高校卒業まで
晩飯を海底で食べてから無事自力で帰った俺は軽くシャワーを浴びた後、疲労からすぐに布団にもぐりこんだ。
俺もとうとう保安部か。
しかしカノンさんの反応だと、そもそも部署名とかなかったのか?
しっかりとした食堂もあり、会ったジュリアン様もソロ海運のホームページに掲載されているCEOそのものだったので、ソロ海運の一部門には変わらないんだろう。
何年か前に起こった世界的異常気象においては、利益度外視で救援活動を行い、それにより社会的評価が上がったとあちこちのホームページに書かれていた。
きっとその救援活動も俺が会った人々が関わっていたんだろうな。
そんな事を考えながらも、疲れから泥のように眠った。
翌日、内定した事を進路指導の国枝に伝える。
本当にそこへ就職できるとは思いもしなかったんだろう、本当かと驚いていた。
普通科行った連中なんかは学校あっせんが殆どで希望する会社がないと嘆いてたっけ。
そういう意味ではラッキーだ。
田中は「給料入ったら奢れよ」なんか言ってくるが、お前は受験を頑張れと思う。
とりあえず怪我無く卒業したら、晴れて正社員だ。
二週目からの研修はバイアンさんの担当となった。
基本的な運動訓練として効率的な体の動かし方、小宇宙の体の行き渡らせ方(これがなかなか難しい)。
海洋汚染等に対する対処法、要救助者への対応方法、海賊の対処などの座学。
それと並行してギリシャ語の勉強。
なかなかハードだ。
以前は緊張して周りにまで気が回らなったが、昼休憩時見回すとそこそこ人がいる。
「俺なんか勧誘されるから、人手不足なんかと思ったんですけど、そうでもなさそうですね」
「軍隊で言えば奴らはただの兵だ、お前はそこそこの小宇宙を持っている幹部候補だと自覚して努めろ。
戦力はなるべく早く確保したいし、高校卒業と同時に研修終了を目指す事だ」
やはり俺を含め、強い小宇宙を持つ人はレアな存在なんだろう。
うん、やっぱ世界でも多分上位50人以内の強さはあるよな、俺。
毎週末そんな研修を繰り返すうちに体の疲労感も少なくなってきた。
ある夜、寮の部屋(高三は一人部屋だ)で宿題をしながらテレビをつけていたら、俺の学校の近くが映った。
そういや数か月前、近所をロケが来るとか情報が回ってきたような。
テレビから
『
『ええ、でもここの食事は美味しいと伺っているので、僕は楽しみにしてます』
と声が聞こえる。
女の方がエムテレビのアナウンサーで、男の方が天宮
ん? シュン? まさかな?
俺がテレビで知ってる天宮は、確かにイケメン顔に似合わず良い体つきではあるが、どちらというと俳優やらモデルをしてるタレントじゃなかったか。
でもカノンさんが小宇宙を隠してるとか言ってた気もするし、週末バイアンさんに聞いてみよう。
週末、バイアンさんに早速聞いてみた。
「ああ、そういや瞬の苗字は天宮だったな」
マジかよ。
「天宮瞬さんは同業他社だとカノンさんが言ってたけど、どういう立場の人なんですか?」
しばしバイアンさんが考えた後
「お前と同じ日本にある城戸財閥を知ってるな? そこに紛争地や天災から民間人を救護する部隊があるのだ。瞬はそこに所属している。
そんなことよりもお前も早く強くなれよ」と話を打ち切った。
天宮瞬は現状俺よりも強いけど、追いつける域だよな、所詮芸能人だし。
そうこうしているうちに三月となった。
高校の卒業式には遠方の母も来てくれた。
「東京に行っても、ちゃんと毎週連絡はするだよ?」
テレポートで海底に通勤できるが、名目上ソロ海運の日本支社がある東京勤務となる。
なので、東京で部屋を借りたのだ。
田中も東京の大学に行くし、知り合いが全くいない状態なのはありがたい。
その後、海底にて
「おめでとう、これで君も私たちの仲間だ」
研修を完了した俺に対し、ジュリアン様が直接来られて祝福してくれた。
「四月以降、より深く我々の仕事に対して学ぶ事となるだろう。しかし、この先の件は他言無用の内容となる」
「やはり、海賊に手口とかバレないようにとかですか?」
「それは四月になれば分かる」
周りに控える海将軍の方々もどこか神妙な面持ちだ。
俺は不安と期待が入り混じったが、今まで辛抱強く俺を強くしてくれたんだ。
それに報いなければ。