この章の最後になります
この組織の正体を知ることになる彼はどのようなリアクションをとるのか?
東京への引っ越し作業はすぐに終わった。
会社が借り上げた部屋は家具付きで、持ち込むものと言えば服や日用品など最低限で済んだ。
東京観光もしようと思ったが人ごみに慣れてからだな、田舎者には辛い。
四月一日には日本支社にて入社式。
ここらへんはやはり日本式なんだな。
スーツを着て会場へ向かう。
周りを見回すと、やはり大卒だらけで自分と同年代がいない。
まわりの新入社員も、なんでこんな若い奴が、という目でチラチラ見てくる。
仕方ないけど、明日以降関わることもないだろうしな。
後から入場してきた重役の中にはスーツを着たカノンさんもいる。
ほかの重役と違ってイケメン外人だから、会場がざわついた。
俺は直接教わったんだぞとちょっと優越感。
その後、支社長の挨拶やジュリアン様の新入社員向けビデオメッセージ(日本語字幕付き)など、少し眠たい時間を過ごしつつ、部署ごとに移動せよとの案内があった。
呼ばれて続々と皆が出ていく中、当然俺と同じ部署の奴はいないので最後まで席に残っていると、カノンさんが寄ってきて。
「それでは向かうぞ、覚悟は良いな?」
覚悟って何が行われるのだろう、三月末と同じ不安がよぎった。
「大丈夫だ、苦痛を与えるような事はない。あと今までの常識は忘れろ」
瞬間移動だったり、海底が職場だったりで、十分常識は壊れてますよっと。
カノンさんが他の重役に軽く会釈した後、俺を連れて部屋を出ると、人がいないのを確認してから海底に移動した。
到着すると、カノンさんの体が一瞬光り、青金色の鎧のようなものを装着しているではないか。
他の海将軍も形こそ違うが、同じ色の鎧を着ている。
また、カノンさんが「兵」と言ってた人々もゲームで見るような恰好をしている。
「みなさんのその恰好は…?!」
俺は思わず声を荒げた。
「だから今までの常識を忘れろと言ったんだ。
俺たちは
お前は幹部候補だと言っただろう?
一般兵とは違う、特別な
現実離れした単語が飛び交い、頭がついていかない。
「私も選ばれた時、最初は面食らったもんだ。君もゆっくりこの世界に慣れていったらいいよ」
ソレントさんが落ち着いた口調で話しかけてくれた。
そうだよな、誰だって急にこんなの信じられないんだ。
ふと、海の如く雄大で神々しい小宇宙を感じた。
皆が首を垂れるので、俺も慌てて倣う。
「面を上げよ」ジュリアン様の声だ。
もしかして、これがジュリアン様の小宇宙なのか?
「洋よ、改めて挨拶させてもらう。私がポセイドンのジュリアンだ」
俺は震えが止まらないながらも、辛うじて顔を上げた。
ジュリアン様は青白くゆったりとしたローブのような服装をしておられる。
そばに控えるテティスさんも、ピンクのかわいらしい鎧を着ていた。
「お前にはカリブディスの鱗衣を授ける。これからも励むように」
そういうと俺の隣に、渦をまとった女のような置物が現れた。
この人形が鱗衣?
「はっ よろしくお願いします」頭がついていかないが、体が勝手に返答する。
「それでは私は仕事に戻るので後は頼むぞ、カノン」
「承知いたしました」
そういうとジュリアン様の小宇宙がふっと静まり、一般人と同じそれに戻ると、テティスと共に何処かへ瞬間移動した。
色々ありすぎて頭がついてこない。
ジュリアン様が立ち去った後、皆鱗衣を外し、ラフな格好に戻っていた。
「ジュリアン様、かなり強大な力を持っているじゃないですか、自称ポセイドンを名乗るぐらいですし」
「お前、口を慎め。ジュリアン様はポセイドン様そのものだ」
カノンさん曰く、ジュリアン様はポセイドン様の依代で、その力を身に宿している事。
今でこそ海の平和の為に動いているが、万が一別勢力との闘い(今は協定で行わないらしい)があれば、海闘士が最前線に出る事。
その別勢力の一つに、タレントの天宮が所属しているアテナの
さらに驚いた事に、カノンさんは聖闘士との兼任をしているというではないか。
「カノンさんはでも、ほぼこっちにいますよね」
「戦力的には向こうの方が上だし、聖闘士として動く場合は戦地からの民間人脱出援護で、短期決戦な事が多いしな」
さらりと言う。
「何にしても表の仕事である、海洋汚染除去からOJT研修を始めるぞ。
時期を見て、アテナの
両方に所属してるから、色々なつてがあるんだな。
そうしてバイアンさんの元、俺の忙しく充実した日々が始まった。
自分が海闘士だというのを忘れそうなぐらいに。