ヒロとウサギのアポカリプス世界冒険譚   作:やみくらげ

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12話 アイテム

 

 

「マジか! マテリアルがあるのか?」

 

 フルッ

『はい、どうぞ』

 

 

 と言って、白兎が差し出してきたのは1枚のカード。

 

 

「これは?」

 

 フリフリ

『マテリアルカード。この中にマテリアルが収納されているよ』

 

「え? マテリアルって、1cmくらいのキューブ状じゃなかったっけ?」

 

 ピコピコ

『どんな仕組みかは分からないけど、この1枚のカードに入っちゃうの。何千、何万、何億個も入るらしいよ』

 

「この辺はファンタジーだなあ………、いや、SFって言えるのか?」

 

 

 白兎から受け取ったマテリアルカードに目をやる。

 

 クレジットカードくらいの大きさ。

 一面黒色だが、電卓のように液晶部分があり、

 そこに数字が並んでいる。

 

 おそらくこのカードに収められたマテリアルの量であろう。

 

 ザッと数えてみると、その額は………

 

 

「さ……30万! 30万円も………、いや! さっき白兎が1マテリアル=100円って言っていたから………3,000万円!!」

 

 

 元の世界でも手にしたことが無いような大金。

 思わず手が震えてカードを落としそうになる。

 

 

「え? な、な、なんで……、こ、こ、こんな額が………」

 

 パタパタ

『非常用で僕が預かっていた分だよ。自由に使って』 

 

「いや………、預かっていたって………、誰から?」

 

 ピコピコ

『ごめん、それは言えないや』

 

「…………………」

 

 

 申し訳なさそうに目を伏せる白兎。

 

 可愛らしいウサギのそんな姿に、

 俺も追及する気を失ってしまう。

 

 

 白兎は前から『自分には話せない秘密がある』と何度も公言していたのだ。

 ここまで俺に無条件で従ってくれている白兎がそう言う以上、

 俺が問い詰めても無意味だろう。

 

 

 けれども………

 

 

「そんなに金……マテリアルがあるのなら、こんなスラムに来なくても良かったんじゃないか? 街の方で綺麗なホテルに泊まれただろ?」

 

 

 つい、嫌事を口にしてしまう。

 白兎の事情は鑑みつつも、初めからある程度の資金があるなら、

 もっと違う選択肢があったのではないかと思ってしまう。

 

 しかし、俺の意見に白兎は耳をピコピコ動かし、

 

 

 ピコピコ

『駄目駄目。僕達みたいな町の外から来た風来坊が分相応な財産を持っていると思われたら大変だよ。マスターも見た目強そうに見えないし、僕も外見は機械種ラビットでしかないから、あっという間に変な奴らに目をつけられちゃうよ』

 

「あ………、そっか………、確かにこんな治安が悪そうな世界なら、そうなるか………」

 

 パタパタ

『それにマスターが、いきなり3000万円を渡されて、平静でいられる? 調子に乗って散財しようとするか、疑心暗鬼になってビクビクすることになったんじゃない?』

 

「う……、ごもっとも……」

 

 

 白兎の説明に全面降伏で項垂れる俺。

 

 

 確かに、この世界のことも詳しく知らないまま、多額の資金があると分かれば、俺がスラムに来るはずも無い。

 白兎が言ったように、無駄に調子に乗るか、誰かに資金を奪われまいと不自然に怯えて怪しまれた可能性が高い。

 

 この街に来た当初は些か気分が高揚していたのは事実。

 ジュレに誘われ、何の疑いも無くあっさりついて行ったのを思えば、平静でなかったのは明らか。

 

 今でこそ、初戦闘経験・狩りの失敗を経てある程度落ち着いたけれども。

 だからこそ、白兎はこのマテリアルカードを差し出してきたのであろうが。

 

 

「…………白兎。他にお前が隠し持っているモノはないか?」

 

 

 だとしても、聞かざるを得ない。

 この先、俺が生きていくうえで、どれくらいのリソースがあるのか把握するのは必須。

 

 俺の質問に白兎は一瞬、ピクッと耳を震わせ、

 考え事をするかのように軽く目を瞑ること数秒。

 

 そして、ナニカ覚悟を決めたような雰囲気を漂わせ、

 どこからともなく、3つの品物を俺へと差し出してきた。

 

 『模様の入った手旗』

 『小さな巾着袋』

 『簡素な造りのズタ袋』

 

 

 まるで何もない空間からモノを取り出したように。

 ファンタジーでよくある次元収納であろうか?

 

 色々聞いてみたいが、今は白兎が差し出してきたアイテムの方が重要。

 

 白兎はアイテムを指し示しながら俺への説明を開始。

 

 

 フリフリ

『こっちの旗は【杏黄戊己旗】。地面に差すと周りの者に活力を与えるんだ。具体的には機械種の燃料を補給できる。1時間に5%くらいだけど。あと、穢れを跳ね除ける力があるね。街の外に充満している赤の威令を遠ざけるんだ。野外でマスターがいなくても、この旗の下では従属機械種がレッドオーダー化することは無いんだよ』

 

「『杏黄戊己旗』………、確か封神演義で主人公の太公望が保有していた宝貝か………」

 

 

 旗を手に取り軽く検分。

 大きさは縦横30cm×50cm程。

 満月の夜をバックに剣が大地に突き立てられたデザイン。

 

 

「従属機械種の燃料補給に使えるのか……、今の所、白兎しかいないから、使い道が無いなあ」

 

 ピコピコ

『でも、マスターが仲間を増やしていくなら、絶対に必要なモノだよ。補給速度はどんな超高位機種でも1時間に5%だからね。ちなみに超高位機種は少し戦闘するだけで、数十万単位のマテリアルが軽く溶けるからね』

 

「ヒエッ! な、なんて燃費の悪さだよ……、戦闘機とか、戦艦並みだな……」

 

 

 ミリタリーはそんなに詳しくないけれど、

 ミサイル一発数百万、燃料代が数千万とかザラだと聞く。

 

 超高位機種とやらが、どれほど強いのか知らないが、

 そんな馬鹿喰い兵器をどうやって運用しているのであろうか……

 

 

 パタパタ

『超高位機種の戦闘力は戦闘機や戦艦以上だからね。軽いジャブで街が吹き飛ぶから』

 

「………絶対にそんな奴等とは戦わないからな!」

 

 

 そんな核爆弾みたいな奴等、相手にしていられるか!

 今の俺は最強武将であってもあくまで人間。

 宇宙怪獣相手に戦うウルト〇マンじゃないんだぞ!

 

 強い機械種を仲間にしたいが、自殺したいわけじゃない。

 手の届く範囲内で手堅く戦力を増やすことにしよう。

 

 

 とにかく、この宝貝は機械種部隊を維持するのに必須ということが分かった。

 

 

 

 フルフル

『次に、こっちの小さな袋は【七宝袋】……所謂アイテムボックスだよ。容量がほぼ無限のね』

 

「アイテムボックス! 無限収納! ………それは凄い!」

 

 

 異世界モノでは定番のアイテム登場に興奮を隠せない。

 

 お宝は持ち帰ってこそお宝なのだ。

 いくら財宝を手に入れても、持って帰られなければ意味が無い。

 

 まさしくお宝を求める冒険者の必須アイテム。

 倒した機械種の残骸を容易く運べるとしたら万金の価値がある。

 

 

 パタパタ

『でも、その名の通り、お宝しか収納できないよ。マスター自身が、価値があると認めたモノしか入れられないから注意してね』

 

「制限付きか………、まあ、それでも十分に役に立つ………、しかし、『七宝袋』という宝貝は聞いたことが無いな。ソレって大黒様が持っている袋の名前じゃないか?」

 

 ピコピコ

『多分そう。元は西遊記で有名な人食い瓢箪『紫金紅葫蘆』だったらしいよ。でも、使いにくいから改造して今の名前にしたんだって』

 

「ふ~ん……、あの金角、銀角が持っていたという、名前を呼ばれて返事をすると吸い込まれるアレか………」

 

 

 返事をした者を吸い込んで確殺するというアイテムなんてピーキー過ぎる。

 ソレに、この世界の敵であるレッドオーダーだと、そもそも会話機能があるかどうか不明。

 

 ならば、日常でも戦闘でも役に立つであろうアイテムボックスに改造するのは分かる。

 

 

「実質無料で従属機械種を運用できる結界具に、無限収納袋か……、どっちも役に立つアイテムだな」

 

 パタパタ

「仙人の秘宝である宝貝だからね、その能力は破格だよ………、本当はもっと持ってきたかったけど、この2つを確保するのが限界だったんだ」

 

「確保………ねえ」

 

 

 どこからこんなお宝を持ってきたのやら。

 

 それに、『紫金紅葫蘆』を『七宝袋』に改造したという話、

 その『改造』は一体誰が行ったのか?が気になると言えば気になるけれど。

 だが、何となく、これも答えてもらえないような気がする。

 

 これまでの白兎の言動。

 俺に対する忠誠心を考えれば、その誰かと言うのは、おそらく………

 

 

 

 

 

「んん? 白兎、その袋は宝貝じゃないのか?」

 

 

 白兎が取り出してきた3つ目。

 『七宝袋』よりも大きく、リュックサックくらいの大きさのズタ袋。

 さっきから白兎が大事そうに抱えている。

 

 よほど重要なモノなのかと思い、尋ねてみると、

 

 

 パタパタ

『違うよ。この袋はただの袋。大事なのはこの中身…………』

 

 

 白兎は耳をパタパタさせながら、

 ズタ袋の口に前脚を突っ込み、

 中のモノを取り出して床に並べていく。

 

 大切なモノであるかのように丁寧に。

 かけがえのないモノであるかのように優しく。

 

 狭い部屋があっという間に、白兎が並べた品々に埋め尽くされる。

 

 それは…………

 

 

『鋭い刃物の欠片』

『弓のようにしなった木の枝』

『白い羽根』

『瓦のような金属片』

『紫色のネクタイ』

『ひび割れた牡牛の角』

『解れた金色のリボン』

『破けたピエロ帽子』

『白い布切れ』

『割れた槍の穂先』

『剣の柄』

『溶けかけた金槌』

『欠けた金色の鱗』

『途中で折れた竜のような角』

『虎柄模様の布切れ』

『紺色の羽根』

『竜紋が入った刀の鍔』

『花や玉が飾られた簪』

『紫色の髪束』

 

 

 

 原型を留めているモノもあるが、大半は欠けたり壊れたりしている品々。

 

 思わず『なんだ、このゴミは?』と白兎に聞こうとして……

 

 

「…………………」

 

 

 白兎の沈痛そうな態度を見て、口には出せなかった。

 

 下を向き俺に目を合わせないようにしている白兎。

 その姿はまるで泣くのを我慢しているかのよう。

 

 

 

「白兎、これは?」

 

 

 代わりに無難な問いを投げかけてみると、

 

 

 フルフル

『皆にもう一度会わせてあげたかったの………』

 

 

 白兎は俺の問いに直接答えず、

 ただ自分の心の内を晒した。

 

 

 その言葉の意味ははっきりとしない。

 

 けれど、その床に並べられた品々は、

 白兎にとって大事なモノで、

 多分、俺にとっても…………

 

 

 

 

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