「え? この世界は古代中華じゃないの?」
パタパタ
『三国志でも無ければ、水滸伝でもないよ。暴走した機械が人類を追い詰めているアポカリプス世界』
契約して従属させた兎型ロボから情報を貰う。
この世界は『機械種』というロボットが存在している。
元は人間の召使的な立ち位置だったが、『赤の女帝』という機械種達の支配者が生まれて、人間に反逆した。
赤の女帝が放つ『赤の威令』は人間の従う機械種を全て人間の敵へと塗り替えたのだ。
人間側はあっという間に追い詰められたが、『白鐘』という人間に敵対する機械種を寄せ付けない波動を放ち、一定区域内を安全に保つ秘宝を見つけて生存圏を確保。
この中ではあらゆる機械種が暴力的行為を行えなくなると言う。
そして、人間達は白鐘の効果範囲内でしか生活できなくなった。
白鐘の効果範囲外だと無制限に人間と敵対する機械種が襲ってくるから。
これ等機械種にも2種類があり、赤の帝国に従う機械種を『レッドオーダー』。
人間と契約を結び、人間側に味方する機械種を『ブルーオーダー』と呼ぶ。
これの差は赤の女帝が放つ『赤の威令』に機械種が汚染されているかいないか。
『赤の威令』に汚染された機械種は機体が黒く染まり、邪悪な外見となって人間を襲う。
これを元に戻すのが先ほどの『蒼石』。
『蒼石』で機械種の頭部………正確にはその中にある晶冠、晶石と呼ばれるコンピューターみたいなモノに衝撃を与え、『赤の威令』による汚染を吹き飛ばす。
そうすると、機械種は記憶路は真っ新となり、先ほどのように青い目を点滅させるマスター認証待機状態となるそうだ。
「ええ? お前、さっき、蒼石をぶつけられたけど、記憶とか大丈夫なのか?」
パタパタ
『大丈夫! 僕は機械種だけど、ぱお………、コホンッ、僕は特別なんだよ!』
「…………まあ、いいけど」
コイツ、何かを隠している素振りがあるんだよな。
でも、コイツしか情報源が無いし………
ちなみに機械種へ蒼石を叩きつける行為も『ブルーオーダー』と呼ぶようだ。
そして、大陸中にばらまかれている『赤の威令』も『レッドオーダー』と。
この機械種を汚染する『赤の威令』はかなり厄介らしくて、人類に味方するブルーオーダーでも、何の対策も無しに『赤の威令』を受けると数分~数十分で『レッドオーダー化』してしまうらしい。
だから『ブルーオーダー』の機械種は、赤の威令を防ぐ『白鐘』の効果範囲内でないと活動できない。
「それだとお前も赤の威令に汚染されてしまうんじゃないか?」
周りは見渡す限りの荒野だ。
とても人が住むような街が近くにあるとは思えない。
ピコピコ
『それも大丈夫。なぜなら僕と契約を結んだマスターは機械種使いだから!』
「機械種使い?」
先ほどコイツと行ったマスター認証。
通常、機械種は人間と契約を行い、その人間をマスターとして従属する。
ただし、白鐘の効果範囲を一歩でも出ると、赤の威令の汚染が始まり、やがて人間と敵対するレッドオーダーとなってしまう。
しかし、マスターである人間側に特別な才能がある場合、その人間が近くにいる時に限り、赤の威令を無効化できるそうなのだ。
その特別な才能のある人間を『機械種使い』と呼ぶ。
「つまり、俺にはその機械種使いの才能があるってこと?」
ピコピコ
『そうだよ! 従属限界もかなり多いはずだよ』
「従属限界って………、従属させることのできる機械種は無限じゃないのか?」
兎型ロボからいろいろ話を聞いていて、なかなか生きていくには厳しい世界観であることは分かった。
しかし、コイツみたいなロボットを従属させることができると聞いて心が躍り始めていたところなのだ。
「…………俺の目標としては、とりあえずお前みたいなロボ………、機械種をどんどん仲間にしていくことか。戦力は絶対に必要だし」
折角『闘神』スキルを得たのに、相手がロボットでは分が悪い。
聞けば、銃やロケット砲、ビーム光線、ミサイルは当たり前。
果ては火を吹いたり、電撃を放ったり、重力を操作したりする機械種もいるらしい。
「銃やミサイルの前には、いくら呂布でも歯が立たないぞ。はあ………、最強だと思ったのに…………」
残りの頼み綱は『仙術』スキルくらいか。
でも、全く発動する気配が無いし、このままでは多少運動が得意な人間であるだけだ。
「俺TUEEEEしてみたかったなあ………、んん? どうした? 何か言いたいことがあるのか?」
足元の兎型ロボが何か言いたげに耳を揺らしていた。
ピコッ
『………何でもないよ。マスターの力はマスターで確かめないとね』
「分かってるさ。出てくる機械種がお前くらいの大きさだったら、パンチやキックでどうにかなるかもな」
いくら金属の塊でも、体長40cm程のロボには負けはしない。
元の貧弱ボディなら別だが、今の俺は三国志最強武将と同等の戦闘力を持っているのだから。
それに見た所、銃やミサイルを装備しているようでもないし。
パタパタ
『機械種の大きさは色々だよ。僕より小さいのもいるし、山よりも大きいモノだっている』
「おい! 山より大きいって………、それはフカシ過ぎるだろ」
ガンダ○だって、全高20mくらいだぞ!
スーパーロボットだって精々100mだ。
まあ、アニメでは星よりもデカいロボは居ない訳じゃないが、あまりにも非現実出来過ぎる。
フルフル
『そうだよねえ………、実際に見ないとなかなか信じられないよねえ………』
「機械種って、ロボットなんだろ、だいたい人型でそこまでデカいとバランスがだなあ………」
フリフリ
『形も色々だよ。機械種エルフや機械種オーガとかだったら人型だけど、機械種グリフォンとか機械種ドラゴンとかもいるし』
「おい! 何でそこでエルフやドラゴンが出てくるんだよ!」
パタパタ
『だっているもん。この世界の機械種はマスターが好きなファンタジーを元ネタにしているモノが多いよ。他にも機械種グレーターデーモンや、機械種エンジェル、それに有名な魔王や神だっている』
「マジか…………」
蹲って頭を抱える俺。
予想外の敵の存在に思わず絶望しそうになる。
「無理無理無理無理………、いくら呂布でもドラゴン相手は無理だ。それに魔王ってなんだよ、絶対にビームとか撃ってきそう。魔王ルシファーとかどうやって倒すんだよ………」
フリフリ
『大丈夫、大丈夫! 僕とマスターなら、魔王だって倒せるよ』
兎型ロボは俺を慰めてくれているようだが、どう考えても兎1匹連れての魔王退治は不可能だ。
どうやらコイツは随分と楽観的な性格の様子。
まあ、サポートキャラなんだからそんなものなのであろう。
ピコピコ
『不安だったら、仲間を増やしていけばいいよ。強い仲間をどんどん従属させて行こうよ!』
「はあ…………、お前の言う通り、それしかないか」
別に魔王へ挑むつもりなんてないが、戦力は多いに越したことがない。
それにドラゴンやグレーターデーモンを仲間にするなんて、少しばかり興味が湧いてくる。
パタッ、パタッ
『マスター、そろそろ僕に名前を付けてよ。ずっと『お前』って呼ばれるのはなんか嫌』
「ああ、そうだな………」
名前をつけるのも俺の役目か。
まあ、ここはカッコ良い名前を付けてやるとするか・
「よし! お前の名前は『ホワイトファング』………」
パタパタ
『パス』
「え?」
ピコピコ
『もっと別な名前が良い』
コイツ………
意外に拘りが強いなあ。
「なら………、『ヴァイスクロー』」
フリフリ
『何でドイツ語と英語を混ぜるの? そんなのイヤだ』
「ぬぬぬっ! ならば………」
幾つか候補を並べるも、兎型ロボは頑として首を縦に振らない。
俺が苦労して考えた名前なのに、何が気に入らないと言うのか。
パタパタ
「ほら、僕をよく見て! 僕の姿から、マスターが頭に思い描いてくれた名前、それがきっと…………」
よく見てと言われても、お前の姿は白い兎そのもので…………
うん?
白い兎か。
ならシンプルに行くなら…………
「白兎(はくと)はどうだ?」
ピンッ!
さっきまで忙し気に揺れていた兎型ロボの耳がピンッと立った。
そして、後ろ脚で立ち上がり、誇らしげに胸を張って耳を振るう。
ピコッ! ピコッ!
『僕の名前は【白兎】! ああ………、嬉しい………、嬉しいよお………』
なぜか感動に打ち震えている兎型ロボ………、いや、白兎か。
パタッ パタッ
『マスター、ありがとう。僕、マスターの為に一生懸命頑張るから!』
「ああ、こちらこそ頼む」
足元の白兎から前脚が伸ばされる。
何となく俺も屈みこんで拳を前に突き出す。
コツン
触れ合う俺の拳と白兎の前脚。
それはこれから始まる1人と1機の冒険の予感と………
ひどく懐かしい気持ちが胸の中で溢れたした。