海闘士誕生の瞬間を刮目せよ。
1. 海への誘い
「3年3組、
日帰り航海実習が終わり、寮に戻ろうとした俺を、校長の
「
「俺らは今日は1日中、船だっただろ」
「ま、そうだな」
「でも、なんで進路指導室なんだ。校長室じゃなくて」
「お前の希望の自衛隊がなんか気に食わなかったんじゃね?」
「確かに成績的にはギリだけどよ、人より体力あるし、それ生かした就職先じゃないと勿体なくね?
それに英語は出来るからよ。自衛隊も世界で活躍する時代だしな」
とか言いつつ、俺は帰宅の用意をした上で部屋まで向かった。
二回ノック。
「失礼します」
進路指導室は就職面接室のつもりで入れと言われているので、きちんと会釈。
「どうぞ入ってください」と幸田の声。
すると、幸田の隣にスーツスカートの金髪碧眼美女が座っているではないか。
俺は思わず間抜けな声で「うおっ」と言ってしまった。
「失礼だろ」
という幸田もものすごく緊張した面持ちなので、この美女は只者ではないらしい。
「ダイジョウブです。そういうリアクションもあるかもとボスがイッテマシタので」
と美女がすこしたどたどしい日本語で言う。
「トウカイさん、ハジメマシテ、ワタシはテティス・デュカキスとイイマス。ジツはあなたをスカウトしたくてここにキマシタ」
ほほう、このテティスさん、まさか俺を道端で見かけて惚れたのか? などと呑気な事を考えていると
「アナタ、他の人の気配などを感じやすいデスヨネ? そしてアナタ自身とてもオツヨイ」
確かに、他人の力量は何となく感じることは出来るし、学校には隠しているが、実は素手で石ぐらいなら壊せる。
そのことをテティスさんは見抜いたというのか?
「東海、この方はソロ海運の方でな。名前ぐらい知っているだろ、ソロ海運」と幸田。
キャリア学習の時間に「世界最大の海運業者だ。まあ君らは入社するのは無理だろうが」と進路指導の
その世界最大サマがこの頭が少し弱い俺に何の用なんだろう。
「ジツはワタシのカンパニーにはホアンブモンがありまして、そこへのスカウトです。
ナイヨウとしてはウミをキレイにしたり、ナンパセンをタスケたり、カイゾクからのゴエイとかです」
最初の方はともかく、最後の海賊って物騒だな、おい。
「ジシャだけではなく、イロイロなトコロからタノマれてヤリマス。ドキュメントをワタシマスので、イッシュウカンゴにキタときに、オヘンジください。」
「お待ちください、テティス様。資料だけでは具体的にどんな業務をするか判りかねますので、一度実地に向かわせて頂けますでしょうか」
咄嗟に言ってしまった。
テティスさんが魅力的なのあるが、内容としては自衛隊がやってるのとあまり変わらず、さらに大企業なら給与も福利厚生も期待できそうだ。
しばしテティスさんが考えたあと、
「ワカリマシタ。アシタはドヨウビなのでガッコウないですよね? ならガッコウのモンのマエにアサ6ジでオネガイします。ウゴキヤスイカッコウでオネガイシマス。」と約束した。
「それでは失礼します」
俺は進路指導室を後にすると、妙な高揚感を覚えた。
業界最大手、美女がいる職場、それに何よりグローバルな自衛隊!(テティスさんにつられて横文字入ってしまった)
っと、まずは親に相談だな。
自衛隊に入りたいとは言ってるから、地元から離れるのは親も覚悟してるが、まさかいきなり世界にいくとは驚くだろうし。
寮にもどり夕食を食べたあと、早速実家へ電話をかけた。
「もしもし、母さん、俺、ソロ海運とかいう会社から勧誘受けてよ」
「それ、何の会社さ? 怪しげなちっこいベンチャー? 言うんだっけ、な企業なら辞めときさね」
「違う違う、世界最大の海運業者。ああ、わかりやすく言えば船を使った貿易する会社で、その船が安全に航海できるようにする部門に勧誘されたんよ。そんで明日、詳しい話をしてくれるってその会社の人が来てさ」
「そうなんだ? ひと様に迷惑かけないようなら、どこ行っても応援するさ。まずは明日頑張ってらっしゃい」
「ありがと、そしたらまた明日連絡するわ」
そう電話を切ると、資料を読み始めた。
確かに海洋汚染の清掃や船舶救助、あと海賊対策で武器も持つみたいだし、
さらに取引先として世界中の政府からも挙げてある。
思ったより本格的なようだ。
動きやすい格好と言ってたな。
体力測定なんかあるのかもしれないし、万全の態勢で挑めるように早めに寝よう。
そう思うと、風呂に入ってすぐに床についた。