深緑「剣二!!」
ただ燃え上がる屋敷を呆然としながら眺めている剣二の胸ぐらをつかみ揺する。
剣二「そうだ、、帰ると屋敷が燃えてて、それで、、親父が、、。」
深緑「しっかりしろ!!天紫の旦那はどこだ?!」
剣二「はっ、、そうだ、まだ親父が中に!」
深緑「早く助けに行くぞ!」
付き人「お待ちください!あの中に向かうのは危険です!」
剣二「だからって親父を見殺しにできっかよ!」
付き人「いいえ!行かせられません!」
付き人はこれまでに見せたことがない形相で屋敷の門に立ちはだかる。
付き人「これまで私は剣二様の様々な我儘に目を瞑って参りました!それは私の恩人の旦那様から頂いた契約があるからです!私に安全な寝床と清潔な着物、腐っていない食べ物、そして天紫家に仕えることが出来る職を与えて頂きました。そして初めてここに来た時、旦那様と交わした契約は、もし自分に何かあった時は剣二様を何があろうともお守りする事です!私には天紫家に仕えた者として、剣二様を危険な目にあわせる訳にはなりません!!」
剣二「今まで、、本当に悪かった。俺はお前の忠誠心に甘えて俺が背負うべき何もかもを背負わせていたのかもしれない。」
付き人「いい加減にしてください!今更反省したところで私の何よりも大切な貴方を火の中に送りたくない気持ちは変わりません!」
剣二「変えてくれなくてもいい。これが最後の我儘だ。」
剣二は深く頭を下げた。
剣二「笑わなくてもいい。でも、せめて送り出す言葉はかけて欲しい。お前が俺の事を大事にしてくれてるようには俺は親父が大事だ。だから助けに行く。」
そう言うと泣きじゃくる付き人に背中を向け屋敷の中に向かった。
剣二「ユミ。行こう。」
深緑「行こうか。」
ふと剣二は振り返った。
剣二「名前、、。最後くらい教えてくれよ。」
付き人「私の名は天紫家に使えた時に手放しました。私はあなたの付き人。」
剣二「もう仕えねぇんだ。自分の名前なんてどう考えても俺の名前より大事だろ。」
そう言うと2人は崩れかける屋敷の中に入っていった。
ー崩れる屋敷内部ー
メラメラパチパチと音を立てる屋敷の中を小走りに2人はおタチを探す、がおタチの姿はなく、代わりに真っ赤な髪の少女を見つけた。
剣二「お前、、あの時居なかったな!何者だ!」
赤い髪の少女「、、。もういいの。」
深緑「おい剣二。人の姿は無かったぞ。恐らく、、。」
剣二「くっそ、、おい!親父がどこ行ったか教えろ!」
深緑「とりあえず避難しよう。裏の庭がいい。俺も話しておく事がある。」
そう言われると剣二は赤い髪の少女の手を引き大きな池のある裏庭に来た。
裏庭は剣二の趣味で集めた魚達が池で泳いでいる。もちろんおタチが剣二のことを思って各地から集めたものだ。
深緑「ここなら安全か、人の姿もない。」
剣二「なぁ。お前、何者なんだ?」
赤い髪の少女「私は川越真守。」
剣二「待て。川越家のご令嬢なら屋敷が燃やされる前に一度会ってる。今更そんな嘘は、、」
川越「あれは私じゃない。あの女は黒曜燧。何が目的かは分からないけど私達川越家に天紫家を潰させるように命令し私を誘拐してたの。」
剣二「それがなんでかって聞いてんだよ。」
川越「分からない。でも去り際に私に、私のお父さんも貴方の父上も殺した、と言ってた。」
剣二「くっそ、、そんなの嘘だ!だって親父は誰よりも強いんだぞ!」
深緑「それに屋敷内はくまなく探したが遺体はなかった。恐らく連れ去られた可能性が高い。君の父上も。」
剣二「探そう、、!親父を!」
深緑「今後について話がある。」
剣二「なんだ?」
深緑「剣二とそこの少女は死んだ事にしたい。」
剣二「は?」
深緑「どう考えてもおかしい。火を付けたり黒曜石を出したりする才能を持っているプレイヤーなんてこの島にはいないしデータベースにもない。恐らく国家が絡むほどの厄介事だろう。だから剣二とそいつは死んだ事にした方が行動も楽だし何よりその間、作戦は成功したと黒曜を騙せる。」
剣二「お前がそう言うならそうだな。」
深緑「どうやって探すかはさておき記録の改竄はまかせろ。」
剣二「少し動きづらくはなるだろうけど安全に越したことはないな。」
深緑「ひとまず剣二とそいつの身柄は深緑家で預かる。」
剣二「大丈夫なのか?」
深緑「アテがある。決まったならこの場を離れよう。」
3人は裏口から夜の森に姿を消した。
ー次の日 深緑家屋敷にてー
深緑「剣二。起きろ。」
剣二「ふぁ、、。疲れた、、。」
隣で寝ていた川越はもうとっくに起きていた。
深緑「会わせたい人がいる。入って来てくれ。」
深緑の後ろから大きな男が出てきた。身長は高く全体的に細長いシルエットだが、手から見える肉付きや傷から精錬された肉体なのは感じ取れる。
空色の髪が長くポニーテールのように後ろの高い位置で結ばれている。
白と少しの赤で彩られた和服はとても綺麗だ。
丸腰なのは武器を作る系の才能を持っているからだろう。
深緑「紹介しよう。」
???「拙者、日ノ本と申す。日ノ本空月。」
深緑「まぁ訳ありでね、少し前から深緑家の用心棒をしてもらってたんだ。彼に日本エリアの代表を任せようと思う。」
剣二「まぁ、もう誰も日本エリアの代表なんて興味無いしな。」
日ノ本「これは深緑殿の案なのだが、拙者の家来として登録し、拙者と深緑家の家来として行動すれば怪しまれることは無いで候。剣二殿は解体後の天紫家の者として問題無かろう。」
剣二「名案だけど、こいつをどうするかだよなぁ、、。」
一同は川越を見つめる。見られた川越は少しキョドってあっあっ、、と辺りを見回す。
深緑「もう名前を変えよう。」
剣二「確かに、、。」
川越「私の、、名前を、、?」
深緑「そうだけど、そんなに嫌?」
川越「ううん。そんな事はないよ。」
川越(もう家に縛られないって事だよね。)
深緑「まぁ名前は剣二に丸投げしよう。」
剣二「ようし!考えるぞ!」
川越「私の名前の扱い軽くない?!」
剣二「んー、、赤護盾那ってのはどうだ?」
日ノ本「拙者もいい名だと思うでござる。」
深緑「それで登録するけど構わないか?」
川越は少し考え込むような顔をするととても笑顔で
赤護「うん!!」
と返した。
ー時は戻って現在ー
赤護「最初はまぁ苦労したけどね。」
シェルス「恋愛的感情になったのはいつなんですか?」
赤護「私達が初めて私達だけで国外派遣に行った時かな。」
レイン「結局お父さんは見つかったのか?」
赤護「ううん。まだ。でも必ずどこかで生きてると願いながら毎日任務をこなしてるんだよ。ケンは私に川越以外の生き方をくれた。家に囚われず好きなことをして生きる、生きられる名前をくれたんだ。」
レインは心のどこかで自分もこんな風に誰かを助けられるプレイヤーになりたいと思った。
天紫「何してんだ?みんな集まって。それよりみんなでご飯行かないかい?」
赤護「行こう!」
レインとシェルスは目を合わせてうんっと頷くと、
レイン「美味しいとこ教えてくれよ!剣二先輩!」
シェルス「奢ってください!剣二先輩!」
赤護過去編長く続いてしまいすみません。
本当は初めての国外派遣編まで書こうと思ったのですが、なかなかストーリーに戻れないのでその他の過去編とまとめて出そうと思います。
長い間でしたが読んで頂きありがとうございます!
次回からは第2章としてレイン達がプレイヤー訓練校に慣れてきた日常や、新たなプレイヤーの登場、垣間見える敵組織などを書いていこうと思います。
今後ともよろしくお願いします。