YGGDRASIL ショタな女は大人になるのを待って告白する
外が明るくなっていて、朝早めで、南国では一番良い感じの時間帯だ。私がピンク色の肉棒をした粘体となって、横たわるベッドルームは、22度くらいに保たれている。ベッドと言っても、5m四方はあって、天蓋からレースの刺繍が施された絹のカーテンが、昔々の蚊帳みたいに幕となって包んでいる。“王の居室”内の主寝室は、30坪くらいの卵型のドームの中央南側に、私とモモンガ君が寝ているベッドが置かれている。DMMOシステムを用いた、一般ゲームである“YGGDRASIL”は、本来であればプレイヤ同士で18禁行為を行えることはないが、夫婦等の運営が認めたペアが、ペアモンスターを斃して得たドロップアイテム、ペアリングとモンスターハウス内であれば、倫理規定を解除することが可能となっていた。
“王の居室”は、ペア・ワールドエネミーを斃して得た、正規に認められたドロップアイテムであり、私と愛しい人が、ペアで登録し、ペア・ワールドエネミーを斃して得たアイテムなのである。
「今日も、寝かせて、もらえなかったな」
隣ですぅっすうぅっと可愛く眠っている、骨格標本な姿をした愛しい人は、DMMO-RPG“YGGDRASIL”のギルド「Ainz Ooal Gown」ギルド長、モモンガ君だ。私が病気になってからは、この部屋で過ごすことが増えた、特にDMMO-RPG“YGGDRASIL”のサービス終了が通知されてからは、モモンガ君と一緒にナザリックで過ごすことが、本当に多くなった。幼かった愛しい人が、“YGGDRASIL”の中で育って、“YGGDRASIL”で大人になった、そんな想いがこのNazaricには詰まっている。
「この部屋も、今日で最期か」
西暦2138年、DMMO-RPG「YGGDRASIL」が生まれて、12年が経過していた。
Dive Massively Multiplayer Online - Role Playing Game“YGGDRASIL”
サイバー技術とナノテクノロジーの粋を集めたDMMOシステムは、脳内に実装したネットワークシステムを直接通信システムと連結し、VR[仮想現実:Virtual Reality]とAR[拡張現実:Augmented Reality]の融合を目的として開発された。DMMOシステムを利用して、開発された様々なゲームの中で、最盛期には日本人口の五人に一人が参加したゲームだった。徐々に衰退していって、広大なマップにほとんど人がいない状態となり、運営からサービス終了が告げられてしまった。
私自身は、VR[仮想現実:Virtual Reality]とAR[拡張現実:Augmented Reality]の融合を図るためのベースパッケージ、DMMOシステムの検体として、養護施設で養育されながら、検体としての仕事を受けていた。環境破壊された世界で、生活するために空気や水すら購入しなければならない席では、生きていくことも大変だった。両親が死んで、孤児になった私と弟が生きるには、命の危険が多い検体の仕事を受けることで、弟と綺麗な環境が維持されたアーコロジー都市の養護施設に入ることができた。検体としての仕事をしながら、学校にも通うことができて、金を稼ぎながら好きな声優の仕事を目指すこともできた。
検体の仕事は、DMMOシステムが、人間に及ぼす影響を検証する実験素材であり、DMMOの安全性を人体実験をして確認するモルモットの役目である。ベースパッケージの開発は、複数の巨大企業によるプロジェクトであり、莫大な金が動き無数の検体が人体実験に参加していた。
現実からいえば、DMMOシステムの検体は、幾つもの養護施設で、契約をした男女数千名が参加していた。環境破壊が進んだ世界では、飲料可能な水や呼吸可能な空気すら、手に入れるのに金がかかる世界である。老若男女問わず、生きるためだけに検体をする者も多かった。私が居た施設でも、数十人が参加していたが、20歳を超えて検体を続けることが可能な形で生き残ったのは、私と弟だけだった。他の検体は、病等と称して、養護施設を去って、戻っては来なかった。
無数の検体が犠牲になることで、VR[仮想現実:Virtual Reality]とAR[拡張現実:Augmented Reality]の融合に対する、電脳法の整備や改訂が進められ、DMMOシステムが公開され、ベースパッケージを利用した、幾つも開発されたゲームの一つが、DMMO-RPG“YGGDRASIL”だった。私が行っていた検体の仕事は、VRとARの融合した世界で、フィードバックシステムの実証実験をすることと、NPCと人の「チューリングテスト」を行うことだった。DMMOシステム上で、私自身のデータを使ってNPCを創り上げ、NPCとPCで交代して対応して、会話や仕草に行動、NPCとPCの区別をできなくなるくらいに、NPCを人にすることだった。幼女から少女となり女となる中で、活動の範囲は拡大し、性行為を含めた人間としての行動すべてが、「チューリングテスト」の範囲となった。「チューリングテスト」のプロジェクトリーダが、タブラ・スマラグディナであり、タブラの夢は人と同じNPCを創り上げることだった。
当時10代だった私は、“YGGDRASIL”というゲームに、β版から参加していて、最初は検体としての参加で、仕事だったけど、ゲームが面白かったこともあって、自分自身の趣味として参加する様になっていた。
私は“YGGDRASIL”で気になる男の子に出会い、気になる男の子と一緒にゲームを楽しんでいた。男の子の成長は早く、いつのまにか好きになっていったけれど、検体としての仕事もあって、なかなか言い出せなかった。
ようやく声優の仕事(エロゲだったけど)貰えて、少しづつ知られるようになって、プロジェクトとして契約していた、検体としての仕事が終わったこともあって、私は検体の仕事を辞めて、男の子が大人になるのを待ちながら、どう告白しようかと考えていた。
“YGGDRASIL”でペア・モンスターのイベントが始まったのは、ちょうど告白方法を考えていた頃で、私は飛びついてしまった。ペア・モンスターのイベントは、ドロップするペアリングとモンスターハウスが売りの、リア充に向けたイベントだった。ペアリングは、戸籍等を運営に提出して、ペア登録者として認められると、モンスターハウス内に限り、倫理規定が解除されるというアイテムだった。DMMO-システムは、通信による接続であり、相互の感覚接続を可能としたことで、可能となった新たなイベントだった。さらに恋人限定、ペア・ワールドエネミー討伐イベントは、ペア戦闘のイベントで、運営に登録したペアであれば、性別等に関係なく参加でき、討伐に成功すれば、ワールドエネミーのドロップアイテム“光と闇の指輪”と“王の居室”を手に入れることができる。“光と闇の指輪”を手に入れたペアは、“王の居室”内に限って倫理規定が解除された。
私は年齢制限が外れたモモンガ君とペア登録して、ペア・ワールドエネミー「光の覇王・闇の女王」ペアを斃すことに成功した。ペア・ワールドエネミーの世界級ドロップアイテム“光と闇の指輪”と世界級モンスターハウス“王の居室”を手に入れることに成功した。私は、モモンガ君に告白して、“王の居室”で二人で、倫理規定が解除された一夜を過ごした。
“王の居室”は、豪奢な両開きの扉のアイテムで、“光と闇の指輪”を付けた二人だけが、扉を開けて入ることができる。中は、プライベートビーチを含めた南国リゾートホテルをモデルとした、豪奢な造りになっていて、最上階のロイヤル・スィートルームは、卵型の透明な天井を持ち、5m四方の天蓋付きペットや、広々としたバスルーム、簡易キッチンにナイトバーといった設備まで整えられていた。南国の太陽みたいな姿は見えるけれど、部屋の中では眩しくなく、暑くもない快適な環境になっていて、南側の窓はオーシャンビューの広がる世界で、現在の環境破壊された世界では存在しない、紺碧の海が広がっていた。夜になると現在ではぼんやりとしか見ることができない、輝く月や銀河がはっきり見える、星空が広がって、本当に綺麗だった。
私はモモンガ君と結ばれて、次の日は、AOGギルドメンバーによるオフ会が開催されて、祝福されたのは嬉しかった。タブラを含めて、ギルドメンバーの何人かは、検体での仕事相手もいた。タブラは、モモンガ君に検体の仕事をさせようとしていたが、私はモモンガ君をタブラから引き離すのに必死だった。本当に楽しかった、そんな夢みたいな日々も、終わりを迎える時が来る。
今日は、会社があるから、愛しい人に声をかける。ちょうど、モーニングコールのように、呼びかけた。
「モモンガお兄ぃちゃん、起きて、朝だよ、会社だよ」
「んー、眠ぃぃ、行きたくない」
ぐずる、モモンガ君は可愛かったが、会社は待ってくれないし、起こさないとね。
「モモンガお兄ぃちゃん、起きないと、いたずらしちゃうぞぉ」
そう言って、触手を伸ばして、モモンガ君の骨格に触れるようにして、DMMOを介して接続された、悟君の身体を擽っていく。
「あぁ、ひゃぁッ」
モモンガ君は、可愛い感じで声を上げて、起き上がって、私にキスをした。ピンク色の肉棒への骨格標本のキスは、シュールではあるけれど、私自身は生身に触れられて、大人のキスされた感触を受ける。さらに、モモンガ君は、骨格の指が、私の粘体な身体を、撫でるように、私に意識させる。粘体の身体は、人間の五感に対応する、感覚器官が集合体のように構成されるため、味覚と嗅覚は無いが、視覚聴覚触覚は、自分の身体そのものであり、粘体の身体に部位の区別は無い。つまり、モモンガ君は、私の粘体の身体をどのように触るかで、私が反応して意識する部位が、そのまま感覚として接続されるのである。
「ひぃゃぁッ、ぁッ」
骨格を擽るより、ヤバい感覚を覚ますように、私の身体を撫でて呼び覚して、少し骨の指が粘体の中に潜ると、ピンク色の肉棒が、淫らに溢れるようになる。そんな風に、弄ってから、私に爽やかに、
「ぶくぶく茶釜さん、おはようございます」
もうやられたよ。私は、ピンク色の肉棒をした粘体が、朱に染まっていて、息が荒くなっていたけれど、
「うん。おはよう、モモンガ君、そろそろ会社だよ」
モモンガ君は、時間を確認して、ログアウトするために、コンソールを開いた。
「ぶくぶく茶釜さんは」
「今日は、仕事は無いけど、ホワイトプリムさんからデータを受け取るから、“YGGDRASIL”に入るのは、昼過ぎてからかな」
「わかった、俺もできる限り早く戻ります」
「あんまり、無理しないでね、モモンガお兄ぃちゃん」
「ぶくぶく茶釜さんも、無理しないでくださいね、体調が悪くなったら、すぐ連絡してくださいね」
「こらこら、そんなにすぐ悪くはなんないから、大丈夫だよ、モモンガ君」
心配そうにする、モモンガ君を追い出すように、ログアウトさせた。
病気かぁ・・・私は喉の病気と診断され、手術をしなければ、3年以内の命だと言われたけど、手術代が支払えるような金は無いので、まだ安くすむ緩和治療という形をとることにした。モモンガ君は悔しそうだったけど、国民皆保険制度はとうの昔に崩壊して、金持ちでなければ病気になったら死ぬしかないという、現代社会では当たり前だよって言って、モモンガ君を慰めていた。
声優の仕事で成功して、舞台やバラエティに出てた頃は、ほとんど“YGGDRASIL”にほとんど入れなかったけど、AOGのギルドメンバーが減ってモモンガ君一人になった頃に、喉に腫瘍ができる病気となって、寿命の宣告を受けて“YGGDRASIL”に戻ったのには嘲笑ったね。モモンガ君を一人にした罪が、私の命を、縮めたんだって思ったもんだ。
金になる危険な検体の仕事を受ければ、手術代は稼げるけれど、手術をしても声を失うという事実に、私自身が耐えられそうになかった。DMMOのシステムに、自分の声をライブラリとして実装して、DMMOのシステム内では、喋ることができるようになった。リアルで声を失う声優に仕事は消えていった、わずかにDMMOシステムを使ったゲームで声を使う仕事が回ってくる程度となった。声優の仕事は、ほとんどなくなくなり、私は暇になったこともあって、自分の声を出すことができる、“YGGDRASIL”に入り浸る、廃人ゲーマーみたいな生活になっていた。仕事が減って、人がいなくなった“YGGDRASIL”に、愛しい人に会うために戻ってきて、私は鈴木悟の家に押しかけて女になった。
「寿命は三年、どうか私をモモンガ君の、女にしてください」
DMMOシステムを旅行鞄に詰めて、細々とした旅行鞄一つで、モモンガ君の家に押しかけた。モモンガ君は受け入れてくれて、そこからは、限られた時間ではあったが、幸せといえる日々となった。
私もログアウトして、会社に出掛ける、モモンガ君を見送った。