ヒロとウサギのアポカリプス世界冒険譚   作:やみくらげ

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4話 出会い

 

「え? …………一体どういう状況」

 

 

 

 

 俺の目の前では、白兎と熊型ロボが激しく戦闘。

 

 白兎は機体を白く輝かせ、閃光のように動きながら熊型ロボへと攻撃を繰り返す。

 

 とても目では負えないほどのスピード。

 

 それは熊型ロボにとってもそうなのであろう。

 

 その巨腕を振り回し、時には口からマシンガンのような銃弾を撃ちまくるものの、全くかすりもしない。

 

 対して、正しく白兎は蝶のように舞い、蜂のように刺す。

 俊敏な動きで敵の攻撃を回避、その短い手脚を振り回しながら、熊型ロボへの打擲を続けている。

 

 

 ガンッ、 ドンッ ゴツンッ ザンッ ガコンッ………

 

 

 その機体の小ささからはとても信じられないような重い音が響き、一発一発の威力は熊型ロボと引けを取らない思わせるほど。

 

 

 

 しかし、それほどに重い攻撃であるはずにもかかわらず、なぜか白兎の攻撃は熊型ロボに届いていない。

 

 白兎の攻撃が熊型ロボに当たる瞬間、光の盾のような薄い板が出現。

 それは熊型ロボの全身に渡り、あらゆる攻撃を無効化している様子。

 

 それでも白兎は嵐のような攻撃を止めない。

 ラッシュに次ぐラッシュ。

 完全に一方的に、叩いて叩いて叩きまくっている。

 

 

「これほど白兎が強いとは思わなかったけど…………」

 

 

 だが、その白兎でさえ、攻めあぐねてしまっている。

 こちらの攻撃が通らない以上、倒せない。

 いずれ向こうのラッキーヒットが当たってしまえば、あの小さな機体はどうなってしまうのか。

 

 

「白兎………」

 

 

 俺の為に奮戦してくれている白兎。

 そのマスターである俺はこの状況に何もできない。

 せめて、『闘神』スキルで授かった個人戦闘力最強を以って、何とか助太刀できないのかを考えるのだが…………

 

 

「無理だ。あのスピードにはとてもついていけない」

 

 

 人間同士の争いならともかく、ロボット同士の戦闘に巻き込まれたらどうしようもない。

 そもそも俺は武器の一本、銃の一丁も持っていないのだ。

 持っていたとしても、俺は武器の使い方も、銃の撃ち方も知らないのだけれど。

 

 

「白兎………、がんばれ!」

 

 

 もう俺には白兎を応援することだけしかできない。

 情けないとは思うけど。

 

 

 

 スタッ!

 

 

「え? ………白兎!」

 

 

 俺が白兎への応援を口にしたその数秒後、白兎は光を尾を引きながら俺の近くへと戻ってきた。

 

 

「どうした? どこか怪我でも………」

 

 パタパタ

『かすりもしていないから大丈夫。でも、攻撃が効かないのがちょっと面倒。大して強くないのに………』

 

 

 白兎があの巨大な戦闘機械を対して強くないと表現するのには驚いた。

 この世界では見かけほど大したことが無い存在なのか、それとも白兎の方が規格外すぎるのか。

 

 

 フリフリ

『あの………防御膜が厄介。空間障壁でもないし、光子制御でもない。やってやれないことはなさそうだけど、消費が激しいし………、それに、そこまで見せると本体が来そう』

 

「本体? え? ちょっと、待って! 増援が来るのか、相手に?」

 

 

 パタパタ

『多分…………、ここは無理して倒すよりは、逃げた方がいいかもね』

 

 

 ひいいいいい!!

 1体でもこれだけ苦戦しているのに、敵が増えるだなんて!

 

 1体だから白兎だけで抑えられるけど、もう1機が来て、もし俺の方へ向かって来たら…………

 

 

「逃げよう!」

 

 

 勝てない相手からは逃げるに限る。

 俺は勇者でも英雄でもないのだ。

 勝てる敵しか相手にしないし、勝てない敵はそもそも挑まない。

 これが俺の信条なのだ!

 

 

 ピコピコ

『了解! じゃあ、大きいのを一発撃つから、その後に全速離脱しよう』

 

 

 俺の悲鳴交じりの提案に答え、白兎はこっちに向かおうとしている熊型ロボへと振り向く。

 

 そして、口を開いて大きく息を吸う動作。

 まるで大怪獣が口からブレスを吐くごとき挙動。

 

 

「白兎? 何を…………」

 

 

 

 白兎の機体が再び輝き出す。

 

 それは無垢なる白にほんの少し面白味を加えたこの世非ざる色。

 

 全身から発光していた光は、やがてその口元に集中していき、

 

 

 

 

 

 光が爆ぜた。

 

 

 

 

 ボフォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!

 

 

 

 

 

 全長40cmの小さな機体。

 そのわずか数cmの口から放たれたのは、太陽が爆発したほどの大きな輝き。

 

 ダムから大量の水が決壊したかのような光の暴流。

 白兎の口から放たれた巨大なビーム砲は、前方の熊型ロボ諸共全てを薙ぎ払う。

 

 

 

 木々が吹き飛び、地面を融解させ、大気を引き裂いた。

 

 残ったのは、水分を失った乾いた空気と、薄い光の膜を纏った熊型ロボ。

 

 ただし、地面ごと光が薙いだので、その下半身が地面に埋もれている様子。

 

 

 

 パタッ! パタッ!

『マスター、今のうちに逃げるよ!」

 

「お、おう!」

 

 

 

 俺と白兎はその場から全力で逃げ出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここまで来れば大丈夫かな?」

 

『そうだね、追いかけてくる気配は無いし』

 

「それにしても、白兎は強いんだな?」

 

『それほどでも………、マスターの方がずっと強いよ』

 

「あはははは、ありがとう。強くなるように頑張るよ」

 

 

 そうは言うものの、やはり生身と機械は違う。

 どれだけ鍛えても人間は岩を砕くことはできないし、空も飛べないのだ。

 

 やはり俺がこの世界で生きていこうと思うなら、強い機械種を揃えなくてはならない。

 

 

「とにかく、白兎みたいな強い機械種を仲間にしないとな」

 

『そうだね。強い機械種ならレジェンドタイプが良いよ。人型でだいたいが中量級。元の世界の英雄の名を冠した機械種だよ」

 

「へえ! それはいいな………………、英雄か。アーサー王とか、ヤマトタケルとかいるのかな?」

 

『ヨシツネとか、ダルタニャンとか、ジークフリートとか、ヘラクレスがいるから、多分いるんじゃないかな』

 

「おっしゃ! 楽しくなってきたぞ! 頑張ってコンプリートしてやろう!」

 

 

 軽口を叩きながら、白兎を先頭に走りながら森を駆け抜ける。

 

 そして、空に白みかかってきた頃、ようやく遠目に街の影が見えるようになってきて………

 

 

 

「ここか? って、廃墟?」

 

『もう少し進むと、もうちょっと綺麗になるよ』

 

「なにこれ、戦争の跡か?」

 

『機械種が攻め込んだ後だと思う。この辺には白鐘の恩寵が薄いみたいだし』

 

 

 壊れた家、崩れかけた壁、散らばる瓦礫を避けながら進む俺達。

 徐々に廃墟色が薄くなり、やがて人の姿がちらちらと目に入るようになってくる。

 

 

「なあ、街に着いたのはいいけど、この後どうするんだ?」

 

 

 異世界の人間に初遭遇したのだが、この後何をすればよいのか全く分からない。

 

 ネット小説であれば、かなり早い段階で友好的な人間と接触できるのだが……

 

『まずはスラムに向かうよ』

 

「え? スラム? なんで?」

 

『このまま街に行っても相手にしてくれないから』

 

「相手にしてくれないって………、まあ、今の俺は戸籍もコネも無い風来坊だから当たり前か」

 

 

 現代日本と違って、物の売り買いも信用が物を言う世界のようだ。

 誰もが善人で無い世界なのならそれが当然。

 機械種という人間の敵がいる厳しい世界観なら尚更。

 

 

「スラムか………、多分、人間相手には負けないと思うけど………」

 

 

 スラムと言われて思いつくのが、まずスラムの住人に絡まれること。

 

 

「でも、俺って、人を殴ったことなんて無いんだよなあ」

 

『僕が護衛しているから、悪い奴等も襲って来ないよ』

 

 

 そう言って後ろ脚で立ちあがり胸を張る白兎。

 

 

「そうだよな。あんなに強い白兎がいるんだから、絡んでくる奴なんていないよな」

 

 

 あの巨大な熊型ロボをボコボコにする白兎だ。

 きっと見かけは小さいけど、スッゴク強い機種なのであろう。

 ならば、それを護衛に置いている俺の身も安全に違いない。

 

 

「じゃあ、行こうか。そのスラムに」

 

『うん、すごく楽しみ!』

 

「で、そのスラムになにがあるんだ?」

 

『………えっとね、チームトルネ………、!! むむっ!」

 

「んん?? どうした白兎?」

 

 

 突然、白兎が立ち止まり、街の方へと視線を向ける。

 

 思わずその視線先を追いかけると………

 

 

 

 1人の少女が立っていた。

 

 歳は15,6歳くらいだろうか。

 砂色にも似た薄い金髪をまっすぐ伸ばしたセミロング。

 前髪が邪魔にならないように太目の青いカチューシャで括っている。

 スカートに厚手のブラウス。

 どことなく元の世界のセーラー服を思い出させるような服装。

 

 

「機械種使い、見っけ!」

 

 

 俺の方へと向き直り、その少女は二カッとした笑顔を浮かべた。

 並びの良い真っ白な歯が見えるほどの満面の笑み。

 

 

「ねえ、貴方、機械種使いよね?」

 

 

 問いかけながら、ゆっくりと俺の方へと近づいてくる少女。

  

 

「機械種使い………、多分そうだと思うけど。君は?」

 

 

 問いを返した俺の言葉を受け、その少女は歩みを止めた。

 

 そして、じっと俺と、俺の足元の白兎へと視線を送り、

 

 

「アタシの名前はジュレよ。『青銅の盾』所属なの」

 

「ジュレさん? …………んん? 青銅の盾?」

 

 

 なんだ?

 青銅の盾って?

 何かの符号………、それとも組織名?

 

 

 頭の上にハテナマークを散らせる俺に、もう一度深い笑みを浮かべる少女。

 

 それはとても明るく、快活で、見る人を引き付ける魅力的な笑み。

 

 

 思わず惚れてしまいそうになるくらいの笑顔を浮かべながら、その少女は俺への歓迎の言葉を口にした。

 

 

「行き止まりの街へようこそ。よろしくね、機械種使いさん」

 

 

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