人とは何ぞや   作:オオタ キム

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4. の続き
 なぜ彼がここに呼ばれたのか
 そしてマスターできるのか


5. 移動

 沸き上がる力や、人の力を感じる能力のことを「小宇宙(コスモ)」というのをカノンさんから最初に教えてもらった。

 「次回からは自力でここまで来てもらう必要があるんだ。今日は徹底的にしごくぞ。瞬間移動(テレポート)は小宇宙が使える人間なら、コツ次第で出来るようになる。でもお前が想像する、何もない目的地に出てくるタイプのものは本物の超能力者のみの芸当だ」

 「二点間移動ではないのなら、どういうものなんですか」

 「良い質問だ。お前は他人の小宇宙を感じる事が出来るだろう。そいつの近くに己の小宇宙を寄せる感じだ。ここには常に海将軍(ジェネラル)の誰かはいるからな」

 ああ、それで最初に海将軍を紹介されたのか。

 小宇宙を自分の外に出す、まずはその訓練から始まった。

 

 2時間超後…

 「はぁ、はぁ、体は疲れないんですけど、なんか精神的にすり減るっていうか…」

 「お前は今まで他人を傷づけたり驚かせたりしないよう、小宇宙を抑えていたんだ。それなのに呑み込みが早いのはさすがだな。」

 感心したような表情で俺を見るカノンさん。

 「よし、小宇宙を制御できるようになったからここで昼食休憩だ。ここの飯は美味いぞ」

 そういうと、食堂があるという建物(やはり神殿風)に連れてこられた。

 

 さすが大企業の食堂、ビュッフェ形式だ。

 全メニューに原材料と栄養素が併記されているのは、体資本の職場だから当然か。

 「英語とギリシャ語が併記なんですね」

 「一応ここの第一言語はギリシャ語だからな、うちがギリシャ本社なのを知ってるだろう? 今すぐではないが、後々ギリシャ語も学んでもらうからな」

 そいやそうだ、税優遇があるとかでギリシャって意外と海運業が盛んなんだとも授業で習った気がする。

 美味しそうな洋食を皿に乗せてテーブルに戻ると、カノンさんの隣に上司予定のバイアンさん飯を食っていた。

 「バイアンさん」

 俺が話しかけると、やあ、と返事をしてくれた。

 「俺が教えるのは瞬間移動までだ。戦闘スタイルからしたらバイアンの方が適してそうだしな」

 「それにカノンは忙しいからな。表向きはジュリアン様の護衛だし」

 「そうなんですか」

 「ちなみに秘書がテティスだ。基本的にはジュリアン様と帯同している。お前を連れてきたあと、すぐに本来の業務に戻ったしな」

 俺を迎えにきたのはイレギュラーだったのか。

 確かに強そうな男が高校に来たら先生どもも警戒するか。

 というか、もしかしてテティスさんはジュリアン様と… などと考えていると

 「何ゲスい事を考えている」

 カノンさんに突っ込まれた。

 「カノンは読心術も多少使えるから、気をつけろよ」とバイアンさん。

 カノンさんは強いだけではなく、超能力者でもあるのか。気を付けなければ。

 

 食べ終わってバイアンさんと別れたあと、とうとう瞬間移動の練習が始まった。

 カノンさんが俺から5mほど離れながら

 「まずは俺の近くに力を移動する感じで。殴りかかる感じでもいいぞ」

 殴りかかる感じでもいいのか、なら…よし!

 ヒュッ

 「できた!」

 「…よし、ならばどんどん距離を開けていくぞ」

 

 2時間ぐらいで大きな柱と柱(カノンさん曰く、その柱は海将軍の象徴でもあるらしい)の移動ぐらいできるようになった。

 「……さすが(シュン)が推してきただけはあるか……」

 カノンさんがつぶやいた。

 「俺を推薦したのってシュンさんって人なんですか」

 疑問に思っていたので、思い切って聞いてみた。

 「奴はありていに言えば同業他社で、似たような任務を地上で行ってる」

 「でも俺、そのシュンさんという名前の知り合いはいませんよ?」

 「当たり前だろ。瞬も一方的にお前を見かけただけだと言ってたし」

 「もし同業者だとしても、俺が小宇宙を感じなかったから、シュンさんは弱いんですかね」

 「あいつは普段、小宇宙をひた隠してるからな」

 と言いながら、何かを思い出したかのように少し顔色が悪くなった。

 どんな人なんだろうか、もし会えたなら挨拶したい。

 

 移動先に強者がいなくとも、一般人にも微弱な小宇宙があるのでそれを感じとり移動するのだとカノンさんに教わった。

 弱い人を捉えるのは難しいが、寮や実家に帰る為にはマスターせねば。

 まずは事務員さんへの移動。

 よく瞬間移動の練習台にされるんですよ、と笑ってた。

 

 次に地上と海底の往復に入る。

 カノンさんが小宇宙を抑えめにして地上で待機していてくれている。

 海底がどんなところか、とりあえず考えるのをやめて集中だ。

 そうでもしないと、精神的疲労感が増す感じだ。

 

 そうこうするうちに6時間ぐらいたった。

 ものすごい疲労感だが、同時に達成感も半端ない。

 こんな高揚感は長期航行訓練以来だろうか。

 「これなら次回から、自力でここまで往復出来るな」

 カノンさんのお墨付きだ。

 その後、事務所に連れてこられて書類を渡された。

 「基本的に土日にここにくるつもりでいるが、用事があるなら抜けてもいいし、わかる範囲で予定を埋めてくれ」

 それをスマホの予定表を見ながら埋めた後、さらにカノンさんがもう一枚差し出した。

 「あと、まだお前は見習いになるが、正式な契約書だ。より実地訓練を積んで見習いを卒業したら、ここの本来の姿を教えるし、新たな装備を支給する」

 テティスさんがくれた資料とは別の姿がここにあるのか?

 俺が不安がってるのを察したカノンさんが

 「安心しろ、俺たちがやることは善なる事だ」と言った。

 「それでは、洋、これからもよろしくな」

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