ヒロとウサギのアポカリプス世界冒険譚   作:やみくらげ

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6話 チーム

 ジュレに案内され、2階建ての工場みたいな建物に入った。

 そのまま階段を上がり、事務室みたいな部屋に通される。

 

 その部屋に居たのは眼鏡をかけた薄い色の金髪の若者。

 部屋の中なのに、青いジャケットを着ていて、机の上で何か作業をしていたようだ。

 

 

「兄さん。新しい人、連れてきたよ」

 

「んん? ジュレか………」

 

 

 ジュレが声をかけると、その人物は手を止めて立ち上がり、俺へと向かい合う。

 纏う雰囲気は落ち着いた印象、どこか研究者めいた佇まい。

 

 

「僕はこの『青銅の盾』のリーダー、ジュラクだ。よろしく」

 

「ヒロです。こちらこそよろしく」

 

 

 ジュラクと名乗った若者は俺へと挨拶の言葉を投げかけるが、それだけ。

 握手も求められず、あまりこちらに興味が無さそうな感じ。

 

 多分、今の俺の年齢より2,3歳上だろうか。

 ジュレの兄だけあって端正な顔つきだが、どことなく無機質で淡白な印象を受ける。

 

 

「………その足元のラビット。君は機械種使いかい?」

 

「あ、はい。そうみたいです」

 

「青学や緑学は学んだことはある?」

 

「え? …………何ですかね? それ?」

 

 

 青学? 緑学?

 当然俺に心当たりなんてない。

 この世界独自の学問だろうか………

 

 ジュラクの問いの意味が分からず、逆に問い返すしかなかった俺。

 

 ジュラクはそんな様子にやや落胆したような表情を見せ、

 

 

「ふむ………、なるほど、君は戦闘員しかできそうにないね」

 

「兄さん、ヒロはなかなか目が良いみたいなの。フルーレの光学迷彩を見破ったのよ」

 

「へえ? それはなかなか………」

 

 

 じっと俺を見つめるジュラク。

 その目は人を見ていると言うより、物の価値を調べているようだ。

 

 だが、それもたった数秒のこと。

 再び俺に興味が無くなった様子で、ジュレに話を振る。

 

 

「ジュレ、後は任せたよ。彼にこのチームの説明をしてやってくれ」

 

「はい、兄さん」

 

「では、ヒロ君、君の活躍に期待している」

 

 

 そう言って、ジュラクは俺に背を向けて作業に戻った。

 

 机の上には電子機器らしきモノが転がっており、それを手元の紙にメモをしながら組み立てている様子。

 

 

「あれ?」

 

 

 ふと、その机の上に、30cmくらいのリスみたいなロボットが座っているのに気が付いた。

 

 機体の色はアイボリー。

 ただし、額の位置に黄色い宝石がはめ込まれている。

 蒼く輝く両目の光と相まって非常に目立つはずなのに、なぜか今まで気づかなかった。

 

 俺が視線を向けているのを感じ取ったソレは、顔を上げて俺を見返してくる。

 

  

 その目に浮かぶのは警戒心。

 敵かどうかを見極めているように………

 

 

 

「ヒロ、行きましょう。下で皆に紹介するから」

 

「あ、はい」

 

 

 少しだけリス型ロボットが気になったが、ジュレに袖を引かれた部屋を出ようとする。

 

 

「んん? 白兎?」

 

 パタパタ

 

 

 俺が呼びかけると、耳を振るってこちらへと寄ってくる。

 

 どうやらさっきまで白兎もあのリス型ロボットを注視していたようだ。

 俺と同じで何か気になったのだろう。

 

 ひょっとしてアレが、ジュレが言っていた『機械種カーバンクル』なのかもしれない。

 

 白兎よりも強いかもしれない機械種。

 それなら白兎が気になって当然か。

 

 

 

 

 

 

 

 1階に降りて、ジュレから皆に紹介される。

 

 工場の作業室のような広いホールで、中にいるのは10人程。

 全員10代の少年達だ。

 ジュレの言った通り、ここにいるのは全て俺達と同年代ぐらいの人間で固められているらしい。

 それぞれ作業台に機械部品を乗せて、やはり何かの作業を行っている様子だった。

 

 

「ヒロです。よろしくお願いします」

 

 

 簡単に挨拶をすると、向こうからもパラパラと声がかかる。

 

 

「よろしく。久しぶりの機械種使いだね」

「従属させているのはラビットだけなのかい?」

「そのラビットが壊れたら、俺に見せてよ。修理してあげるから」

「ラビットがいたら狩って来てほしい。ミートブロックを1週間分つけるよ」

 

 

 適当に返事を返し、作業の邪魔にならないようその場を出る。

 

 部屋を出た後、ジュレから簡単な説明。

 

 

「あそこにいる人たちは皆藍染屋志望なの。それなりに青学と緑学、黄学を修めているんだけど、経験が足らなくてここで修業しているみたいなものね」

 

 

 藍染屋?

 なんで染屋がそこで出てくるの?

 作業している所を見てたけど、普通に機械を弄ってただけみたいなんだけど!

 

 これもこの世界独自の言葉なのか?

 

 この辺は先に白兎に聞いていた方が良かったかもしれない。

 でも、こういった異世界独自の単語って、後からどんどんと出てくるんだよなあ、多分。

 

 

 後で白兎に聞いてみるか、それともこの場でジュレに聞くか………

 

 

 おそらく、この場で聞いておいた方が良いだろう。

 知ったかぶりでもしたら、この後、その藍染屋に関する話題が出た時に対処できなくなるし、俺の信用も下がってしまう。

 

 呆れられるかもしれないが、信用できない人間だと思われるより良い。

 

 

「恥を忍んで聞くんだけど………、藍染屋って何? あと、青学と緑学って?」

 

 

 俺の問いに、これまた驚いた顔を見せるジュレ。

 じっと俺の目を見つめ、それが冗談で言っているのではないことを悟り、

 

 

「………青学や緑学だけじゃなくて、藍染屋も知らないの? 本当にヒロは世間知らずなんだね。そこまで教えてもらえないなんて、よっぽど酷い開拓村だったんだ?」

 

「あははははっ、まあ、そんなところで…………」

 

 

 ジュレに詳しく話を聞くと、藍染屋というのは機械種や車を整備する工場のようだ。

 この街にも幾つかあって、そこに雇ってもらえるようになるのが彼等の目標らしい。

 

 また、青学というのは機械種の整備関係の学問。

 緑学というのは機械種のスキルや頭脳に当たる晶脳と呼ばれるモノに関する学問。

 そして、黄学は機械種以外の機械関係、車や生活設備に関する学問のことらしい。

 

 何となく青学はハードウェア、緑学はソフトウェアっぽいと思った。

 

 また、青学、緑学、黄学には段位みたいなものがあって、それぞれ『指』『手』『腕』『肩』で表現されるそうだ。

 一番低いのが『指』で、一番高いのが『肩』。

 

 ここにいる皆は最低でも青、緑、黄のうち、2つ以上『指』の段位を持つという。

 

 

「ちなみに私は『緑手』よ。これはかなり凄いんだから」

 

 

 エッヘンと胸を張るジュレ。

 下から2番目の位だけど、言い方的にジュレの歳でソレを獲得するのは非常に珍しいことなのだろう。

 

 

「それは凄いね」

 

「でしょう! ………でも、兄さんはあの若さで『青手』『緑手』『黄手』の三手主なの。本当に才能って言うのは残酷よねえ……」

 

「ふうん………」

 

 

 それがどれくらい凄い事なのかは分からないけど、あのジュラクはかなり優秀な人間なのは間違いない。

 この機械種が蔓延る世界では、きっと機械種を修理できる人間は貴重なはず。

 だとすれば、あんまり好きになれそうにない性格みたいだけど、仲良くしていた方が良いんだろうな。

 

 

 俺がそんな世知辛いことを考えていると、足元で白兎が耳をフリフリして何かをアピールしてくる。

 

 

「どうした? 白兎?」

 

 フルフル

『ちなみに僕は【青肉球】【黄脚】だよ!』

 

「はい?」

 

 ピコピコ

『【青肉球】は【青手】、【黄脚】は【黄腕】に相当するよ!』

 

 

 白兎が何を言っているのかよくわからんな。

 

 なんで機械種が整備を覚えているんだ?

 

 しかも黄学の方は上から2番目だぞ!

 

 

「ヒロ、どうしたの? ハクトちゃんをじっと見つめて……」

 

「あ、その、白兎が機械種の整備もできるみたいで……」

 

「ええ? ハクトちゃんが……、確かに機械種に整備スキルが入っている場合もあるけど………」

 

 俺の言葉に考え込むジュレ。

 そして、おもむろに腰のポーチからスマホみたいな金属製の板を取り出した。

 

 

「何それ?」

 

「これ? これはね、最新型のMスキャナーよ。こんな小型のタイプってなかなか見ないでしょう? ヒロが分からなくても無理は無いわね」

 

 

 俺の『何それ?』を少々誤解して捕らえたようだ。

 さて、Mスキャナーとは一体なんだろう?

 

 

「さあ、ハクトちゃん。これで君の中のスキルを見てみましょうね」

 

 

 手にMスキャナーと呼ばれる機器を持ちながら、ジュレは白兎へとにじり寄ってく。

 その様子に白兎はやや及び腰で、今すぐにでも逃げ出したいような挙動を見せる。

 

 

「ほらほら、じっとしてなさ~い」

 

 ピコッ ピコッ

 

 

「えい!」

 

 ヒョイッ!

 

「コラッ!」

 

 ピョンッ!

 

「待ちなさい!」

 

 ササッ!

 

 

 何やっているんだか…………

 

 

 どうやらジュレは手に持ったMスキャナーを白兎の両目に合わせたいみたい。

 そうすることで機械種の何かを知ることができるのだろう。

 先ほどの言い方だと、多分『スキル』が。

 でも、白兎が避けまくるからなかなか合わせることができない様子。

 

 

 意外に鋭い動きで白兎に迫るジュレだが、それ以上に俊敏な動きで軽やかに躱す白兎。

 

 美少女と白ウサギが踊っているような光景………にも、見えなくもない。

 

 

 

「ちょっと、ヒロ! ぼーっとしてないでこの子を大人しくさせてよ!」

 

「あ~、そうだね」

 

 

 まあ、俺も白兎の中身には興味があるし………

 

 

「白兎。お前のスキルを見せてやれ」

 

 パタッ!パタッ!

 

「え? ジュレの剣幕が怖いって………しょうがないなあ」

 

 

 白兎が怖がるので、俺が代わりにしますとジュレに申し入れ。

 

 ジュレからMスキャナーを受け取り、白兎の目に合わせてみる。

 

 

 そこに表示されたのは………

 

 

 

『白兎』

(種族)転種 軽量級 ビーストタイプ 機械種ラビット/宝天月迦獣 白仙兎

(保有スキル)

天兎流舞蹴術(大白兎祭級)、癒し枠(ケアマネ1級)、器用王、交渉人(機械種限定)、指導(今でしょ!級)、燃冷制御(半冷半燃級)、空間制御(隙間妖怪級)、時間制御(星白金級)、護衛(軍師将軍級)、軍師(キングダム級)、計略(珍算奇謀級)、盗兎(兎小僧級)、回避(メタルスライム級)、高速飛行(シルバーセイント級)、囲碁(藤原兎佐為級)、小道具係(名人級)、警戒(中級)、追跡(中級)、車両整備(黄脚級)、機械種整備(青肉球級)………

 

 

 

「何これ?」

 

「何々、どんなスキルが入っているの?」

 

 

 面が点状態の俺を押しのけ、ジュレがMスキャナーを覗き込む。

 

 

「…………はあ?」

 

 

 女の子とは思えないような声がジュレから漏れ出た。

 

 

「いやいや、何よ、これ?」

 

「お、俺に言われても…………」

 

「誰よ! ラビットにここまで念入りに偽装をかけたのは?」

 

「偽装? このスキルは偽装なの?」

 

「当たり前でしょ! ビーストタイプ下級の機械種ラビットに『高速飛行』とか、『燃焼制御』とか入れるわけないじゃない! しかも等級がバグっているし………」

 

 

 俺もそう思う。

 なんだよ、あの訳の分からない○○○級は?

 子供が面白がって思いついたような等級名だな。

 しかも元の世界のネタ塗れ。

 

 

「おまけに『空間制御』とか、『時間制御』とか………、絶対に在り得ないから!」

 

 

 ジュレは足とバタバタとさせて、憤懣遣る方無い様子。

 よっぽど在りえない組み合わせであったのだろう。

 少なくともスキルに関する学問である緑学を修めたジュレには。

 

 

 やっぱりそうなんだ。

 空間とか、時間とか操れるって、かなり凄いスキルだもんな。

 そんな凄いスキルを持つ機械種が、いきなり序盤で仲間に入るはずないか………

 

 

 はあ……っとため息をつく俺を見て、

 

 

 ピコピコ

 

 

 白兎は何か言いたげな様子で耳を揺らしていた。

 

 

 

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