スリザリンの野望   作:風梨

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約3000字



賢者の石

 

 死の秘宝を得て、ダンブルドアとの出会いを経て、冬休み休暇は終わった。

 母親に関しては適当に誤魔化しておいたが、特に魔法などは掛けていないので、場合によってはバレるかもしれないが、そんなリスクを背負いながらも、リリアンナは楽しげだった。

 

 ネビル・ロングボトムからもらったカエルチョコレートカードの裏面。

 ダンブルドアの説明書きに『ニコラス・フラメル』の名前があることをハリーが見つけて喜びの声を上げた後に、ハーマイオニーがちょっと軽い読み物を持ってきて、『ニコラス・フラメル』が『賢者の石』を創造した唯一の人物であることを突き止めた。

 

 その後にクディッチの試合が起きて──グリフィンドールが首位に立つために重要なハッフルパフとの試合だったが──ハリーが見事にスニッチを5分という快挙で捕まえて勝利した。

 その後、ハリーはスネイプとクィレルが個人的に、非常に重要な話題で会話しているのを盗み聞き、『賢者の石』という言葉がスネイプの口から飛び出すのを聞いた。

 

 ハリー、ロン、ハーマイオニーは、闇の魔術の防衛学を教えているクィレルが『賢者の石』の守りのための魔法をかけていて、スネイプはそれを解く方法を訊こうとしているんだと思った。

 リリアンナはそんな時でも本を読んでいた。

 

 クィレルが、スネイプに抵抗している間だけ、『賢者の石』が安全であると考えた3人は真っ青になった。

「それじゃ、三日ともたないな。石はすぐになくなっちゃうよ」ロンがもうダメだと悲壮感たっぷりにそう言った。

 

 

 それから数週間が経過した。

 季節は巡って、イースター(4月17日)の復活祭も過ぎ去って、窓の外ではここ数ヶ月振りの良いお天気で、素晴らしい快晴だった。

 だが、そんな天気とは裏腹に4人は『また』図書館に居た。

 

 3人の予想に反して、クィレルはまだスネイプに屈していなかった。

 驚異的な粘りを見せるクィレルを少しでも助けるために、ハリーは励ますように出会う度に笑顔を向けるようにしたし、ロンはクィレルの『どもり』をからかう連中を嗜めたりした。

 フラッフィーの声がちゃんとまだ聞こえるか、『立ち入り禁止』エリアのギリギリにまで赴いて、耳くっきりと澄ませてまだ破られていないか、大丈夫なのか確認したり、スネイプのことを影からこっそり監視したりして、出来る限りのことをしていた。

 

 しかし、ハーマイオニーはハリーとロンとは違って、それだけに気を取られるわけにはいかなかった。

 何と言っても大事な大事な進級試験が10週間後にあると言うのだ。

 

 それを聞いて、げんなりとした表情を浮かべたハリーとロンが「試験はまだ10週間も先だ」と言えば、ハーマイオニーは眉を『キュッ』と上げて、たくさんの本を片手で胸に抱えながらリリアンナの手を引いて「10週間『しか』ないの! 大切な試験なのに、私としたことが……もう一月前から勉強を始まるべきだったわ」と言ったので、ハリーとロンは顔を見合わせて処置なしとばかりに両手をコミカルに軽く上げた。

 リリアンナはそんな時でも、マイペースに本に手を(かざ)してページを捲っていた。

 

 そんなこんなで、ハーマイオニーが復習予定表を作り出していて──彼女が一人でやるだけなら気にしないでよかったのだが──ハリーとロンにも自分と同じことをするようにしつこく勧めてきたので、しょうがなく付き合って図書館に居るという訳だった。

 

 ハリーは『薬草ときのこ百種』という本をじっと眺めて問題の答えを探していたが、ロンが、図書館に来るにはあまりに場違いな格好で訪れているハグリッドを見つけた事で思わず目を上げる事になった。

 

 大きなハグリッドは、何で今まで居ることに気がつかなかったのかというくらいに目立っていて、モールスキンのオーバーを着ている姿は致命的に図書館に合っていなかった。

 背中に何かを隠していて、いかにも怪しげだった。

 

「ハグリッド! こんなところで何してるの?」

 

 ロンの驚きの声に『ビクリ』と反応した後に振り返り、いつもの4人であると気がついて『ほっ』としたように息を吐いた。

 気を取り直して厳しい顔つきになったハグリッドが、ふと疑問を思って少し抜けた表情で問い掛けた。

 

「お前さんたちこそ何しとるんだ? 休みの日まで図書館にいるなんて、いくらなんでも勉強しすぎじゃないか?」

 

「あ──、ウン。ぼくとハリーはそう思うんだけど、ハーマイオニーが復習予定表っていうの作っちゃって。って、そんなことよりハグリット。ぼくたち『ニコラス・フラメル』も見つけて、何をした人かもわかったんだ」

 

「待て待て待て、お前さんたちは生徒が知っちゃいかんことを知っとる。もうそれ以上調べちゃならん」

 

 慌てて辺りを気にして、大きな手を『ワタワタ』と振り始めたハグリッドに構わず、見つけた成果を誇るように、ロンが胸を張った。

 

「それだけじゃないさ。あの犬が何を守っているかも知ってるよ。『賢者のい──』」

 

「シーッ!」

 

 ロンの声よりも大きいんじゃないかと思うくらい、思いっきり息を吐いて「シーッ」と言ったハグリットが慌てて周囲を見渡した後に、こそっと4人にだけ聞こえるように耳打ちした。

 

「そのことは俺とダンブルドアと、まぁすっごい秘密なんだ。大声で言い触らしちゃいかん。おまえさんたち、まったくどうかしちまったんじゃないか」

 

「ちょうどそのことで、ハグリットに聞きたいことがあるんだけど。フラッフィー以外にあの石を守っているのは何なの?」

 

 ハリーのその声に、またハグリッドが「シーッ!」と大きな息を漏らして、けむくじゃらな頭を『ぶんぶん』と左右に振って周囲を確認した後に『しおしお』とショボくれた、しょうがなさそうな顔でまた4人に耳打ちした。

 

「ここでそんなこと話しちゃいかん。──しょうがない、後で小屋に来てくれや。ただし、教えるなんて保証はできやしないぞ。ここでそんなことを喋りまくられちゃあ困る。生徒が知ってるはずがねーんだから、俺が喋った事になっちまう」

 

「じゃ、後で行くよ」

 

 ハグリッドとしてはここで引いて欲しかったのだろうが、ハリーが全く気にせずにそう言ったのを聞いて、大きな身体を小さくしながら『モゾモゾ』と図書室から出て行った。

 その背中はもっこりと何かが入っているような盛り上がりを見せていた。

 

「ハグリッドったら、背中に何を隠してらのかしら? リリアンナ、何か思い当たる? もしかしたら石とも関係あるのかも」

 

「簡単だな。ハグリッドが居た場所を調べてみろ、ウィーズリー。そこにある蔵書が答えだ」

 

「……まぁ、いいけどサ。ぼくもそう思ってたし」

 

 ほとなくして、興奮した様子のロンがどっさりと本を抱えて戻ってきた。

 その全てが『とある生物』に関する書物で、あまりの重さにテーブルが軋んだほどだった。

 少年のように、実際に少年なのだが、目を輝かせたロンが、一冊の本を持ち上げて他の3人にも見えるように背表紙に描かれた絵を──鱗に覆われた翼のある、火を吹くカッコいい生物の絵を『ずいっ』とみんなに見せた。

 

「ドラゴンだよ!」

 

 興奮を抑えるように、少しだけ声を低めたロンが持ってきた本の一つを指で叩きながら続けた。

 

「ハグリッドはドラゴンの本を探してたんだ。ほら、この本を見てごらんよ。『イギリスとアイルランドの竜の種類』『ドラゴンの飼い方──卵から赤熱地獄まで』だってさ。間違いないよ、隠してたのはドラゴンだ! ……あー、その本かな? ──けど、おかしいな。ぼくたちの世界じゃドラゴンを飼う事は違法なんだよ。だって、もし家の裏庭でドラゴンを飼ってたら、どうしたってマグルがぼくらの事に気づくだろ? ──それに、すっごく凶暴なんだ。飼い慣らせやしないよ。チャーリーがルーマニアで野生のドラゴンにやられた火傷をみせてやりたいくらいさ。すっごく痛そうだった」

 

 傷の生々しさを思い出したのか、顔をしかめながらロンがそう言った。

 そんなロンに不思議そうにハリーが「けどまさかイギリスに野生のドラゴンなんていないだろう?」と質問してロンが「いるともさ」と何故か胸を張りながら答えた。

 

「ウェールズ・グリーン普通種とか、ヘブリディーズ諸島ブラック種とか」

 

 そこから引き継いでリリアンナが続けた。

 

「そういった純血種の中でも、ハンガリー・ホーンテイル種とノルウェー・リッジバック種。この二種が特に凶暴で生命力が強いな。どっちもトカゲみたいな形をしているが、並の魔法じゃ歯が立たない。まぁこれはどのドラゴンにも言える事だが」

 

 リリアンナに台詞を奪われて、少しばかり不機嫌にロンがまた引き継いだ。

 

「そいつらの存在の噂をもみ消すのに、魔法省は必死なんだ。すっごく苦労してるってパパが言ってた。もしマグルがみつけちゃったら、その度にそれを忘れさせる魔法を掛けなくちゃならないからね」

 

「じゃ、ハグリッドはいったい何を考えてるのかしら? 今の話を聞く限りだと、とてもじゃないけどドラゴンなんて飼えるわけないわ。いくらホグワーツだって庭番にドラゴンを飼わせるわけないもの」

 

 その言葉に、3人は沈黙した。

 ハグリットならもしかしたら、もしかするかもしれないと、言葉にしなくても気持ちを共有していた。

 リリアンナは相変わらずページを捲っていた。

 

 

 




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