何かが起こりそうです。
8. 予兆
「それではお先に失礼します」
「
「
「レベジェフ君、明日も宜しく」
映える金髪を持つ日露ハーフの青年、氷河レベジェフは大学の研究室を後にした。
苗字のレベジェフはロシア語では白鳥の意味ということで、いつしかあだ名に『白鳥』が定着している。
スマホで時間を確認し、SMSに『少し遅れるかもしれません』と送信。
今日は数か月前から教えている家庭教師の日なのだ。
自転車で家に向かうと、その子の母親が出迎えた。
「あらレベジェフさん、今日も宜しくお願いします」
「こちらこそ宜しくお願いします」
「氷河せんせー、よろしくおねがいしまーす」
中高一貫校の高2、
ギャルとまではいかないが、化粧や髪の染色をしている今時の娘だ。
このままでは内部進学が危ういということだったが、実際最初はひどい成績だった。
氷河は部屋に入ると早速、数日前に返却されたという定期テストを確認する。
「俺が覚えておくように言った単語とか全然勉強してなかったな?」
「だってぇ、せんせー全然デート誘っても乗ってくれないしぃ」
少しいらついた表情で氷河が「それは関係ないだろ」と切り返す。
「数学とか化学とか、考えなきゃな所は先生の説明で理解できたんだけど、暗記系が全然できなくてさぁ」
「そこは俺が効率的に覚える方法を何度も教えてる。君が実践するしかないんだがな…」
毎度そんなやり取りを繰り返しながらも、心愛の小テストの点数は上昇しているので、確実に家庭教師の効果は出ているのだろう。
「それじゃーせんせーさよーならー」
90分の授業が終わり、玄関先まで見送りに来た心愛が氷河に向かって手を振る。
氷河も自転車にまたがりながら返事をした。
その矢先、氷河の表情が険しくなる。
「なんかあったの、せんせー? トイレなら貸すよー」
「いや、なんでもない。というか、腹は痛くないしな。それじゃまた来週」
と平田家を出発した。
暫くして氷河はその住宅街にある小さな公園に自転車を止めた。
「俺についてきているのはわかっている、姿を現せ」
公園内の気温がみるみる下がる。
氷河が睨んだ滑り台近くの地面に氷柱のようなものが出来ると、その柱あたりから声がした。
「くくく、よく我の事を気づいたな」
「敵意を向けた小宇宙を隠そうともせず発していたら、当然だろう」
「しかし、我の姿を見つけることはお前には無理だ」
そう聞こえると共に、小宇宙がぷっつりと消えた。
(俺に対して、いや、
氷河は
よって各国政府関係者や軍事方面に顔が割れているのは当然なのだが、最高位である彼に直接接触してきた意味を図りかねていた。
そして凍った公園を元の姿に戻すとその場で
日本にいるあと二人の黄金聖闘士と連絡を取り合ったのだ。