タンクトッパーイズク   作:規律式足

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閑話 治崎廻視点

 

「ではこれより会議をはじめる」

 

 イベント興行会社『八斎』 

 その現代表取締役である俺は会議のはじまりを宣言した。会議の内容は社の利益に大きく関わる重大案件、その中枢となるのは『笑理』だ。

 俺は今から恩人である親父の孫娘を金儲けの道具にしようとしている。

 親父は怒るかも知れない、もしかしたら盃を割られるだろう。

 だがこの計画にはそれだけの価値がある。

 この会議の結果しだいで収益は決まる。

 全ては死穢八斎會の、親父の、組員達の為。

 いかな罰を受けようと俺はやらなければならない。

 たとえ笑理を傷つけることになっても。

 組員達に白い目で見られようとも。

 俺はやらなければいけないのだ。

 

 笑理を宣伝ポスターに載せることを!!

 

 

「それでどちらのポスターを採用するべきか」

 

 ズラリと長机を囲うように幹部たる八斎衆は座り、その中央に祭り中に撮影した写真を加工した笑理のポスターが2つ並べてある。

 一枚目はブサイク大総統のお面を斜めに被った朝顔柄の浴衣を着てりんご飴を持つ笑理。

 二枚目はブサイク大総統のお面を斜めに被った向日葵柄の浴衣を着てチョコバナナを持つ笑理。

 さてどちらにすべきか、甲乙付けがたいな。

 

「ブサイク大総統のお面はやめません?」

 

「りんご飴とチョコバナナ、どちらが良いか?」

 

「利益どっちが大きいかですね」

 

「客の回転数と原価の問題か」 

 

「屋台の数も調べましょう、調理できる奴も」

 

「りんごの方が日持ちするか?バナナはシュガースポットでたら駄目だし」

 

「りんご飴は食べる時間掛かるから、チョコバナナじゃないですか?」

 

「確かにりんご一つは大きいよな、味も濃いし」

 

「りんごウマ」

 

「ヒック、ウィー」

 

「馬鹿二人は会議室から叩き出せ」

 

「よしきた」

 

「お前も案を出せ、嬉しそうに肩を回すな」

 

「浴衣の柄は季節に合わすか、それとも先取りした方が良いか?」

 

「どちらも似合うからな、子供用浴衣の貸し出しをやるか?」

 

「着替えも含めて手間がかかりすぎる、管理も必要だしな」

 

「近場に空いてる物件があったら借りて、業者に依頼して丸投げすればよいだろ?」

 

「トラブルになりそうだが、自分らでやるよりマシでやすね」

 

「ブサイク大総統のお面はスルーなのか?」

 

 一通り案が出たが、とりあえずまずは調査が必要みたいだな。

 ポスターに載るモノの人気はでそうだ。

 調べてから主催者に意見を求めて決めるとしよう。

 

「ところで社長、一つ気になることがありやして」

 

「どうした?」

 

 最近のトラブルは、全身に包帯まいたタンクトップラビットとタンクトップジャングルが神輿を担ぎに乱入したぐらいだが。他に何かあったか?

 

「お嬢の個性についてなんでやすが?」

 

「お嬢の個性てなんだ?」

 

「カワイイだっけ?」

 

「幼女だろ」

 

「巻き戻しだよ(キレ気味)」

 

 ああその件か、確かに昔は笑理の個性の暴走のたびに俺が対処してたからな。

 その力から、個性を無くす薬を開発できると踏んで親父に案を出したんだ。ヤクザ復権の足掛かりになるだろうと思って。

 ただ個性を無くしても、化け物みたいな無個性ヒーロー達がいる以上意味が無いから、構想だけをまとめて親父に相談したんだよな。笑理の細胞を素材に巻き戻し因子を抽出して個性破壊薬を作る、人倫に反した所業だが当時は余裕なかったからな。親父の真意も知らなかったのもあって焦っていたし。

 

「最近は社長が離れても平気みたいでやすが、暴走は大丈夫なんでやすか?」

 

 懸念はもっともだな。俺の個性以上に即死する可能性ある個性だし、知れ渡ればほしがる輩も出てくるだろうからな。

 今まで一番安全な対処法が強引に俺が元の形に戻すだったしな。

 そういえば話して無かったか。

 笑理の個性の制御について。

 だがこれを聞いた以上コイツラにもリスクを背負ってもらうことになる。

 

「覚悟はあるか?これを知ればお前達も犯罪の片棒を担ぐことになるぞ」

 

 威圧を込めて覚悟を問う。

 一人酔っぱらいがいるが、此処には信頼できる奴しかいない。

 ならばこそ今一度その意思を知る必要がある。

 

「「「「今更だ若頭(ヒック)!!」」」」

 

 一瞬も迷わない即座の返事。

 やはりコイツラは信頼できる(一人酔っぱらい)。

 コイツラには裏切らないで罪を背負う覚悟がある。

 ならば話そう、笑理の個性の対処法とそれによる起こる犯罪を。

 

「俺は笑理に個性を使ってあることをさせている」

 

 個性の使用は法律で基本禁止だ。

 ましてや笑理は未成年、自らではなく大人がさせている以上、虐待のような犯罪だろう。

 たとえそれが個性制御のためとはいえ。

 

「笑理の個性は巻き戻しのエネルギーが貯まると暴発してしまう、だから俺は毎日笑理に個性を使わせることでエネルギーを消費させているんだ」

 

「「なるほど」」

 

 巻き戻しにより物が元に戻る。

 それだけで利益に繋がることは推測できただろう。そして個性の営利的使用には許可がいる。申請しても笑理の年齢なら許可などでないが。

  

「しかしお嬢の個性は生物のみに効果があるのではないでやしたか?」

 

 一部の頭がキレるメンバーは気づいたか。

 そうそれで利益をだしているヤバさが。

 そう俺は、

 

「笑理に蛸を巻き戻させている」

 

 ズガンッ。

 一部のメンバーがリアクション芸人みたく椅子ごとひっくり返った。それぐらい驚いたのだろう。

 俺が笑理にさせていることは、足のとった蛸の巻き戻し。繰り返し何度も一匹の蛸から足を無限に取り続け、それによりウチは蛸の仕入れ費を大幅に削減しているのだ。正に市場破壊にも繋がる大犯罪だ。

 ちなみに肉類は無理だった、仮に豚肉から豚に巻き戻されても解体が手間だろうしな。まあ切り落としを俺の個性で一枚肉に加工したりはするが。

 

「どうりで利益が伸びるわけだ」

 

「確かに他所には流せない情報でやすね」

 

「賄いが蛸ばかりなのも納得したよ」

 

「タコウマ」

 

 

 そんなやり取りをして会議はお開きとなった。秘匿していた情報を流した割に反応はいまいちだったが。

 現状世間は荒れているが、幸いなことにウチは落ち着いている。

 オールフォーワンの逮捕は笑理の安全面でも良い情報だったしな。

 未だに残党や解放軍やらの懸念はあるが、俺らは関わる気がない。

 生活に不満は無いし、親父の夢であるタカマチをいつまでも開いていきたいからな。

 

「カルト集団をヴィラン連合が壊滅ね」

 

 調査書に記された情報。

 目的は示威ではなく単なる資金調達か。

 ウチは脛に傷を持とうが受け入れるが、コイツラはどうかね。

 居場所与えて落ち着くなら構わないが、そうはならんだろうし。

 ヴィラン連合は有名になりすぎた。  

 このままだと解放軍のデコ野郎が手を伸ばしそうなんだが、対処できるかね?

 公安に情報を流したが、規模がなあ。

 治安が乱れるのは望ましくない。

 子供達がサイフを片手に祭りを楽しめる社会であって欲しいものだ。

 

 




ちなみに先代は普段屋台に出す金魚の世話とかしています。あと朝顔の栽培。
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