ヒロとウサギのアポカリプス世界冒険譚   作:やみくらげ

8 / 10
8話 狩り

 

 

 

「さて、この辺に機械種ゴブリンが出るんだよな?」

 

 パタパタ

『ジュレさんはそう言っていたね』

 

「このまま待っていれば襲ってくるんだろうか?」

 

 ピコピコ

『でも、この近くにはいないよ。少なくとも僕の警戒範囲内にはいないみたい』

 

 

 後ろ脚で立ち上がりながら耳をクルクル回す白兎。

 レーダー感知でもしているのだろうか?

 

 

「それはお前の能力なの?」

 

 フリフリ

『僕の警戒スキルは中級だから。こんな見通しの良い荒野なら、だいたい2百メートル内のレッドオーダーは感知できると思う』

 

「それって、偽装じゃなかったっけ?」

 

 

 確かにMスキャナーと呼ばれる機器の画面にはそう映っていたけど。

 

 

 パタパタ

『偽装なんてしていないよ。アレは全部僕に備わったスキルだよ』

 

「マジか! で、でも、あの中には空間とか時間とかあったけど……」

 

 フリフリ

『どっちも使えるよ。まあ、見ててよ………』

 

 

 すると白兎はピョンッと一飛びして、

 

 

 シュンッ

 

 

 空中に溶け込むようにその姿を消した。

 

 

「え? は、白兎!」

 

 

 ピョンッ!

 

 

 と思ったら、20mくらい先から見えないトンネルを潜ったかのようにその姿を現す。

 

 パタパタ

『これが空間制御スキルの技の1つ。空間転移だよ』

 

「て、テレポーテーション……」

 

 

 まさかの大技。

 空間転移なんて、ゲームでもかなりの上級技能であったはず。

 

 

「じゃ、じゃあ時間制御っていうのも………」

 

 ピコピコ

『一応使えるけど、そっちはあんまり使い勝手が良くなくて……」

 

「時間停止とかできない? ほら、星白金級だったろ?」

 

 パタパタ

『ごめん、それはちょっと誇張だったかも。時間停止は使えない』

 

「そうか………、じゃあ、どんなのなら?」

 

 フルフル

『カップラーメンのゆで時間を3分から1分にできるよ』

 

 

 役に立つかどうか微妙なところだな。

 

 

 パタパタ

『あと、経験や時間を食べて、人間の記憶を消したり………』

 

「おい! なんだよ、その悪役みたいな技………」

 

 

 それはかなり恐ろしい。

 記憶を食うって、まるで妖怪だ。

 ひょっとして、コイツは…………

 

 

「白兎、お前は機械種の中では下位だって、ジュレさんが言ってたけど……」

 

 フリフリ

『元はそうだけど、色々強化しているから。僕より強い機械種ってあんまりいないと思う』

 

「じゃ、じゃあ、ゴブリンとかよりも強いのか?」

 

 パタパタ

『僕の方がずっと強いよ』

 

 

 !!!!

 これは…………

 

 この異世界に来た時は俺が最強で、俺TUEEEEという展開だと思っていたけど……

 俺が強いのではなく、お供が最強っていうパターンか!

 最強お供モノなら、ネット小説ではフェンリルとかが良く出てくるけど、まさかそれがウサギだとは………

 

 いやいや! 最弱と思われていたモンスターが最強と言うのは良くある話だ。

 大概がスライムだったりするが、ウサギであってもおかしくは無い!

 

 

「よし! 戦闘はお前に任せた………と言いたいところだが………」

 

 

 手にした錆錆の剣に目をやり………

 

 

「折角ジュレから貰ったモノだし、それにこの剣で倒してくるって約束したしなあ……」

 

 

 危険なことはなるべくしたくない。

 命の危険があるなら尚更だ。

 

 でも、リスクを負ってでもやらないといけないことはある。

 逃げれば逃げた分だけ追い込まれてどうしようもない状況になることだってあるのだ。

 それは何よりも恐ろしいこと。

 

 それに俺がどこまで戦えるのかは必ず確認せねばならない。

 その結果によって、今後の俺の行動は大きく左右される。

 

 

「…………強いと分かった白兎に協力して貰えれば、リスクは最小限で狩りができるかもしれない」

 

 

 俺が危なくなったら白兎に助けてもらえれば良いのだ。

 そうすれば最低限の保険はかけられる。

 

 

「さらに言えば、最初に白兎に攻撃してもらって、弱った所を俺がトドメを差す………と言う方法もある」

 

 

 所謂猟犬を使っての狩りのやり方だな。

 これであれば、俺が傷つく可能性はかなり低い。

 

 

「猟犬………、そうだ! 白兎、この広い荒野で機械種ゴブリンを見つけて、ここまで連れてくることはできるか?」

 

 

 白兎に囮になってもらって獲物を引き寄せる。

 白兎が弱いなら危険極まりない行為だが、白兎が強いと分かった以上、何の危険性も無い。

 

 

 パタッ! パタッ!

『できるよ! ゴブリンを引っ張ってくるのは得意だよ!』

 

「よし! では、頼んだぞ、白兎!」

 

 フリッ!

『ラジャー!』

 

 

 俺の命令を受け、白兎は脱兎のごとく荒野に向かって駆け出して行った。

 

 

 

 

 

 

 

 白兎が戻ってきたのはその30分後。

 

 全速力でこちらに向かってくる黒い子鬼みたいなロボットが5機と一緒に。

 

 おそらくアレが機械種ゴブリンなのであろう。

 

 しかし、俺の思っていた状況と少し異なり、

 

 

「あれ? 囮と言うよりは………」

 

 

 

 ボフンッ!

 

 

 

 必死で走る機械種ゴブリン5機の後方で爆発が起こる。

 

 ゴブリン達を後ろから追いかける白兎が口から炎を吐いたのだ。

 

 さらにスピードを上げて必死の形相で逃げようとするゴブリン達。

 

 どうやら白兎が囮となってゴブリン達を連れてきているのではなく、白兎が後ろから追い立てているようだ。

 

 

「白兎……、炎も吐けたのか?」

 

 

 確か燃冷制御(半冷半燃級)だったよな。

 と、いうことは炎だけじゃなくて、冷気も吐けるかもしれない。

 本当に多彩な機械種だ………

 

 

 いやいや!

 このままだとちょっとマズイ!

 

 いきなり5機も連れてくるとは思わなかった!

 ゴブリン達の背丈は130cm程の矮躯だが、全身金属の塊とすれば、その重量は100kgを越える。

 

 それが一斉に5機も襲って来られたら、いくら『闘神』スキルがあるとはいえ、押し負けるかもしれない。

 

 何とか数を減らしてもらわないと………

 

 

「白兎! ちょっと数が多い。できれば相手にするのは1機だけにしたから、数を減らしてくれ!」

 

 

 ピコッ!

 

 遠くで白兎が『了解!』とばかりに耳を揺らしたような気がして………

 

 

 

 ピョンッ!

 

 

 

 ゴブリン達を追いかけていた白兎は大きくジャンプ。

 

 後ろからゴブリン達へと飛びかかる。

 

 その丸くて白い機体がゴブリン達の中へと飛び込んだと思ったら、

 

 

 ブルンッ!!

 

 

 白兎の機体が横に1回転。

 

 

 ザンッ! ザンッ! ザンッ! ザンッ!

 

 

 その瞬間、周りのゴブリン達の首が飛んだ。

 どのような仕組みなのかは分からないが、白兎の短い脚が横薙ぎにゴブリン達の首を刎ね飛ばしたのだ。

 

 

 スタッ!

 

 

 地面に着地してポーズを決める白兎。

 そして、

 

 

 パタッ……

『天兎流舞蹴術、兎巻旋回脚!』

 

 

 どこかパチもの臭い技名を臆面も無く言い放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだよ、それ、天兎流舞蹴術って?」

 

 パタパタ

『1万年の歴史を誇る一兎相伝の殺人拳。古くは古代ギリシャから伝わり……』

 

「あ~あ、分かった分かった」

 

 

 白兎とはまだ1日ちょいの付き合いだが、何となく性格が読めてきたような気がする。

 コイツは適当な所はもの凄く適当になる奴だ。

 しかもかなりのお調子者。

 

 

 ピコピコ

『数百年に1度、伝承者達が集まり、最強の座を求めて戦う『大白兎祭』が開かれ………』

 

「その天兎流舞蹴術はいいから、その足元のゴブリンと早く決着をつけさせてくれ」

 

 

 滔々と天兎流舞蹴術の歴史を語る白兎の脚の下には、唯一生き残った機械種ゴブリンが1機。

 

 バタバタと手足をバタつかせているが、白兎が置いた脚一本で完全にその動きを抑えられてしまっている。

 

 白兎曰く、これも天兎流舞蹴術の1つ、『兎気道』らしい。

 

 

 パタパタ

『大丈夫? 今から解放するけど………』

 

「ああ、こっちは覚悟は決めたさ」

 

 

 ジュレから貰った剣を両手に構える。

 

 

「もし、危なくなったら助けてくれ」

 

 フルフル

『多分、そんなことにはならないと思うけど………」

 

 

 バッ!

 

 白兎から解き放たれた機械種ゴブリンは立ち上がり、すぐさま逃げようとする素振りを見せる。

 

 

 ピョンッ

 

 

 だがすぐさま白兎がその逃げ道を塞ぎ………

 

 

「おい、ゴブリンよ。お前の相手はこの俺だ!」

 

 

 両手に持った剣をちらつかせながら挑発。

 

 

 すると、ゴブリンはその赤く光る両目に憎悪を含ませ、大きく口を開けて牙を剥きだし、

 

 

 

 クアアアアアアアアッ!

 

 

 

 雄叫びを1つあげると、両手の爪を振りかぶり、俺へと飛びかかってくる。

 

 

 俺よりも背は低いとはいえ、相手は金属で構成されるロボット。

 

 真っ黒な機体に凶悪な面構え。

 鋭い爪に機械特有の弾けるような瞬発力。

 おそらくパワーは成人男性を遥かに超えるはず。

 

 普通であれば、コイツに対抗しようとすれば銃が必要になるに違いない。

 

 だが、ジュレの話では、歴戦の戦士は近接武器でレッドオーダーを仕留めるという。

 

 

 人間ができるなら、俺もできるはず。

 なぜなら俺は『闘神』スキルで最強の人間になっているはずだから。

 

 

 向かい来る子鬼に気合で負けないよう、自分の心を奮い立たせる。

 

 『闘神』パワーを持っていても、心で負けてしまえば勝機は無い。

 

 リーチは剣を持っているこちらの方が上なのだ。

 

 

 

 ギュッ!

 

 

 

 手の中の長剣を握りしめる。

 

 異世界に転移してきた主人公かもしれない俺の武器としては些か不足。

 しかし、ヒロインかもしれないジュレからのプレゼントと考えると、握っているだけでパワーが込み上げてくるような気がしてくる。

 

 

 

 …………いや、『気がしてくる』じゃなくて、

 

 

 

 握りしめた長剣の柄から、囁いてくるような声がはっきりと聞こえる。

 

 それは長年剣として使われてきたことで染みついた戦意。

 

 そして、その使い手の意思と主であったジュレの想いとが融合して……

 

 

 

 

 目の前の向かってくるゴブリンの動きがゆっくりに見える。

 まるでスローモーションであるかのように緩慢に。

 

 敵が遅くなったのではない。

 俺の思考だけが高速に回転しているのだ。

 

 この世界に来て初めての戦闘行為により、にわかに頭の中に戦場時の心構えが染みわたっていく。

 

 

 今、何をしないといけないのか?

 この戦闘において、取るべき最善の行動がぼんやりと頭に浮かび………

 

 

 

 

 そうだ。

 強い武器がいる。

 

 この手の中の長剣では物足りない。

 闘神である俺の力に耐えられない。

 

 

 ならば、使えるように作り替えれば良い。

 幸いなことに、この長剣に含まれる『格』と『想い』は十分!

 

 

 

 腹の底から熱いナニカが湧き上がる。

 ソレを手へと導き、握りしめる長剣へと注ぎ込む。

 

 

 常界の物質を幻想へ塗り替える。

 長剣の中の記憶と想いを昇華。

 

 新たな俺の武器として変化させる。

 それは、かつて仙人が己の武器を作り上げた幻想の1つ………

 

 

 すなわち、『宝貝』。

 

 そして、この長剣の名は…………

 

 

 

 

「宝貝、『青雲剣』!」

 

 

 

 

 

 俺の手の中の錆びついた長剣が眩く光り、

 

 次の瞬間、殻を破ったかのように美しく映える空色の剣身が出現。

 

 長さはそのままに、伝説の武器をを思わせる華麗な宝剣が誕生。

 

 

 

 

「薙ぎ払え! 『青雲剣』!」

 

 

 

 

 両手に持った青雲剣を上に掲げ、大きく振りかぶる。

 

 

 そして、向かい来る機械種ゴブリン目がけて、

 

 

 

 

 

「だああああああああああああああ!!!!!」

 

 

 

 

 一歩足を踏み出し、裂帛の気合を込めて振り下ろした。

 

 

 

 

 ザンッ!!

 

 

 

 

 ゴブリンが伸ばした爪が届くより先に、俺の剣がゴブリンの頭をかち割り、その勢いをもって機体ごと縦に一刀両断!

 

 

 

 そのまま真下まで振り抜き、刃先が地面と接触した、その瞬間………

 

 

 

 

 

 

 ドカアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!

 

 

 

 

 

 爆弾が爆発したような轟音が響き、全方位にばら撒かれた衝撃が俺の全身を貫く。

 

 

 それは『青雲剣』の剣身から発生した猛烈な衝撃波。

 

 本来、風を巻き起こし、敵を切り刻むはずのエネルギーが地面へと伝わったことでその場で暴発。

 

 ミサイルが着弾したごとき爆発が俺の直近で炸裂したのだ。

 

 

 

 

「ひゃあああああぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

 その衝撃に吹っ飛ばされる形で宙を舞う俺。

 

 

 

 

 そのまま地面に叩きつけられる前に俺は気を失った。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。