「即戦力が今すぐ欲しいからだって」
「エンデヴァーさんもそう言ってるな」
インターンをウチでやらないかとプロヒーロー達からのお誘いの連絡。
その理由はざっくりと戦力が欲しいから。
神野決戦、すなわちオールマイト引退以降治安は悪化する傾向にある。
といってもオールマイトの叫びにより奮起したヒーロー達によって劇的な変化というほどではないのだが、元々個人で動いて当たり前だったヴィラン達がヴィラン連合を真似して徒党を組むようになったのだ。無論ただのヴィランに遅れを取るヒーローなどいない、好き放題やりたいだけの者に鍛えたヒーローが負けることなどありえない。だがヴィランは個人で動くモノという先入観に加え、ヒーロー側の多くが単独での活動のため不意を打たれて敗北することが増えているらしい。個人では上回っていても集団で潰される、そんな状況なのだ。
そしてサイドキックを雇うヒーローはヒーロー業界内全体で実は少数派に分類される。前提としてサイドキックを雇える収入がないといけないし、事務所を構える必要がある。あのオールマイトのサイドキックであったサーナイトアイですら事務所の所員がサイドキック2名にインターン生1名という規模なのだから、サイドキックを雇うことそのものがどれだけハードルが高いか分かるだろう。そして飯田君の兄インゲニウムの凄さもまた。
徒党を組むヴィランへの対応、ヒーロー側は徒党を組まれてもまとめて撃退できる実力者を派遣する手段しか取れていなかった。
「じゃあ勝己はエンデヴァーさんのトコ?」
「サイドキックに的確な指示できて個人戦闘力の高いヒーローだしなあの人」
かつてはオールマイトに劣等感を抱いていたけど、要所要所でオールマイト以上の人だよねエンデヴァー。それこそオールマイト自身が私なんかになんで彼が劣等感抱くのだろと素で言ってしまうくらい。
ベストジーニストの所も良いけど、拘束より撃退が向いているしね勝己は。
「出久はどうすんだよ?」
「正直連絡来たヒーローのトコはある程度知ってんだよね」
とりあえず現場でサイドキックとして活動しても得るモノはあるだろう。場数を踏む事実は馬鹿には出来ないのだから。けど雄英高校のバックアップのある機会で行けるならより有意義なモノにしたいと思うのだ。
「選べる時点で贅沢なんだけどね」
せっかくだからクラスの皆を推薦しようかな?
ただインターンで公欠扱いになった場合、成績や授業態度に影響でたら即中止なため林間合宿補修組は厳しいんだよね。
上鳴君とか芦戸さんは学業面がなあ。
「だったら俺と同じトコに来ない緑谷君?」
壁からヌッと現れた全裸マン。
ビッグ3の一角にして三年生最強、透過の個性を持つ通形ミリオ先輩だ。
「サーナイトアイ事務所ですか?」
「そう、サーに見出されたから俺は成長できたしね」
選択肢としてはアリかな。
オールマイトのサイドキックでサポート担当。
というか、独断専行の化身であるオールマイトをサポートしきった事実だけで彼も超人だろう。確か個性は戦闘向きではなかった筈なのに、何気に戦闘力も高いし。
「最近はオールマイトの護衛もやっているから、とりあえず話だけでも聞きにいかない?」
そういえばそんな話もあったな。
オールマイトは平和の象徴だった。
ヴィラン側には死神に等しい存在。
だからこそヒーローを引退したオールマイトを襲撃しようという輩はいる可能性はある。
実際引退したヒーローに報復、あるいは名を上げるために襲撃するヴィランは各国でおり、世界的な問題になっているんだよね。
ヒーロー引退と同時にヒーローライセンスの返上して特権がなくなってしまうし。
故にオールマイト自身、警備の厳重な雄英高校敷地内から滅多に出ないのだ。引退しようと影響力は健在で襲撃されたら大問題になるしね。
「分かりました伺いましょう」
サーナイトアイからインターンの誘いを受けたわけじゃないけど一度話をしてみたかったし。
勝己はインターンの手続きやらエンデヴァーに返事やらでそこで別れて、オールマイトとサーナイトアイのいる職員室へと向かった。
「少しトシと距離が近過ぎじゃないかな?サーナイトアイ君」
「これぐらいが妥当でしょう、シールド教授。
むしろサポート科の一講師に過ぎない貴方がオールマイトに付き纏う方が問題だ」
「私はトシの親友なんだ、居たら話しかけるのは当たり前だろう?たかだかファンに過ぎない君と違ってね?」
「何年も前の関係をいつまで引きずるか見苦しい。
既に別の道を歩み袂を別けた終わった関係でしょう。いつまでサイドキック面しているか」
「それを君が言うのかなぁ!!」
「あの、二人とも仲良く、」
「「(トシ)オールマイトは黙って(ろ)てください」」
「はい」
職員室で修羅場発生。
オッサン達(シールド博士とサーナイトアイ)がオッサン(オールマイト)を取り合ってる。
絵面的に地獄だね。
職員室の端の方でオロオロしてる先生方と、我関せずな相澤先生に、写真見てニヤついているマイク先生に、ヨダレ垂らしながら熱心に見てるミッドナイト先生がいるけど。
「日を改めますね、ミリオ先輩」
「それがいいかも」
流石のナンバーワンに最も近い男でも加齢臭漂う修羅場に突貫は嫌だったようだ。
僕達二人はそっと職員室から立ち去った。
助けを求めるオールマイトの視線を見なかったことにして。