「リキッドが就職したってさ」
「リキッド?確か鉄バットとやりあった、リーゼントの凄いヤンキーだったか」
「うん、胸キュンアニマルとランドを愛するファンシーヤンキー。鉄バットがガンマ団の特戦隊に就職したんだって言ってた」
「スカウト限定なトコだろ其処、スゲエな」
「タンクトップ事務所に誘った時に断られたから複雑な気分だけどね」
「合う合わないは人それぞれだしな」
「彼なら良いタンクトッパーになれたから惜しい気がするけどね」
「今頃は何をしてるんだろな」
なお後日知ったけどその頃の彼は北の海でクロールしてたとか。ファンシーヤンキーリキッドの苦難はまだ始まったばかりだ。
雄英高校経営科インパクトから数日後。
僕たちは文化祭の出し物の話し合いを続けていた。
インターンで大きな事件が起きたりしないので、時間的にはまだ余裕がある。
けどそろそろ決めないと相澤先生の言う公開座学になってしまう。
経営科の主導者の一人である盤板君に渡された資料を参考になんとか決めようとするけど、経営科のバックアップがやれることを広げてしまった。なんとか方針を定めないことには決めようがないね。場所に関しては経営科で念の為に体育館を押さえてくれるから、仮に舞台とかやっても大丈夫だって。
「劇にお化け屋敷はやるとこあるみたいだな」
最初じゃないとパクリ扱いされるよね。
うちのクラスだと案にもなかったし。
「屋台に関しては外部業者に依頼か」
八斎會っていう評判の良いとこに依頼するみたいだよね。一般公開だとお客さまはランチラッシュレベルを期待するみたいだから学生には厳しいね。流石にポクテの串焼きやら満田アメ(最近雄英高校敷地内で繁殖している)は好みがあるし。
「タンクトップ同好会の、ヒーロー神輿ってのはなんだこりゃ?」
「雄英高校OBのヒーローとか卒業後ヒーローデビュー予定の三年生を神輿みたいな台に乗せてパレードみたいにグラウンドを回るんだって」
「普通に面白そうだな。それにデビューする三年生にはありがたい催しじゃないか?」
「知名度に繋がりそうだな、個性でアピールや宣伝もできそうだ」
「本人達もタンクトップにフンドシ姿で鍛えた体をアピールするって」
「タンクトッパーはオチつけないといけないルールでもあるのか?」
「タンクトップにフンドシ姿って新ジャンルの開拓かよ」
「あとオールマイトの横にどっちが座るかで騒動が起きてるみたい」
「またかよ、元サイドキック共」
「もうオールマイトは両手にオッサンで良いじゃん」
「相変わらず嫌な修羅場だ」
面白そうなことやるクラスが多くて困るね。
個人的にはお客サイドになりたいよ、遊園地とかもやるみたいだし。
クラスの皆で一つの出し物をやることに惹かれはするけど、クラスの皆で見て回るのも捨てがたいな。
けどどのクラスも雄英高校敷地内で許される個性使用を活用してるからソコは外せないね。
「しかし緑谷よ」
どしたん?障子君。
今まで何か言いたげだった様子だったよね君。
「なぜ話し合いの場所がメイドカフェなんだ?しかも男子だけで」
土曜日の昼下り。
僕たち雄英高校一年A組男子は、全員で雄英高校近くのメイドカフェに来ていた。
「いや不満はねえよ」
「メイドはカワイイし、紅茶も軽食も美味い」
「落ち着いた雰囲気で、こうして集団で議論してても許してくれる」
「オタク御用達のイメージあったから敬遠してたけど普通に良いよな」
お客は雄英生ばかりだしね。
まあ問題としては、
「彼女持ち連中が絶望顔なんだが」
「どうすんだよ、怒られるよコレ」
「ウマ子が、UMA子がメイド姿でやって来る」
「八つ裂き(ブルブル)」
砂藤君と峰田君に口田君が頭抱えて俯いている。
単なる喫茶店やカフェに美人な店員さんが居るくらいなら怒らないだろうけど、メイドカフェはカワイイメイドに会うのが目的な場所だから、彼女としては不満に思うよね。イチャついてるようにしか見えないから障子君くらいしか同情してないけど(飯田君と轟君は体調悪いのかな認識、男女のアレコレ理解してない)
「上鳴君の案がメイドカフェだったし、お詫びとして色間君に割引券もらったし、インターンの給料をパーっと使いたいのもあって」
インターンには給料が発生している。
勝己はヒーローとして独立するためにコツコツと貯金しているけれど、僕はタンクトップ事務所に就職予定。クラス全員がインターンに参加できるわけじゃないから微妙な不公平感が自分にあって皆で使いたかったんだよね。ちなみに麗日さんは全額家族に送金、寮生活で生活費が仕送り分すら余るからだって。
「元凶は上鳴と色間か。あとイベントで自分だけ身銭は切るな。日頃から緑谷には世話になっているから、自分のために使ってくれ」
障子君は人間できてるよね。
賭けとかで当たった気分なんだけど。
「しかし、ここのメイドカフェって随分クオリティ高くね?」
「いやメイドの動きもそうだが、むしろ紅茶とカップや調度品の質が。これ採算とれないだろ」
うん、どれも最上級品。
商売じゃなくてお金持ちが自分用に使うレベルなんだよねどれも、メイドの動きには見覚えある気がするけれど。
「説明しよう」
話し合う僕らにかけられる声。
そこに居たのは一人の強者。
後ろにレンズが幾つもついた眼鏡をかけた痩せた学生を連れて彼は居た。
小太りで子柄な体にポスターが突き出たリュックサックを背負い、メイドの笑顔が世界を救うと書かれたバンダナを巻いていた。そして何より目を引くのが彼が着ているそのシャツの柄だ、デフォされた胸の模様にOPPAIのロゴ。いやセクハラじゃないあのシャツ?
そんなオタクな格好で天下の往来を歩いてメイドカフェに通う。
もう漢の中の漢だよ彼。
アレ?良く考えたら雄英高校の制服着てメイドカフェ通いも凄いことかも。
「ほんの少し前までは此処もまたどこにでもある従来のメイドカフェだった。しかしある日訪れた一人の少女がメイドの立ち振る舞いと紅茶の質に不満をもった。翌日彼女は実家からメイドを連れてくると店員達に教育を施し、メイドカフェの改革を行ったのだ」
その娘って根本的にメイドカフェそのものを勘違いしてませんか?そして実家のメイド。
「そうして生まれ変わったのが、このハイクオリティなメイドカフェなのだ。今でも週一でモノホンのメイドが指導に来るぞ」
もうここのアルバイトも本物のメイドでは?
「流石は八百万家だな」
(((何してんだヤオモモ)))
「やあ諸君、メイドは素晴らしいな」
経営科のカリスマ、色間勝三はそう言いながら笑いかけてきた。
数日前にガトリングガンの一斉射撃くらったのになんで平然としてんだろこの人。
煮詰まっていた話し合いは、彼の登場でより混沌としていくことになった。
「そうだ緑谷君、私オススメのこのカフェに何か感想はないかね?」
「クオリティ高くて良いけど、タンクトップ着てないのが不満ですね」
(((メイドカフェの全否定しやがった)))
「よろしいならば
教育してやろうメイドというものを!!」
彼は後ろのドクと呼ばれる生徒から拳銃(注、モデルガンです)を受け取りこちらに向けた。