タンクトッパーイズク   作:規律式足

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閑話 轟焦凍視点

 

 仮免試験一次を個性で皆を巻き込まないために単独行動して突破。

 俺は一人、指示の下控室へと向かった。

 他の連中はいない、そこに寂しさを覚えるが緑谷や爆豪みたくサポートしながら戦うなんて技量は俺にはまだない。自分が突破することに専念せざる得ないのが俺の実力だ。だから二人と差がある事実に悔しく思う、アイツラなら誰よりも早く突破できるのに皆を優先しているのだから。

 けっこういるな。

 控室の突破者達、同世代あるいは一つか二つ年が上の実力者達。親父とばかり鍛錬してたし、偶に会う強いヒーローも年上ばかりだから見るのは新鮮な気分だ。雄英高校の同級生は別だし、先輩方は会ったことないし。

 

「マジっスか!?」

 

 聞こえた声のトコを見れば会場で絡んできた士傑の学生がいた。相澤先生の話しだと要注意な実力者。そいつは高いテンションで他校の生徒に話しかけていた。

 他の士傑生はいないから、アイツも単独で突破したのか。個性が俺みたく範囲の広い放出タイプなのかな。

 しかしどこかで聞いた覚えのある声だな。

 相澤先生が推薦入試トップだったとか言ってたから一緒だったのか?

 ヒマだし気になったから過去に思い馳せるのだが、正直あまり良い気分じゃない。当時の自分に否応なく向き合うハメになるからだ。あのままならない現状に苛ついて周囲を全て不快に感じていた頃に。

 今がそうじゃないから、親父が家族全員と向き合えて(最近自宅だとパンイチだけど)、俺がクラスメートがいないと寂しいと思うくらい学生生活を楽しいと感じているからこそ余計に過去の自分が嫌になる。どれだけ周りを拒絶して傷つけてきたのかを考えるとしんどくなってしまう。

 そんな気分で推薦入試の時のことを思い返せば確かに彼はいた、坊主頭の風使いで俺に張り合って僅差でゴールしたんだ。

 二度も話しかけてきたのに、俺はそれがはしゃぐガキにしか見えなくて鬱陶しかったんだ。だから冷たく跳ね除けた、あしらった。そんな軽く考えている連中と一緒になりたくなくて、それどころじゃないと自分のことばかりで。

 でも、その対応が夜嵐イナサを大好きな雄英高校に通う選択肢を奪ったんじゃないのか?

 俺みたいなヤツと同級生になりたくないからって。

 

「少しいいか?」

 

 だから、

 

「二人で話せないか?」

 

 とりあえず話してみたくなったんだ。

 

「いいスよ、話しましょう」

 

 イナサはニカリと笑った。

 

 

 控室の奥まった所でお互い壁に背を預けて向き合わずに会話する。正直内容が内容だけに向き合うのは気まずい気分だったから。

 

「俺熱いの好きなんスよ。ヒーローってのは俺にとって熱さだ、熱い心が人に希望とか感動を与える伝える。

 だからショックだった誰よりも熱い不屈の炎のヒーローが、氷より冷たい怒りの目をしていたことに」

 

 昔の親父の目か、家族皆が怯えていたあの眼差し。

 子供が見たらトラウマになるか(それが良いと目覚める人もいるらしいけど)

  

「だからかな?入試の時あんたを見て、あんたが誰かすぐに分かった」

 

 当時の俺はどこまでもやらかしてんだよ。

 

「日本一熱い高校生活目指して雄英高校を受験して、

 はじまった試験でお前に圧倒されたけど、けどさ」

 

 頭の上で腕を組んでイナサは言う。

 

「友達になりたかったんスよアンタと」

 

 当時の俺に手を伸ばしてくれたヤツを拒絶していたのか、確かに緑谷達みたく過去を知ってたり救おうとしてくれた訳じゃないけど。

 もう少し話そうと思えばあるいは。

 コイツもクラスメートになってたら緑谷みたく救おうとしてくれたのかも知れない。

 

「すまねえ。あの時俺は。当時のエンデヴァーは」

 

「良いスよ、昔のことは。

 体育祭見てアンタが悩んでたんだって気づいた。

 ヒーロー目指すなら救わなきゃいけないのに、嫌悪感から俺は雄英高校を選ばなかった」

 

 だから救えなかった、その機会は合ったのにと言う。

 

「ステイン逮捕の時のエンデヴァーを見た。

 あの人も熱い思いがあったんだと分かった。

 家族を思う熱い気持ちが伝わってきたんだ」

 

 それは自分が大好きな熱さそのものだったと言う。

 

「ガキだったんスよ自分は。向き合うの嫌がって逃げたガキっス。だから色んな機会を逃した。

 今は雄英高校を選ばなかったことを結構後悔してたりします。士傑も良いトコですけど」

 

 コイツがいるA組か。

 想像したら騒動が3割増しくらいされて楽しそうだあった。

 

「だから、何スけど」

 

 イナサは右手を差し出して、

 

「今から友達になりませんか?」

 

「こちらこそよろしく頼む」

 

 俺はその手を握った。

 

「学校違っても熱いダチいるのもアリでしょう」

 

「そうだな」

 

 そういえば、ふとコイツが喜びそうなイベントを思い出した。

 

「エンデヴァーだけど、近い内にやる超合金クロビカリのイベントに参加するぞ」

 

 鏡の前でポージングしながらカレンダーに書いた花丸を眺めてたし、遠足楽しみにする子供みたいに。

 

「マジすか!! 激アツじゃないスか!!」

 

「ああ尋常じゃないくらい暑苦しいぞ」

 

 緑谷も(嫌そうな顔してたけど)参加する。

 自分に太い筋肉がつかないからコンプレックスを刺激されて嫌なんだが、誘われて断れないらしい。

  

「クロビカリが眼の前でフライパンアートとかしてくれるらしいぞ」

 

 親父が飾ってたら居間とかに。

 自室に置けよ、というか燈矢兄さんは仏壇に置かれても喜ばないと思う。

 

「ウオォォ見てえ!!無個性ヒーローも熱いから好きなんスよね!!」

 

 そんな風に盛り上がりながら一次試験が終わるまで過ごした。

 過去の蟠りがときほぐれたようで心が軽くなった。

 

 

 

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