オリジナルの錬血も出てくるので、苦手な方は退避推奨です(戦闘で無双!とかでは無いです)。
※ミスを発見したので修正しました。
チップ→モジュール
ぐ、と握り込こまれていた掌がゆっくりと開かれる。真剣な視線が幾つも向けられるその上に、突如ぼわりと小さな炎が踊る。掌の半分程しか無いそれは色も明るく、攻撃としては全く役には立たないだろうと容易に想像がついた。――それで良いのだ。
「…………」
すっと傍らから差し出された木片を受け取り、その炎へと差し入れる。その数秒後、いっそ不自然な程に整い安定していた炎が、突然くくっ、と形を変えて揺らぎ伸び上がる。息を呑む音が密やかに響く中、そろりと炎から引き抜いた木片は確かにその身を糧として炎を上げていた。
途端にわっと上がる歓声。わらわらと駆け寄って来た彼等にぱちぱちと燃える木片を渡せば、何の変哲も無い筈のそれにおおっと声が上がる。消えも増えもせず揺らぐ事さえ細やかに在る掌の炎とは違うそれは、木片の動きや周りの人間の呼気に容易く揺らぐ。それを確認し、最後の仕上げとして掌の炎を消しても、木片へ移ったそれは消える事は無かった。
「木材の燃焼反応も炭化も本当に普通の炎と同じ。うん、【錬血で火をつけよう実験】は完璧に成功だね!」
「ここまで色々あったなぁ」
「………(疲れた)」
おー、と何が楽しいのか盛り上がりを見せる彼等を眺めながら小さく息を吐く。吸血鬼の特質上、人間の感じる疲労感とは厳密には異なるのだろうが、ずっしりとのしかかるような倦怠感は疲労と呼んで良いはずだ。……そんな事をぼんやりと考えながら、先程まで自分がその手に持っていた木切れへと視線を向ける。ぱちぱちと微かな音を立てて火を灯すそれは、ムラサメが言った様に錬血によるもの。何とも気の抜ける名称と軽いノリに流されそうになるが、これも一応れっきとした実験の一環だった。
錬血の制御と応用についての、検証と実践。マスタリー化により幾らかは改善しつつあるとは言え、現状使用可能な錬血とその性能は各吸血鬼達の能力と適性に依存している。その発動に必要な冥血量や展開時の機動は基本的に固定であり、同じ錬血を調整するのではなく複数の錬血を使い分ける事で戦うのが基本だ。その使い分けにしても、一般的な吸血鬼はそもそも手札の数が少なく相性の差が如実に出る。……そして何より、殆どの吸血鬼は相性の悪い錬血を身につける事そのものが困難だ。
だから、同じ錬血の威力や範囲等を調整して手札を増やせないかと言う案が浮上した。それは、神機使い達の使うオラクルバレットと、それを弄り回したカスタムバレットから着想を得た錬血の改良と開発。自身の得意な錬血を元に様々な要素を足し引きしての改良……若しくは、新しい錬血としての定着を目指す試みの一貫。
とある任務での出来事とそこから派生した思い付きが発端をするそれに付き合い、漸くまともな結果が出せたのが今日の事だった。
「消費の方はどう?」
「0.1、位だと思う。……制御に気は使うけど、慣れて一つの錬血だと認識出来れば制御の負担も無くなる筈だ」
そんな、始まりは確かに主に戦闘を目的としていた筈の検証。では何故ライターの真似事をしているかと言えば、制御限界の確認と使用用途の多様化への挑戦の一つ。……と言えば聞こえが良いが、実際にはとある事件(若しくはやらかし)を経て修正された方針による物だった。
―― とある任務中 ――
『結構似た動きを再現出来たと思いますが、どうでしょう?』
『これは…ダンシングブレイズかしら。ここまで自由に調整出来て誰でも使えるのは、本当に凄いわね』
『俺達から見れば、機械的な制御無しでそこまで精密にムラなく使える事の方に驚くが……』
『使えれば、感覚でその制御も出来るから何とも……。威力は変わっても、同じ錬血なら誰が使っても形や動きは変わらない』
『制御を個人に依存する形で、ブレが無いと言うのも不思議ですね』
『それに、属性がはっきりと現れるものは模倣出来ても、それ以外のものは難しかったな』
シエルとジュリウス、そしてエヴァとレイという、比較的に遠距離攻撃も得意とする面々での任務中。その日話題に上がったのが、錬血をモデルとしたカスタムバレットとその制御についてだった。
炎がほぼ自動的に相手を追尾し攻撃するという変則的な錬血を、モジュールの調整や制御チップやブラッドチップの組み合わせで見事に再現して見せたその技術と自由度の高さに感嘆しながらの道中。アラガミや神機に存在しない血属性やレイが使う質量的な棘、エヴァの用いる砂腕や砂刃の様な錬血は無理だと言う話だが、それでも威力以外のほぼ全てが固定されている錬血では考えられない自由度だ。
『それぞれの適性や好みで傾向は固定されても、本来なら刀身や銃身の自由度も高いんでしょう?……私は元々が非力だし、ブラッドコード的にも銃剣が精一杯だから、少し羨ましいわ』
『元々?人としての力も吸血鬼の力に影響するのか?』
『幾らかは。……特に装備可能重量や筋力面は、ブラッドコードの底上げ分に、生前の能力が加算される』
『吸血鬼化した後でも、少し位ならトレーニングで強化できるのだけれど…。やっぱり、元の適性や体格には引き摺られてしまうわね』
吸血鬼の能力や適性を左右するブラッドコードだが、誰にどんなブラッドコードが宿るかは完全な運任せであり、また生前の能力や本人の気質に合ったものが宿る保証も無かった。……不一致とまではいかずとも、最適を選ぶのなら他のものになるだろうと言い切れる者達はそれなりに多い。何せ、コードだけを見ればカレンやニコラはシルヴァやヤクモに近い程に腕力補正が高く、逆にデイビス等はその外見や立場の割に補助型だ。
更には、最近徐々に改善されつつあるとは言え、錬血特化の者達とて使える錬血は数個程度に限られていた。その為、例外であるクイーンやレイを除いて、少ない手札をどう活かすかが焦点となりがちだった。――これまでは。
『その…錬血?も、カスタムバレットの様に、好きに弄れたら面白そうだが……』
それを破ったのは、ジュリウスがふと零したそのの言葉が始まりだった。
吸血鬼と神機使いに類似点があった事。人が使うものなのだからある程度の操作も可能なのではという、神機使いとしての意識。そして、自分自身の感応能力を己が意思のみで操るブラッドの、更には最も能力の幅が広い彼だからこその感覚から放たれた言葉。その後、『血の力も特性は変えられ無いし、個人に依存する部分は難しいか……』と、そう流れそうになった話題は、しかし可能性を持つ者が居た為に、流れる事無く続いた。……続いて、しまった。
『……出来なくは、無い、ような?』
『本当ですか?』
『新しい錬血の開発は、実際に幾つか行われている。……それに、昔、一つの錬血を……一斉射撃だけじゃ無く、連続射出でも使っていた吸血鬼が居た。……かなり特殊な存在ではあったけど、数を絞れば似た事は出来る、かもしれない』
ブラッドコードによって本能的に会得し使用する錬血は、基本的に吸血鬼自身の成長と装備に依って火力が増減するものだ。中央研究所やその後身である臨時総督府などでは、適性のある吸血鬼達によって新しい錬血の開発等も行われてはいたらしい。……実際、マスタリー化された錬血の中には、それらしきものがある。施設は大部分が壊滅してしまったと聞いているが、当事者達が居るのだから聞いてみれば何か分かるかもしれない。
そして何より、今ある錬血そのものを改良したりするという発想そのものは今聞いたばかりのもの。例えば、単発の錬血を改造して連射出来るようにした、等といった錬血には覚えがない。……しかし、それはあくまで、そうするという考えそのものが無かっただけの事。感覚で操作する牙装がそれなり以上に自由に動かせるのだから、吸血鬼の身体には何かしらの制御能力が備わっている筈だ。――そしてそれは、完全に新規の試みという訳でも無かった。
思い出すのは、二十と数年前の記憶。その中に鮮明に残る、真白い棘を生み出す一つの錬血。消費の重さと制御の難度から基本的に数本を纏めて前方に撃ち出す形態を取るソレを、自在に操った一人の少女の姿。棘の大きさだけでも、3m程度から十m以上までを使い分け。そして発動様式もまた、数十を一度に形成してからの一斉射撃から数発ずつの連射までと多様だったその力。錬血そのものは全く同じものなのだから、その制御を可能にしていたのは彼女自身であった筈だ。
〝クイーン〟と呼ばれた彼女の真似が、誰にでもすぐに出来るとは思わない。それでもそこに最も近く在る存在として、同じ事が出来るだけの器は、持ち得ているのではないか。何より、クイーンの特性は本来血への受容と乾きの克服であり、そのブラッドコードや根幹は一般的な吸血鬼と同じ形だ。……ならば、制御の感覚と錬血への応用を身につける事そのものは、どの吸血鬼にも可能なのではないか、と。
『……その内、試してみる』
『ああ。何か分かったら教えてくれ』
そして、そんなやり取りから数日後。シエルから話を聞いた技術班がその内容に興味を持ち、ヴェインの確認を終えて極東に訪れたレイを捕まえて早速取り掛かったのが始まりだった。
内容や目的そのものは理に叶ったもの。何より実行者が並大抵の事では危険にさえならない神機使いと吸血鬼であった為、その実験は理論の構築や検証を置き去りに実践から始まった。……故に、諸々の諸問題はその最中に発覚した。
「……何よりだ。流石に、毎回あれをやられてはたまらん」
「アレは驚いた」
実験の初期段階。何をどうすれば良いのかも分からない中、取り敢えず今ある錬血の範囲と形状を制御出来ないかと行った検証。……その際の失敗を思い出せばどうにも笑いが引き攣った。
――思い出すのは、約10日前の事だ。
場所は、擬似的な戦闘訓練に使用される訓練場の一つだった。
『……取り敢えず、やってみるか』
炎・氷・雷・血という4属性。その中から、威力や範囲の調整と視認化が比較的容易だろうと選ばれた、【ブレイズロアー】と呼ばれる炎属性の陰錬血。比較的制御が容易であろう単発型かつ、岩石核を持たず消費冥血も少なめという点から選ばれたそれで始まった実験だった。
そこでまず試したのは、影響範囲の狭小化と効果時間の延長、そして本来射出型である発動形式を手元での滞留型に変更するというもの。その実行者として選ばれたのが、発案者の一人であり、全能力が高く多少の無茶が可能で複数錬血を使い分ける器用さを買われたレイだった。……が、その実験が初っ端から大惨事を引き起こしたのだ。
『……消せない』
『おいおい…それどうすんだ……!』
原因は、神機使い達のオラクルバレットと吸血鬼達の錬血の発動機序そのものにあった。
神機使い達の作るバレットとは、言わばオラクルを押し込み弾丸とする為の鋳型だ。神機にセットしたその型にオラクルを流し込む事で射出するオラクルに特定の型や特性を付与するものであり、一発一発をその場で成形している訳では無い。故に、同じ型を流用すればどの神機、どの神機使いでも同じバレットを使用する事が出来た。加えて、特定のモジュールや加えられたチップによって制御や形態を変化させるからこそ、威力以外を除いてどのような効果や動きをするか、消費がどうであるかを使用前に確認する事が出来た。――込められるオラクルの量や制御の全てがセットされた鋳型に依存する為、神機使い達が実際に行うのはオラクルの封入と射出のタイミング程度なのだ。
吸血鬼達の用いる錬血も、幾らかは同じ面があった。ブラッドコード由来あるいはマスタリー剤の摂取で錬血を取得した時点で、その使い方は本能的に刻み込まれる。使用を意識する事で、規定量の冥血が消費されて特定の効果や挙動の錬血へと変わり、現出する。……問題は、オラクルバレットにおける鋳型の部分がブラッドコードに組み込まれている為、そのカスタムが吸血鬼達の体内でしか出来ない事。そして、錬血そのものの意外な細やかさにあった。
神機使い達のバレットエディットであれば、モジュールの【炎:弾丸-爆発/通常】の部分を【炎:制御:その場で静止/生存時間極長-爆発】へ書き換えるという、明確で単純な変更だっただろう。
しかし、そもそもどういう制御【モジュール】でその現象が起きているのか明確では無い錬血は、そのほぼ全てが感覚頼みであった。更に言えば、どの部分にどの程度の冥血が消費されているのかも数値化出来るものでは無かった。故に、何を弄れば何が変わるのか、そもそも何を変えられるのかも分からない状況から始まったのだ。……だからこそ、その事件は起きた。
『ちょ、危ない危ない危ないって!』
『色からしてヤバいんだけど?!』
実験の第一回目。念の為にと訓練施設を用いて行われたそれで、彼は見事に求められていた要素を〝全て〟想定以上の値で達成した錬血を発動〝させてしまった〟。……一見では成功にも思えたそれは、だが本来時間をかけて検証し調整する筈の問題点や欠点さえもそのままに起動。威力の制限や破壊力の減退、起爆条件の書き換えが行われていないそれは、超高温の小型火球として現出した。――陰錬血の火力に特化した構成を取っていた、熟練吸血鬼の掌中で。
【空中を】【飛翔しながら】【核を持たない炎を】【巨大な球形で維持し】【中距離を】【直進し】【着弾と同時に】【広範囲爆発を起こす】という、オラクルバレットで言う所のモジュールを『5』というコストに詰め込んだ錬血。それを、〝コストを変えずに〟【核を持たない炎を】【その場で】【小型の球形を維持し】【目標へ接触させる事で】【広範囲爆発をおこす】へと書き換えたならば。――消費が変わらなかったが故に、削られた部分に注がれていた冥血が【炎】と【球形の維持】と【広範囲爆発】に集中され……極短射程限定のバ火力錬血となったのは、ある意味当然だっただろう。……と、思い当たったのは騒動が終わった後の事だ。
その時は、兎に角出来上がってしまったソレの処理で精一杯だった。
「まさか制御能力や識別機能が高過ぎるのが問題になるなんて、思って無かったよね」
「鉄板まで溶かす上、設定した目標を達成するまで消えないというのは予想外だったな」
出現したのは、殆ど透明にさえ近く見える程の超高温の小火球。それが宿すのは、ただでさえ陰錬血に長けた吸血鬼が用いれば数発で大型種に致命打を与えられる錬血を圧縮した、文字通りのバ火力。――木片は炭化を通り越して瞬時に蒸発。これは不味いと爆発の条件である接触起爆を行おうとするも、的にした鉄板が融解し貫通。突貫工事で作られた割には無駄に完成度の高かったその錬血は、設定された条件である目標物への衝突と爆散以外では発動者も消す事が出来なかった。……のみならず、滞留と圧縮を続けた為に【充填】と呼ばれる特殊なブラッドチップに似た効果さえ現れ初め、その解除は一刻を争う状況にまで陥っていた。
発動者が死に戻れば解除出来るのでは?という案は流石に却下された。が、それでも最終手段として残された事が示す様に、その時の混乱と騒動は中々のものだった。
『よし、来い!!』
『――!』
『……いや、あれヤバくね?!』
『大丈夫だよね?!』
『救護班ーー!!』
最終的には、耐火錬血を重ねがけしたシルヴァが支える耐火性の高い耐アラガミ装甲板を、全力で殴り飛ばす事で強制解除する羽目になるという大事件に発展。結果、爆発の衝撃により巨躯と剛力を誇り防御に徹したシルヴァでさえ数mは後退した上に両腕を骨折。防御姿勢を取れ無かった上に自らの掌が爆心地と化したレイは衝撃により反対側の壁に激突し、全身の骨に罅が入る重傷。本人達はしれっと再生していたが、一歩間違えなくても大惨事の大事故だった。……識別機能の確かさによって、訓練施設の床さえ融解させる爆熱と業火がダメージ源とならなかった事が唯一の救いだった。
『このやり方は、やめておきましょう。もう少し、条件を絞ってからの方が良いと思うわ』
『そもそも、何故その装備で挑んだ…?』
そしてこの事故により、対物指定されていた錬血とはいえ神機使い用の訓練施設が1つ半壊。あまりの大惨事に大抵の事では驚かない極東技術班でさえ顔色を失い。ヴェインの要でありながら無茶をしたレイとシルヴァは、後から合流した監視者2人とイオを中心に滾々と心配と呆れ混じりの説教をされる事態となった。
錬血を構成する各要素を把握しきれない状況で、攻撃用の錬血を扱うのはリスクが高過ぎる。……そんな、よく考えれば考えるまでも無い結論により、まずは威力や範囲を全般的に下げる方から取り組む方針へ転換。
攻撃用錬血の火力は概ね必要な冥血量に比例する。ならば、消費冥血を減らして発動すれば火力を抑えられるのでは無いかという意見を取り入れ、発動形態はそのままに消費面の調整を繰り返す事凡そ半月。大惨事を超え、幾つかの軽い失敗や事故を起こしながらも進んだ実験の果てに。漸く範囲・火力共に最小限度の小火球の生成に成功したのだ。
「この火力なら、もし外で火が必要になった時でも火種に使えるな。……焔爆と火爪は、まああれはあれで使い道もあるだろ」
「半自爆攻撃と超至近距離用っていう微妙な性能だけどね……」
「武器が無い状況でも小型アラガミ位なら十分にやれるってのは魅力なんだが、そもそもあんた達は歩く武器庫だしなぁ」
「……対人、もしくは潜入後の対物破壊?」
「洒落にならないからやめて」
尚、制御能力の向上と消費を抑えながらの効率化により、細かな要素の調整や変更にも手が届くようになってきており、使用可能な錬血の幅と威力の全体的な向上に成功。ついでに失敗例から新しい(?)錬血が使える様になったりと、当初の目標であった戦力アップもそれなりに果たせているのは、転んでもただでは起きない極東根性の浸透だろうか。
尚、その中で明らかに対アラガミ用ではない、対人や対器物破壊に特化した様な錬血も爆誕している。――大惨事を引き起こした物を始めとして、低火力・低燃費という目的としては失敗し……それ故に火力自体は高い危険物等。属性オラクルでは無く純粋な現象としての現出であるが故に、対アラガミとしてはそれなりの……対オラクル細胞以外には凶悪なまでの破壊力を持つそれらは、しかしさして危険視される事無く流された。
それは、オラクル細胞へのダメージが然程無かった為に、神機使い達にとっては見た目が派手という印象が強かったからであり。アラガミという脅威に対する同じ立場の相手が拠点を破壊するという感覚が薄かったからであり。神機使い達も同等以上の無茶は可能だという感覚があったからであった。……ただしそれは神機を手にした状態の神機使いであり、己自身に全てを依存する吸血鬼とは本来ズレがあるのだが……それを指摘する者は居なかった。
「何にしても、これで基礎と制御感覚の把握は出来たんじゃないかな! ……問題は、開発出来た錬血の伝達は出来ても、結局制御感覚の方は個人の修練になっちゃう事だけど」
「ま、その辺は仕方ねーだろ。取り敢えずは0.5とか0.1クラスの錬血使って感覚覚えて、後はそれぞれで慣らしていくさ。俺なんかだと正直使える錬血が増えるより、今使える分が強化出来るって方に興味あるしな」
それまで存在していなかった、消費1を切る攻撃系錬血の会得。……正しくは、それが可能な程に進んだ錬血への理解。それは、威力や有用性そのものでは無く、自身の内部という不安定で不可視の場所で、それ程の細かな制御や改良が可能となったその感覚こそが成果となった。
それまで、ブラッドコードによって殆ど自動的に取得し使用していた錬血への干渉と改良。一種のブラックボックスであった領域へ届いた手は、急速にその深奥へと伸びていく。流石に属性も発動様式も全く異なる錬血をいきなり生み出す事は出来なかったが、それでもより最適化された錬血は、その可能性を大きく広げて始める。
冥血の消費を上げる代わりに、火力や持続時間を高める程度は比較的容易く。自分1人を対象としていた錬血を、消費の増大と引き換えに複数へ付与する事さえ可能となり始めた。
「いつまでも年上が護られてばかりじゃぁ、格好つかねぇしな」
老いる事無く、衰える事も無い吸血鬼は……いつかの未来で、老いた今の若者達を見送る事になる。外見上の上下は既にその多くが逆転し、吸血鬼の存在を秘匿するならば自分達こそが若造と見られていくだろう。……それでも。いや、〝だからこそ〟。後百年も経たずに最年長となる自分達は、上へ上へと登る彼らの〝年上〟で在り続けたいと願う。
だからこそ、力を求めるのだ。
彼らに困難が立ち塞がった時、そして、いつか去る時に。〝任せておけ〟と言える様に。
Q.メテオバレットの着弾爆発が掌で起きたら?
A.対象と自分がもれなく双方向に吹っ飛びます。
錬血もカスタムバレットみたいに弄れたら良いのになーvsほぼ固有魔法やスキルに近いものをどうやって弄るんじゃ
ただ、ゲーム内のテキストを見るにブラッドコード依存のもの以外に臨時総督府とかで開発された?錬血もあるっぽいので、頑張ればいけるのでは?……というネタより。後は、ゲーム内でももう少し自由に遊べたらなぁ……と。
オリジナル(?)錬血について
◆焔爆
第一回目の実験を大事故にした錬血の改良版。
射出系の炎属性錬血を手元で圧縮・滞留させ、超高温の火球を生み出した後に相手にぶつけて起爆させ、その熱量と衝撃波で攻撃する陰錬血。
消費冥血に対し火力が高いが、掌上に展開し滞留する為射程は実質ゼロであり、自ら相手をぶん殴りに行く必要がある。そのため、高圧縮された爆炎の爆発による衝撃がもろに跳ね返るという最大の欠点が残る。
※正しくは、爆炎や衝撃そのものによるダメージは吸血鬼や神機使いには入らない(ノックバックのみ)。が、衝撃で吹き飛んだ物や自身による激突ダメージは普通に入る上、対物破壊系+広域爆破なので閉所や瓦礫の多い場所で使うと色々と大惨事になる。逆に、何も無いだだっ広い場所で使えば使用者が数十m後方に吹っ飛ぶだけで済む。
◆火爪
第3回目の実験において、フレイムウェポンを自分自身の手に対し発動した結果誕生した陽錬血。
結果として炎熱を纏わせる事には成功したものの、燃焼効果では無くその熱量で焼き切るタイプの錬血であった為燃え移らず失敗。焔爆と異なり時間経過で消滅するが、範囲が狭くなった割にコストが変わっていない為、やはり火力自体は上がっている。
掌〜五指と、そこから数cmに炎を収束させており、その熱量で触れた物を焼き切る事が可能。分厚い鋼鉄板でもさっくりとバターの様に切り裂けるが、こちらも射程がゼロな上範囲も極小であり、対アラガミではとても使い難い。尚、対人・対神機使いの格闘戦や潜入工作では中々に凶悪。
◆着火
十数回の実験の後に成功した錬血。
掌にマッチ程度の温度しかない小火球を生み出すだけの錬血。〝対象を燃やす〟を目的として設定されており、一度燃え始めればそちらの火は通常のそれとなるため火種として活用可能。しかし〝火属性の攻撃〟では無く純粋な〝火〟でしか無く温度も低いので、対アラガミや対堕鬼には殆ど効果が無い。一応、人間相手なら火がついたライター程度には危険。
消費冥血が0.1程度という、超省エネが特徴。