これは遠い昔、といっても数年前の出来事、
アイランドの日本エリアは他の国とは違い独特な歴史がある。
今こそ代表は決まっているが、過去にはその代表を巡って争いが起こっていた。15年前、当時の代表はまだ決まっておらず、代表を巡って名家が己の権力の大きさを競っていた。いくつもの名家があったものの特に有力な名家が3つ、日本エリアの大きな範囲の治安維持を担当していた川越家、外交及び日本エリアの資産を管理している深緑家、圧倒的な武力を備える天紫家。日本エリアの人々はこの3つのうちのどの名家が代表になるのかと日々お祭り騒ぎだった。そんなある日のお話、
付き人「剣二様!ご先祖さまの御神体に砂をかけるとはなんという無礼を!!」
剣二「知るかぁ!!」
大部屋に設置されている祭壇に砂を投げつけたこの少年の名前は天紫剣二。当時8歳。天紫家13代を継ぐ者であり次期日本エリア代表の候補である。
剣二「御先祖なんて俺は知らねぇ!遊びに行ってくるからバカ親父に言っててくれ!」
付き人「あぁ、、先が思いやられます、、。」
大きな屋敷の廊下を走り抜け家の大きな門の前まで来るとそこには剣二の父である天紫家12代現当主の天紫おタチが立っていた。
剣二「げげっ!バカ親父!」
おタチ「剣二よ!今日は行かさんぞ!!」
剣二「知るかよ!」
剣二は左側に向かって体をかがめ走り込んだがおタチの右剛腕に思いっきり体を投げ飛ばされた。
おタチ「ガッハッハッ!!修行が足りんぞクソガキが!!」
剣二「ってぇなちくしょう!!」
おタチ「今日は見合いだと言っただろう。」
剣二「だからだよ!第一顔すら知らねぇような女と結婚なんてするかよ!」
おタチ「剣二よ分かれ。天紫家が日本エリアの代表になる為には勢力を拡大する必要がある。川越家の者と婚姻を結べば川越家は天紫家と統合される。そうなれば深緑家などは敵では無い。」
剣二「じゃあな!!」
話に夢中になっているおタチを無視して剣二は逃げ出した。
おタチ「コラァ!待たんか!!見合いは夕刻じゃ!!遅れるなよ!!」
付き人「大丈夫でしょうか、、。」
おタチ「少しは次期当主としての自覚を持たんかクソガキめ、、。」
付き人「本日のお見合いに剣二様は参加されないとお伝えしておきます。」
おタチ「助かる。」
日本エリア城下町にて。
剣二「ユミ!!」
深緑「あぁ、、剣二か。」
剣二ははぁはぁ言いながら深緑の元に来た。
深緑「また逃げてきたのか。」
剣二「ったりめぇだろ!」
深緑「たまには許可を取って外出して来い。」
剣二「んなやり方じゃ一生出てこれねぇよ。死刑囚か。」
深緑「お前がもっとまともなら天紫家が日本エリア代表になるのにな。」
剣二「でもそんなの楽しくねぇじゃん!」
深緑「知らない女とも結婚しなくて済むぞ。」
剣二「ちょっと悩むな、、。」
深緑「真に受けんなよ。」
剣二「お前だって結婚相手くらい選びたいだろ?!」
深緑「第一俺は結婚とか代表とか興味無い。2本ずつ頼む。」
深緑は剣二と話しながら団子屋に団子を頼むと隣の椅子に剣二を座らせるような素振りをした。
剣二「まぁ深緑家の仕事から考えても、日本エリアが無くならない限り仕事があるからな。代表になんなくても困らないだろうけど。」
深緑「そもそも仕事なんてしたくないよな。」
剣二「なぁ。」
剣二は遠い目で正面に流れる川を眺めながらこう言った。
剣二「俺たちプレイヤーにならねぇか?」
深緑「ははっ。それもいいかも。、、マジ?」
剣二の顔を見たが一切笑っていない。
剣二「プレイヤーは自分の生き方を自分で作るんだぜ!そんな魅力的なものねぇだろ!」
深緑「そりゃそうだけど危ないんじゃないか?」
剣二「大丈夫だ!俺は強いからな!やるだろ?ユミ!」
深緑「俺はお前の保護者だからな!」
剣二「保護者同伴なら何してもいいんだろ?!」
深緑「俺が保護者だから何してもいいんだよ。」
剣二「団子ありがとな!」
深緑「はいはい。どうせお金も持たずに出てきたんだろ。そう言えば、、」
剣二「どした?」
深緑「お前今日見合いじゃなかったか?」
剣二「そうだ、夕方からだった!わりぃ行ってくる!」
剣二はすぐに屋敷に向かって走って行った。
深緑「全く、、お前といると退屈しないな。俺も帰って溜まった書類の消化するか、」
ー天紫家にてー
剣二「あっぶねぇ!!」
おタチ「間に合っとらんわ!!」
付き人「見合いは始まっております。上着はお預かりします。そのまま客間まで、、。」
付き人の話を聞かずそのままの服装で剣二は客間の障子をピシャリと開けた。あまりの勢いの強さでカァンッ!!と障子の枠がぶつかる音がした。
おタチ「剣二、、!!」
剣二「お前が俺の婚約者?」
婚約者「え、はい、、。私は、、」
剣二「可愛くねぇの。」
そう言うと剣二はおタチの横にあぐらで座り込んだ。
剣二(お見合いとかつまんねぇ。どれが誰とか興味ねぇし。)
しばらく夕食を食べながら話をしていたがおタチが立ち上がり剣二の耳元でこう言った。
おタチ「庭に来い。」
日本エリア ー天紫家屋敷の庭にてー
剣二「また説教か、、。」
てっきり説教されると思っていたがおタチの表情は落ち着いていた。
ため息をつくと話し始めた。
おタチ「剣二よ。今まで悪かったな。」
剣二「は?」
おタチ「今までお前には息子としてではなく次期当主であり日本エリアの代表にふさわしい人間になれるように接してきた。本当にすまない。」
あまりの覇気のない顔に剣二は少し寂しく思えた。
剣二「らしくねぇな。別に俺はバカ親父に説教されるの嫌じゃねぇし、、。」
おタチ「しかし好きで説教をするのも気が引ける。お見合いは無かったことにするように話してくる。これからはお前のやりたいようにやりなさい。」
戻っていくおタチの背中からは何故か悲しさが伝わってきた。
剣二「ちっ、、。後味わりぃ。」
日本エリア ー深緑家 門前にてー
剣二「夜にわりぃな」
深緑「いいけどどうしたんだ?」
剣二「お見合い抜けて来たぜ。」
深緑「何してるんだよ!」
剣二「いや、でも、バカ親父が自由にしろって、、。」
深緑「そんなこともあるんだな、、。あ、ちょうど良かった、言いたいことがあったんだ。」
剣二「言いたいこと?」
深緑「さっき溜まった書類に目を通していたんだが、川越家から提出された書類の資産に誤差があったんだ。」
剣二「どういうことだ?」
深緑「気にする必要も無さそうだけど額が大きいし、何よりこの誤差について一切の痕跡が無い。」
剣二「大金がどこかに引き渡されたってことか?」
深緑「分からない。勘違いかもしれないが、その大金がどこに何の目的で移動されたのかも全て隠蔽されている。」
剣二「でもそんなこと、、。」
深緑「もしかしたら不審な動きがあるかもしれない。川越家には気をつけろ。」
剣二「分かった。」
深緑家の家来「弓火翔様!」
深緑「すまない。呼ばれているからまた明日。」
剣二「あぁ。ちょっと待ってくれ。」
剣二は懐から何かを取り出すとそれを指で弾いて深緑に渡した。
剣二「だんご代だ。じゃあな!」
深緑(だんご代、全然足りてないよ、、。まぁいいけどさ。)
剣二(不審な大金の動きか、、それより帰ったらバカ親父にプレイヤーになるって言ってやろう。)
剣二は歩いて帰っていたがその足を止める。
高く登る煙、真っ赤に染まる屋敷。
剣二「家が、、燃えてる?!」