人命に関わるが故の責任重大さと、仮免とあれど例年5割以下の合格率。

 それを乗り越えるために必要なモノ、それが必殺技なのだと言う。

 学校っぽくてヒーローっぽいことに皆が興奮するのだけど、緑谷お前は自重しろよ?

 ニヤリと笑った緑谷を露骨に警戒しだした先生方を見ながら自分も何か考えないとなと思う。

 尻尾と格闘技を活かした技か、難易度高いよな。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。