人とは何ぞや   作:オオタ キム

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13. 噂

 「最近数日だけふらっといなくなって、そんで何事もなかったのよう家に戻る連中が多いらしいんよ。

 そんで、その間何してたか聞いても多分寝てたとしか答えないらしくてさ。

 あと、性格もがらっと変わって殆ど喋らなくなったとかも言ってたな」

 江西炒米粉(江西風焼きビーフン)をテーブルに置きながら、店主が話しかけてきた。

 以前、客として入店した紫龍が客同士の喧嘩を諫めて以来、懇意にしている。

 「最初は酔っ払いが家帰れなかっただけかと思ったんだけどよ、なんかしょっちゅうその地区で続いてるらしいんだわ」

 南昌市は都市部の中でも治安が良い方なので、違和感を感じる。

 「田舎でもないのにそれは妙ですね」

 「だろ? なんか不気味だろ?

 兄ちゃん、なんかこの事件に関する噂話あったらこっちにも回してくれよ。

 客を安心させてぇし。

 あんた行商人なんだから顔が広いんだろ?」

 「店主が思っているほど知人は多くないですけどね。

 何か教えられる事があったら伝えますよ」

 

 勘定を払い店を後にすると、早速店主が言ってた地区に向かう。

 初めて訪れる地域だが、スマホを頼ればそれほど迷わない。

 数日で帰ってくるのなら警察がいちいち動かないだろうが、店主が言う通り、当事者の家族は困惑しているのだろうと顧慮する。

 紫龍にも守るべ大切な家族がいるので余計に痛感する。

 住宅街ですれ違う人々にじろりと見られるが、見たことのない田舎風の人間がうろついてるのが気持ち悪いのだろう。

 それに不振な動きをすると監視カメラを通じて逮捕すらありえるのだ。

 まずはこの住宅街にある店舗に農作物を置かせてもらえるか交渉し、馴染む必要があるが、今日はあまり時間がないな、などと考えながら時刻を確認していると、前から中年女性がぶつかてきた。

 紫龍は驚く。

 よそ見をしていたとしても、普段なら一般人であろうと気配を感じて避けられるはずなのだ。

 「不好意思(すみません)

 紫龍が謝るも、相手は何事もなかったかのように横を歩いて行く。

 失礼かもと思いつつもその女を凝視した。

 まるで生気を感じない。

 この人が行方不明になった人なのだろうか。

 

 「すみません」

 もう一度話しかける。

 虚ろな瞳で女が見返してきた。

 「あんた、公安か何かで私に用があるのかい?

 そうじゃないんなら、話しかけるんじゃないよ」

 まるで風邪でも引いたかのような、聞き取りにくい声が返ってきた。

 「そうですね、不躾でした」

 紫龍がそう答えると、女は遠ざかっていった。

 やはり違和感を感じる。

 生物なら誰でも持っているはずの小宇宙を全く感じないのはどういうことなのだ。

 やはりこの件はより調査する必要があると思い、元兄弟子へ電話を入れた。

 

 「你好(もしもし)、なんだ紫龍か。今仕事中なんだが」

 電話に出たのは江西省公安部で働いている王虎(おうこ)である。

 童虎から破門解除されるも、結局は五老峰を出て一般人としての人生を選んだのだ。

 「済まないな、王虎。またすぐ折り返し頼む」

 それだけ伝えるとすぐに通話を切った。

 

 「少し遅かったわね」

 今日は春麗の体調が良かったのか、翔龍に本を読み聞かせていた。

 「少し気になる事があってな」

 春麗の顔が一瞬曇るも、覚悟した顔で紫龍を見つめる。

 聖闘士として何かなそうとしているのだろう。

 「紫龍も無茶だけは止めてね」

 

 梓豪の帰宅後、夕食の準備をしていると扉をノックする音がした。

 「紫龍、入るぞ」

 念和で話すより直接会った良いと思ったのか、仕事を終わった後に飛んできたのだ。

 「王虎さん、久しぶりです。

 また手合わせお願いします!」

 「梓豪、今日は無理だがまた近々な。

 春麗には妊婦用サプリメントだ。

 紫龍はこんなの買ってこないだろう」

 「ありがとう、王虎」

 夫は苦笑いする。

 こういう気遣いは王虎に叶わない。

 

 「数日行方不明になった後、生気がなくなる人間、か」

 一緒に夕食を食べた後、王虎は所持している通信機器の電源を落とし、書斎で話を聞いている。

 「確かに行方不明者が出ているのは俺も把握している。

 だが党員でもない限り、その後まで警察は調べないだろうな」

 「お前の権限で何とかならんのか?」

 「出来るはずないだろ。

 『偶然そいつに出くわした』ならともかくだがな」

 にやりと口元がゆがむ。

 「でもあまり期待しないでくれ、俺にも立場というのがあるしな」

 

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