止まらない歩みのために 作:坂野ポンタ
「…………」
私がこの世界の歴史を歪曲させ、私の存在をこの世界に無理矢理定着させてから、大凡半年が過ぎました。勿論、元の世界の暦に従えばという前提ではありますがね。
先ず私は、この世界の生物の愚かさが、エヒトの暗躍故では無いかと思ったのです。何故なら、私が歴史を改ざんしたこの世界の生物達は、無駄な殺傷や生贄、神風特攻、虐殺や差別をしないのですから。これはつまり、この世界の生物達の遺伝子が『支配され、思考を放棄したい』という思考回路になるよう調節された事を裏付けているのでは?と推察したのです。恐らくは、大まかには間違っていないでしょう。いやはや、エヒト、あの存在は随分と規格外の存在だったようですねぇ。まぁ、そのような事は最早過去の事。私は、王としての責務を果たしましょうか。
とは言っても、そこまで重大な事をする訳ではありません。私は、この世界の改変の際に『トータスは私と長い間防衛戦争をしていた』という歴史にしたのです。勿論、これには同族殺しや先程言った事例がまた繰り返されるリスクがございました。しかし、先ほども言ったとおり、そう言った事実は一切発見されておりませんでした。無論巧妙に隠蔽された可能性は否定出来はしません。ですが、私は見たのです。人間族と亜人族と魔人族とが肩を組みながら酒場で談笑していた光景を!それら異種族間での婚姻、同居、子孫を!!
わかるでしょう。これらは、エヒトの実効支配していた時代では、まっこと考えられぬ事態に御座います。しかし、実際にこれらの事象は起こりました。これは私………いえ、『アナザーオーマジオウトリニティ』と戦う上で、多角的視点や戦局のより正確な見通しに他種族との連携が不可欠であった事を踏まえても有り得なかった事で御座います。私は、ハジメ氏との約束を、守る事が出来たのです。私は、誰一人取りこぼす事なく、平和を実現させる事が出来たのです!
それと、もう一つ中間報告が。
私は、この世界の復興及び発展の為に、打ち捨てられた大陸群の技術のサルベージや、浄化をするべきか否かを己に問いかけました。そして、私はその時では無いと結論を下しました。何故なら、全種族が満遍無く公平な立場に落ち着く事が出来たなら、いずれそれらの技術に辿り着く進化を、技術革命を、必ずや実現出来ると信じるに至ったからです。
種族が違えば文化が変わる。
文化が違えば価値観が変わる。
価値観が違えば視点が変わる。
そしてそれらの違う視点が寄り集まれば、必ずや今までに実現できなかった凡ゆる事物を実現し得るでしょう。この世界は、必ずや良い方向に向かう事でしょうなぁ。
…………そういえば、近頃私の従者の一人の挙動が怪しいのですが……まぁ、気のせいで御座いましょう。
Q:主人公は何をしたの?
A:ぶっちゃけなにもしていない。
主人公は過去から自分、つまり『アナザーオーマジオウトリニティ』と『トータス』との戦いが展開されていたと改変しました。しかもエヒトの無駄なテコ入れが無く、無意味な差別意識や虐殺行為、信仰心を抱かない存在に浄化されました(アナザージオウIIの力による必要以上の改変があった可能性は否めない)。なので、普通に他種族同士で同じ飯を食ったり、談笑したり、酒で酔ったり、あるいは色恋に発展したりもするようになれたのです。そしてそれにより、魔術や技術、考え方等の無意識の限界のようなものが解き放たれ、融合し、研磨され、連携が組まれ、かつてのトータスでは考えられない程の一体感に包まれたのです。
そして、主人公がその総てを真正面から打ち払い、復興及び発展の際、主人公がその自分を倒す為だった数多の人脈を行使し、あたかも自分がまるでプロの将棋氏の如き手腕をふるっているように見せているのです。
勿論そんな事はトータスの存在皆が見抜いているので、下手をするとテレビ本編の『オーマジオウ』以上に民衆から嫌悪されている。しかし本文末にいた主人公の従者の一人(つまりかつてのハジメ)は無駄な人死にも踏み躙られた尊厳も存在しない新たなトータスを見て感動しており、彼だけは決して主人公を裏切らない。
しかし、今のこの、慇懃無礼な主人公を評価するのがもし最高最善の最終王者、常磐ソウゴなら?
………これを書いている私は、想像しただけで背筋が凍ってますよ。