止まらない歩みのために   作:坂野ポンタ

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止まらない歩みのために

「………マジかよ」

俺は目の前に広がる景色が、かつて住んでいた日本ではない事を確信して、天を仰いだ。コンクリートの無い地面、街灯や電柱に妨げられない青空、そして、何より今俺の前に広がっている光景には現代社会で見覚えのある物がほとんど無かったからだ。

そうここは、ゲームとかでよく出てくる剣とか魔法が普通に存在するファンタジー世界らしいのだ。そして、俺がここに来させられた目的を思い出して、俺は混乱真っ最中の頭を抱える。

「この世界の頂点に立った元人間の現神様『南雲ハジメ』の偵察、必要に応じて討伐とか……あの魔王様、無茶苦茶言ってくれるよホント……」

その事を話す為に、少し前に遡ろうか。

〜〜〜

俺はただのしがない男だった。市役所の事務仕事をこなす公務員として、毎日変わり映えの無い日々を過ごしていた。そんな俺が、ある日突然何にも無い場所に連れてこられた。本当になんにもない場所だった。そして俺はそこで、とんでもない存在と出会ったんだ。

最高最善の最終王者、常磐ソウゴに。

まだ若く見える、ヘラヘラとした人の良さそうな笑み。しかし、その存在感は異常としか言い様の無いものだった。オーラというのか雰囲気というのか……とにかく今まで見たことも感じたことも無い異質なものを漂わせていた。それを感じた時、何故か俺は酷く安心した。この人が俺の敵、いや、人類の敵である筈が無いと、何故か心の底から思えたんだ。

そして、常磐さんが口を開いた。

「……その、ごめんね?こんな所に呼び出したりして。でも君にしか頼めない事があったんだよ」

困り顔で言う彼はどこか可愛げがあって。俺もついつい笑ってしまう。それだけ人を安心させてくれる笑みであり、同時に人を惹きつける何かを感じる笑みでもあった。きっと彼のカリスマというものなのだろうと思うけど。

それに、常磐さんの言っている事は事実だ。確かにこの人は人類の敵なんかじゃない。

だって彼は、最高最善の魔王であり、『仮面ライダー』なんだから。

〜〜〜

とまぁそんな感じで、俺はあの人に頼まれてさっきいった、『南雲ハジメ』の調査の為にこの世界にやって来たんだ。ちなみに調査というのは、この世界に来た時に常磐さんから授かった力を使ったものになる予定で。俺は常磐さんの力を使う事で変身出来るようになるんだ。つまりこれは魔王との戦いではなくライダーバトル……違う。そういえば常磐さんが言っていた気がする……。

そうだ。俺に与えられたこの能力は、裏の魔王の力。昭和に縋りつき、未来も何も得られなかった哀れな道化の王、『アナザーオーマジオウ』の力だ。本質的にはこれも王の力ではある。でも、俺にとってこの力は特別なもので、俺は自分の意志でこれを使おうと思っている訳だが。

ともかく俺はこの力で戦う。その為にもまず、この世界で何をすればいいのか、何が出来るのかを把握しなくてはならないと思った。

俺はとりあえず近くの街に足を運んでみた。商業街というか、片田舎?みたいな結構平穏な街だ。

………だけど、なんだ、この、違和感は?男は何処だ?老人は?少女か女性しかいない?俺はここで既に、言い知れぬ寒気を感じた。

……まぁ、考えてみても仕方がない。ともかく情報を集めなければ……と俺の目に止まったのは一軒の古ぼけた書店だ。ここなら、何か有益そうな本がありそうで、期待できるかも、と思い店内に入った俺は世界史のジャンルがまとめられてそうな本棚を探した。この世界の文字は当然ながら日本語じゃない。でも読める。恐らく、常磐さんが俺にテコ入れしてくれているのだろう。この世界の文字を読む為に必要な知識や言語能力も与えられているという事だろうか。

そんなことを考えながら探し回り、見つけた世界の歴史と書かれた本を開く。この本は中々良さそうな代物だったようで、俺はペラペラとその本をめくって読み進めていった。

〜〜〜

「………これは」

この本に書かれている事が寸分の狂いなく正しいと仮定するのなら、この世界のなんと度し難い事か。

めっちゃざっくり要約すると、神さまが悪意たっぷりでこの世界の存在達で遊び、彼らは遊ばれている事を理解出来ずに、愚かな信仰心で同族を差別したり虐殺したり兎に角愚かだった。そしてそんなさ中でこの世界にやってきた『南雲ハジメ』がこの世界の総ての生命体を女の子にして性奴隷にして自身を信仰させて神になった。

……らしい。

俺はまず納得した。この世界に来てから男や老人を見なかったという奇怪な違和感に説明がつけられたからだ。そして次に戦慄した。恐らくこの『南雲ハジメ』という男、何処かでこの世界の生命体の愚かしさを目の当たりにしたんだろう。だから『世界の全てを性奴隷にして自分に信仰させて無意味で愚かな全ての争いを無くさせる』という狂気としか言えない事をやってのけたのだろう、と思う。そして俺に南雲ハジメの偵察と討伐を頼んできた常磐ソウゴの意図も同時に悟った。彼もまたこの男の異常性と、恐ろしさに気付いていて、そして、その力を振るうに相応しき人物に会わせたいと、そう思ってるんじゃないかと俺は確信に近い推測をしたのだ。

そもそも、この世界を真の意味で救うのは最早不可能なんだと思う。少なくとも、清廉潔白に世界を救えはしない。それをこの男はわかっていたんだ。だから女性の尊厳を踏み躙る様な事をしてでも、無駄に誰かの命が消えないために戦ったんだろう。そう思うと胸糞悪い気分になって、しかし同時に同情心の様なものも芽生えた。俺もこの世界で生まれ育ったのであれば間違いなくこいつと同じ行動を取っていただろうと思えたからこそ、俺にはこいつを憎む事も憐れみを覚える事も無いが、この世界を救う方法は本当に無いのかと考えさせられる。

ともかく俺は、常磐さんの目的のために動こうと思う。

〜〜〜

「常磐さん……」

「あぁ……やっぱり、気になっちゃうよね?」

「……はい」

俺は街を離れて、森の中で常磐さんと連絡をとった。手段は使っている俺も解らん。ただ電話みたいに話しているだけなんだが、何故か声に出さず頭の中で会話が出来る不思議な機能なのだが……。それは置いといて、だ。

俺は今、常磐さんの言うとおり、『トータス』の生命体達の愚かさと醜さの一端を見たような気がした。あの街で見た女達は、全て南雲ハジメに忠誠を誓っていて。あの人達の目はまるで、怪しげな宗教団体に洗脳されているかのように爛々と光っていて、南雲ハジメの言うことが、全てが正しいと思い込んでる、狂信者の目をしていたんだ。

あれじゃダメだ。だめだとわかってはいる。でも、多分あの目は、南雲ハジメが神になる前、つまり『南雲ハジメの前にトータスで遊んでいた悪神』が秘密裏に支配してた頃と同じ、いやそれ以上に酷くなっていると思える程の、異常な状態だった。アレはもはや一種の宗教だよ。……ともかく。俺が得た情報を伝えたら、彼は苦笑しながら、

「…………俺も同じ考えかな。俺の方はもっと詳しく調査してみたけど、この世界はもう詰んでると、そう思ったよ」

と呟いた。彼の方も俺と同様の事を考えたらしい。……この世界に救済なんてものは、無いんだろうな、と。

この世界がこのまま破滅に向かうしかないのかと思ったら、なんか凄く悲しい気分になって。そんな時に常磐ソウゴは俺に言った。

「この世界には、救いは無いかもしれない。でもさ、せめてもの足掻きとして君の力で『南雲ハジメ』が創り出した歪なものを全て壊そうと思うんだけど……どうかな?この世界はさ、確かに『狂って』しまったけど。でもまだ終わりじゃないはずだ」

「俺は……。いや。俺で良ければ協力します!」

常磐さんの提案はとても魅力的なものに感じて。俺は即座に返事を返した。

〜〜〜

俺はまず、そもそも何故この世界の生命体達が愚かと断ぜられるのか考えた。

結論から言うと『それがただの本性』だ。

この世界は長い間『魔人族』と『人間族』との宗教戦争があった。しかし、両者の信仰する神は、実は本質的に同じ存在で、本当に掌で転がされていただけだったのだ。その上でそれぞれ何をしていたのかと言うと、『人間族』は『亜人族』を差別したり沢山の子どもを生贄と称して大量虐殺したり『魔人族』も色んな生命を見境なく殺して周ったり。要はお互いに自分達の妄信の為に争い続けていて、結局最後には南雲ハジメに尊厳を踏み躙られて新たな神を誕生させてしまった。……とまぁ。この辺の事情がわかればわかる程に俺はこの世界の愚かさを実感したわけだ。だがそれと同時に南雲ハジメへの憐れみと恐怖を感じた訳でもある。

南雲ハジメは元々優しい性格だったらしい。だがこの世界の生き物を見て。あまりにも理不尽な扱いをされている彼等を見て怒りと憎しみに囚われてしまった様である。……そして、彼に世界を我が物に出来る力が在ったのも、この世界がこうなってしまった所以だろう。その点については、少し可哀想に思う。俺自身も南雲ハジメをそこまで嫌う事は出来ないな、と思えた。

話を戻す。……俺は、どうしたら南雲ハジメが作ったこの狂ってしまった世界の歯車を止められるかと考えた。考えて、ふと、正直なところ、ハジメのやっている事はハジメの前の神がやっていた事とそう変わらないと思った。変わっている事は、みんなを悦楽で幸せにして、誰も死なない平和な世界な事、それだけだ。信仰心を植え付けて、自分を神だと思わせ、支配する。やってる事は全く一緒なんだよな。ただ南雲ハジメの前の神様の方が悪意たっぷりだってだけで。………ならば、どうする?南雲ハジメの願いを叶えつつ、彼の元の優しさを取り戻させる方法は無いだろうか?……あった。簡単な方法が、あるじゃないか!俺はそう思って常磐ソウゴに連絡を取り、彼と作戦を立てる事にしたのである。

〜〜〜

それから一週間後の、深夜。俺達は南雲ハジメとコンタクトをとった。結局のところ、この世界で無駄な死を蔓延らせない為には、南雲ハジメを何とかしないといけない。なので話し合いに来た、という事にして貰ったのである。俺達が接触を図った場所は、人気のないぼろ家だ。

俺が話しかけると南雲ハジメはすぐに俺達の存在に気付き、

「こんばんは、結構綺麗な夜空ですね」

と微笑んだ。……うん。見た目だけなら凄く好青年で普通にイケメンに見えるのに、何か嫌な違和感を覚える笑みだと直感的に思った。俺達が座る様に促すと、彼は大人しくそれに従った。……やはり何かがおかしい気がするが。とりあえず話を切り出してみようと思う。……ちなみに。一応事前に常磐ソウゴから「君の好きなようにすると良いよ」と言われているので俺は好き勝手やるつもりだ。……さて、ここから俺は話し合いを始めようと思う。

「はじめまして、南雲ハジメさん。私、あなたとお話がしたいと思いました」……俺が言うと、何故か南雲ハジメは一瞬、とても愉快そうに口角を吊り上げて「へぇ……」と小さく声を上げたが直ぐにそれを抑えた様子で、笑顔で「はい。いいですよ」と答えたのであった……。……まず、俺は単刀直入に聞く事にした。

『君は、何を望んでいるの?』

すると、南雲ハジメが目を閉じて黙り込んだ後、数秒経って、言った。

『この世界で、もう人死にが起こらない事かな』……それは確かに、この世界に住む誰もが切望しているだろう。俺は思わず苦笑いしてしまったが南雲ハジメはそれを気にせずに言葉を続けた。

「僕の望みはただ一つ、僕が望むのはこの世界に生きる人間族と亜人族、魔人族の皆が天寿を全う出来ること。理不尽な理屈で殺される事も、下らない信仰心で命を放り投げる必要も、一切無くなればそれで良いんです」

南雲ハジメの言葉を聞いて俺は「なるほどねぇ〜」と相槌を打った。つまりは……彼がこの世界を快楽天に変えた理由はただ一つ、人殺しが無ければ、争いが無くなるからなんだそうだ。「……この世界を良くしたいとは思わないの?」

と俺が尋ねると、南雲は笑って

「そんな手段があるとお思いで?良く言うじゃありませんか『そこに留まりたいのなら全力で駆けろ』『現状維持は後退と同じだ』と。僕にとってこれは最善の選択であり、滅びの一手なんですよ。だから何も変えるつもりはありません」……俺は少しだけ悲しげに首を横に振った。

俺は南雲ハジメの言い分に対して少し考える事が在った。……要するに、この南雲という男は自分の作った理想郷が間違っていると確信している。

……違う、間違っていると自覚しながら、作るしかなかったのだ。でなければ、この世界の善良な者達は、不当に殺され、差別され続け、今もなお流さなくとも良い涙と血が流れつづける、そんな世界でありつづける事は目に見えていたから。……まぁその気持ち自体は分かるんだよな。自分が作り上げてきた世界を否定しなければならないのはかなり辛いものだし、そもそも、自分で作った物なんて他人に勝手に否定されたらそりゃムカつくよなー、とも思う。

でも。それでも、俺は彼を否定しなければならない。皆が尊厳を踏み躙られ、自由意志を奪われ、『南雲ハジメ』という存在を『信仰』しながら生きて行く、この世界のあり方を変えなければいけない。……それが、常磐ソウゴにこの世界に連れられた、俺の役割だ。

なので俺は彼に言った。

俺には『アナザーオーマジオウ』の能力が与えられている。この力を俺が十全に扱う事が出来れば、君はおろか、この世界そのものに働きかける事が出来、君の意志に関わらずに改変が出来るかもしれない。俺に協力してくれないだろうか。……と、提案すると。彼は一瞬沈黙し、数秒後に口を開いた。

『分かりました。貴方を信じます』……俺は思わず目を細めてしまった。そして続けて、君は今迄の人生において自分の行いを肯定出来た事があるのか?俺の問いに対し南雲さんは『一度だけ、元の世界でいかにもヤンキーという風貌をした人に絡まれた人を助けた事があります』と答えた。

俺はそれを黙って聞いた後でこう尋ねた。

「今の君を、その人に見せられる?」と。

南雲さんは泣き崩れた。

多分だけど、その『誰かを助けた』という事が『今の』南雲ハジメの始まりだったんじゃないかと思う。その穢れも曇りもない『善意』があらゆる過程で四苦八苦、紆余曲折ありながらねじ曲がり、こんな非道としか言い様のない救済をせざるを得なくなってしまった。きっと彼は心の底では自分を責め続けている筈だ。だが同時にその『本物の善意』こそが彼の力でもあるんだろうとは理解した。

「ごめんなさい…………!」

……嗚咽混じりの声音で、そう呟く南雲ハジメの肩に手を置いた。……どうやらこの人はとても繊細みたいだし、優しく扱わなければと思ったのだ。そして、俺の言葉を聞いた彼は更に涙を流し、暫くしてから落ち着いたらしく「すみません……」と謝ったので「良いんですよ。スッキリしました?少し落ち着きましたか」と言ってあげると

「……えぇ、お陰でだいぶ楽になりました。僕、こういう所が有るんですけど……普段は気を付けてるつもりなんです」

俺はそれに苦笑いしつつ、「大丈夫ですよ」と言うと南雲さんは「あの」と言葉を発してきたので「何ですか」と尋ねると南雲ハジメさんは

「僕と戦ってくれませんか?」……俺はその発言を聞いて驚いたものの、その理由を聞く事にした。何故なのか理由を問うと

「貴方なら、僕の総てを真正面から、本当の意味で粉微塵に出来るような気がするんです」

と言われた。確かに南雲さんの言う事は的を射ているだろうなとは思ったので了承してあげた。すると南雲さんから感謝された。

〜〜〜

南雲ハジメと俺は、常磐さんが用意してくれた特殊な空間で相対している。

片や世界を支配する神。

片や裏の魔王の力を与えられただけの俺。どちらに勝機があるかといわれれば、まず間違いなく前者、つまり南雲ハジメの名前を挙げるだろう。だが、俺は負けるわけにはいかない。この世界の為にも、俺に頼んでくれた常磐さんの顔を立てる為にも、そしてなによりも……南雲ハジメの心を救う為にも……!俺は右手に持つウォッチを握りしめる。そして、彼の目を見据える。彼もまた待ちきれなくなったのか、俺を見て、頷いた。

「………いこうか」

「………ええ」

俺とハジメが構える。

「……変身」

俺は腰にウォッチを近付ける。すると、俺の周りを骨のような、しかしどこか荘厳なエフェクトが舞う。そして、俺に力が満ちていく。最後に、俺の周りを白と金が踊り、俺に装着されていく。

これが、過去しか見られなかった哀れな道化の魔王の粋『アナザーオーマジオウ』。

俺は今、それに成ったのだ。そして、それを見届けた俺の前に立つ南雲くんが

「……行きますよ」

と言い、剣をこちらに向け閃光すらも凌駕するような突進をしてくる。俺はそれを避けると同時に拳を叩き込む。

南雲ハジメは吹き飛ばされるが即座に体勢を立て直すと今度は魔法を放ってきた。その威力たるや凄まじいもので、大地を穿つであろう程のものだった。

「……ッ!!」……その一撃を喰らい、思わず声を漏らしそうになるが、こんな序の口で引いていられない!

アギト

俺は歪んだ薙刀と剣でその魔法を掻き消し、そのまま彼に肉薄する。彼は咄嵯に盾を構え、防御の姿勢を取るが、そんなものは関係ない。

「ハァ!」

気合い一閃。

彼の持つ盾ごと彼の体を斬り裂く。彼は血飛沫を上げながら片膝をつく。その姿を、俺は敢えて煽る。

「……その程度か?」

その言葉に彼は、不敵に笑いながら立ち上がると、両手を広げ、詠唱を始めた。……そして放たれたのは、俺でも見た事が無いような、巨大な炎の塊だった。それは俺を飲み込もうと迫ってくるが、アナザーとはいえオーマジオウの力を借り受けている俺なら、対応が出来る筈だ!

ウィザード ファイズ

『アナザーウィザード』の力でアナザーオーマジオウの膨大な力を魔力に変換、その後『アナザーファイズ』の……というより、ファイズライダーの放てる『ポインティングマーカー』を顕現、巨大な炎に突き刺す!そしてそこに先程変換された魔力の奔流を流し込む!一点に莫大なエネルギーを注がれた対象は……!

「そんな……!」

霧散する!!南雲ハジメが驚愕の声を上げる中、俺は更に畳み掛ける為に、また異なるアナザーライダーの力を解放する。

電王 ディケイド

その二つの力で、俺は擬似的な『エクストリームスラッシュ』と『ディメンションスラッシュ』の両方を発動させる。飛ぶ斬撃と加速して威力が増幅するパワーフィールド。それらが一つの攻撃に合わされば何が起こる?……正しく『必殺の一撃』になる!

「ハアアッ!!!」

俺は雄叫びと共に、南雲くんに斬りかかる。

「ぐぅっ!?」

南雲ハジメは苦しそうな表情で何とか耐えようとするが、俺は容赦なく追撃を加える。

「まだまだぁああああっ!!」

このまま押し切れるか!?一瞬でもそう思った俺は、やはりまだまだ戦士としてとても未熟であるとしか言いようが無い。何故なら

「ダァッ!!」

「ぐおぉっ!?」

死角から遠隔で、手痛い反撃を喰らってしまったからだ。俺はよろけて攻撃の手を緩めてしまう。その一瞬の隙の内に、彼は俺の攻撃をいなし、俺に詰め寄る!そして俺の腹に蹴りを入れると同時に俺の首を掴んで持ち上げると、地面に叩きつけるように投げ飛ばす。

「うわあああっ!!!」

俺は情けない悲鳴を上げて地面を転がっていく。

「ふー……」

南雲くんは息を整える。そして、俺を見て、言う。

「貴方の実力はよく分かりました」

……どうやら、俺は真の意味で彼に認められたようだ。だが、油断はしない。

「では、今度は僕も本気で行きます」

「……」

俺も、身構える。どう来る?正面?上?それとも左右から距離を詰めてくるか?「フゥン!」……彼は、その場でジャンプすると、空中で体を捻り、回転しながら剣を振るってきた。

「なにぃ!?」

俺は驚きながらも、その一撃をなんとか受け止めるが、そのまま吹き飛ばされてしまった。なんて威力だ……。

「ハァ!」……しかし、まだ終わらない!南雲くんは着地と同時に再び跳躍する!その動きに、俺は嫌なものを感じて咄嵯にその場を飛び退く!……次の瞬間、彼がさっきまで立っていた場所に、無数の剣が降り注いだ。俺はそれを見ながら、呟く。

「自分をビーコンにした範囲攻撃か……!」

大方間違っては無いはず。彼は自分の周囲に剣を出現させ、それを一斉に射出する技を繰り出してきたのだ。しかもその数は、尋常ではない。恐らく、百本以上はあるだろう。

「……ッ、やるじゃないか!」

俺は、今度はこちらからも仕掛ける。思い出せ、確かアナザーライダーの中には『相手の攻撃を喰らった威力のまま反射する』能力を持った者が居た筈だ…………!

「これだな」

リュウガ エグゼイド

『アナザーリュウガ』は上限こそあるものの、相手からのダメージをそのまま返せるシールドを張れる。

『アナザーエグゼイド』はその身体能力の高さに着目して選んだ。喰らった後のノックバックで隙を産ませる訳にはいかないからな。

「何をしても無駄っです!!」

そしてまたさっきの技を繰り出してくる彼、俺はそれを敢えて受け、彼の追撃を意地で避ける。すると

「!?これはっ」

俺の眼前に鏡のようなシールドが無数に出現し、そこから彼の剣が何百と勢いよく排出される!!

「まさか反射っ!!」

気付いた所でもう遅い、彼は必死に避けたりいなしたりするが、数が多いのか反射の精度がいいのか、いくつかは喰らってしまったらしい。血が滴り、赤く滲む衣服を纏う彼はとても痛々しいが、その目は死んでなどいないようだ。……ならっ!

キバ ダブル 響鬼

『アナザーキバ』『アナザーダブル』『アナザー響鬼』単純に素の肉体にバフをかけてくれそうな輩出だ。ここら辺は主観も混じるが、徒手格闘に役立つ面子を揃えられた気がする。

「ハァァ!!」

「ふっ!」

「ぐっ!!」

俺は彼の胸元に勢いよく正拳突きを繰り出す。が、難なく対応され、逆にこちらが手痛いエンビを喰らわされる。だが!

「まだまだぁぁぁ!!」

そんな程度で怯んじゃいられねぇ!俺は更に攻撃を続ける!

「ぐぅ!!」

「うおぉ!!」

「がああっ!!」

「はああっ!!」

「うああっ!!」

「おおおっ!!」

お互いに殴り殴られ、蹴り蹴られの激しい攻防を繰り広げる。そして遂に俺は彼を地面に組み伏せる事に成功する!

「ぐあっ!!」

「よし!」

このまま一気に畳み掛けようと、俺は彼に馬乗りになりながら顔面を殴ろうとする!だが……

「まだだ!」

彼はそう叫ぶと同時に俺の腕を掴む!……まずっ!!

「フンッ!!」

「うぉぉっ!?」

景色が勢いよく回転し、放り投げられた!と感じた時には既に彼は目の前に迫っていた。これは……喰らったら不味いっ!!

カブト ドライブ

『アナザーカブト』の『クロックアップ』と『アナザードライブ』の加速ですんでのところを躱し、浅いカウンターを喰らわせつつ、中距離程度の間合いを取る。そして時計の針の様な双剣を両手に出現させた後

龍騎 ブレイド 鎧武

『アナザー龍騎』『アナザーブレイド』『アナザー鎧武』の力を解放する。ぶっちゃけ『剣主体戦闘』っていう共通項を纏めただけの選出だ。

「ハァ!」

「ハッ!」

俺は剣を振り、彼はそれを弾き返す。剣戟の応酬が続き、鍔迫り合いや異能混じりの剣撃の舞踏が繰り広げられていく。

「中々やりますね」

「そっちこそな」

お互い、実力は拮抗している。現に今は火花が散るだけであり、目立った傷を両者共につけられていない。

「しかし、流石に疲れましたか?」

「それは君も同じ筈だ」

「……」

「……」

「「フゥン!!」」

同時に跳躍、剣を振るい、激突。

「くっ」

「ぐおっ!」二人は一旦距離を取り合う。そしてまた、互いに走り出す。

「「オオオッ!!」」

「「ハァアアッ!!」」

「「ぬうぅぅん!!!」」

お互いかなり野太い声になってしまっているが、今は目を瞑ってほしい。何せ、今まさに、俺と彼は殺し合っているのだから。

「「死ねぇ!!」」

剣と刀がぶつかり合い、衝撃波が周囲に撒き散らされる。その度に大地が震え、木々が薙ぎ倒されていく。

「「ぐあぁっ!!」」

共にダメージ自体は少ないのだが、どうしても決定打に欠けるジリ貧の戦いにだんだんと焦りを感じ始めていた。……どうすればいい?

「……」

「……」

俺達は睨み合ったまま動かない。いや、動けないのだ。何故なら、もし動けばその瞬間から戦いが始まるだろうからだ。故に、動けない。

その時、何かが脳裏によぎる。覇道を突き進む為に連れ行く二体の従者の姿……まさか。

俺は切られるであろう事を承知で天を仰ぎ見る。

……やはり、そうだったのか。

俺は笑う。笑って、彼を再び見据える。そして宣言する!

「この戦い、俺が征する!!」

驚きに目を見開く彼の顔を見ながら、俺は終わりを告げる言葉を叫ぶ!

「変身!!!」

すると、俺の両肩の大袖を不気味な顔、いや仮面が包み、右を真紅に、左を金色に染め上げ、俺の身体に更なる力を滾らせる!

「それはっ一体……!?」

驚きに包まれる彼に、俺は絶対の勝利を確信しながら名乗る。真に敵を打ち払う王の名を!!

「我が名は……『アナザーオーマジオウトリニティ』!!!」

「なん……だと……!?」

この想定外な出来事に気分が有頂天になっていた俺は、気付けなかった。俺達の戦いを見守っていた常磐さんの表情が変化していたのを。

「こんな……こんな事が有り得るだなんて……!」

彼はあまりの衝撃に何かを呟いているが、俺はそれに構う事なく、腰のベルトを操作し、必殺技を放つ為の準備を整える。

終焉の刻

『アナザー』である為か、音がバグっている。でも、漲る力に一切の遜色は無いらしく、俺を見るハジメの顔色からもそれが窺えた。

「さぁ、終わらせよう」

「……」

俺は握りしめていた双剣を放り投げ、宙に浮かび上がりながら両手を広げる。その光景を見たハジメは、一瞬呆気に取られた顔をした後、直ぐに真剣な眼差しになり、剣を構える。

「来いっ!」

「ああ、行くぞ」

俺は拳を固く握ると、ハジメに向かって一直線に飛び込んでいく。これが俺なりの全身全霊、全力の最後の一撃!!

「ライダーッ!!キックだあぁぁぁぁぁ!!!!!!」俺は叫び声を上げながら飛び蹴りを放ち、ハジメは剣を振り上げる。そして、激突。衝撃波と轟音と共に世界が大きく揺れ動く中、俺とハジメは最後の攻防を繰り広げる。

「うおおぉお!!」

「ぬうぅう!!」

お互いの渾身の一撃がぶつかり合い、拮抗状態に陥る。だが、それも長くは続かない。虎の威を借る狐のようで申し訳ないが、時の王者の力をどうこうするのは、ハジメ、お前じゃ無理なんだよ!!

「トドメだあぁぁぁ!!!!」

そして俺の一撃は、ハジメを突き抜けた。膨大なエネルギーが、ハジメの身体にとんでもないダメージを叩き込んだ。

俺は振り返り、ハジメを見る。

ハジメも同じように、俺を見る。

「「……………」」

お互いに無言だが、ハジメは最後に、ふっ………と、笑ったような気がした。

そして………爆発した。

それこそ、特撮でよく見る敵怪人が敗れた時に起こるように。

「……」

俺はそれを、ただ黙って見ていた。人一人の死を見届ける事に、小言を挟める様な余裕は無いのだと、この時初めて自覚した。

「……終わったんだな」

「そうだね」

そんな返事にビクッとした俺は、余程戦いで余裕が無かったらしい。まさか常磐さんの存在を忘れるだなんて。

「……」

「……?」

しかし、俺が彼に対して何かを言う前に、彼は俺に笑いかけてきた。

「君はこれから、どうするの?」

「…どうする……?」

俺は、その唐突な問いかけに戸惑う事になった。しかし、彼、常磐さんは続ける。

「指導者を失ったこの世界は混沌を極めることになる。……君は、ハジメの意識を継ぐんでしょ?この世界の、新たな王になる覚悟、ある?」

「……………」

俺は、不安だった。ハジメの前の神は『信仰心』で世界を支配し、ハジメは『色欲』で世界を平和にした。なら、俺は何が出来る?何で世界を統治出来る?

………答えはもう出ている、か。

『力』だ。

この力は『裏』とはいえ『時の王者』であり、『アナザー』とはいえ『オーマジオウ』なんだ。この力なら、王にだってなれるだろう。でも………

「不安?まぁ、そうだよね」

「……」

俺は今、『アナザー』として『時の王の力』を使えるようになった。でもそれは所詮借り物の力でしかない。だから、俺には自信が無いのだ。

「大丈夫だよ」

「え……」

すると、常磐さんは優しく微笑みながら語り掛けてくる。

「何も無いなら学べばいい、何も知らないなら知ればいい。過去の『統治者』にね」

その言葉に違和感を覚え、考える。

………そして、光明を見出す。

「『アナザーゴースト』か!」

「正解、今ならまだ、南雲ハジメの記憶を探れるよ。でも、気を付けて。今の君じゃ、ハジメの魂に呑まれるかもしれないから」

「分かった、ありがとう」

俺は常磐さんの忠告を聞き入れ、早速行動に移る。

ゴースト 電王

『アナザーゴースト』……というより『ゴースト』の変身者『天空寺タケル』は他者の記憶を覗く能力を持っていた。そして『電王』に登場するとある敵は、人の記憶を好き勝手に探る能力がある。その二つの力を組み合わせて、南雲ハジメの記憶を俺は探り始めた。

〜〜〜

「…………くっ!!!」

なんとか大まかな記憶を調べられたが、そこで弾かれてしまった。恐らく、俺がまだまだ未熟な部類に入るからだろう。でも、知りたい情報は得た。

「どうだった?」

常磐さんが俺に尋ねる。俺はゆっくり、得た情報を統合しながら話し始める。

「なんというか……確かに『南雲ハジメ』という男は善人の部類に入ります。

しかし、彼はどうしようもなく、ただの一般人でした。力に呑まれ、悦楽に呑まれ、その快感に抗う事が出来なかった。結局のところ、彼もまた『英雄』や『王』などではありませんでした。ただの『人間』でしか無かったんです」

「そう……」

俺は、常磐さんに俺が見て感じた全てを話した。常磐さんも、黙って俺の話を聞いてくれた。

「さて……これから君は、何をしたい?」

常磐さんの言葉に、俺は少しだけ悩む。しかしすぐに、答えを出した。

「まずは、この世界にもう一度を与える所から始めようと思います」

「……どうして?」

その質問に、今度は即答する。

「この世界は、あまりにも理不尽です。誰かに都合の良いように動かされている。そんな気がしてなりません。……だから、私はこの世界を戻す事にします。可能な筈です、裏のとはいえ『時の王者』の力なら」

「……そっか」

常磐ソウゴは悲しそうな顔をする。そしてこう言った。

「君は、これから先ずっと、戦い続ける事になる。それでも?」

………………

「はい。それが彼との、南雲ハジメとの約束ですから」

「……」

「それに、私はもう、覚悟を決めました。この世界で、死ななくていい、泣かなくていい人達を守る為に、戦う事を」

「……うん、分かった」

「では、またいつか」

「そうだね」

「……」

「……」

〜〜〜

私は常磐さんが何処かへ行った後、『オーマジオウ』としての力でこの『トータス』という時空を破壊、創造し、『アナザージオウ』正確には『アナザージオウII』としての力でこの時空の歴史を書き換えた。

『大魔王ジオウ(つまり私)が世界の総てをしろしめす世界』に。

当然、苦悩も苦難もあるだろう。絶望に打ちひしがれ、無力感に苛まれる事もあるだろう。だが、そんなモノはこの世界に生きる全ての人が常に向き合っているものの筈だ。ならば、私がそれを乗り越えられない道理は無い。

私はそう確信して、進み続ける。彼が、南雲ハジメがなし得なかった、人道に反さない真の意味での『平和』と『自由』を、この世界に齎す為に。

…………ハジメ、貴方の総て、潰えさせはしません……!!




Q:なんかトータスのことボロクソ言ってない?
A:ふうすけさんの元でもかなり強調されていたのでこちらもそれに則りました。

Q:我が魔王こんな事しなくない?
A:我が魔王一人だけならこんな発想には至らないし、至っても実行はしない。でも、こんな言葉があります。
『時代が望む限り、ヒーローは必ず現れる』
さて、本当に時代が望んだのでしょうか?恐らく、トータスの誰一人として『ヒーロー』は望んではいません。ですが現にトータスに『ヒーロー』は現れました。さてこの場合、一体誰が望んだんでしょう?

Q:主人公も結局ハジメみたいになるんじゃ無いの?
A:可能性は否定出来ない。でもきっと、受け継いだ記憶が同じ轍を踏ませてくれなくなる。

Q:結局のところ主人公って誰なの?
ヒント:アナザーキカイの事例。







A:我が魔王がなって欲しかった救世のイマジナリーヒーロー(もしくはイマジナリーキング)の顕現。勿論我が魔王にその自覚は無い。

Q:主人公に仕えるイマジナリーウォズは?
A:ウォズは自分の従者という心が新たなウォズの顕現を拒んだ。自覚は同じく無い。

Q:ハジメこんな事考える?
A:ふうすけさんのとある感想の返信に『ハジメもただの人の延長線上の存在(意訳)』という記述がありますが、それでもハジメは善側に立つ人間なので、心の底では今の自分を心底嫌っているという希望的観測です。

Q:アナザーオーマジオウなんか弱くない?
A:変身者が未熟なのと、ハジメが強い事に変わりはないから。

Q:ハジメなんで復活しないの?
A:復活する気がないから。初めから殺されて終わる気満々だったから。

Q:結局ハジメはどうなったの?
A:我が魔王の手引きで『もう一度』が与えられた『トータス』で顔と名前を変えて主人公の従者をしている。自分が暗躍していた時よりも死者が遥かに少なくて滅茶苦茶感動している。

Q:クラスメイト達はどうなったの?
A:元の世界で生きてる。ハジメの事は忘れてる。後日談でメス堕ちしたあの人は心身共にただの人になってるけど、恐らく後世に語り継がれる程の偉業を成し遂げ英雄に数えられる。

Q:エヒトや解放者達はどうなったの?
A:エヒトとは物理を交えた談合で主人公に隷属する事を取り決め、それに伴って解放者達はそもそも組織されない事になった。それと同様にユエも『ユエ』と言う名を与えられず、祖国で皆と共に生きている。
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