「これは…………」
白兎に先導してもらい、荒野を進んでいくと人工的に作られた道へと出た。
さらにその道沿いに進むと、道の外れに全高3m近いの人型ロボットの残骸を発見。
「…………これが機械種か」
機体の色が白系統だからブルーオーダーなのであろう。
白兎に続いて出会った機械種が大破しているのは残念だけど。
パタパタ
『そうだよ。多分、機械種オーガの上位種だね』
「オーガの上位種………、オーガキングとか?」
フリフリ
『おそらく………、通常のオーガは全高2m強の中量級だから。これは2.8mあるから重量級』
「『中量級』と『重量級』ってなんぞ?」
白兎から説明を受けると、機械種はその大きさによって、5種類に分けられている。
全長30cm未満の超軽量級。
全長30cm以上、1.5m未満の軽量級。
全長1.5m以上、2.5m未満の中量級。
全長2.5m以上、10m未満の重量級。
全長10m以上の超重量級。
超軽量級は全て機械種インセクトであるらしい。
文字通り虫型の機械種で、コイツラは夜になるとブンブンと飛び回り、人間達を襲い始める。
とても追い払えるような数ではない為、夜に白鐘の効果範囲外に出ようと思うと、特殊な装置が必要になるそうだ。
また、街の中に入れるのは中量級まで。
重量級以上は街の外縁にある倉庫や置き場に置いておくしかないらしい。
「ふーん………、だからコイツは重量級な訳か」
機械種オーガキングと言われると、何となくそう見えてくるから不思議だ。
ただし、頭と右肩が無くなっており、他の部分も装甲がボロボロ。
武装らしい砲も横に転がってるが、それもひび割れだらけ。
「これを修理して仲間にできないかな?」
フルフル
『頭が無いから無理。特に晶石が壊れているとどうしようもない』
晶石と言うのは機械種の脳代わりになっているコンピューターのことらしい。
聞けば、透明な水晶の形をしていて、周りに針金状の『晶冠』と呼ばれる部品がくっついているとのこと。
ちなみにこの『晶石』というモノが一番高く売ることができるそうだ。
これを集めて換金して生計を立てている存在を『狩人』と呼ぶらしい。
「…………その晶石とか晶冠っていうのは、機械種は認識できないんだよな?」
パタパタ
『そう。それが機械種に定められた能力制限。だから人間は100%機械種に頼れない。あと、蒼石も認識できないから注意してね』
なるほど。
それで白兎は俺に青石をぶつけてくるように頼んだのか。
機械種使いが近くにいないといけないとか、晶石や蒼石が認識できないとか、随分と機械種には制限が多いんだな。
まるで、人間の活躍する余地をワザと残しているような設定………
フリフリ
『マスター、これに価値はあんまりないよ。秤屋に持ち込んでも二束三文だと思う』
「しゃーない。ここに放置していくか。そろそろ日が暮れそうだし、その、夜になると機械種インセクトが湧くんだろ。早く街に行かないと」
機械種オーガキング?の残骸を放置し、再び道を進みだす俺達。
それから数時間後、日が暮れて当たりが暗くなり始めた頃、俺達の前に深い森が立ち塞がってきた。
パタパタ
『この森を抜けないといけないみたい』
「そうか………、それは大変そう」
フリフリ
『僕の後に付いてきてくれたら、迷ったりしないよ」
「それは助かる。こんな森、呪いがかかってなくても、絶対に俺1人なら迷いそうだ」
張り出す枝や葉をかき分け、道なき道を進んでいく。
「なあ、白兎。もう完全に夜なんだけど、機械種インセクトって、出てこないよな」
辺りは真っ暗で何の明かりも無い。
しかし、俺の目には前を進む白兎の姿がはっきりと見える。
おそらくこれは俺の持つ『闘神』スキルか『仙術』スキルのどちらかの効力。
俺には完全な暗視能力が備わっているようだ。
フルフル
『この辺には機械種インセクトは湧かないみたい。なぜだか分からないけど』
「へえ? まあ、その方がありがたい。俺、虫とか大嫌いだし」
障害は少ない方が良い。
七難八苦なんて絶対に要らない。
楽して進めるならそれに越したことは無い。
痛いとか、苦しいとか大嫌い。
それに渇きとか飢えとかも勘弁してほしい。
まず俺の目標として、安全で快適な生活を目指すことにしよう。
「…………そう言えば、腹が減らないな。それに喉も乾かない」
ふと気づいた体の異常。
この異世界に来て半日以上過ぎたはず。
水の1滴、ご飯一粒たりと口にしていないはずなのに、渇くことも飢えることも感じない。
「これは…………、仙術スキルの効果か? 仙人だから水もご飯も要らないっていう」
仙人は霞を食べて生きるという。
不老不死かつ、飲食不要………
「あれ? 俺、トイレにも言っていないぞ」
水は飲んでいないが、ここまで時間が経っているのにも尿意を感じないのは明らかにおかしい。
「マジか………、飲食不要に加えて、排泄も不要………、俺って実は死んでいるんじゃなかろうな」
改めて変わった事実に愕然とする。
まさかここまで著しい変化が体に起こっているとは思わなかった。
ピコピコ
『マスターはマスターだよ」
「あははは、そうだな。俺は俺だな」
前で進む白兎がお尻をフリフリ、耳をピコピコさせながら俺へとフォロー。
随分と気が利く機械種だ。
まあ、確かにそんなことに悩んでも仕方がない。
俺は俺でしかないのだから。
「食費がかからないことを良しとするか………」
パタッ!パタッ!
『マスター!!! 敵だよ!』
突然、白兎が立ち止まり、後ろ脚で立ち上がって警戒態勢を取った。
「て、敵? どこから………」
ドシンッ!
その時、森の中に巨大な質量を地面と叩く音が響いた。
ドシンッ!
ドシンッ!
ドシンッ!
それは俺達の前方から聞こえてきて………
「ひっ! は、白兎、ど、どうしよう?」
暗い夜の守に響く重低音。
迫りくる巨大なナニカ。
もう俺の心は恐怖で凍り付いている。
パタッ! パタッ!
『大丈夫! 僕に任せて!』
そんな俺の様子を気遣うように、迫ってくる敵を迎え撃たんと戦闘態勢に入る白兎。
そして、お生い茂る草木の間から現れたのは…………
全長7m以上はありそうな巨大な熊型ロボット。
分厚い漆黒の装甲に太さ1mはありそうな巨腕。
爪の長さは30cm以上、さらに手の平には銃口のような穴が見える。
頭に当たる部分には赤く光る目が一つ。
肉食獣に邪悪をエッセンスしたような凶悪な相貌をこちらに向け、大きく口を開いた。
ゴオオオオオオオオオオオオッ!
周りの空気が唸りを上げ、
絶望のオーラを振り撒く。
現れたのは暴力と死の化身。
機体から放つ気迫は物理的な力を伴うがごとき暴威を発している。
あ、駄目だ。
もう、死んだ。
どう考えても勝てるわけがない。
逃げようと思うけど、完全に怯えてしまって足が動かない。
せっかく、異世界に来たのに…………
せっかく、白兎を仲間に入れたのに………
ここで俺の冒険を終わってしまうのか。
トコトコトコ
怯えて立ちすくむ俺の前に、白兎が移動。
こちらへゆっくりと進んでくる熊型ロボを迎え撃つように立ち上がる。
「は、白兎………、無理だ! に、逃げよう」
俺がやっとの思いで発した言葉に、白兎は軽く耳を振るうだけ。
フリフリ
『大丈夫。僕に任せて』
それは何度も聞いた白兎のセリフ。
ただ、俺を安心させる為のモノだと思っていたけど…………
ビカッ!!
突然、目の前の白兎が光に包まれた。
そして、そのまま光の流星と化して、熊型ロボへと正面から体当たり。
ドカアアアアアアアアン!!!!
トラックが正面衝突したような轟音が響き、熊型ロボは真後ろへと吹っ飛んでいった。